この素晴らしい文豪に祝福を!   作:ぴんくのあくま

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第31話 光と風と爆裂魔法

 めぐみんは後方待機中。

 国木田は手榴弾を作って中也に渡し、中也はそれを持ってタコに襲撃をかけるものの触手の可動域が広すぎて上手く距離を詰められていない。敦も様子を見ながら触手を切り裂いているが、切っても切っても触手が増える。その上、人の形をしたタコは最早完全に怪物の形をしたタコに成り果てようとしていた。

 

 「カズマさんカズマさん、私達ってこういう時役立たずよね」

 「当たり前だろ、ハンスの時みたいなモンだ。マジで強い敵がきた時は、いつもの小細工でどうにかできる訳じゃねーんだよ」

 

 ――そして、そんなみんなを見守る俺とアクア。

 アクアは敦と中也に支援魔法をかけていたが、それ以来何もしていない。俺はというと普通に何もしていない。というか何も出来ない。

 だってそうだろ。こういう時に俺が前に出たところで、足でまといになるだけだ。

 対人の嫌がらせ戦法なんて、こんなタコの化け物には通用しない。

 

 「おいカズマ! 貴様は何もせんのか!」

 「しないんじゃなくてできないんだよ……」

 

 アクアと二人で大人しく戦況を見守っていると、案の定国木田から檄を飛ばされたのでげんなりしながら説明をする。

 

 「……成程な……。人相手には最高の嫌がらせに使える貴様の能力も、あれ程の規模となると効かん訳か」

 「そういうことだ。アクアも対悪魔戦じゃない限りサポートに回るしかないからな」

 「そういうことよあああああああーーっ! 助けてカズマ、今、私の頭のチャームポイントをタコ足が掠めたの! このまま突っ立ってたら私達も攻撃対象にされるわよ!」

 

 悲鳴をあげて蹲るアクア。ふと正面を見ると、確かにタコの攻撃範囲はどんどん広がっていて、中也と敦が対応し切れていない時の触手は全てこちらに向けられている。

 

 「はぁ……ったく、しょーがねえなあああああああああ!」

 「え、カズマ何も出来ないんじゃなかったの!? 死んじゃうと思うんですけど!」

 「そうだぞカズマ、貴様が出たところで……!」

 

 ――こんな場面、今までだって何度もあった。魔王軍の幹部と戦って、果ては魔王とも戦った。

 それだけじゃない、冬将軍にリザードランナー、俺は何度も死んでいる。

 それでもこうして、馬鹿な此奴らの隣で最悪の冒険をし続けているのはきっと、俺の幸運値が高いからに他ならないのだろう。

 

 派手な戦闘なんて出来ない。俺はラノベのチート主人公じゃないから。

 カッコよくもない。俺は元々ただの引きこもり高校生なんだから。

 

 だけど――今、俺にしかできないことが確かにある。

 

 「国木田、手榴弾一個くれ!」

 「……やるんだな。死ぬかもしれないぞ?」

 「誰に向かって言ってんだこの野郎」

 「上司には敬語を使え!」

 

 国木田が異能で出した手榴弾を受け取り、蹲るアクアを振り向いて。

 

 「アクア、支援魔法くれ。最高のヤツ」

 「……カズマさんって時々私よりも馬鹿だと思うの」

 

 アクアは立ち上がり、言葉とは裏腹に晴れやかな笑みを浮かべて支援魔法をかけてくれた。

 ……さっきから中也は、手榴弾を持って敵に近づき、手を伸ばしたところで触手に狙われて慌てて回避するという状況を繰り返している。さっき聞いた話からして、彼奴がやりたいのは多分――

 

 「中也ぁー! 敦ー! サポート頼む! 国木田とアクアはここから離れてろ! めぐみんは俺の合図で爆裂魔法を使え!」

 

 三人の反応を見ることなく、俺は強化された脚力で駆け出した。

 ……視界の端で、中也が、敦が、めぐみんが笑っているように見えたのは気のせいだろうか。

 

                  ◆◇◆

 

 云うが早いが、カズマ君が駆け出した。

 カズマ君のやりたい事はよく分かる。だから、カズマ君が『それ』を成功させられるように、僕達はサポートしてあげなければならない。

 中也さんに視線を走らせると、バッチリ目が合った。……考えていることは同じらしい。

 

 僕達は同時に頷くと、肥大化したラブクラフトに向かって全速力で駆けるカズマ君を狙う触手に狙いを定める。

 

 僕達のやることは――カズマ君が攻撃を受けないようにすることだ!

 

 「こっちだ糞タコ、余所見してんじゃねェ!!」

 

 カズマ君に向かって一直線に走る触手を押し潰す重力。けれどそれだけでは足りない。後から後から、何本もの触手が己の身を守る為にカズマ君に触手を伸ばす。

 

 「中也さん、そっち側お願いします!」

 「上等だ、そっちは任せたぜ!」

 

 カズマ君の右手側に迫る触手を僕が虎の爪で切り裂き、左手側に迫る触手を中也さんが重力で吹き飛ばす。今日は何だか身体が軽い。アクアちゃんの支援魔法のお陰だろうか。

 そうこうしている内にも、カズマ君はラブクラフトの触手を掴んでその巨体を山と見立てたように登っていく。すかさず殺意を持って飛んでくる触手をひとつ残らず切り飛ばす。きっと、僕の後ろでは、中也さんが異能で触手をどうにかしてくれているのだろう。

 

 ……カズマ君は本当に不思議な子だ。僕より歳下とは思えない。

 普段は誰よりも頼りないのに、この子が居ればどんなことだってできる気がしてくる。

 

 「ありがとな中也、敦! あとは俺に任せろ!」

 

 頼もしい声に振り向くと、ラブクラフトの身体の中心に僅かに空いた隙間のような所に手をねじ込むカズマ君が見えた。

 

 「任せろじゃねえよ、そのままだと死ぬぞ!」

 

 叫んだ中也さんがカズマ君の腕を引いて後退した瞬間、ラブクラフトの全身から閃光が迸る。

 直後――衝撃。

 中也さんがカズマ君と共に地面に投げ出され、アクアちゃんと国木田さんが爆風によろめいた。

 

 『――彼奴を前倒した時は、糞太宰が彼奴の内部に仕込んだ爆薬と、俺の異能を使った。今回も上手く内部から攻撃出来りゃ、あとはめぐみんでどうにかなるだろ』

 

 この戦闘が始まった最初の中也さんの言葉だ。

 そう……内部からの手榴弾で怯ませた後に、外部からの膨大な威力の攻撃をぶつける。

 

 「ふっふっふ……ついに私の出番が来ましたね!」

 

 目が痛くなる爆風をものともせず、紅い瞳を煌めかせてマントを翻す魔法使い。

 

 「――我が名はめぐみん。紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りし者! ……訳の分からないタコ型モンスターよ、我が究極奥義で美しく散るがいいっ!」

 「みんなっ、急いで逃げろ! 巻き添え食うぞ!」

 

 カズマ君の合図で弾かれたように駆け出した僕達は、高らかな声と眩い閃光を最後に意識を失った。




多分これで第二部終わりです。
この章でやったことといえば、バニル登場、研究所建設、ラブクラフトとの戦いくらいですかね……o(´^`)o
次の章は文スト寄りのシリアス寄りでいくと思います。
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