才能無くて首吊ったら美少女に憑依したけどこいつも才能無くて首吊ってた   作:小中高校道徳の成績5でした

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智秋視点です。


菜野乃至と言う人物

「菜野、ちょっといいか」

 

それは中間テストが終わってから次の週の月曜日。何度も誘ってやっと乃至ちゃんとお昼ご飯を食べる事ができてから一週間ぐらいの事だった。

 

難しい表情の先生に呼ばれる彼女。大丈夫です。と表情一つ変えずに立ち上がる。

 

「また乃至が先生に呼ばれてる」

 

「あれ? でもここ最近は呼ばれてなかったような」

 

「ここ最近どころじゃない。始業式から呼ばれてなかったな」

 

周りからそんな声が聞こえてくる。彼女は前々から問題児だと最初知ったときビックリした。

 

いつも元気で、暇さえあればアイドルの事ばかり。自習と言えば研究ノートを見直してテストがあれば一夜漬けで赤点回避。

 

その行動力は留まることを知らず、色んな事務所にオーディションを受けてはその書類関係や無断欠席には親や教員は頭を悩ませ、親が交通費を出さなければバイトしてたと言う人もいた。何よりその証明が持久力で彼女はシャトルラン100回を超す記録に持久走も4分切るに近いタイムを叩き出す。

 

それを聞いたとき、あまりに静かな彼女からは想像が付かなかった。

 

だから皆口を揃えて言う。 

 

 

『乃至は別人になったよう』

 

口を開けばアイドルしか喋らない。なのに、今の乃至ちゃんからは自らはアイドルを口にしない。

 

真逆だと。

 

乃至ちゃんの研究ノートはアイドル部の皆に取っては物凄く為になるものでマネージャーに良く誘われていたらしい。最新人気上昇中のこの学校一番の学生ユニット【レインスター】も彼女がいたからこそそこまでいけたとマネージャーに何度も誘っていたとの事。

 

 

 

でも、そこまで頑張ったのに自身がアイドルになれた話は一つも無かった。

 

どうして? と聞くと

 

「組んでもどこか合わない」

 

「乃至に釣られるとオーバーワークを起こしそう」

 

「レインスターぐらいだと実力不足」

 

「本人がプロにアイドルとしての魅力が足りないと言われてた」

 

 

 

「悪く言っちゃうと、才能が無いの」

 

 

 

信じられなかった。乃至ちゃんに魅力が無いなんて。だって、私はあんなにも目を惹かれてるんだもの。

 

 

 

 

蓋が閉じられた食べかけの弁当2つ。椅子が引かれた状態で次第に冷えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「菜野、中間テストなんだが、いや、カンニングを疑っている訳じゃないんだ。ただ、今まで赤点ギリギリだったお前がいきなりほぼ全ての教科で満点を取るなんて、その、確認というか」

 

本当に不正を疑ってるわけじゃないのだろう。けれども完全には信じられないのもあってか複雑な表情で普通にしている乃至ちゃんを見る。

 

ただバレそうなので直ぐに顔を引っ込めた。

 

「勉強しました。2週間」

 

「数学はちゃんと途中式まで書いて解けてるし、英文も長文問題を理解して書いてる。だから信じられるが、今までのお前からはどうも想像ができなくてな」

 

「アイドルを諦めた分時間が出来たんです。余裕でした」

 

「そ、そうか………す、凄いな。歴史以外満点なんて。どんな勉強をしたんだ?」

 

「公式も決まりも暗記しました。幾分時間はあったので、特に歴史は丸暗記するだけなので一夜で十分でした。間違えて覚えて点数は落としましたが」

 

「…………」

 

え!? 2週間でほぼ全ての満点! この学校のテストってムズいって噂で聞いてたし、噂通りだったのに!?

 

「………どうして諦めたんだ? あんなにも努力してたのに」

 

「努力したからです。才能が無いとわかりました。届きません。ならそんな物はさっさと捨てて別の道を進んだほうがよっぽど良いです。私を見てきた人なら誰だってわかります。そんな事は、むしろ今まで気づかなかった自分がどれだけおめでたかったのか」

 

「………正直才能が無いことは私も思っていた。だけど、努力している菜野を見て、そんな酷な事は言えなかったし、もしかしたらと思っていた。まだ一年ちょっとしか見てないが、長い間見た気分だ…………」

 

「ご迷惑をおかけしました」

 

「いや、教師として当たり前の事をしたまでだ」

 

「ありがとうございます」

 

「話を変えるが、2週間でここまで点をあげられるなんて、勉学の才能がある。どうだ? 別の道を探すためにも大学に行くのは」

 

「いかないです。もう見つけました」

 

「そうなのか!? それは」

 

「秘密です」

 

「秘密かぁ、気になるがまあ、まだ問いただす時期でも無いな。わざわざ昼休みにありがとう。本題のテストからも随分と離れた事を聞いてすまなかった。お詫びと言っちゃなんだがさっき自販機で当たりが出た奴だ」

 

「ありがとうございます。失礼しました」

 

 

乃至ちゃんが職員室から出ていく。私は壁越しに隠れて聞いていた。バレるかどうか不安だったけどバレずにすんだ。

 

「あ」

 

疑われる前に戻らなきゃ。

 

「どう思います? 乃至さんのこと」

 

先生方の乃至ちゃんの話題が気になって足を動かせない。

 

「……別人を相手にしてるみたいだった。諦めたって言うよりあれは無関心だ。落ちついたって言うより冷静だ。正直返ってくる返答の違和感が凄すぎて不気味に感じて何度も話題を変えたくなった」

 

 

 

 

………足を動かす。誰も彼も乃至は別人に変わってしまった。そう答える。

 

 

私には前の乃至ちゃんがどうだったか分からないが、多分想像しているのとは別人なのだろう。

 

 

 

 

 




歴史満点を逃した理由は世界が違う分世界が歩んだ歴史もまた違う。似てはいるが。
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