この素晴らしい文豪に祝福を!   作:ぴんくのあくま

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なんか急に総合評価が増えててびっくりしました。


第25話 雨ニモ負ケズ野菜ニモ負ケズ

 「『クリエイト・ウォーター』! 『ファイアーボール』っ! 『バインド』! ……おいアクア、魔力が切れそうだ! ちょっとドレインさせてくれ!」

 「はあ!? 嫌よ、誰があんたなんかに私の神聖なひあぎゃあああああああ!?」

 

 不意打ちでアクアから魔力をドレインし、襲い来るキャベツ達に再び魔法とスキルの猛攻を浴びせかける。敦は虎の異能でキャベツを引き裂き、モンゴメリという少女はツギハギだらけの人形を操ってキャベツを粉砕している。……あれ後で食べようと思ってたのに。

 

 全員で対処にあたっている内に、いつの間にか部屋内の動くキャベツはいなくなっていた。残ったのは無惨に引き裂かれたキャベツの残骸。これは……食べられないな。

 思わず溜息をつきながら、足元のキャベツのゴミに手を伸ばすと……。

 

 「お……おああああああ!?」

 「どうしたの!?」

 「カズマ君!?」

 「か……かじゅまが……かじゅまが私の魔力を勝手に……」

 

 ――キャベツが消滅した。

 俺が触れたところから、煙のように蒸発して消えた。

 俺があげた悲鳴に驚き、モンゴメリと敦が駆け寄ってくる。若干一名、全く違うことを言っている気がするが気にしないでおこう。

 

 「それ、カズマ君達が云ってた具現化キャンバスとかいうやつで具現化された物なんでしょう? だったら実態を保つのに時間制限があってもおかしくはないよね?」

 

 と、急に話に割り込んできたのは、キャベツに体当たりされて気絶していた太宰だ。太宰がキャベツの残骸を拾い上げると、俺の時と同様にキャベツが煙のように消滅する。太宰は両腕を組んで、

 

 「ふむ……」

 「真面目なポーズでそんな性格悪そうな笑い方すんな。太宰、お前アレだろ、本当はキャベツに気絶させられたのが悔しいんだろ」

 「違うもん」

 「もんとか言うな気色悪い。あとその顔やめて、ちょっと怖い」

 

 俺の言葉に太宰はようやく悪魔の笑みを引っ込めた。こいつもこいつで、俺のパーティメンバーと通じるところがある気がする。

 

 「もうキャベツは居ないわよね。あなた達、異能を解除してもよろしくて?」

 「オーケーだ」

 

 モンゴメリは頷き、パチンと指を鳴らす。桃色の異空間が消え去った後に残っているのは、キャベツの暴走の傷痕が生々しく刻まれた、昨日までとは別物の商店街だった。

 

                 ◆◇◆

 

 「おい小娘! 貴様、俺の珈琲を何処にやった!」

 「珈琲なら置いてあるじゃないの、ほらそこよ」

 「誤魔化すな、これはただの白湯だろうが!!」

 「仕方ないじゃないの! 私の指が触れちゃったんだから仕方ないじゃないの! あんたそんなカタい頭してるから童貞なのよ!」

 「なんだと貴様、今日という今日は許さんぞ……!」

 

 社内で喧嘩が起こるのは日常茶飯事だ。今日の喧嘩は国木田とアクアらしい。昨日はアクアと太宰が社内の蟹缶について口論していたし(結果は太宰の圧勝)、一昨日は乱歩とアクアがおやつについて口論していた(これもまた乱歩の圧勝)。……あれ、あの駄女神毎日誰かと喧嘩してねえか?

 

 「カズマさんカズマさん、ちょっと質問があるんですけど」 

 「ん? なんだ賢治」

 

 俺に向かって手招きしてくる賢治の元に向かうと、賢治は自分のパソコン画面を開いて見せてくる。

 

 「もぐにんにんの目撃情報が入ってきているんですけど、もぐにんにんって全身金色ですか?」

 「違う。全然違う。それは偽情報だから無視していいぞ」

 「はーい」

 

 ――キャベツ大量発生事件から四日が過ぎた。

 もぐにんにんの目撃情報はじわりじわりと数を増やし、その中には面白半分でばらまかれたデマも混じっている。キャベツの謎も、もぐにんにんの居場所も、もっと言えばキャンバス天使の居場所も分からずじまい。クリスとの連絡は途絶えている。

 

 簡単に言えば、調査は非常に難航していると言ったところか。

 なんの変哲もなく、日々慌ただしい探偵社内。変わったことと言うと……そういえば、昨日アクアと口論した後から太宰が姿を消している。社の皆はサボりだの拘置所だの川の中だの浄水場だの散々なことを言っていたが、俺の勘だとそのどれとも違う。

 

 俺は自分のデスクに戻り、パソコン画面を凝視した。 

 ――もぐにんにんに関係するメモを纏めたファイルを。

 

 『キャベツの動き方について…逃走形態?』

 『アクア曰く、「あれだけ速いキャベツは中々居ない」』

 『キャベツは海に向かっていた』

 

 アクアから聞いた情報。その場で確認できた情報。これだけでもかなり推測が立つ。

 何かから逃げるために、海に向かっていた――。

 

 そして、キャベツがやってきた方向は森の中だ。横浜のはずれにある、狭いが深い森。

 ……恐らく太宰も動いている頃だろう。そう思った時、パソコンがピコンと鳴り、メールを受信したことを知らせてくれる。

 

 『from:太宰

  件名:紅魔の里の周りって森なんだよね?』

 

 どうやら、俺と太宰は全く同じことを考えていたらしい。思わず口角が上がる。

 ――もぐにんにんを発見することは難しく無さそうだ。

 

 しかし問題は、もぐにんにんをどうやって退治するか。

 キャベツは消えた。時間制限があったからだろう。だとするともぐにんにんだってもう消えてもいいはずなのに消えない。この違いは何か。

 

 ……生命活動?

 キャベツは各々の方法で無力化した。その途端、触れると消える物になった。もぐにんにんも同じなのだろうか。

 やはり、何とか破壊して、あとは触れて証拠を隠滅するしかないのか……だとすると破壊の方法は限られてくるよな……。

 前あいつを倒した方法は――

 

 

 「『エクスプロージョン』っっっっ!!」

 

 ――ああ、そうだ、俺まだこいつと喧嘩したまんまだったわ。

 

 遥か遠くで俺の恋人の高らかな殺意の声音が響き渡ると同時に、嘗てもぐにんにんを破壊したチート威力の魔法が探偵社ビルの上空で炸裂した。

 多分、もぐにんにんを倒すなら此奴に協力を仰ぐか、もしくは――

 

 「……はあ。しょおがねえなあああああああ!」

 「うるさいぞカズマぁぁあ!!」

 

 国木田の怒鳴り声を背に受けて、俺は探偵社を飛び出した。

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