ドラゴンライダー〜唯一の邪龍乗りは世界最強を目指す〜   作:他鍋海狸

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第九話・着火の一言

「さぁ、勝負の方法を決めよか」

 

 俺はキースくんに投げかける。彼はニヤリと笑い、口を開く。

 

「勝負の方法は決めている。

 強い事を証明する為に、俺は……」

「待ちたまえ、その勝負僕も混ぜてはくれないか?」

 

 彼が勝負方法を告げようとして瞬間、一人の男が待ったをかけた。

 

「この僕、ダイアモンドもアベリオ・アイオライトを蹴散らし、簒奪された新入生代表の座を返してもらおう!」

 

 突然現れたダイアモンドくんの発言に、この場の全員が呆気に取られ、瞬間場が凍結する。

 新入生代表の座を奪ったなど、俺からすれば物凄い言いがかりのような気がするが、確か彼から見れば、俺は彼の挨拶の場を奪った者だろう。

 

「待て、グラデ・ラス・ダイアモンド、これは、男と男の真剣勝負だ。

 お前が入り込む余地はない」

「この虚しさと怒りで、貴様を完膚なきまでに叩きのめそう!」

「聞いてない……」

 

 キースくんが話しかけても蚊帳の外の様に扱う。しかし、勝負という事を認識はしているので、存在の認知はしている事は推測できる。

 

「ダイアモンドくん、キースの言う通り俺たちの勝負だから、邪魔しないで欲しい」

「邪魔ではない、これは最も美しい方法だ」

「決闘に割り込むのが美しい方法なら、君の美的感覚は俺には理解できそうにない」

「安心したまえ、君が僕を理解できるなら露ほども期待してない」

 

 初めから期待していなかったが、やはり俺の話に耳をかそうともしない。

(っぃ……不味いな)と、心の中で舌打ちをする。

 別段ダイアモンドくんと勝負するのは問題は無い。問題があるのは、彼を受け入れると三つ巴の戦いになる事だ。

 ダイアモンドくんは俺に恨みがあるり、集中攻撃してくるだろう。キースくんも俺に勝負を仕掛けてきた張本人であるため、二対一の構図になる可能性が非常に高い。

 

『何迷ってるの?受ければいいよ。

 そんで、僕が全部蹴散らして終わりでしょ?』

 

 ゼノが語りかける。

 確かにゼノと共闘すれば()()()()()()()()だがゼノを出してしまうと、俺が学園に居られなくなってしまう。

 幸い俺はゼノ無しの俺は普通の生徒にしか見えないし、ゼノも許可なく魔道具を出入りできないため、ボロが出る可能性は少ない。だが、ゼノを頼れない以上は自分で相手をしなければならないし、二対一で勝てるかと言われれば分からない。

 

(ここは話を流して、キースと後で勝負した方が無難だろう)

 

 考えをまとめて、言葉を紡ぐ。

 幸い、ダイアモンドくんが現れてからキースは黙っている。

 

「ダイアモンドくん、すまないが俺はキースくんの勝負を受けたんだ。

 君が入り込む余地は無いよ」

 

 俺の言葉にキースくんが顔を上げる。彼も驚いているようで、心底意外そうな顔をしている。

 

「僕との勝負に負けるのが怖いのか?

 アベリオ・アイオライト」

「ただの順番の問題だよ。キースくんの勝負が終われば、相手になる。

 幾ら節操が無い君でも、待てくらいできるだろ」

 

 俺の発言で彼の表情が歪む。

 

「おいおい、順番を間違えているぞ。

 僕よりそこの夜鳥(ベアム)(害獣)を優先するのか?」

「俺が黙ってりゃ調子に乗りやがって、何様だてめぇ!」

「ダイアモンド様だが、何か問題でもあるか?」

 

 彼の発言で沈黙していたキースくんも口を開く、流石に我慢できなかった様だ、掴みかかろうとする。面白半分で見ていた野次馬たちもざわめいている。

 

『薄々思ってんたんだけど、彼。

 アベリオの嫌いなタイプでしょ?』

「よく分かってんな、ゼノ」

 

 誰にも聞こえないように返事をする。

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

「西の龍を討伐するために、此処を拠点とする」

 許可なく村にやってきた奴ら。

 

「森なぞ知らん。焼き払え、炙り出すのだ」

 俺たちのことを何も考えてない奴ら。

 

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 数年前の記憶がフラッシュバックする。今思い出しても反吐が出る。

 こいつ(ダイアモンド)は、彼奴らに気持ち悪い位にはよく似ている。

 あぁ、俺が嫌いなタイプの貴族だ。

 思った瞬間、枷が爆ぜるのを感じた。

 

「キースくん、ストップ」

 

 殴りかかろうとするキースくんの腕を掴み止める。

 

