ドラゴンライダー〜唯一の邪龍乗りは世界最強を目指す〜 作:他鍋海狸
入学式は粛々と進行する。
キャニース先生の衝撃冷めやまぬ中で、当の本人は淡々と事前説明を済ませ、生徒達を廊下に集めて
「本日より、君たちは格式ある…………」
『あの先生はケル族の獣人だね。
南の海国の奥地に住んでいる部族で、滅多に人前に姿を出さないんだけど、フェリスタ頑張ったんだな』
入学式で先生が新入生に向けて挨拶をしているのを無視して、ゼノは担任の先生の説明を始める。
ゼノは魔道具を作る時に波長を合わせに、数日間学園長先生の家に住んでいた事がある。その時に多くの知識を仕入れてきたようで、俺の知らない事を沢山知っていて、勝手に話す。
ゼノの説明によると
『ケル族・獣人』
ケル族は南の海国に広がる大森林の奥地に住む部族で愛玩動物として飼育されてる
確か、獣人種は世界人口の数パーセントしか居なかった筈だ。奴隷として高価に取引されるので、血眼になりながら獣人種を探す奴らが居ることを思い出す。
ゼノの説明を聞きながら、入学式の説明を聞くと言う不思議な状況になっているが、これでキャニース先生衝撃は幾分か和らいだ。
『ケル族は高レベルの魔術技法を会得しているらしいし、フェリスタが適当な人材を選ぶわけない。
十中八九、
魔法に至る。
魔術師の目指すべき思考の領域であり、魔術を全く知らない俺でも聞いたことはある。魔術の向こう側に行った時、そのものは魔法使いになる。
全ての魔術師の到達点に先生が居るなら、これ程心強いことは無い。が、しかし、これは憶測でしかないので、タイミングがあれば確認したいものだ。
(僕にはできない方法で、最強になった人の話を聞いてみたいし)と、純粋に思う。
「次に在校生代表、ヨークス・クリスタル」
「はい」
先生に呼ばれて一人の男子生徒が立ち上がり、壇上に向かう。
よく見えないが、白い肌と真っ白な白髪が特徴的な薄く見える。
『しっかし、挨拶ばかりだよね。他に何かしないのかな?』
何処も似たようなものだと思うが、ここで返事をすることは出来ない。
入学式で独り言を言っている変な奴と思われるのは、今後の学園生活で障害になりそうだからだ。
『あの生徒さっきの人と言ってること変わんないね、話す事ないなら、早く切り上げたらいいのに。
ねぇ、アベリオも思わない?』
確かに思うが、今は黙って欲しい。
ゼノの話は否応なしに頭に入ってくるので、複数人の話を同時に聞いている感覚になる。
「以上、在校生代表ヨークス・クリスタル」
気が付けば先輩の挨拶は終わり、壇上から降りている。
「続きまして、新入生代表、グラデ・ラス・ダイアモンドくん、に変わりまして」
新入生の挨拶がダイアモンドくんから、変更があったようで、先生は続ける。
「
「……は?お、俺?」
『あれ?アベリオ、いつの間に引き受けたの』
「いや、知らない、何も聞いてない!」
俺が慌てふためいていると、耳元で。
「カーペットの上にゆっくり歩いて、壇上でお辞儀して」
フェリスタ先生の声がした。
思わず振り向くが先生は居ない。
(音の固定と空間転移、先生の
『やられたね、まぁ、頑張りなよアベリオ』
(っい!クッソ……)
笑いを帯びたゼノの声に心の中で舌打ちをしつつ、俺は渋々壇上に向かう。
生徒の視線が痛い、リズベットやマークが心配そうにこちらを見ているのに気づく。一歩一歩前進する度に、心臓の鼓動が早くなる。
大人前に出て話すのなんて数年ぶりだ、上手く話せるわけが無い、大体何を話したらいいかだってよく分からない。
ゆっくりと壇上に上がる。その刹那の間でも、数百倍の長時間に感じてしまう。額から嫌な汗が流れ落ちる。幾ら心が行きたくないと叫んでも、体と状況が許してくれず、俺は拡声用の魔道具の前に立つ。
「誰あの子?」
「ダイアモンドくんの代わりってことは特別生徒なのかな?」
「なんかぱっとしねぇなぁ」
「緊張で固まってるじゃん、ウケる」
小声の声が僕の耳に届く。やはり、大多数の生徒が違和感を覚えているようだ。と言うか、この距離で声が聞こえる事に若干の異質を感じる。
『アベリオ、身体強化の魔術使ったから。
生の感想が聞こえるよ、やったね!』
(また、要らないことを……)と、怒りを覚えるが、今は些細な事だ。何とかして、乗り越えなければならない。
「アベリオくん、頑張るんだ!」
要らないことその二の魔術で声が届く。これ以上の固有魔術の乱用はやめて頂きたい。
「し、新入生代表アベリオ・アイオライト」
先程の人と同じように一礼して名を名乗る。
ここからは、何も考えていない。
深呼吸をする、確かに俺は数年間人前に出て話すことは無かった、しかし、俺はあの時とは違う。フェリスタ先生に基本的な言葉遣いは教わったし、初対面の人との対応もこなせた。あとは、プレッシャーに打ち勝つだけだ!
