この素晴らしい文豪に祝福を!   作:ぴんくのあくま

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感想ありがとうございます、って言う度に感想が来て驚いています。
それでも言います。感想ありがとうございます!


第14話 天界から来た幸運の女神(レディーラック)

 「手前は何が目的なんだ?」

 「単刀直入に言うと――」

 

 人捜しです、と。

 澄んだ声で、大きな瞳で俺を見つめるその女。近くで見ると、艶やかだと思っていた顔立ちは厚化粧によるものだと理解させられる。だが顔のパーツ自体は整っていた。化粧の仕方を変えれば映えるだろうに、何故元の顔の造形を態と不明瞭にするような真似をしているのか。

 ……人捜しか……。

 

 「で? 何故それを態々俺に云った。俺がマフィア幹部だと知ってるんなら、俺がそういう芸当に長けてる人間じゃねェことくらい分かンだろ」

 「それは……私と貴方の目的が同じだから」

 「つーことは、手前もこのパーティーの……」

 「そう。主催者を探しています」

 

 相手がカマを掛けてきた可能性も視野に入れ、敢えて目的の単語を濁すように云ったのだが、どうやら杞憂におわったらしい。短い銀髪をサラリと振って彼女は口を開く。

 

 「ですが、私は主催者を探すと同時に、見つかってはいけない人もいるんです。だから、貴方も承知の通り、似合わない化粧で変装しているんです」 

 「はーん……成程な」 

  

 紫色の瞳を煌めかせる女。

 ……しかし、これは困ったことになった。

 此奴の目的は"主催者を捜すこと"。俺の目的は"主催者を殺すこと"。

 もしも同時に主催者を見つけた場合……。

 

 「悪いが、協力は出来ねえな。彼奴の異能力は厄介だ。のこのこ探してたら見つかって返り討ちに遭う。それなら俺は相手に見つかるより先に殺さなきゃならねェ」

 「……っ、マフィアである貴方の言い分も分かります。ですが、殺すのはやめていただけませんか? 殺されるのは困るんです。だって……ああもう! もういいや! もう! 面倒臭い!」

 

 女は先程までの憂いを帯びた困り顔から涙目の駄目な困り顔に変化した。

 ……何だコレ、とてつもなく既視感が。こういう駄目な雰囲気の人間を、俺はここ最近で四人見かけた。

 思わずジリジリと後退していると。

 

 「あのね、私は彼奴に大事な物を盗られたの! あれが無かったら先輩達はずっとこの世界に縛られたままなんだよお! いや違うか、あれで先輩達がこんな状況になってるから、あれを使わなきゃ元には戻れないの! しかも私のせいじゃないのにまた私が天界規定破ったみたいな感じで収まりかけてるし……ねえ分かる!? 地上人の君にこの気持ちが分かるかな!?」

 「手前さっきから何云ってんだ!」

 

 女は完全に本性を剥き出しにし、両手を握り締めたり開いたりしながら胡乱な目で俺との距離を詰めてくる。

 その異常さに危険を感じて後退を続けていくと……。

 

 ――太腿の辺りに硬い感触。その感触がベッドのそれだと気づいた時にはもう遅かった。

 

 「こうなったら力ずくでも納得させてあげるよおおおおお!!」

 「おい莫迦止めろ触んなああああああ!!」

 

 ……どんなに綺麗な女だろうと、こんな表情で迫られた上に押し倒されたら恐怖心を抱く以外に何の抵抗も出来ないと思う。

 軽くパニック状態に陥った俺に跨って自信あり気に笑った銀髪女は、左手で俺の肩を押さえ、空いた右手を掲げると。

 

 「さあ、この私の技に何回耐えられるかな!? 『スティール』っ!」

 「なっ……!」

 

 刹那、彼女の右手が青白い光を発した。

 おい待てそれは、と反論しかけて口を噤む。

 ……。 

 …………。

 

 「………………早く返せこのアマ」

 「……えっと、ごめんね?」

 

 彼女の右手には、『少年と子犬』のパンフレットが握られていた。

 固まった笑顔でおずおずと差し出されたパンフレットを受け取り、スーツの上着の内側に仕舞う。

 この映画は一度見て凄く気に入ったので、何時でもあの映画の内容を思い出せるようにとパンフレットを持ち歩いていたのだが……。

 

