この素晴らしい文豪に祝福を!   作:ぴんくのあくま

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第20話 世界を救った冒険者達(ヒーローズ)

 煌めく朝日が顔を出す――パーティー五日目の朝。

 

 「はあ……全くもう、ダクネスってば。気持ちは分からなくもないけど……チュウヤを巻き込むのは良くないよ。それに、そんなことしてめぐみんにそれが知られたらどうするつもり? めぐみんきっと悲しむよ。自分のせいにしちゃうかも」

 「う……すまない、少しどうかしていた……チュウヤ、本当にごめんなさい……」

 「……まあいい。とにかく、出来れば今日中にカタをつけたい。昨日盗られた帽子に発信機を仕込んである、それを頼りに追うぞ」

 

 項垂れるダクネス、悲しげな表情のクリスを連れて、めぐみんを部屋に迎えに行く。めぐみんは不思議そうな表情で俺達三人を見ていたが、クリスが「めぐみんが寝てる間にボンッてなったら嫌だなって思って部屋を移った」と言い訳すると目を紅く光らせてクリスの首を絞めにかかっていた。この分だと昨夜のことはバレないだろう。

 

 「ところでチュウヤ、相手は天使ですよ? 発信機で追跡できるとはいえ、対峙した時にまたやり込められたらどうする気ですか」

 「いや、二度目はねェ。……やられる前に殺る。それだけだ」

 

 俺の言葉から滲み出ていた僅かな殺気を受け、俺以外の三人がぞくりと身体を震わせたのが分かった。

 ――否、めぐみんだけはフッと口元を緩めると……。

 

 「そう言うと思っていました。……チュウヤ、私達の目の前で堂々と人殺しだなんていい度胸じゃないですか。今回はさせませんよ」

 「あァ? 手前が俺を止めるって? 俺も舐められたモンだなァ、手前の爆裂魔法如きで死ぬとでも思ってんのか?」

 

 めぐみんの耳がピクリと動く。……これはハッタリではない。恐らく、"汚濁"状態の俺ならば余裕で耐えられるだろう。

 だがめぐみんはそれでもなお余裕の笑みを崩さない。

 なんだ、何があるんだ? それ程までに此奴が平静を保てる何かなんて……。

 

 「こんにちは中也さん」

 「うおああああああああ!?」

 

 次の瞬間、背後から現れたジャージ姿の少年に蹴りを食らわせた――と思ったのだが、焦りながらも正確に振った筈の足先はヒュっと空を切る。どうやらかわされたようだ。

 

 「手前……佐藤和真か。めぐみんが呼んだんだな?」

 「ご名答。えーっと、中也って呼べばいいんだっけ?」

 

 ごく普通の少年……佐藤和真は、心做しか青い顔でポリポリと頬を掻く。それにしても、背後をとっていたとはいえ俺の蹴りをかわすとは……。年上に対してタメ口をきいていることはこの際大目に見てやろう。

 

 「手前凄ェな。俺の蹴りをかわすか」

 「いやぁそれ程でも……」

 「カズマ、自動回避スキルが発動したことを自分の手柄にしないでください」

 

 俺は今度こそ佐藤和真に蹴りを食らわせることに成功した。

 

                 ◇◆◇

 

 驚くべき佐藤和真のスキル。

 まず、どうやって此処に来たかと云うと……。

 

 「いや、何故かこの前ゴミ捨て場でマナタイトを幾つか見つけてさ。千里眼スキルで船の座標を特定して、マナタイト一個使って『フリーズ』で船までまっすぐ海上凍らせて歩いてきたんだ」

 「信じられない……助手君ってホント訳わかんないことするよね」

 

 フリーズとは、その名の通り氷結の魔法。……ただし初級。人間に向かってかけても、保冷剤を当てた時程の冷たさしか感じないらしい。しかしそれを『マナタイト』という魔力の結晶に魔力元を依存することで、船までの道を凍らせたと。確かに上手い。

 

 「しかしカズマ、策はあるのか? 相手は天使だぞ?」

 「それは分かってる。まあ……天使だろうがなんだろうが、人類最強の攻撃魔法には耐えられないだろ」

 「あっ!」

 

 その言葉に、めぐみんの瞳が紅く輝いた。

 ……いや、あんなの使ったら俺らまで巻き添え食らうだろうが。手前らの嫌いな人殺し、それも大量殺人ルートまっしぐらだぞ。

 

 「まあまあ中也、俺はそこの所をちゃんと考えてるんだよ。持ってきたマナタイト結晶は残り三個。これプラス俺の魔力で、この船から陸まで広い氷の道を造る」

 「……まさか手前……」

 

 とてつもなく嫌な予感が脳裏を駆け抜けるのと同時に、心の奥底から何かが湧き上がってくるのも感じていた。例えるならばそう――昔、太宰から指示を受け、敵組織のビルに突っ込み、最終的に無傷で敵組織を壊滅させたあの時のような。けれどあの時とは決定的に違う、誕生日のプレゼントを待つ時のような心の弾み。

 

 「氷の道を通らせて客を逃がす。……ああ、逃がす理由なら考えてあるし、何なら客は全員逃げることに賛成した」

 「どうせまた変なこと吹き込んだんじゃないんですか?」

 「何言ってんだめぐみん、お前の言動よりよほどまともだから安心しろ」

 「ぶっ殺」

 

 杖を振り回すめぐみんの頭を押さえ、カズマは笑った。

 

 「あとは、中也が仕掛けた発信機を使って彼奴を追い詰めて――」

 

 そしてカズマは語った。

 この世界では考えられないような、単純でいて明快、加えて失敗するイメージが湧かない、莫迦みたいな作戦を。

 それを聞いて俺が思ったのは、此奴は太宰とは別の意味で凄いのかもしれないということ。

 

 太宰のように超人的な作戦立案能力を持っているわけではないのだろう。ただ、全てにおいて平均より少し上なのだ。状況を見通す能力。敵の性質と有効打。地の利。太宰が敵の動きを読むことに長けているのだとしたら、此奴はあるものを最大限に生かすことができる能力をもっている。

 

 「……って訳だが。犯罪組織の幹部としてはこれでもいいのか?」

 「本当に手前ってやつは人の扱いが雑だな……俺一応マフィア幹部だぞ?」

 「マフィアも魔王軍も似たようなモンだろ。どうせどっかの頭おかしい連中に望遠鏡で部屋覗かれたりしてんだろ?」

 「してねえよ莫迦野郎」つーか魔王軍は部屋を覗かれてんのか。

 

 「しかし……待てカズマ。私の役目が無いような気がするのだが」

 「いつものことだろ」

 「そんな!」

 

 いつも通りに莫迦なやり取りをしているカズマとダクネス。ダクネスは一晩で立ち直れたようだ。

 

 「よーし、じゃあ作戦開始ー!」

 

 カズマの高らかな宣言の傍ら、めぐみんが俺にぼそっと。

 

 「……ダクネスが元に戻って良かったですね。あと、ダクネスに襲われなくて良かったですね

 

 ……いつか紅魔族というのは知能が高いとかなんとか聞いたことがあったが、あながち間違ってはいないのかもしれない。




次回でパーティー編は終了です!
パーティー編が終わったら、このすば色強めでいきたいと思ってます。
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