とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一〇二話、投稿します。
次は一一月二八日日曜日です。


第一〇二話:〈昼飯休憩〉で一息を

「垣根!」

 

垣根が真守との合流地点に向かうと、垣根に気が付いた真守は嬉しそうな顔をしてパタパタと垣根に駆け寄る。

 

「あ? その男は?」

 

垣根が気になったのは真守と一緒にいた黒スーツの男だった。肩からはバカでかい保温ケースを()げており、垣根にぺこっと綺麗なお辞儀をした。

 

「伯母さまのボディーガードだって。私を迎えに来てくれたんだ」

 

「ボディーガード? ふーん、やっぱすげえ家なんだな」

 

垣根が真守の説明に納得していると、そこに黒スーツの男と一緒にいた深城と林檎が話に加わる。

 

「垣根さん垣根さん! 真守ちゃん凄かったよぉ! ビデオ撮影したから後で見てあげてね!」

 

「垣根、私が撮ったんだよ」

 

はしゃぐ深城の隣で林檎が得意げな顔をしているので、垣根はふっと柔らかく目元を緩ませてポン、と林檎の頭に手を置く。

 

「そうか、よく頑張ったな。……で? 肝心のお前の伯母はどこにいんだ?」

 

「喫茶店で場所取って待ってるって。ボディーガードさんから聞いたんだが、上条の両親とか美琴と一緒らしいんだ。……垣根、行こう?」

 

真守は遠慮がちに垣根のジャージを引っ張って告げる。

その顔は若干緊張していた。

そりゃそうだ。

真守はこの前伯母に初めて会ったため、まだまだ緊張する相手なのだ。

垣根も深城も真守の伯母は写真で見たから知っているには知っているが、アレは少し若い時だったし、伯母がどんな人なのか、今どんな外見をしているのかまったく分からない。

そのため垣根も若干緊張しており、深城もどことなくそわそわしている。

何せ大事な女の子の身内なのだ。緊張するに決まっている。

 

「……会ってくれるよな?」

 

だが自分よりも緊張している様子の真守を見たら垣根は冷静になってきており、真守のことを安心させるために、林檎の頭を撫でていた手を真守の頭に置いて安心させるようにそっと撫でた。

 

「会うに決まってんだろ。大丈夫だ、心配すんな。ちゃんと挨拶しなくちゃいけないもんな?」

 

「うん。垣根や深城、林檎のことを大事な人だって伯母さまに紹介したい」

 

真守がはにかむように告げるので垣根はそっと目を細めて柔らかく微笑んだ。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

真守がアシュリンと合流して席に着くと、垣根と深城はアシュリンの前に座り、林檎はアシュリンの隣に座った真守の隣にちょこんと座った。アシュリンも真守と同じで小柄で、その隣に林檎が丁度すっぽりと収まったからだ。

 

「初めまして。アシュリン=マクレーンです。よろしくね」

 

そう挨拶をして来たアシュリン=マクレーンの第一印象は場数を踏んだ歴戦の猛者だった。

貴婦人として完成された雰囲気を(まと)っているが、ただの綺麗な貴婦人ではなく、あらゆる舌戦(ぜっせん)を繰り広げて勝利を手にしてきたようだった。

確かに自分が感じた雰囲気のままであれば、真守の事を第一に考えてマクレーン家の実害が出ても舌戦で勝利して周囲を丸く収める事ができそうだ、と垣根は安心する。

 

「垣根帝督です」

 

「源白深城って言います」

 

「杠林檎、です」

 

「あらあら。ご丁寧にどうもありがとうございます。ふふっ真守ちゃんの大事な子たちに会えてうれしいわ」

 

アシュリンは垣根たちを見つめてにこにこと微笑む。その隣で真守はもじもじと内ももを()り寄せて気まずそうにしており、そんな真守を林檎はじーっと見上げて、真守の横っ腹を真守が落ち着けるようにそっと撫でていた。

 

「じゃあ当麻くんが来るまで待ちましょうか。そう時間はかからないそうだし」

 

アシュリンはそこで後ろに座っている上条一家の上条刀夜と上条詩菜に笑いかける。

 

「すみません、ウチの当麻が遅くて。御坂さんも申し訳ありません。もうすぐ来ると思うんですが」

 

「いえいえ気にしないでください。問題ないですよ」

 

上条一家の隣には御坂一家が座っており、御坂美琴と恐らく美琴の身内の女性が座っており、美琴の身内がそう答える。

 

「……それにしてもここまで似てるのか。そっくりじゃねえか」

 

「ええ。髪の色一緒にしたら見分けが歳以外つかないんじゃないかしら……」

 

黒髪と銀髪、そして成熟具合以外はそっくりな真守とアシュリンを見つめて垣根が思わず(こぼ)すと、それに同意したのは美琴で、自分も自分でそっくりなのにそっくりすぎる真守とアシュリンを見つめながらごくッと(つば)を呑み込んだ。

 

「そうだよね、本当にそっくりだよねえ。真守ちゃんが二人いるみたい……銀髪も銀髪で良い……!」

 

「朝槻ってもしかして分裂して生まれたの?」

 

深城と林檎も真守とアシュリンを見つめながら呟いており、似ていると言われた真守は、嬉しいが恥ずかしくなってしまって柔らかく笑いながら(うつむ)いた。

 

「うふふ。似ていると言われて本当に嬉しいわあ。……I'm glad, Didn't look(あのクソ野郎に真守ちゃんが) that such a jerk.(似なくて本当に良かった)

 

((今なんか腹黒さが出た気がする))

 

