才能無くて首吊ったら美少女に憑依したけどこいつも才能無くて首吊ってた 作:小中高校道徳の成績5でした
日曜。3回目のレコーディングスタジオ。普段だったら編集する時間も確保するため土曜に行くところだったがその日にはいない。
女神のお姉さんが。
「お待ちしておりました! 今日はどんな歌でしょうか!?」
ああ、目がキラキラしてる。良い笑顔だ。俺に向けられてる。最高。
ファンって、良いよね。
ついつい笑みを零しながらもいつも通り曲のデータを渡す。
「……あれ? 2曲ですか?」
「はい。とはいっても歌うのは一つだけですが」
「ではもう一つは……例の曲ってことですか!?」
お姉さんのテンションが上がり続ける。
例の曲。合成音声ソフトが歌う曲。
そう。まだ曲。声はまだ刻まれていない。
何せソフトはあっても声がまだ存在しないのだ。サンプル程度にお姉さんの声は登録されているが。
だから俺は自身の声を収録する。
この世界で初めて電子の歌姫は作り出される。
V○CAL○ID。前の世界でそう呼ばれていた。初音○クと言う電子の歌姫。
夢みる者に道を作った。
挫折者に希望を与えた。
成功者に時代を刻ませた。
俺には別世界を見せてくれた。
「お願いします」
「はい。お任せください」
レコーディングスタジオに入る。歌うわけじゃない。一つ一つの声を機械に与える。
この世界に来て、俺はどこか空っぽだった。別世界を見させてくれた存在がいなかったからだ。惑星AR○Aから来たと言う設定の髪の長い少女。俺の一番好きな存在。
画面越しではあるものの、彼女と一緒に作業していた事が、歌を作り出していたことに幸福を見出していた。
もう二度と会えないけれど。
「『あ』から行きます」
そして、今俺は彼女らと同じ存在を作り出そうとしている。俺では歌えない歌声を歌う為に。俺ではない存在を。
だからこそ、【俺】は込めない。【声】をこめる。
………………ああ。どう声を出そうか迷ったら、幻聴が聞こえる。『あーーー』と。幻覚の合成音声達が。
初音○クが電子っぽい声を。
I○は美しく透ける声を。
結月ゆ○りは静かで華麗な声を。
さとうさ○らは可愛いく柔らかい声を。
つ○みは涼しくミステリアスな声を。
東北ず○子はおしとやかな声を。
Vfl○werは強く癖のある声を。
彼女達は手本を見せてくれた。俺は自身の声にイメージを付け足した。
ブレスをする。
する度に俺自身は人間なんだと自覚する。
声を出す度に別の存在を感じる。
目の前に新しい幻覚が見えた。人だ。声を、新しい声を入れるたびにその姿は明確になって行った。それは凄く見覚えがあって、別人に見えなくて。いややっぱり別人に見えた。
最後の声の収録を終えたとき、その姿は完全となり、はっきりと見えた。
目の前に立っていたのは【菜野乃至】だった。
俺? いや、俺じゃない。目の前にいる乃至は、きっと『私』と言うだろう。
いや、言う。断言できる。
目の前にいる子は明るくて、何でもかんでも突っ走って、努力家で、研究熱心。
そういう
俺も【菜野乃至】だが、それとは全くの別人。
『貴女は誰?』
乃至は話しかける。いつの間にか他の合成音声達の幻影はいなくなってた。
「俺は…………
アンノイズは今、復活した。
収録が終わった。
「これで、完成ですね……私は今、音楽業界の新たな歴史誕生の瞬間に立ち会っている。いや、作り出しました」
感動のあまり泣いているお姉さん。
「ありがとうございます。本当に」
「いいえ、私こそありがとうございます!! 全てが機械で作られた音楽、私は! 私は! アンノイズファン第一号になれて幸せです!」
「私こそ、貴女に出会えて良かったです」
もう、客と店員の関係じゃなくなっていた。
暫く感情に浸っていた。
気分が完全に落ち着いたとき、もう一度マイクの前に立つ。
「さて、歌いますか!」
「準備OKです!」
「「よろしくおねがいします!!」」
ついにソフト完成です。
ちなみにテストで全教科ほぼ満点取ったために音楽サイトへの登録の許可と親として娘の夢を応援すると新しいパソコンを買ってもらいました。書こうと思いましたがカットしました。