才能無くて首吊ったら美少女に憑依したけどこいつも才能無くて首吊ってた 作:小中高校道徳の成績5でした
弗愛高校アイドルブース。何故【部】ではなく【ブース】と名称が使われるのか。その理由はそこに足を踏み入れれば誰もが納得する。
一棟丸々アイドル活動の場として与えられている。それだけじゃない。外や屋上にはステージが用意されていた。
ふと落ちていた去年の文化祭のパンフレットを見てみれば、2つ並んでいる体育館は連結できる作りになっており大きなステージになる。
見に行くことはあるのだろうか。
「ここが見学できる場所だよ」
仮ステージ室と書かれたその場所は開けば都会の体育館程の広さがあり、出入り口がある面以外の壁が鏡張りになっている。その中で複数のユニットが音楽とともに汗を流す。
俺達と同じ鏡のない面にはギャラリーが出来ており、ただのファンなりに必死にメモ帳にペンを擦りつけたり、休憩に水筒を片手に座り込む人達もいる。
その人達が見ているのは同じ生徒でありながらその温度差は凄まじくこちらに熱気を飛ばすほどに本気で踊って歌っている、アイドルをやっている人達。
観客がいる中での練習。自分達の必要な音以外の雑音がよく交じる空間で、彼女達の感じる空気はユニット別に用意された部屋とは全く違う。ミスをしたらなかった事には出来ない。
そのガラス張りに映る自分達と
仮とはいえステージに立つ者として神経が研ぎ澄まされ、その集中力と完成度は高く、他の音楽は一切聞こえてないのか動きに全くブレがないのが見て取れる。
繰り返されるリハーサルのような空間でまた一人感化されて、今までの笑顔が消える。彼女のその目は文字通り炎が宿ったように紅く、彼女達の世界を真剣に見ていた。唯一彼女達と立場が違う人間。
その一人がただそこに立っていた。それだけでこの空気を一点に集めてしまう。
偶然俺の隣にいた一人がその紅い目に気づいて呟いた。
「4Season'sの智秋さんだ」
様々な音楽が飛び交う中でその【言葉】は囁かれたにも関わらず一つのユニットの音楽を止めた。
「……本当に智秋さんだ」
音楽を止める原因となった足を止めた一人の生徒が一瞬にして足の自由を奪われたかのようにこちらへと歩き出す。
彼女のファンだ。
「あの、智秋さん、ですよね。どうしてうちの学校に」
「今日転入してきたの。ごめんね、レッスン中だったのに」
自分の為に中断させてしまった事に対して申し訳無さそうに言う。しかし、彼女のファンだと告げる一人が自身のメンバーに彼女のことを伝えるとその申し訳無さを消すほどに目を輝かせた。
ここのユニットは言わば学校と言う安全圏にいる代わりにマスメディア露出もあまりない。悪く言えばアマチュアアイドル。しかし智秋だけは違う。社会と言う人生の根幹に関わる所で活動している言わばプロアイドル。
当然質問攻めが始まる。何故ここに、ファンです。アドバイスお願い。そういった内容。
「あの、本物のアイドルってどんなふうに歌ってるんですか? 見てみたいです!」
一人が思い切った要求をする。必然にも空いている場所がある。失礼承知で深々と頭を下げる女の子。期待するメンバー達。
何も言わず智秋は笑顔で横を通り過ぎた。
「このCDプレイヤー借りますね」
自身のスマホと接続して音楽を流す。そして彼女が歩き出した瞬間、その場にいた全員の目を奪った。
何かを失って何かを悲しみ、それでも幸せが目の前にある。楽しくて、時間が流れる。
彼女の表情は確かに楽しそうだ。しかしどこか物寂しげで、真っ直ぐ前を向く姿はどこか光にすがるようで、少し角度がずれれば寂しく、何かを探していた。
落ちていく葉っぱ、色づいた紅葉たちは季節早しと変化を続ける。
アイの歌。
そう歌詞が聞こえる。誰かと過ごした日々。幸せが風のように流れ枯れ葉を飛ばし髪飾りの様に頭に残る。
急いで走っても、どこへ行っても、音を立てて少しずつボロボロになっていく葉っぱは時間が経つに連れ薄れていく思い出に重なる。
しかし、その葉っぱの名前を覚えている限り忘れることのない記憶。
どこかで秋霖のように激しく流れる感情が漏れ叫ぶようにその歌を歌う。
けれどもたどり着いた場所の紅葉は燃えるように赤い。それは美しい物で、いつか落ちると分かっていても、彼女の心を埋めるものでは無くとも、少なくとも今は明るい色だってことを教えてくれた。
秋のように景色の変わり続ける、感情の表れ。
歌が終わっても、仮ステージ室は暫く彼女の空気のままだった。
全員が智秋の歌から感情を貰っていた。それは俺も例外では無かった。
なおこの後直ぐに智秋を置いて帰ったもよう。
はあ短くなんなかった次回こそみじかくする。