この素晴らしい文豪に祝福を!   作:ぴんくのあくま

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投稿遅くて申し訳ないです(><)


第36話 この爆裂探偵に賞賛を!

 私はチュウヤの手を引いてマフィア本部に逆戻り。複雑な廊下を進んで階段を上り、目当ての部屋へ真っ直ぐ進む。

 

 「おい待て、こっちはある程度階級が無いと来れないエリアじゃ……」

 「ポートマフィアと云っても、案外簡単に侵入出来るものなんですね」

 「侵入!? ――そうだセキュリティ! 手前、階級も無い癖に何でセキュリティコード知ってやがる!」

 「私にかかればこの程度はお手の物ですよ」

 

 背後で目を白黒させるチュウヤの眼前に、黙ってスマホの画面を突きつける。チュウヤが息を呑んだのがハッキリ感じ取れた。

 ――画面に表示された、『サトウ カズマ』の着信画面に。

 

 「カズマ経由でオサムからコードを聞き出したんです。あ、それとチュウヤ、今更ですけどスマホとやらを買ってくれてありがとうございます」

 「手前にスマホなんざ買ってやるんじゃなかったな……」

 

 頭を抱えるチュウヤに微笑みを投げ、目的の部屋の前で急ブレーキをかけた。

 『第三十七番情報書庫』と書かれたプレートが貼られた扉を押し開け、室内に足を踏み入れる。

 

 「……まさかとは思うが、何度も此処に出入りしてるなんてことは……」

 「今週で三回目ですね。この前読んだ『爆裂マフィア 対応書』ってヤツは結構面白かったですよ。勿論、読んだ後に燃やしておきましたけど」

 「マジで手前一回死んでくれ」

 

 爆裂マフィア対応書は、チュウヤと首領が中心となって書き進めた書類らしい。まあ、読んで字のごとく、暴走する私をどのように抑えるかを纏めた書だったのだが、私は暴走などしないし、書いてあることがあまりにも失礼だったので焼いておいた。

 

 「……「あれ、あの書類は?」とか訊かれたら、首領になんて説明すればいいんだ……」

 「まあそれはどうでもいいことなのですよ。私が云いたいのはもっと――」

 

 幾つも並んだファイルの背表紙を掌でなぞりながら、目的の書類を探す。確か、この辺りに……。

 

 「……ありました」

 「何だコレ」

 

 赤いシールが貼られた背表紙。勿論、私がこの前読んだ時に、次も見つけやすいようにと貼っておいたものだ。

 私はシールを剥がすと、他のものより幾分か薄いそのファイルを取り出してチュウヤに見せる。

 

 『新型異能兵器についての陳述書』

 

 「異能兵器だァ? こんなの手前に関係ねえだろが」

 「私には関係ないですよ。……今は、未だ」

 「はァ?」

 

 私は遠慮なくファイルもとい陳述書を開き、ページを捲っていく。最初こそ怪訝な表情だったチュウヤも、内容を読み進めるにつれて表情に険しさを滲ませた。

 

 「どうやら最近、日本のイノウ研究所で新型異能兵器の研究・開発が進んでいるようですが。イノウ研究所のデータベースに不審な動きがあったらしいんです」

 「……で?」

 「次はこっちです」

 

 更にページを捲ると、『横浜市内での不審事件』の項が現れる。

 

 「事件が頻発……武器の密輸……()()()()()()()()()()()()。この、壊れると消える物体っていうのが問題なのです」

 

 チュウヤは未だ全てを理解出来ないような表情でいる。当たり前だ、核心に踏み込んでいないのだから。

 そう――これを訊けば。

 

 「チュウヤ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 チュウヤの目が大きく見開かれる。真逆そんなことを改めて訊かれるとは思ってもみなかったのだろう。

 だから敢えて訊いた。この答え次第では、ゴールが少しずつ見えてくるから。

 チュウヤは逡巡した後、それでもやっぱり決断しきれないような空気を醸し出しながら口を開く。

 

 「……電話はかかってきた直後に逆探知した。だが、辿れなかった――否。それどころじゃねえ。この世界の何処にも、俺に電話を掛けてきた時に使われた端末が存在しなかったんだよ。ありゃ小物の所業じゃねえよ」

 

 存在しない端末――。

 私は思わず笑みを深める。

 もしかしたら、爆裂探偵である私の出番かもしれない。

 

 「チュウヤ。最適解は、ダザイオサムを殺すことではありませんよ」

 

 この問題は、もっと深い――。

 

                   ◆◇◆

 

 「電話の逆探知が出来ない、だと?」

 「残念ながらね」

 

 どんなに携帯を滅茶苦茶に弄り回しても、発信主の居場所は特定出来なかった。……否、そもそも私の携帯に電話を掛けてきた端末がこの世の何処にも存在しないのだ。これは可笑しい。ただの悪党が出来る技じゃない。

 電波弄りに定評のある私は思わず溜息をつく。簡単に出来ると思ったんだけどなあ……。

 

 「ダクネスちゃんは何か知らないの? ストーカーとか慣れてるでしょ」

 「ぶっ殺されたいのか貴様、高潔な貴族の娘である私がそんなことする訳ないだろう!」

 「貴族の娘……」

 

 両手を銃の形にしてダクネスちゃんに向けると、ダクネスちゃんが掴みかかって来たのでするりとかわす。

 

 「そういえば、バニルさんとウィズさんが何か話してたような……」

 「え?」

 「キャンバスがどうとか……壊れたら消えるシステムだとか……消える……もしかしたら、その端末も消えたとか?」

 「――っ!!」

 

 そうだ。何故今まで気づかなかったのだろうか。

 この世から跡形もなく消える――それはあのキャベツの時と同じだ。

 触れた瞬間に消えた、キャベツの残骸。もしかしたら……キャンバスを持ち出した天使が端末をキャンバスで生み出し、私と中也の携帯にあんな電話をかけ、端末を壊して消したのではないだろうか。

 そこまで考えたところで違和感に気づいた。

 

 「ゆんゆんちゃん……って、バニルとウィズ?って人の力でこっちに来たんでしょ? でもその時にはバニルは既にこっちの世界にいるはずなんだけどな」

 「バニルさんは、私達の世界と連絡する手段を持っているみたいです。バニルさんがこっちの世界から私達の世界に映像通信をしてくれて、私はその通信をウィズさんと共有していたんです」

 

 バニルにも話を聞いてみた方がいいかもしれない。

 

 「ねえみんな、今私が考えたのはね――」

 

 そして私は皆に仮説を説明した。

 もしかしたら、キャンバス天使が私達にあの電話をかけ、端末を壊して消したから逆探知が一切出来ないのではないかということ。

 

 「成程……めぐみんと全く同じことを云っているな」

 「……え?」

 

 どうしてここでめぐみんちゃんが出てくるのか、と私とゆんゆんちゃんの視線がダクネスに集まる。

 ダクネスは中也に買って貰ったらしいスマホの画面を私たちに向け、険しい顔で虚空を睨んだ。

 

 「めぐみんからメールだ。『どうにかしてダザイを探し出して連れてきて欲しい、話したいことがある』……と」

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