「ダイアモンドくん、もしキースくんが許したら、この勝負に入れてあげるよ。どうかな、キースくん?」

「あぁ、勿論だ。ボコボコにしないと気が済まない」

「やっとやる気になった様だね。

 まさか、勝てるなんて幻想抱いていよな、君」

「俺は勝つよ、勝負に負ける気で挑むバカは居ないさ」

 

 俺は自信を持って答えた。例え、二対一になってもこいつ(ダイアモンド)負ける事は絶対にしない。

 

「君たち、入学早々揉め事は慎んでください」

 

 三人の話がまとまりが勝負方法を決めようとした瞬間、仲裁の声が廊下に響く。声の方向には、キャニース先生が立っており、毛むくじゃらの顔で呆れている。

 

「アズライト先生、これは違うんです」

「何が違うのですか?リズベットさん、私から見れば廊下で喧嘩でも始まりそうな雰囲気ですが」

 

 リズベットが慌ててフォローするが、客観視からの正論であしらわれてしまう。

 

「言い訳の前に、こうなった経緯を教えてください」

 

 この一言で、一時の熱は鎮火され冷静になった三人が事情の説明をした。

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「なるほと、理解しました。

 まずダイアモンドさん、自分の発言に気を付けてください。自分の発言には責任と殺傷力がある事をお忘れなく」

「はい、分かりました」

「アベリオさんと、キースさんは、勝手に勝負をしないでください。もう少し、落ち着きをもって行動て欲しいものです」

「すみません」

「反省しています」

 

 近場の空き教室で先生の正論のお説教に押しつぶされながら、話は進む。結果、三人とも落ち度はあるが、ダイアモンドの発言は流石に許容できないため謝罪の後、然るべき罰を受けてもらう。と言うのが、先生の意見である。

 

「これで問題はありませんか?」

「………」

 

 三人とも黙り込む。先生は溜息をつき、話す。

 

「確かに、彼の発言は許されませんが、気軽に決闘して取り返しのつかない怪我をしてしまったらどうするのですか?」

 

 語る先生の言葉には、確かな説得力がある。しかし、キースくんは納得できていないようで、渋い顔をしている。キースくんの気持ちを先生も察しているようで、難しい顔をしている。

 

「アズライト先生、三人の話は聞かせてもらいました」

 

 声と同時に何も無い空間から、フェリスタ先生は現れた。俺はみたれた光景だが、キースくんとダイアモンドは驚いている様子で、慌てている。

 

「先生、固有魔術(オリジナリティ)でいきなり現れるのはやめてください」

「すまないね、アベリオ。

 まぁ、時短みたいなものだ慣れてくれ」

「あ、アベリオは学園長先生の固有魔術を知っているのか?」

 

 キースくんが問いかけてくる。

 

「うん、知ってるよ。空間のし……」

「おっと、アベリオ。いくら君と私の仲でも勝手に固有魔術を喋るのはやめてくれ。

 営業妨害だぞ」

「あ、すみません。だってさ、ごめんねキースくん」

 

 フェリスタ先生の注意を受けて言葉を切る。俺がやめたのを確認し、フェリスタ先生は話し始める。

 

「私は勝負をするのに賛成ですよ。

 折角の闘志を何もしないで納めるのはあまりにも勿体ないです。それに、謝罪だけでは納得できないようですよ」

「ですが、フェリスタ学園長先生。

 もし、怪我をしたらどうするのですか?」

「幸いここには優秀な医師がおりますし、我々教員が近場で見ていれば、死人は出ないでしょう?」

「ですが……」

「お願いします先生、やらせて下さい!」

 

 呆れた顔の先生の言葉を遮ったのは、キースくんだった。

 

「確かに、アズライト先生の仰る言葉最もですが、このままでは納得できません。

 どうか、勝負を許可してはくれませんでしょうか?」

 

 キースくんの言葉に少し考えるような素振りを見せ、溜息混じりに「許可しましょう」と、言い放った。

 

「ですが、試合は明日の放課後、殺し無しや武器の制限を付けさせてもらいます」

「はい!ありがとうございます」

「今日は教室に戻って大人しくしてください。

 他の生徒を待たせています」

 

 キャーニス先生の言葉で俺たちは自分たちの教室に戻った。当然、俺とキースくんは同じクラスなので、一緒戻ることになるが、その間、双方何も語らなかった。

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「アベリオくん、放課後暇かな?」

「うん、暇だけど。

 どうしたの?リズベットちゃん」

 

 学園のこれからの予定や資料の配布が終わった後、リズベットが話しかけてくる。

 

教導本(グリモア)を返しに図書室に行くから、付き合って欲しいの」

 

 理由を聞き、ちょうど図書室に行ってみたいと考えていたので快諾する。

 席を立ち、彼女に案内されるまま廊下を歩く。道すがら、気になっていたことを聞いてみる。

 

