この素晴らしい文豪に祝福を!   作:ぴんくのあくま

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第11話 異世界からの訪問者達(クラッシャーズ)

 裁判を受けるのはこれで何度目か。

 ……などと格好をつけて言ってみたものの、二度目である。なんてことは無い数字だ。え? 普通なら裁判を受けることすらない? はっはー諸君、人生のスパイスというものがまだまだ足りていないようだな。因みに俺要らないスパイスが周りに三個あるんだけどあげようか?

 

 「ふざけないでください、何が政府ですか! そんなもの、わたしの爆裂魔法の元に一撃で痛あああああああ!! だからチュウヤああああああああ!!」

 「裁判……! そんなものに私は屈しはしない! 私を裁きたければ拷問でもなんでもするがいい! 望むところだ!」

 「ふふ、神を裁こうなんて、低俗な思考の人間が居るなんて……。……ねえ、何よその目。なーに、もしかして私が女神だって信じてないでしょ! いいでしょうかかってきなさい! 全員まとめて、洗い物をしたらささくれができる天罰を与えてやるから!」

 

 厳かで緊迫した雰囲気が特徴的な裁判所。今までテレビで見ることしか無かった場所に、今は俺が立っている。

 

 「静粛に。これより、佐藤和真及びその他三人の処遇を決定する裁判を始める」

 

 ――犯罪者として。

 

                ◇◆◇

 

 「そこの男――佐藤和真は、街中で異能を乱用し子供を泣かせた挙句、署まで同行しようとした私に対しても異能を使用しました。それどころか探偵社に迎えに行った私の刀を奪い、ネットで売り飛ばしました」

 「裁判長さん、この子有罪で良いと思うよ」

 「何を言っているダザイ、有罪どころか永遠に牢屋の中でも良いだろう」

 

 どうしよう、俺のあまりのクズっぷりに味方が味方してくれない。

 だが俺にも反撃材料はひとつある。俺はその『反撃材料』を主張すべく立ち上がった。

 

 「まあ待てよ、俺には特殊な事情が――」

 「被告人。許可を得てから起立しなさい」

 「……」

 

 凄く既視感のある光景に何も言えずに黙っていると、俺の味方側――探偵社とマフィアが座っている席の方からスっと一本手が挙がり。

 

 「宮沢賢治。発言を許す」

 「その人……和真さんは悪い人じゃないですよ。昨日はどうしたら女の人との口論に勝てるかについて教えて貰いました」

 「……と、とにかく。罪を問われているのは佐藤和真だけでは無い。戸籍不明の三人の女も……。おい、なんでお前らは傍聴席に座っている! 早く佐藤和真の横に並びなさい!」

 「なんなんですか、私達が何をしたと言うのですか! 罪を問われるのはカズマだけで充分ではないですか!」 

 「おいお前後で覚えてろよ」

 

 最低な発言をする恋人のめぐみんを筆頭に、俺のパーティーメンバーが俺の横に並ぶ。 

 四人並んだことを確認して、女の検察官がうむと頷くと。

 

 「佐藤和真。その他三人……名前は、アクア、ダクネス、めぐみ……ん、で合っていますね?」

 「おい、どうして私の名前だけつっかえたのか聞こうじゃないか!」 

 「だから何で手前は直ぐに喧嘩売るんだ、仮にも裁かれる側なんだから黙ってろ!」

 

 黒服の少年――中也がめぐみんに万年筆を投げる。正確に投擲された一本の黒い万年筆は凄まじい速度を以て凶器と化し、めぐみんの足下に突き刺さった。これには流石のめぐみんも身の危険を感じたらしく、無言で姿勢を正している。

 

 「ではまず最初の質問です。一人ずつ答えなさい。――貴方達、幾ら探しても戸籍が存在しませんでしたが。一体どこの出身なのですか?」

 「私は天界から来た女神アクアよ」

 「私は紅魔の里から来ためぐみんです」 

 「私はダスティネス家の後継ぎの予定だ」

 「単純に言えば、俺達は異世界から来た」

 

 三人の素直な返答を俺がまとめてやる。こうすることで少しは相手方の混乱が拭えるといいのだが……まあ多分無理だろうな。

 すると案の定検察官さんはぴくりと肩頬を引き攣らせて、

 

 「で……では、次の質問です。貴方達が行ったことは、政府への反抗……つまり国家転覆と受け取れますが、その事について云いたいことがあればどうぞ」 

 「こーんなちっぽけな国、転覆なんかしたっていいことないわよ」 

 「アクアの言う通りです。我が爆裂魔法を使うまでもありません」

 「そもそも、私達を裁く理由は何なのだ? 録に此方の言い分を聞きもしないで裁判など、この国は腐っているな」

 「えーっと、俺達は異能を使ったつもりはなくて。異能なんてのがあるのも知りませんでした。俺達は異世界から来ていて、使えるのはスキルと魔法だけです」 

 

 検察官の顔が段々赤くなっていっているのは気のせいだろうか。

 

 「では、最後の質問です。――今此処で、秘密裏に貴方達を処分しても?」 

 

 瞬間、検察官の背後にいた政府の者らしき男達が一斉に立ち上がり、どこに隠し持っていたのか銃口を俺達に向け静止させる。

 わあ信じられない。俺の知ってる日本じゃねえ。

 というか、少しは聞く耳を持って欲しい。滅茶苦茶な話かもしれないが、異世界云々は本当なのだ。大体、異能なんていう非科学的な超能力があるんだったら異世界転移くらい信じろよボケ!

 

 「まあ待てよ特務科。此奴らの云い分を証明する方法がひとつある」

 

 その時、探偵社とマフィア側の席で中也が立ち上がった。続いて太宰も立ち上がると、

 

 「正直云うと、こんなおかしな人達、牢屋に入れておいてもいいのだけれどね。寧ろ一生牢屋にいて欲しい」

 「何ですってええええええ!!」

 「でも、」

 

 太宰は呆れたように両手を上げた後、フッと表情を緩めて俺達を見る。

 

 「こんなに不思議な人達は初めて見たよ。大して強くも無い、使い所が尖りすぎてる変な能力で戦って、政府を撃退して、特務科に危険視されて処分されかけるなんて。前例が無い、とんだ異常事態だ」 

 

 だからね、と太宰は微笑んで。

 

 「私の異能――"人間失格"は、触れただけであらゆる異能を無効化する。その中の全員、私が触れた状態で能力を使用できたのなら、それは異能じゃないということになって、彼らの云い分の正当性が主張できる」

 「つまり、太宰はこう云ってンだよ――」

 

 何故だろう。中也と太宰がかわるがわる喋っているだけなのに、

 二人が並んで立っているだけなのに、

 ――強い、と肌で感じてしまうのは何故なのだろうか。

 

 「お前ら四人と居るのは結構楽しいから助けてやるってな」

 

 この日、俺達の間に初めて"絆"が生まれた。

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