才能無くて首吊ったら美少女に憑依したけどこいつも才能無くて首吊ってた 作:小中高校道徳の成績5でした
今回は会話多めなので地の文は少なめです。
「…………ズズ」
「乃至ちゃんって良く食べるよね」
「運動してるからね。これでも量を減らしてる」
「それってアイドルを諦めたから?」
「うん」
教室の一角。俺は嫌いと宣言した相手と食事を共にしていた。
諦めが悪いことは俺が良く知ってる。智秋はまだ俺と友達になるのを諦めていない。だから数日で折れて一緒に昼の弁当を食っている。
もっとも学校が終われば無視して帰るが。
智秋の目を見る。少し不安な目をしていた。おそらくアイドル関連だろう。
私がアイドルを諦めた事が周知の事実になるにはたかが数日だ。そのタイミングでも一度切り出された。
だからその話は終わった。なのにまた切り出されたと言う事は理由は俺ではなく智秋自身。アイドル関係の何かの不安がその単語を出させたのだろう。
だけど俺には関係無い。だから適当に話を合わせる。
「でもまあ、全てを捨てるわけじゃない。今やってることは少なくとも経験が生きてくるからね」
乃至が残してくれたものは結構ある。体力。運動能力。周りに対しての行動力。声。アイドル研究ノート。ありがたく使わせてもらう。
「経験……か。そう……」
「そう」
「そう。それで、仕事で何かあったの?」
「え!?」
「図星だね」
「……うん。よく、わかったね」
「明らかに落ち込んでるからね。いつもの元気がない」
「…………ちょっとね」
「ちょっとだったら隠しきれないぐらい落ち込まないよ」
「ごめん。結構、かなり」
顔が下を向く。手に力が入って箸が少し曲がる。これ以上力を入れたら折れそうだ。
「それで、どうしたの?」
「実は、この前の仕事で大失敗しちゃって、全員で」
全員。4season'sの四人が失敗したって事か。まだ学生とはいえTVにでるプロのアイドルが一気に失敗するなんて、相当な事があったんだな。
前言撤回、興味が出た。
「今日放送する、江戸村の番組なんだけど、その文化紹介コーナーで出演したんだけど」
「間違えたとか?」
「ううん、皆で勉強して、リハーサルもして一個も間違えなかった」
一箇所も間違えなかった。それなら成功はしていただろう。なら何故失敗したと言うのだろうか。
「いや、練習の時点で失敗してた。それに気づいたのが収録時」
智秋の口からは大して悲惨じゃなさそうな事が語られる。
しかしそれは客観的に見てだった。直ぐにわかる。
どんな事でもマイナスなのは致命的になる。しかし、アイドルの場合はプラスでないと致命的になる。
普通では駄目なのだ。
それはアイドルをやる上で誰でもわかる。筈だった。
憧れは心において人の原動力になりやすい。なりやすいと言う事は影響を受けやすいと言うこと。
目標のレインボーステージに立っている存在であるラブマスターは彼女らに取っては当然憧れの対象だ。
対決なら全力以上を出せるだろう。共闘なら実力以上を出せるだろう。
だが共演だけは違う。
圧倒的上の存在であるラブマスターを前に憧れを持つ彼女らは、失礼のないように動こうとする思考が強くあるだろう。
紹介の説明はわかりやすく。下手に過激にせず安定に。安心に。憧れを前に空回りして恥を晒したくないと。
どの基準にもラブマスターに対する憧れが強く影響した。
強く強く。
それは緊張に表れた。
客観的に見ればラブマスター相手に緊張して固くなるもわかりやすく紹介してくれる頑張る子に見えるだろう。
失敗してないように見える。
だがそんな評価はアイドルじゃなくても得られる評価だ。
アイドルはキャラが立って初めて覚えられる。可愛く、美しく、華麗に、かっこ良く。『凄い』と思わせて初めて人目につく。そこでファンになるかどうか選択するのだ。人柄など、ファンを続けるかどうかに関わるだけ。
普通じゃないからこそ凄い。アイドルは輝く存在でなくてはならない。
安心安定を取り固くなってキャラが立ってない人を誰が覚えようとするのだろうか。
彼女たちはアイドルとして輝けなかった。僅かに出せた個性などラブマスターの前では意味もなく。
それを収録を終えた彼女達は、映像を見なくてもわかっていた。
プロデューサーはそれがわかっていたから恐れていた。だからこそ断ろうと思っていたが小春の悪目立ちがラブマスターのメンバーやプロデューサーに強く印象づけられ断れない状況を作り出してしまった。
だから頭を抱えていた。
勿論助言をする。
「あまりラブマスターに気を取られるな」と
しかし、無意味だった。それがこの結果だ。
収録が終ったあと、プロデューサーに頭を下げられた彼女達はただ、それ以上に頭を下げる事しか出来なかった。
わかっていたはずなのに防げなかった、策を練れなかった事に。
助言をもらっていた筈なのに、無意味にして大失敗した事に。
互いに不甲斐なさをぶつけても、反省の感情が大きくなるだけだった。
「ごめんね、嫌な気分にさせちゃって」
申し訳無さそうにする智秋。興味はあったが、俺に取ってはあまり関係無い内容だったので、適当に流すことに決めた。
しかし話が流れそうに無いので弁当の卵を箸で掴んで智秋の口に入れ込む。
「ムグ!?」
「話長い。食べないと昼休み終わるよ」
「ご、ごめん?」
俺の玉子焼きを食べる智秋はあることに気づく。
「この玉子焼き、何を混ぜたの? 甘くない」
「カツオ節のダシ汁」
「おいしい」
智秋は自身の弁当を見る。止めてた箸を動かして食べる。
「こっちの玉子焼きも甘くて美味しい」
自画自賛だった。
この回は元々10話辺りで投稿する予定だったけどやめてほったらかした奴なので半分ぐらい
ちなみに小春だけは説明のために脳内の殆どをもってかれキャラが完全に死んでました。