「一緒に行くのはいいんだけど、その教導本ってなんなの?」

「あ、教えるのすっかり忘れてたわね。ごめんなさい」

「全然大丈夫だよ、俺も今の今まですっかり忘れてたし」

 

 俺の言葉を聞き安心した様に息をつき、説明を始める。

 

教導本(グリモア)は名の通り魔術を練習する本のことよ。一冊一冊に違う魔術が書かれていて、構成核(マテリアル)しやすくなってるの。

 教導本を使って練習して、感覚を掴んで杖で魔術を使用するのが、魔術を習得する基本の流れなの。まぁ、どの程度で止めるかは人それぞれだけどね」

「なるほど、子どもが包丁を使う前に玩具の包丁で練習する感か。理解したよ!」

「うん、なんで包丁で例えたか分からないけど。理解してくれたらいいわ。構成核(マテリアル)は分かる?」

 

 俺の完璧な例えに難色を示しながら、リズベットは新たな問いかけを俺にする。構成核位なら知っている。

 

「あれでしょ?魔術を構成する核だよね、俺らの心臓的なやつ」

「まぁ、ちょっと、違う気もするけど大体合ってるわ。

 構成核は全て魔術の元になる構成式なの、この前の泥人形(マッド・ドール)水の槍(アクア・ハスタス)も構成核があるわ。魔素(マナ)を使い、形を決め、素材を用いる事で構成完了(コンセンサス)できるの」

「大まかには知ってたけど、目には見えないものだと思ってたよ」

 

 俺の発言で彼女は何かに納得したようでぽん、と手を合わせる。

 

「大体の魔術の構成核は目に見えないわ、強いて言えば杖が役割を果たしているの。でも、人形魔術(ドール・マジック)は至近距離からじゃないと、別に構成核を用意しないと操れないから」

 

 思い出した彼女は俺の疑問に対して的確な回答を出してくれた。

 楽しく雑談をしていると、目的の図書室に到着する。教室の扉と同じ材質の扉に「図書室」と書かれたプレートがはられている。

 扉を開け中に入る。中は広く、六組の教室二つ分程度の広さだと感じる。至る所に本棚が設置されていて、多種多様な本が種別に整理されている。

 

「アベリオくん、返却し終わったわ。着いて来てくれてありがと」

 

 大量の本に若干の感動を覚えつつ見渡していると、用事を済ませた彼女に声をかけられる。

 

「もう終わったんだ、随分早いね」

「うん、貸出は魔道具で管理してるからね。図書委員の子がたまに整理に来るくらいで、此処にはあまり人が来ないの」

「へ〜、てっきり皆図書室に入り浸っているのかと思ってた」

「借りにでも返さないの、学園も魔道具で管理してるから返却の催促はあまりしないし」

 

 困ったように彼女は語りながら、本棚から四冊の本を取り出す。

 

「今日の目的は、本の返却とアベリオくんに基礎魔術を覚えてもらおうと思って」

 

 俺に教導本を渡して、基礎魔術を覚えさせるのが、俺を連れてきた目的だったらしい。

 

「キースくんは分からいけど、ダイアモンドくんは、学園きっての光魔術師だから、役にたつと思うの」

「魔術師相手なら、魔術の構造を少しでも知っておいた方が良いってこと?」

「そう、まぁ、無駄かもし、私の自己満足だから、嫌なら断ってくれてもいいわよ」

「自己満足なの?」

 

 俺の放った言葉にリズベットは難色を示す。

 

「自己満足は、言葉が悪かったわね。

 明日の勝負が心配だから、私も力になりたいの」

「心配してくれてるんだ」

「当たり前じゃない?友達だもの」

 

 当たり前のように言い放った彼女に、俺は心底驚いた。

 確かに、リズベットとは仲はクラスの中では現状最もいいだろう。しかし、数日前に出会った奴を心配し、多くの知識を教えてくれ、魔術のヒントを示してくれている。

 ()()、その言葉を人間から言われたのは何年ぶりだろうか。とても、温かいもので心が満たされる。

 

「ありがとう、じゃあ、遠慮なく教えて貰うよ」

「そう言ってくれて良かったわ。じゃあ、どれ……」

 

 机の上に教導本を並べながら、どれにするかと聞いてくる。

 

「でも、そんなに心配しなくてもいいよ」

「え?」

「明日は勝つから、キースくんにもダイアモンドくん、にも負けない。

 この前見せられなかったかっこいい所見せるから、安心して見てて」

 

 俺は彼女に勝利宣言をした。

 初めは驚いた表情が、少しづつ和らぎ、彼女は笑を零した。

 そして、笑いながら一言。

 

「うん、期待してるよ。アベリオくん」

 

 既に図書室の窓からは、茜色の光が差し込んいる。これは、二人しかいない図書室で起きた一幕。俺は、リズベットの一言に火を付けられてしまった。

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