この素晴らしい文豪に祝福を!   作:ぴんくのあくま

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一ヶ月は経ちませんでしたよ! ギリギリ一ヶ月以内に投稿出来ました!
……とりあえず、投稿遅くなってすみません(><)


第37話 この不幸な少女に幸運を!

 正直言って、怖かった。

 友達同士(?)なのに、本気で殺意の応酬が出来るところも。

 人を殺すという行為に何の疑問も躊躇も抱いていない、その仕草も。

 

 でも――今大事なのは、誰も死なずに問題解決を迎えることだ。

 

 「よう太宰。数時間ぶりだなァ」

 「……君が莫迦なせいで面倒なことになってしまったじゃないか」

 「莫迦は手前もだろ。めぐみんのメールでやっと気づいた癖に」

 「私も推理してましたァー。何処かの脳筋と違ってね」

 

 そして、相対する五人。

 赤い髪の黒帽子の人とオサムさんが火花を散らし、私とめぐみんは互いに憮然とした表情。ダクネスさんはどうすればいいのか分からないような狼狽えた空気を醸し出している。

 

 「ちょ、ちょっと! 喧嘩はやめてください!」

 

 思わずオサムさんと黒帽子の人の視線の間に割り込んだ。

 

 「あァん? さっきから思ってたんだが、手前誰だよ」

 「私のストーカーですよ」

 「めぐみんの馬鹿ああああああああああ!! あんたのストーカーなんて誰もしてないわよおおおおおおおおおお!」

 「お前らが喧嘩してどうすんだ!」

 「そうですよゆんゆん。今は喧嘩などしている場合ではないのです」

 「あんたが言い出したんでしょうが!」

 「ハイハイ、その辺で」

 

 オサムさんと黒帽子の人が私とめぐみんの間に割って入る。二重仲裁だ。

 っていうか、めぐみんの方から呼び出しておいて喧嘩を売ってくるなんて……本当に、昔っから何も変わらない滅茶苦茶さ。これがめぐみんで、これが私のライバル。それを再認識した瞬間、何だか緊張が解けた気がした。

 

 「で――めぐみんちゃん。この状況で私と中也を会わせるってことは、君も何か思いついたんじゃあないのかな?」

 「そうです。私の考えを話しておこうと思いまして」

 

 そして、めぐみんは重々しい表情で口を開いた。

 

 「異能兵器開発研究所の、極秘異能研究データが何者かによって盗まれたそうなんですよ。そして、この異能兵器開発研究所っていうのは、マフィアの管轄だそうです」

 

 めぐみんの靴音が路地裏のコンクリートを響かせる。その視線は冷たく落とされたまま動かない。めぐみんのブーツだけが絶え間なく動き続ける。

 

 「オウガイは、この捜査を旧ソウコク――ダザイとチュウヤのコンビ名らしいですけど、その二人に頼もうと考えていたみたいですね。だから今回のデータ盗難は、無敗の旧ソウコクによって片付けられるハズだった」

 「――でも、そんな時に、当の二人に殺し合いの命令が来た?」

 

 めぐみんが顔を上げた。整った顔立ちには何の色も無い。ただ、遠くを見つめて澄んでいる。

 

 「研究所のパソコンに侵入した端末は、この世の何処にも無かった。チュウヤに電話を掛けてきた端末も存在しなかった。横浜市内で、壊れると消える物体が頻繁に出現している……」

 「めぐみんちゃん……君はまさか、」

 「そうですよ。恐らく、全ての元凶は天使です。天使は異能兵器の情報を手に入れ、キャンバスで具現化し、私達四人――いや、もしかしたら横浜ごと消し飛ばすつもりかもしれません

 

 全員が、沈黙した。私の脳内で、欠けたパズルのピースが綺麗に嵌められていく。

 天使の話は聞いている。バニルさん曰く、「青髪芸人達を恨む変な天使のせいで、あちらの世界に危機が迫っているな……厄介極まりない」らしい。つまり、具現化能力を持つその道具(キャンバスかな?)を使って異能兵器を創り出し、カズマさん達に恨みを晴らすってこと……?

 

 「キャンバスで作りだしたものは、基本、壊したり動作不能にしたりすれば、触れると消える不思議なグッズに変わってしまうんですよね。天使が何で自分で壊さなかったのかは知りませんけど、まあ、作り過ぎて壊せなくなったから横浜に放置したとかじゃないんですか」

 「最後の推理だけ適当だなオイ」

 「とにかく、天使は私達に邪魔されるのが嫌だったから、キャンバスで色々トラブルを起こしたんですよ。あ、変なタコの人も、あの口ぶりからして天使に雇われたんだと思います」

 

 チュウヤと呼ばれている人の冷たい視線を無視して、めぐみんは真剣な表情で息をついた。めぐみんの推理はこれで終わりらしい。

 

 一方、私はというと、この世界に来たばかりだから上手く状況を理解できない部分が多かった。私よりも長い期間こっちに滞在しているめぐみんやダクネスさん、アクアさんやカズマさんはそれなりにこっちに順応していると思うけど、……私には少し難しい。

 けれど、分かったことも少しある。

 

 「だとしたら、この殺し合いを止めるためにも、天使を探し出さなきゃいけないんじゃないの?」

 「ゆんゆんちゃんの云う通りだよ、めぐみんちゃん。マフィアと探偵社のメンバーを殺すっていうあの電話だけじゃ、どのタイミングでどう殺すのかが全く分からない。逆探知できないなら尚更ね。そろそろ本気で天使の対処をしないとまずいと思う」

 「だが、どうやって天使を見つけ出すのだ? 今までだって、かなり本気で天使を探してきたが、ヒントは全く得られなかったぞ」

 「期限は三日だ。あまりにも短すぎる。こりゃどうしようもねえな」

 

 私を皮切りに、みんなが口々に意見を述べ始める。けれど、ここに揃ったメンバーだけでは解決は難しそうだ。

 誰かの力を借りなきゃいけない。でも、誰に力を借りればいいのか分からない。

 絶望的な気分で唇を噛み締めた。

 

 「――待たんかいコラあぁぁぁぁあ!!」

 

 瞬間、路地の前で急ブレーキをかけ、私達の方を睨みつけてきた人物がいた。

 ショートパンツにラフなティーシャツを着た、銀髪のボーイッシュな女の子。

 

 「クリス……!? 何をしているのだ!」

 「え……? あ、あれ? ダクネスにめぐみん、あとその他のお仲間さん。何してんの?」

 「あー……手前確か、客船の中で会った……」

 

 どうやら、チュウヤさんとクリスさんは面識があるらしい。それにしても、ダクネスさんの友人であるクリスさんはどうしてここにいるのだろう。っていうか、待たんかいって何……?

 

 「ねえ、聞いてよちょっと! スられたんだけど! 盗賊職のあたしが、変な人にスられちゃったんだけど! こっちに行った気がしたんだけど見てない?」

 「だけどだけどってうるせえな。誰も見てねえよ……けどどんな奴だ?」ちょっと興味を引かれたらしいチュウヤさんが悪戯っぽい声で尋ねる。クリスさんは頬を膨らませながら、

 「なんか、背が低くて、肌が白くて、茶髪で……あと、変だなって思ったのが、何か強い魔力を感じたところなんだよね。そう。なんでこっちにあんな強い魔力を持つ人がいるのか不思議だっあなあ。それと、電話しながら走ってて、イノウヘイキとか何とか云ってたよ?」

 

 ――私たちは顔を見合せた。早速ヒントが転がり込んできた。


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