この素晴らしい文豪に祝福を!   作:ぴんくのあくま

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 マフィア&ダクネス、めぐみんサイドです。
 


第4話 このド変態と潜入を!

 夜の帳が降りる頃――

 

 「なあ……俺が間違ってたのか?」

 

 暗い室内に俺の独白がポツリと落ちる。……答える者はいない。

 そう。俺が間違っていた。ここ数日の組織の変化に違和感を感じるべきだった。

 ――だって、明らかにおかしいだろう。

 

 「はあ……はあ……! こ、こんな暗い所で敵が来てしまったら、私は、私は一体、どんなことをされてしまうんだ……っ!」

 「ここで外に向けて爆裂魔法を撃てば、どれだけ気持ちが良いのでしょう……!」

 「……お前ら、頼むから黙ってくれよ……」

 

 変なことを語り出す少女に加え、立原が道端で拾って来た鎧姿の金髪ド変態女までもがポートマフィアに加入するなんて。

 しかも、俺とその二人で敵組織の本拠地に潜入しているなんて。

 

                  ◇◆◇

 

 めぐみ……めぐみんとの出会いはあんな感じだった。

 ダクネスとの出会いは実に単純。執務室に戻ると、鎧を着た金髪の女を抱えた立原が立っていたのだ。

 

 「あー……立原、女連れ込むんならここじゃなくて自分の家にしろよ?」

 「だから違いますって! 首領命令で……」

 「はァ?」

 

 何でも、不思議な力を感じる女が倒れていたから拾って首領に届けると、「その子もマフィアに入れるから、世話は中也君にしてもらいなさい」と云ったとか。

 ……って、その子「も」?

 

 「チュウヤ、遅いじゃないですか! 私はお腹が空いて死にそうです。早くご飯をください! ご飯にしましょう!」

 「なんで手前は此処にいるんだああああああああ!!」

 

 その後、すったもんだの末に根負けした俺が、執務室に鎧の女とめぐみんを居候させることになり。

 というか首領は何を考えているのだろう。俺は男だ。女二人……いや、女をここに置くのは危険だと思わないのだろうか。まあ忙しいからそんなことをする暇はないと思うが。

 

 「おい、どうして女一人とカウントしているのか聞こうじゃないか」

 「手前はいつから人の回想に割り込めるようになったんだ」

 

 現在、俺達は目的の部屋――横浜に新型の麻薬を蔓延させている組織の本部ビルの社長室を目指して、一先ず途中の書庫に忍び込んだところだった。

 しかし、ダクネスは変な妄想をして頬を上気させ、めぐみんはめぐみんで窓の外を見ながら物騒なことを呟いている。もうやだ帰りたい。

 

 俺は扉の隙間から首を出して辺りの様子を窺う。……誰もいないようだ。

 

 「ダクネス、めぐみん。行くぞ」

 「な……も、もう行くのか?」

 「もう少しこの景色を眺めていたいのですが……」

 「黙れ行くぞ!」

 

 二人の首根っこを掴んで部屋から引き摺りだし、階段を駆け上る。

 

 「なあ、本当にマフィアなんかが襲撃してくんのかなあ……」

 「あんな強い組織がオレら狙うこととかあんのかよ?」

 

 「……!」

 

 社長室の前で、重装備の男が二人警備している。持っているのは短機関銃。……ダクネスとめぐみんが出れば殺られる。

 さてどうするか、と脳内で作戦を練っていると。

 

 「貴様らがこの街を薬で汚染しているのだな! 貴様らのような卑怯な輩はぶっ殺してやるっ!」

 「!?」

 

 暴言を吐きながらダクネスが二人の前に飛び出した!

 馬鹿野郎、と叫んで俺も続いて飛び出したが、……ほとんど意味は無かった。

 

 飛び出したダクネスに息を呑むも、すぐさま照準を定める兵の練度は中々だ。だが、ダクネスは怯まずに神速で二人に体当たりし、たったそれだけで大の男二人を気絶させてしまった。しかも短機関銃はぶっ壊れた。

 

 「……あいつの身体どうなってんだ?」

 「あれは人の形をした銅像だと思った方がいいですよ」

 「聞こえているぞ二人共! 私のことをなんだと思っているんだ!?」

 「「人の形をした銅像」」

 「うわああああああん!」

 

 ――と、こんなことをしている場合ではない。一刻も早く社長を殺さなければ。

 面倒だったので、ダクネスを助ける為に飛び出した時の勢いのままに社長室の扉を異能で破った。

 

 「チュウヤ、君の方が余程力があるじゃないか!」

 「これは純粋な筋力じゃねえよ、異能で強化してる!」まあしていなくても蹴破るくらいはできるが。

 

 「ダクネス、イノウとはなんなのか分かりますか? 私、昨日から気になっていたんですけど、聞く機会が……」

 「それは私も思っていた。何なのだろうな」

 

 ……背後から聞こえた声に、今答えている余裕は無い。仕方が無いので後で答えてやろう。

 はあ、と溜息をつき、社長イスに座って此方を怯えた表情で見ている社長に視線を据えたまま、

 

 「ダクネス、めぐみん。今から俺がすることに驚いたり、何か言ったりするんじゃねえぞ」

 「……?」

 

 二人が疑念を抱いている気配。まあいい。

 この二人のことは未だによく分からないが、堅気の人間だったことだけは確かだろう。そんな二人が、俺が"今からすること"を見た時の反応なんて大体想像がつく。前置きをしていても、多分『あんなもの』だろう。

 

 「よお、大企業の社長サン。よくもまあ俺達のシマを荒らしてくれたなァ?」

 「ひ……き、貴様は、ポートマフィア幹部の……!」

 

 わざとらしく靴音を立てて社長に歩み寄り、視界を遮るようにその眼前に仁王立ち。鼻先が触れそうな程の距離まで顔を近づけ、髪の毛を掴む。社長の額に脂汗が滲み、その表情は恐怖に塗り潰された。

 

 「少量ならまだ良かった。あの薬自体、効果は禁止されるほどキツくねェ。だが、一般人にまで出回りかけてるとなると見過ごせねェな」

 「頼む、金なら払う! ほんの出来心だったんだ――」

 「死ね」

 

 ぐちゃり。

 悪徳大企業の社長は、たった今、人智を超える強さの重力によってただの肉塊と化した。

 

 「「な……」」

 

 背後で息を呑む音が聞こえた。

 ……だから前置きしたのに。

 

 「ち――チュウヤ! 何故だっ、何故殺した!? 警察に引き渡せば良かったじゃないか!!」

 「そうですよ! ど、どうして……うっ」

 

 「甘いんだよ」

 

 俺の言葉に込められた静かな殺気に当てられ、ダクネスとめぐみんは口を噤む。

 コイツらは覚悟が足りていない。……確かに、恐らく他の土地からやって来て、突然マフィアに加入することになって。覚悟なんて大層なものは持ち合わせていないのだろうということは分かっていた。だがそれにしたって、この組織のことを理解していなさすぎる。

 

 「……軍警が来る前に退く。拠点に戻ったら、お前らが隠してることを全て話せ」

 「……!」

 

 とその時、ピコンとスマホが通知音を発する。ショートメールだ。

 送信者は――

 

 「……チッ、なんなんだよ一体……」

 

 『From:青鯖

  件名:探偵社とマフィアの合同任務について』




 次回はまた探偵社側になるかも。
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