この素晴らしい文豪に祝福を!   作:ぴんくのあくま

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投稿遅くなりました。今月はこれぐらいのペースになると思います。


第二部
第22話 法則とともに歩く男


 どこからか、若い少女の声が聞こえた。

 世界の法則に呼びかけているような、そんな高らかな声音が青い空を貫いて――

 

 「おい佐藤和真! あの爆裂娘を何とかしろ、このままだと社が壊れる!」

 「うるせえ俺に言うんじゃねえ、俺に対して怒ってんだから俺がどうにか出来るわけねえだろ!」

 

 それは確かにごもっとも。

 ……現在、七日間連続で、新入ポートマフィア構成員のおかしな女の子の放った爆裂魔法という名の迷惑な破壊魔法が探偵社の上空で炸裂し続けています。

 

                   ◇◆◇

 

 悪いのはカズマ君だと思う。

 どうやら、カズマ君はめぐみんちゃんと付き合っていて。めぐみんちゃんが違法パーティー居る時、インカム越しに真剣な声で『その任務が終わったら、めぐみんに言いたいことがある』とか云ったらしく……まあ当然めぐみんちゃんは、『私に愛の言葉を囁くのでは?』と期待してしまう。けれど、キャンバス事件が大方片付いた後、幾つかトラブルが起きた。

 

 まずひとつは、めぐみんちゃんとカズマ君のそれ。カズマ君は、沈んでいく船を見ながら、めぐみんちゃんの肩に手を置き、真剣な表情でこう云った。

 

 「爆殺魔人もぐにんにんって俺達が倒したよな?」

 

 真顔のめぐみんちゃんの全力パンチがカズマ君の顔面に炸裂したのは云うまでも無い。ちなみに連日探偵社の上空で爆裂が起きている原因はこれだ。

 

 そしてもうひとつのトラブル。

 キャンバスを持っていた天使とやらは殺せていなかった。

 加えて、中也達が押収したキャンバスは偽物だった。

 

 「ねえカズマさん、いつになったら私達は元の世界に帰れるの?」

 

 ……アクアちゃんの無邪気な質問が胸に刺さる。普段は莫迦で迷惑でしかないこの子も、元の居場所に帰れないのは流石に可哀想だ。

 

 「……はあ。でも分かっただろ、今探偵社が取り扱ってる案件の中心に居るのは爆殺魔人もぐにんにんだ」

 「…………本当だったんですね」

 

 数日前……中也達が任務の真っ最中だった頃、探偵社に舞い込んできた依頼。

 それは、意味不明なことを云いながら追いかけてくる忍者のような姿のロボットが民間人に被害を及ぼしているから解決して欲しいとのこと。更に、カズマ君はその正体を知っていて、元の世界で倒したこともあると。

 

 「それにしても、もぐにんにんなんて名前、突然云われても信じられないねェ。あの爆裂娘も証言したから真実らしいと分かッたが……」

 「与謝野さんまで酷いですって! 流石の俺でもそんな無駄な嘘つきませんから!」

 

 流石のカズマ君も、与謝野さんに対しては敬語を使う。まぁ、もぐにんにんとか云われても信じられないよね。与謝野センセイに激しく同意します。

 

 「でも、七日間全力で探しましたけど、手がかりゼロですよ?」

 

 聞き込み調査に関して右に出る者は居ない賢治くんですらこの発言。もぐにんにんの手がかり捜査はかなり難航している。

 

 「ねえカズマ、効くかどうか分からないけど、『フォルスファイア』で――」

 「それだけは止めてくれ、もうあんな死に方したくない」

 

 ……肝心の異世界組も完全にサジを投げている。

 このままでは社全体のやる気が地に落ちたまま日々を過ごすことになると思われたのだが――

 

 「だったら、この捜査にあたる人をくじ引きで決めたらどうですか?」

 

 くじ引き……しかも発案者は賢治くん。ズルは出来なさそうなので、上手く言い訳してその場を逃れようとしたのだが、賢治くんは笑顔でこう続けた。

 

 「前にくじ引きをした時はイカサマが起きたって国木田さんが云っていたので、ここは平等に「すまほ」のくじ引き「あぷり」を使いましょう! 都会って便利なんですね!」

 

 …………そのイカサマは、敦くんが探偵社に入る前日に行ったものだ。私が。

 背後から冷たい殺気。両肩をがしりと掴まれたので振り向くと……。

 

 「太宰。引け」

 

 ……その時の国木田君の表情はあまりにも恐ろしくて文章にするのもはばかられる。

 

                 ◆◇◆

 

 結局、爆殺魔人もぐにんにん捕獲のメンバーは三人に決まった。

 異世界組から俺。探偵社からは太宰と鏡花。どうにも尖ったメンバー構成だ。

 

 「はあ~……最悪。面倒。カズマ君達が来てから面倒に巻き込まれる確率が上がった気がする……」

 「なわけねえだろ、アクセルで一、二を争う幸運持ちのカズマさんだぞ? ……いやごめんなさい、俺の比にならないレベルで幸運値が低い駄女神が居ました本当にうちの駄女神が迷惑かけてすいませんでした」

 「アクアだけに責任を押し付けるのは良くないと思う」

 「…………鏡花、多分アクアを何日か連続で観察してたら手の平返すことになるぞ」

 

 成り立っているのかも分からない会話をくだぐだと交わしながら街を歩く。昨日爆殺魔人の目撃情報が上がったのは交番の前らしい。

 俺が思うに、この爆殺魔人は、中也達が取り逃した天使がキャンバスで具現化させた物だろう。つまり爆殺魔人から何らかの手がかりを得られれば、天使を捕まえることができ、俺達が元の世界へ戻ることも可能となる。……まあ、手がかりを得られればの話だが。

 

 天使についてはクリスも独自で調査してくれているらしいが……こちらでのコネが無い状態での調査だ、期待はしない方がいい。

 

 「交番の人に話聞いてきたけど、やっぱり手がかりは無しだね。警察官を見て『違ウ……コイツハ違ウ……』って云いながら何処かに消えたらしいけど」

 

 そりゃそうだ、あいつが反応するのはチートハーレム型リア充日本人なんだからな。

 ……多分、俺がアイツに会えば反応されるんだろう。実際は勘違いもいいところだが。

 

 「実際に被害を受けた人の数は、目撃者数に対してとても少ない。異能特務科に協力を仰ぐのも難しい」

 「鏡花ちゃんの云う通りだよ。八方塞がりだねぇ……」

 

 道端のベンチに腰掛けて空を仰ぐ。はあ、さっさと姿を現してくれれば、探偵社の協力も借りて討伐・捕獲するものを……。

 なんて考えていたのが間違いだったのかもしれない。

 

 『……チートハーレム型リア充日本人。黒髪黒目』

 

 機械的な――聞き覚えのある声。背後から投げかけられた無機質な言葉。

 太宰が目を細め、鏡花が懐に手を添える。

 

 そして俺は――

 

 『――爆発セヨ』

 「誰がチートハーレムだコラァァァァァ!!」

 

 バインドでもぐにんにんを拘束すると、鏡花と太宰の襟を掴んで駆け出した!

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