才能無くて首吊ったら美少女に憑依したけどこいつも才能無くて首吊ってた 作:小中高校道徳の成績5でした
「……日本………?」
楽音通り。通称【ジュエルストリート】と呼ばれるそこは、音楽の街だ。半分テーマパークにいる気分になる。左右を見渡せば楽器が売っている。レッスン教室。窓から見える店の中、ヴァイオリンを引いている。表通りは本当に大きい。車は通らない。通行禁止になっているからだ。裏通りを通っている。大きな通りではそこらでストリートライブをやっている。色んな知らない曲が飛び交う。ここには歌が殆ど無い。演奏がメインだ。
「ジュエルストリートに初めて来た人は皆そう言いますね。石レンガで作られた道、木造もあればレンガの店もあります。どこも防音完備! ストリートライブは予約優先ですが基本的に飛び入りでも充分。一番良い場所は流石に無理ですが。ここには沢山の音楽の原石が集まることから
ジュエルストリートの事を教えてくれる。ネットで調べた事よりも現地で詳しい人の説明のほうが圧倒的にわかりやすい。お姉さんは興奮気味にどんどん知識を披露してくれる。なのにわかりやすい。聴いてて心地が良い。前から思っていたけど本当に良い声しているな。流石は音楽スタジオに勤めていることはある。
「所で仕事の時間にこんなところに来て大丈夫なんですか?」
「まあ大丈夫です。次のお客様が来る前に戻れば。今日は二組しか予約してませんので」
俺を除けば一組か。なるほど。それ儲かってるの? スタジオの相場とか知らないから何も言えないけど。それ以外にも仕事はあるだろうに。ソフトとか平気で作れてるしこの人滅茶苦茶優秀だなぁ。尊敬する。
「着きました。ここですね。今は並んでないので、今の人の演奏が終わればすぐに交代できますね」
ピアノが置いてある所についた。外に、しかも石レンガの上に置いてあるなんて新鮮味がある。前世では動画でしか見たことないが、写真とろ。
ピアノを弾く音が聞こえる。すごく上手い人だ。俺よりも上手い。凄いな。聴き惚れる。オルゴールを聞こうとすれば必ず耳を澄ませるように、この音には聞こえれば強制的に耳を澄ませるような心地良さがある。楽しく、美しく、澄んだ音色が聞こえる。高貴な音、とでも言おうか、上品とでも言おうか。弾く姿は真っ直ぐに美しい。これ程の演奏がタダで聞けるなんていいな。
演奏が終わると拍手喝采。大いに手を叩いた人達はお金を各々の値段で籠に入れる。その籠も動画でよく見るサイズよりデカく、演奏者の自信、実力が見て取れる。小銭だけじゃない。札も当たり前のように入っていく。中には万札を入れるものまで。特に外国人が入れる割合が多い。
成る程、つまり外国人向けに演奏しなければいけないということか。だとすりゃどうする?
決まった。
いける。そう思いニヤける。仮面をつける。不思議そうな顔をするお姉さんをその場においてピアノに向かう。さっきの演奏者のおかげで客は集まっている。チャンスだ………そして同時に通行人の足も止めさせる曲。一瞬でも良い。聴くきっかけを掴めばよい。
椅子に座り、与えられる十分。最初はピアノにゆっくりと手を乗せ………ない。叩くように強く演奏を始める。
強く始まったその曲に客は驚いて一瞬足を止めた。
その曲は力強く、早く、疾走感のある曲。どちらかといえばエレキギター向けの曲だ。明らかにピアノで引く曲ではない。それもそのはず。本来なら
【○本桜】
………これが小説や漫画なら説明不要表現無しで伝わるだろう歌。例え違う世界であっても、その魅力は通じる!
通行人も足を止め始める。間奏のピアノも、その後のギターも全て弾き切る。久し振りに弾いた曲に俺自身も興奮し始めさらに激しくなる。
あえて2番を飛ばす。何故なら3曲の予定だからだ。それでもその曲の魅力は伝わった。
演奏が終わった瞬間、拍手は起きない。まだ持ち時間が七分ぐらいあるからだ。あえて間を起き今までの激しさはどこいったか静かに引き始める。ゆっくりと、少しずつ早めて本来の曲の速度に戻す。
【H○pes and Dre○ms】
大好きなゲームの曲。希望を感じさせる曲、決意を感じさせるような曲。一曲目を聞いた人達からすればまさに第二幕の盛り上がり。そして一段落の静かな曲調。片手で弾く。眠くなるような音に皆より耳を澄ませる。本当ならもうちょい続くがそこで終わらせた。
静かな演奏で終わらせ客の集中力を高めた状態にし、あえて口に出す。
「皆さん、知らない曲を聴いてくださりありがとうございます。耳がつかれたでしょう。最後にカノンを引いて終わろうと思います。そのまま集中してお聴きください」
足を止めて集中して聴いている人にしか聞こえないように言う。そして最後は前2曲と全く違う曲調を奏でる。
【カノン】
ピアノで奏でる美しき四重奏。ピアノ一台と一人の人間で奏でる。それはこの世界でも誰もが知っているパッヘルベルの曲。まさにヴァイオリンを演奏するために作られた曲。それをピアノで再現することは決して叶わない。だが、その美しさはピアノの弦にはあっている。【ピアノ】と言うたった一台からなるその音は何も拒まれず耳に入る。それは高貴なようで、癒やしのようで、静かな時間。
ストリートで演奏しているはずなのに、意識はその音のみに集中して、静かに聴いている。吹く風は音楽の美しい街並みを旅するかのように錯覚させ、感情という演奏を感じ、心のなかで自分だけの五重奏が響き渡る。それはホールでは絶対に聴くことのない思い出となる。
一人十分の制限をオーバーした。しかし文句を言う人は誰一人としていない。順番待ちの人でさえもだ。演奏を終え立ち上がり深々とお辞儀をする。その瞬間、ポツンとした手を叩く音を始めとして拍手の音が届く。そこにストリートではよくあるはずの言葉はない。ただただ拍手の音が響き渡る。
そこにあえて横に置いておいた箱を持って客の前に置く。再度深々とお辞儀をする。
「ご静聴、ありがとうございました」
ちなみに主人公はピアノの才能はとんでもないです。何故なら前世でボカロと同時にピアノもやっていました(電子ピアノ)。カゲプロで有名なじんさんも演奏は自身でやっていましたので憧れからです。あとまらしぃさん。私も大好きです。
〜追記〜
上記の後書きを修正しました。友人いわくキーボードとピアノは似ていると言っていたがよくよく考えたらサッカーでもスタメン取れるような奴だから感覚派なんだろうな……イケメンになりやがって羨ましい!
楽曲コード
131-0188-9
004-6473-2
7E5-0472-3