この素晴らしい文豪に祝福を!   作:ぴんくのあくま

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ちょっと短いかも?


第15話 海の向こうの迷探偵(ディテクティヴ)

 「森コーポレーションからお越しの中原様御一行ですね? ……貴方が代表だとお聞きしましたが……」

 「俺の連れが無礼を働き大変申し訳ありませんでした」

 

 冷たく寂しい空気の漂う、船備え付けの牢獄にて。

 牢獄の中で「あぁ……これが投獄……味わったことの無い気分だ……!」とか云いながら悦ぶ変態と、「なんて言うか……ごめんなさい」と今回ばかりは素直な謝罪を口にして遠い目をする爆裂狂。

 ――そんな、莫迦ばかりやらかす俺の連れの前で、額に青筋を浮かべる巡回警備員に思いっ切り頭を下げた。

 

                  ◆◇◆

 

 この船に来て二日目の朝。

 格子窓から射し込む朝日を浴びても未だ眠りこけている問題児二人に向けて……。

 

 「重力操作」

 「ぬわあああーーーっ!?」

 「何だ、何なのだ! 何があったカズマ、アンデッドか、魔王軍か、セクハラの復讐に来た女性か!?」

 

 完全に制御された重力によって狙いを寸分違わず命中した輪ゴムは、爆裂狂の少女の悲鳴と変態女の意味不明な言葉を引き出すことに成功した。……ダクネスの言葉からは日頃の苦労がかなり見てとれる。佐藤和真はどれだけの問題児だったのだろう。否、過去形じゃないな。どれだけの問題児なのだろう。

太宰はあの餓鬼に結構苦労させられていると聞いたが……。

 

 「俺だよ莫迦。おはよう問題児」

 「誰が問題児ですか、紅魔族随一の天才と呼んでください。……ところでチュウヤ、昨日はあの後何をしていたのですか?」

 

 「正体がバレたらいけないから」と云って別行動をとることに決めたクリスと別れた後、警備員に連れられて向かった牢獄で変態とめぐみんに再会し、警備員に平謝りしたのが昨日。

 そしてその後、減った人員分の仕事をしようと客船内を駆け回ったのだが……。

 

 「ダクネス、痴女行為は本当に止めてやれ。「金髪の女怖い」って云いながら泣いてる男がそこら中に居たぞ」

 「な、何……!? だがカズマはいつも私にゲス顔でお仕置をしてくるぞ!?」

 「佐藤和真と一般人を一緒にすんな! 彼奴が図太いだけなんだよ!」

 

 本気で驚いた顔をしたダクネスに正論を叩きつける。と云うか、このパーティーに参加してる奴は全員犯罪者なんだけどな。その犯罪者を泣かせる程のド変態とは……。……もう想像しないでおくことにした。

 全く、異世界人ってのはこんなのしか居ないのか。

 

 「それで、何か情報は得られましたか?」

 「あァ、茶髪の若い男……それでいて独特の雰囲気があったって奴を一人見つけた。客室は未だ特定してねェ」

 「なあチュウヤ、ならもう任務成功なのか? ……私はもう少しこの牢屋に居たいのだが……」

 「もう少しと云わず一生そこに居たらどうだ?」

 「く……っ、その冷たい視線……! お前はカズマとはまた違う刺激を与えてくれる……っ」

 「……」

 

 鉄格子を壊してダクネスに殴りかかろうとした俺を、めぐみんが慌てて止めた。

 

                  ◇◆◇

 

 「へえー、マフィアってのも結構大変なんだな」

 「んー、あんなロリコンの組織でも、一応は"三刻構想"の一つを担ってるからね。いつかポートマフィアに牙を剥きそうな相手は早々に潰しておかなきゃいけないのだよ。……ところでカズマ君、働いてくれない?」

 「断る」

 

 俺の莫迦なパーティーメンバーは現在、中原中也と共に違法パーティーに乗り込んでいるらしい。

 探偵社の平和さを見習って欲しいものだ、全く。

 

 「カズマ君、探偵社今結構ピンチ。金欠なのだよ。平和だなんてとんでもない」

 「残念だったな、俺の中では借金してない限り平和なんだよ」

 「君の平和の基準独特すぎない?」

 

 せかせかと動き回る探偵社員達。働けと促してくる包帯男。

 ……本当、一度アクアのせいで借金でもしてみたらいいと思う。

 

 「かぁずまあああぁぁぁあ!! き、さ、ま、は! 一体! 誰のせいで探偵社がこんなに忙しいと……」

 「ふん」

 「あっ!?」

 

 俺は国木田に背を向け、ソファの背もたれ側に顔を向ける。

 誰のせいって、どっかの駄女神のせいじゃないでしょうか。

 

 「何を云っている貴様! 確かに貴様は一度裁判で勝ったとはいえ、政府から目をつけられていることに変わりはないのだぞ! お陰で見ろ、特務科から仕事が次々になだれ込んで……!」

 「……」

 

 耳を澄ますと、雑音の中に聴こえる声がある。

 ……やれやれ、あいつらも無事だといいのだが、そうはならなさそうだな。

 

 「聞いてるのか佐藤和真! こうなったら力ずくであああああぁぁぁっ!?」

 

 俺の腕を掴む国木田。

 瞬間、空いていた腕でその腕を掴み返し、ドレインタッチで体力を吸って国木田を撃退した。

 

 「ねえクニキダ、多分無理よ。こうなったニートは梃子でも動かないわ。これがニートの本気よ」

 「くそ……小娘、貴様はどうにか出来ないのか……」

 「できるわ」

 「出来るのか!?」

 

 外野の会話を無視してひたすらに耳を澄ます。

 ……静かだ。凪いだ海のように静かだ。何の音もしない。

 

 心地良さに思わず瞼が落ちてきて――

 

 「カズマさんカズマさん。私だけ働かされるの嫌だから、仕事してくれると嬉しいんだけど……してくれないって言うなら、夜中私の隣でゴソゴソやってるのを皆にバラして」

 「よーし働こうぜ! やっぱ働くのが一番だよなああああああ!!」

 

 覚えてろよこの駄女神!

 

                  ◇◆◇

 

 牢から出て広間へ向かう。記憶が正しければ、今夜は派手なバイキングをやるとかだったハズ。

 ならばバイキングの前に男の素性をある程度特定しておいて、バイキングの際にどさくさに紛れて殺してしまえばいいのだ。

 

 「すいません。茶髪で若い、独特の雰囲気の男のことを知りませんか?」

 「茶髪……? 独特の……?」

 

 廊下に備え付けられたソファに座っていた女が顔を上げて此方を見る。

 ……ん?

 

 「もしかしたら、それは鷹野さんのことじゃない? 鷹野さんならほら、525号室だから、用があるならチャチャッと行ってきなよ」

 「え、ええ……ありがとうございます」

 

 営業スマイルを浮かべてその場から立ち去る。525号室ね……。

 早足でその部屋を目指しながらも、瞼の裏にはくっきりと先程の女の顔がこびりついていた。

 何故だろう。初対面の筈なのに、初対面の気がしなかったと云うか……。黒髪黒目の、何処にでも居そうなごく普通の女だった。強いていえば銀縁の洒落た丸眼鏡が印象的だったが。

 

 「……チッ」

 

 どうにも上手く進まない任務だ。舌打ちをして再び歩き出す。

 

 

 

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