「今日、格式あるラティス学園に入学式に参加できることに、今まで協力してくれた様々な人達に感謝しています」
とりあえず、それっぽいを事言ってみる。
身体強化で確認した所、反応はないどうやら問題は無いようだ。
「これより始まる学園での生活に多くの不安はありますが、それ以上の期待に胸が踊っています。
これから、沢山の困難に直面する事だとは思いますが、全力で取り組んでいく所存です」
ここまではなんとか順調に漕ぎ着けた。焦る口調と上ずる声を抑えながら、何とか言葉を紡ぐ。
「これから、出会う仲間や先生、先輩方のことを考えると楽しみで仕方ありません。
まだまだ、未熟な所はありますが、新入生一同、今後ともよろしくお願いいたします」
ふぅ、と心の中で安心する。ここまで来てしまえば、あとは締めるだけだ。
「以上、新入生代表アベリオ・アぃっ……オライト」
「あ、噛んだ」
「噛んだね」
「あらぁ、ちょっと可愛いわねぇ」
お辞儀をして壇上を降りる。
世界と頭はぐるぐる回り、吐きそうで、耳が焼けるように熱い。こんな魔術攻撃を受けたのは初めてだ。
心臓の鼓動も呼吸も脈早い、どうやら、毒性の攻撃のようだ。敵の発見、対処を速やかに行わなければ。
元の列の元の場所に戻り、椅子に腰かける。
ここから、記憶が曖昧で、気が付いたら入学式は終わっていた。次々と椅子を立ち、退場していく中で、俺は動く事が出来なかった。
ゼノの笑いを帯びた『お疲れ様』と、舌の痛みだけが残った。
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「アベリオ・アイオライト。
俺と勝負しろ!」
突然勝負を吹っかけられたのは、リズベットとマークに慰められながら、教室に戻る途中だった。
「えっと……どちら様ですか?」
「俺の名前などどうでもいい!
とにかく、勝負しろ。俺はお前が気に食わん!」
真正面から嫌い発言に若干傷つきながら、対応に困る。正直な所、力試しなら、嬉々として受けるのだが、誰なのかも分からない相手の挑戦を受けることは流石にできない。
「えっと、君は確かキース・ガネットくんよね?同じクラスの」
「あぁ、それなら俺も知ってるぜ。
いつも三人で行動してるグループのリーダーだろ、元貴族の」
「元貴族は余計よ、マーク。
ごめんなさい、キースくん、この子一言多いの」
リズベットの発言はあまりフォローになっていない気はするが、どうやら、同級生の人らしい。
「いや、元貴族なのは事実だ、謝る必要は無い」
「そっ、サンキューな」
もしかしたら、割と素直なやつなのかもしれない。
「すまない、話がズレたなアベリオ・アイオライト。
とにかく、俺と勝負しろ!」
「ちょっと待って、流石に勝負の理由は教えて欲しい。
もし、俺がキースくんの気に障ったのなら謝る」
「うむ、では、勝負の理由を説明するれば俺の勝負を受けてくれるのか?」
「ことと次第によっては……だけどね」
少し悩んだあと、彼は語り始める。
「理由は幾つかあるが、一番は特別生徒である貴様の実力を試したいのだ。
新しい特別生徒の力をこの目で見たいたい」
「ふーん、でも、それなら授業で見れるじゃん。同じクラスなんだから」
「それに、先程のスピーチはなんだ。ちゃんと練習してないんじゃないか?自覚が足らん」
「スピーチで噛んだだけで自覚が無いと言うのは、言いがかりが過ぎると思うわよ、キースくん」
二人に図星を突かれて「むぅ〜」と、唸っている。何故かだんだん可哀想になってきた。
「えっと、その理由なら受けないかな。
新学期早々、怪我するのは嫌だからさ」
「ま、待て!
理由ならまだあるぞ」
俺が帰ろうとすると、焦った様子で引き止めてくる。
「俺は、ラティス学園の特別生徒を倒したと言う称号が欲しい。おれの未来のために!」
なるほど、と思わず納得してしまう。
学舎最高位に位置するラティス学園が選んだ特別生徒を倒すことによって、自分の名前を売り出したいのだろう。
「ラティス学園の特別生徒を倒した」と、一度広がれば学園内だけでなく、ミロアだけでは無く、マール島全体に広がるかもしれないと思うのは至極当然だ。
キースくんは満足気な表情を浮かべ、俺を直視する。
リズベットちゃんもマークも呆れた顔で、俺がそんな理由の勝負を受けるわけが無い、と思っているだろう。
俺は口を開く。
「その勝負……受けて立つよ」
「え?マジで言ってるのか、アベリオ」
「考えなほした方がいいわよ」
意外な答えに慌てて俺の返答を変えようとする。
「ふふふ、それでこそ男だ。
アベリオ・アイオライト!」
キースくんが喜びなが俺の名前叫ぶ。
俺の目的はただ一つ、それに、フェリスタ先生の言葉はまだ俺の中に残っている。
「手始めに最強を目指そうか」
俺が目指す場所までのスタートラインがこの男であると、先程の発言で直感してしまった。
睨み合う二人の間に雑音は必要なく、あるのはただ純粋な勝負の熱さだけ。
「さぁ、勝負の方法を決めようか」
これは、始まりの一戦であり、アベリオ・アイオライトのこれからを決める戦いとなる。
正しく、始まりを勝ち取る勝負であった。