この素晴らしい文豪に祝福を!   作:ぴんくのあくま

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カズマとアクアの相棒感が大好きです。太宰と中也がクールで最強のコンビだとしたら、この二人はお馬鹿で最弱だけど最高に楽しいコンビって感じがします。この回、書いててすごく楽しかったです。


第5話 このスキルバトルに隠匿を!

 朝日が煌めく魔都・横浜にて。

 

 「……これは想定外だなあ……」

 

 目の前で繰り広げられる"異能力では無い何か"によって行われている一方的な蹂躙に、思わず感嘆の溜息を漏らした。

 問題なのは、その謎の力……というよりも。

 

 「あの少年と女の子――」

 

 ごく普通の少年と、青い髪と目が特徴的な少女だ。

 異能者でないなら、一体なんだと云うのだろう。

 乱歩さんと話してみたが、乱歩さん曰く、「超推理で見通せない相手」らしい。何でも、あの少年のことを推理しようとすると、女の子の方から強い光が発せられたように感じるのだとか。……ちょっとよく分からないけれど、乱歩さんが云うのならそういうことなのだろう。

 

 佐藤和真。アクア。外見も名前も全く違うこの二人が、息ぴったりに戦えていて――その上、一人も殺さないまま無力化出来ているのは何故だろう。

 普段なら滞りなく回る頭が、今日はつっかえてばかりだ。

 

 「困ったなぁ……」

 

 さて、どうルートを組み立てていくか。

 

                 ◇◆◇

 

 爽やかな笑顔の裏に激しい怒りを潜ませた包帯男――太宰にひたすら謝っていると。

 

 「はい、こちら武装探偵社……はい? はあ、はい……」

 

 セーラー服姿の少女が受話器を取り、どこかからの電話に応じていた。最初は明るかった声が、返答を繰り返す毎に暗く沈んでいくのがここからでもハッキリと分かる。

 

 「ナオミさん、どうかしたんですか?」

 「……ええと。武装探偵社が、ある企業の港湾施設の警備を依頼されましたわ」

 

 白髪の少年……敦がナオミに問うと、ナオミは困ったような顔で首を傾げる。

 

 「なんでも、この企業は最近どこかの犯罪組織に目をつけられているらしくて。金に糸目はつけないから、明日の早朝五時頃から港湾の重要物資用倉庫を警備して欲しいそうですの」

 「犯罪組織に目をつけられるようなことをしてるのが悪いんじゃないのか?」

 「そうよそうよ、そんなヤツらは私の聖なるグーによって断罪してやるわ!」

 

 俺とアクアが好き放題言うと、ナオミはさらに表情を曇らせて。

 

 「それは私もそう思いますけど……そうもいかないんですの。この企業は国会議員との繋がりもあって、その分報酬は弾んでくれるでしょうけど、警備を断ったら探偵社のどんな悪評が広められるか分かりませんわ」

 「「……」」

 

 俺とアクアは顔を見合わせる。アクアの目が「この国とんでもないわね」と語っている。俺もそう思う。なんか、俺が住んでた日本とはスケールが違う気がする。

 

 「……ふむ。じゃあ私が適当に作戦立てとこうか」

 「へええー」

 

 言いながら、太宰がひらりと手を振って自分のデスクに着く。この組織の作戦参謀は彼奴なのか……なんか役割取られた気分。

 

 「ねえカズマさん、悔しい? 小手先のスキルと無駄にずる賢い頭が取り柄のカズマさん、役職取られて悔しい?」

 「ゼル帝」

 「うわああああああん!」

 

 「……で、貴様らの処遇をどうするかだが――」

 「待って国木田君。私良いこと考えたのだよね」

 

 長髪の男性の言葉を遮って、太宰が再びガタリと席を立つ。振り向いたその顔に貼り付けられた表情は、

 

 「明日の警備任務。その二人にここに置いて欲しいって覚悟があるのなら、それぐらいこなせるよねぇ?」

 「「……」」

 

 ねえ、自分の異能すら分からない怪しい異能者さん達、と。

 

 悪戯っ子と悪魔の中間のようなそれに、俺とアクアはバニルの姿を重ねていた。

 ……この世界、クソだわ。

 

                 ◆◇◆

 

 そして翌日。ニートはまだお眠の時間。午前五時。

 

 「えっと……太宰さんは無茶言ってたけど、僕達が何とかするから任せて!」

 

 とても強そうには見えない敦が薄い胸を張って微笑んだ。

 僕達、と言うと――恐らくは。

 

 「……何を見ているの」

 「え、いや、えーと……ナンデモナイデス」

 

 敦の隣に立っている、黒髪和装の小柄な少女も戦闘要員なのだろう。歳はめぐみんと同じくらいか。

 とても戦闘要員には見えない。……この組織、大丈夫か?