 「えっと……ポートマフィアって犯罪組織なんだよね?」

 「文句あんなら云ってみろやコラ」

 

 今度こそ確実に哀れみの視線を向けてきた女に向かって枕を投げつけた。

 

                 ◇◆◇

 

 「なぁんだ、先輩達の知り合いなのかぁ。早く言ってよね、もう」

 「こっちの台詞だわ。何が悲しくて意味不明な愚痴吐かれてパンフレット盗られなきゃならねェんだ」

 

 『スティール』を使える少年を見たという話をすると、女は全てを暴露してくれた。

 自分はアクアの後輩の女神エリスだということ。そして、異世界では正体を隠し、盗賊の少女クリスとして活動している内に、佐藤和真らと親しくなったのだと。

 

 「このパーティーの主催者が持っているのは、異能力なんかじゃない。でもって、私達の世界で通じるスキルや魔法でもない。彼奴はね、天界からあのキャンバスを盗んで下界に……この日本に降りてきたんだよ」

 

 天界で働いていたらしい下っ端の天使。故にエリス……クリスもそいつの外見や性格を把握しておらず、特定して天界に連れ戻してキャンバスを奪うのが難しいと云う。

 

 「あのキャンバスは天界で作られた遊び道具なんだ。天界はつまらないから、あのキャンバスに描いたことを下界のどこかに反映させて楽しもうっていう便利ツール」

 「ただの迷惑ノートの間違いじゃねェのか」

 「ある時、キャンバスが無くなってた。……かと思えば、この世界線の日本で、キャンバスを使って色々と暴れてる天使が見つかったんだよね」

 「無視すんな」

 

 クリスは俺の言葉を無視して話を続ける。

 

 「しかも、あの天使は何だか知らないけど先輩達に恨みがあるらしくて。変だよねえ、天界にいたから関わりなんか無かった筈なのに。……で、キャンバスに先輩達の絵をちょちょっと描いて、この世界に召喚したってワケ」

 

 そして今や裏社会で恐れられる絵画異能者って訳か。

 確かにその説明だと合点が行くが……。

 

 「何で手前は四人に見つかりたくないんだ?」

 「あー……助手君、あ、佐藤和真さんのことね。助手君以外、私が女神だってことを知らないから。天使君と四人と同時に鉢合わせした時、私が女神だってバレたら色々面倒だなーって思って」

 「はーん……」

 「……ねえ、どうしてそんな悪い顔してるのさ」

 「手前、さっきは散々俺に嫌がらせしてくれたよなァ?」

 「あ、うん、本当にごめんね? だからその顔やめてくれる?」

 「……あの四人に手前の正体云いふらしたら貸し借りゼロじゃねえか?」

 「うん、そんなことないと思いますやめてください。中原中也さんやめてください」

 「今更女神ヅラしても無駄なんだよこのクソアマああああああ!!」

 「待ってお願いだからそれはやめてえええええ!!」

 

 さっきまでの仕返しとして船内を逃げ回ってやった。

 

                  ◇◆◇

 

 「そもそもダクネスとめぐみんしかこの船にはいないじゃない。四人全員に言いふらせる訳ないよ……君ってば本当に性格悪いね」

 「マフィアにそれは褒め言葉だぜ」

 「……君、なんか私が知ってるあの人にちょっと似てない? ほら、助手く――」

 「それは違うと思います」

 

 あまりにも不名誉な一言をバッサリ否定しながら船内を歩く。

 かなりの距離を歩いてきたが誰とも遭遇していない。他の乗客は何処に行ったのだろうか。

 

 「困ったね。これじゃあ主催者どころか聞き込みすら出来ないや」

 「ったく、何処にいやがるんだ……」

 

 客室も一部屋一部屋ノックして回っているのだが気配ゼロ。どうしたものかと頭を抱えたその時だった。

 

 「貴方が中原中也さんでしょうか?」

 

 背後から肩に手を置かれて振り向くと。

 ――額に青筋を浮かべた、黒スーツのごつい男が立っていた。




 エリス様もといクリスの登場です。
 他にも、出して欲しいキャラがいましたら感想欄などからどうぞっ。
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