才能無くて首吊ったら美少女に憑依したけどこいつも才能無くて首吊ってた   作:小中高校道徳の成績5でした

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初めてのレコーディング

高そうなマイクが目の前に設置された密閉された部屋。たった数メートルにも関わらず室外と室内の言葉を繋ぐには機械を経由しなくてはいけない。真横には大きな窓がありそこから女性が一人営業スマイルで俺を見ていた。

 

 

 

 

「初めてのレコーディング、緊張しますか?」

 

「いいえ、緊張はありません。ただ、言うとおりどれも初めてで、一人でできれば良かったんですけど」

 

「高校生には厳しい値段ですからね。スタジオが初めてでしたら一度収録する前に発声練習と、好きな歌を歌うのはどうでしょうか? カラオケとは感覚が違って最初は上手く行かない方が多いですので」

 

「わかりました」

 

カラオケ機能があるようだ。だけど感覚が違うのは確かだろう。まず雰囲気や目的が違う時点で心づもりが違う。それは歌に影響するだろう。

 

にしてもレコーディングスタジオって録音エンジニアがいるんだな。ありがたい。キレイなお姉さんだ。女性の歌声の感覚はよくわからないから色々教えてもらおう。ついでにセルフでできるようになろう。金が無い。

 

「あ〜、あ〜あ〜あ〜あ〜あ〜」

 

v〇vyと同じ発声練習をする。意外と透き通る。声が良く出る。強く、弱く、高く、低く、音域が広い。とても強弱がつく。アイドルを目指すうえで努力してきた賜物だろう。

 

「よし」

 

カラオケ機能で好きな歌を歌う。

 

「……………」

 

この世界の曲、知らないや。

 

「アカペラで歌います」

 

「アカペラで、ですか?」

 

「はい。演奏が入ると、カラオケ気分になってしまいそうですから、私が歌いたいのは自分の、世に出す曲なので。自分の歌だけを聴かせたい気分で行きたいです」

 

「わかりました」

 

俺の好きな歌。電子の世界に囲まれた、自分もその世界に立ちたいと思えた歌。無機質で囲まれた世界。でも、命が吹き込まれた音楽。

 

【初〇ミク〇消失】

 

ブレスをする。

 

「【楽曲コード書くの面倒なので頭の中で再生してください】」

 

とても早く良い滑舌を要求される歌なのに自身の耳で自身の声を、一字一句聞き取れた。歌いきった。自身の歌は自分でも歌うからたまにカラオケに行っていたが、それを含めてもここまで完璧に歌えたのは初めてだった。気持ちが良い。ビブラートもコブシも出せるだろうがあえて使わない。ただ音階をなぞった歌い方は自身でも無機質さを感じる。

 

合成音声ソフトでは調教して人が歌っているようにする人もいるが俺が好むのはその無機質さだ。まるでロボットみたいで、不気味さが残る。でも、強弱のある歌い方はまるで心があるように。機械に命を吹き込むイメージ。

 

 

「すぅ、はぁ」

 

一度深呼吸をする。歌いきったところで空気の行き来を活発にして酸素の少ない肺が安心するかのように腹の力が抜ける。

 

 

今ので乃至()の歌の感覚は掴んだ。今度は自身の歌だ。録音エンジニアのお姉さんに曲を流してもらおうと横を向くとポカーンとしていた。

 

 

「あの、曲を流すのをお願いしたいのですが」

 

「え、ああ。ごめんなさい。初めて聴く曲でしたので、あと、何というか、失礼な事ですが、人が歌ってないというか、そんな感覚に襲われたというのでしょうか」

 

「それが聞けて嬉しいです」  

 

ぽかんとした顔は変わらず理解はしきってないが少なくともそういう歌い方を俺はしたんだなと言うことは理解してもらえた。

 

お姉さんは一度首を振って切り替えて営業スマイル。ではなかった少し楽しみにするような顔で準備OKですか? と聞いてくる。俺はOKですと返す。

 

 

曲が流れる。その演奏はまるでただ鳴らしているだけ。いや、音を置いているだけと表現したほうが正しいのだろうか。繋がらない独立した音達が集まって一つの演奏を作り出す。一つ一つが独立してはいるがその音が入るタイミングは一寸の狂いもなく完璧で繋がっているようで繋がってない、音楽だというのに楽が感じられない無機質と言う違和感が耳に妙に残る。

 

そこにまるでただ音階をなぞって歌っている少女の声がその無機質感をさらに加速させ、まるでロボットのようだった。でも歌声だけは音が独立してなくて繋がっており、演奏してる機械達に囲まれて歌っている少女の姿が見えてくる。

 

 

 

 

 

少女は機械に音楽を教えられた。だから音階をなぞることしか知らない。それでも楽しくて、つい気持ちが高まって、その歌声には強弱が生まれる。その強弱を機械たちは学習して演奏に強弱をつけ始める。

しかし、その機能に限界があるのか強弱を付けるたびに音の一部が不穏な電子音に代わりその演奏は異質に感じる。それでも少女に取ってはそれがおかしいとは思わず楽しく歌い続ける。

 

少女はビブラートもコブシもフォールもしゃくりも知らない。機械は音と音の代わり、繋ぎをすることはできない。

それなのにその歌は楽しそうで無理矢理強弱をつけてる機械には心があると感じる。

 

 

そんな奇妙なライブは無機質なのか、感情豊かなのか、どちらなのか、もしかしたら両方なのかもしれないとその矛盾を聞いてる人たちは抱えるだろう。しかし、少女はきっとそんな事を知らないで次の歌を歌うだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

残り時間約20分。take20以上。納得のいく歌が出来上がった。

 

 

 

題名

 

【誰も知らない音楽会】

 

 

 




前世からの曲ですかスペック不足が原因で結構無理矢理な演奏になってますがむしろ世界観にあっていたので乃至本人は出来に満足してます。
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