 

 などという考えは、戦闘が始まった瞬間に吹っ飛んだ。

 

 「おい、あれ武装探偵社じゃねえのか!?」

 「信じられねえ、昨日社長が殺されたからって焦り過ぎだろ!」

 「んなこたぁどうだっていーんだよっ!! 数で潰せえぇぇ!!」

 

 十数人の武装した男が、口々に叫びながら俺達目掛けて突っ込んできた!

 うわ、どうしよう。弓は無い。……ちゅんちゅん丸ならあるが、あれを人を殺さないように使うとなれば俺の技量では不可能だ。

 ふと横を見ると、携帯を持って足から先の無い仮面の女性を従えた少女と、肘から先、膝から先が白虎のそれと化した敦が身構えたところだった。

 これが異能か……スキル程の多彩性は無さそうだが、スキルより強力そうだな。

 

 しかしどうやって戦うか――手の内はあまり見せたくない、と思考を巡らせていると。

 

 「ねえカズマさんカズマさん。パーティの中で二人っきりで、こんなに本気の戦闘するのってあの時以来じゃない?」

 「……?」

 

 隣に立って杖を構えていたアクアがふと呟いた。俺の方を見て、ニヤリと笑う。

 

 「魔王の城に忍び込んだ時!」

 「ああ、あれか……」

 

 あの時は散々だったな。アクアが敵に嫌がらせをし、俺は敵のフリをしてパーティメンバーに嫌がらせをし。

 悪戯っ子のような表情を浮かべたアクアが、俺に支援魔法と芸達者になる魔法、最後に「ブレッシング」で駄女神アクアの祝福を授けてくれる。

 

 ……ああ、どうしてだろう。

 馬鹿で運が悪い、最低な女神。なのに、コイツといると――

 

 「ねえカズマ。未知の世界で、こんな状況でこんなに楽しいのってなんでかしらね!?」

 「さあな。俺もお前と同じ意見だ!」

 

 戦闘開始!

 

                 ◆◇◆

 

 支援魔法の力で強化された身体能力をフルに活かして一気に前線へ飛び出すと、

 

 「『クリエイト・アース』からの、『ウィンド・ブレス』っ!」

 「「なっ……!?」」

 

 はい、お馴染みの初級魔法目潰しコンボ。これで一気に二人無力化。

 しかし敵も熟練らしい。三人の男がそれぞれの銃口を俺に向ける。ヤバい、これは死んだかも。

 

 「『セイクリッド・クリエイト・ウォーター』!」

 

 ――それは、嘗て俺達にトラウマを植え付けた、最凶最悪の水魔法。

 その言葉が聞こえた瞬間、ああまた金が消えるのかと人命の心配より先に思ってしまった俺を責めないで欲しい。

 

 「何怯えてるのよカズマ。私だって威力調整ぐらいできるのよ?」

 「は……?」

 

 アクアが呆けた声でそう言って。俺がハッとして三人を見るも、三人はもうそこにはいなかった。

 正確に言えば、突如として現れた一点集中式の強力な水流によって、廃倉庫の外壁に叩きつけられて気絶していた。

 

 「お前……」

 「ほら何ぼーっとしてるの? いつもの小賢しいカズマさんはどうしたの!」

 「後でぶっ飛ばす!」

 

 ああ、ほらな。

 こういう時に役に立つコイツと。

 誰よりも馬鹿なコイツと。

 とてつもなくマイペースなコイツの隣で戦うのがこんなにも楽しい。

 

 「『バインド』!」二人の銃を纏めて拘束し、「『クリエイト・ウォーター』! 『フリーズ』!」別の二人を軽く窒息させる。

 ヤバい。これはヤバい。手の内どうこうとか言ってる場合じゃない。

 絶好調だ。楽し過ぎる!

 

 それからの俺は、アクアと位置を入れ替えながら敵を翻弄し続けた。

 

 「おい、そっちに行ったぞ!」俺が芸達者になる魔法で変えた声で敵に指示を出し。

 「よしこっちだな分かっ――ぐあっ!?」敵が方向転換した先で待ち伏せていたアクアのゴッドブローが炸裂する。

 

 知力が低いのなら、コイツが気持ちよく戦えそうな場に誘導してやればいい。そういう『空気』を作るのだ。

 

 「『ファイアーボール』!」威力が低いので軽い火傷しか負わせることができないこの魔法も、人間を無効化するだけならとてつもなく有用な魔法と化す。

 

 「カズマ、怪我は無い!? あるならヒールで治すけど!」

 「生憎ねぇよ悪かったな!」

 

 満面の笑みのアクアに、満面の笑みでそう返す。

 ……その時には既に、戦意のある敵は居なかった。

 

 

 

 この日、俺とアクアは晴れて武装探偵社の下働きとして寮に入れてもらえることになり、俺達は同室という事実を嘆きながらも一先ず安堵したものだったが。

 

 

 ……この一件が原因で、後からとんでもないトラブルに巻き込まれるとは思ってもいなかったのだ。

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