他のテーブルに座っている美琴にはアシュリンが小声で呟いた英語が聞こえなかったが、がっつり聞こえた真守と垣根は心の中で同じことを考えて固まる。

 

「おう当麻! こっちだこっちー」

 

真守と垣根がアシュリンの裏の顔に硬直している中、上条刀夜は喫茶店に入ってきた自分の息子である上条当麻とチアガール姿のインデックスへと手を振った。

 

「あらあら刀夜さん。そんな大きい声を出してはいけませんよ」

 

「おう、父さん……い!?」

 

上条は刀夜に気が付いて手を()げるが、その手前に座っている真守とアシュリンに目がいって驚愕する。

 

「に、似てる……! 全世界に紹介されたら秒で分かるレベルで似てる……!」

 

「うふふ。あらあら、真守ちゃん嬉しいわねえ」

 

「う。……嬉しいけど、やっぱりなんかむずがゆい」

 

上条の驚愕にアシュリンが嬉しそうに微笑み、真守は照れて顔を赤くする。

 

「しっかし、よくこんなところ見つけたなー。朝槻の身内の方に紹介してもらったのか?」

 

「いやいや。そちらの方が教えてくれたんだ」

 

ちょこちょこと後ろを着いてくるインデックスと一緒に、上条が刀夜に近づきながら声を掛けると、刀夜は手のひらを向けて出して、自分たちの隣にいるテーブルを見るように上条を(うなが)した。

 

「御坂です」

 

刀夜が促した先にいた女性がニコッと笑いかけてくるので、上条は美琴を一瞥(いちべつ)もせずにぺこっと頭を下げる。

 

「そうですか、どうもありがとうございました。あーお腹ペコペコだー、」

 

「ちょっとアンタ! 何で私のことだけいっつも検索件数ゼロ状態なのよ!」

 

「ああいや、流れ的にこんなもんかと」

 

思いっきり無視された美琴がテーブルにダァン! と手を突いて立ち上がると、上条は笑って告げた。

 

「こっこんなもんじゃないわよ! アンタの周りに自然な流れなんてあるもんか! そもそも、アンタのそばにいつもくっついてるこの子はどこに住んでる誰なの!?」

 

「誰って、そりゃお前──」

 

美琴がギッと睨みつけたインデックスを見ながら、上条はそこで言葉を濁した。

言えない。

実は男子寮の一室で女の子を(かくま)っていて、一つ屋根の下で生活しているなんて純情少年上条当麻さんには言えない。

 

「そうだぞ当麻。言われてみればその子は誰なんだ? 泊まりがけで海へ行った時にも一緒についてきていたが。海の家では父さんたちの質問もうまくはぐらかされていたし」

 

「う、海って! と、とととと泊まりがけで海ってアンターッ!?」

 

上条が返答に困っていると刀夜が爆弾発言をして美琴が大袈裟に慌てる。

そんな美琴を見て、インデックスはムッと口を尖らせて顔をしかめた。

 

「かくいう短髪だって、どこに住んでる誰なの? とうまのガールフレンドかなにかなのかな?」

 

「えっ!? い、いや、別に私はこんなのと何かあるわけじゃ……」

 

西洋人なインデックスが至極真っ当な表現で問いかけると、東洋人の美琴はその表現に若干の違いを感じて先程とは違う意味で慌てる。

 

「とうまの学校の応援にも来てたよね。確か『ぼうたおしー』の時」

 

「ちがっちょ、黙りなさいアンタ!!」

 

「あらあら青春ねー」

 

美琴とインデックスがバチバチにつばぜり合いをするラブコメ的展開を見ていたアシュリンは柔らかく微笑んで、頬に手を当てて微笑む。

 

「青春も確かにいいけれど、そろそろご飯にしちゃいましょう。えっと、お名前は上条当麻くんで良いのかな?」

 

御坂の身内の女性が自分に笑いかけてくるので、上条は頷きながらも問いかける。

 

「そうですけど。あの、そっちは御坂のお姉さんか何かで?」

 

「ううん。私は御坂美鈴。美琴の母です、よろしくね」

 

御坂美鈴の一言に、場は一度沈黙する。

 

「「HAHAァ!?」」

 

声を上げたのはインデックスと上条だけだったが、真守と垣根、その他諸々はびっくりしすぎて声を上げることができなかった。

 

「だ、だって先程は大学がどうのこうのって言っていたじゃないですか!?」

 

「ええ、ですから近頃になってもう一度学び直しているんですよ。この歳になって色々分からない事に遭遇できるっていうのも結構刺激的なのよねー」

 

刀夜が慌てて美鈴に問いかけると美鈴は笑顔で自分の状況を説明すると、アシュリンがゆったりと上品な雰囲気を(まと)ったまま美鈴に声を掛けた。

 

「あら。雰囲気的に年齢が近しいとは思っていましたが、やっぱりお母さまでいらっしゃったのですね」

 

「ね、年齢が近いって……?」

 

上条が微笑んでいるアシュリンの言葉に嫌な予感がして呟くと、そこで刀夜も嫌な予感がして上条に続けて声を上げる。

 

「ま、マクレーンさんって真守さんに『おばさま』と呼ばれていましたが、姪である真守さんと年が近い『叔母』じゃないんですか!?」

 

「わたくしは真守ちゃんの母の姉ですわ。しかも一卵性双生児の」

 

「「そっちの伯母なの!?」」

 

アシュリンの言葉にインデックスと上条が再び叫び声を上げて、事情を知らなかった人々は驚愕する。

 

「まあ……言われてみればウチだってそんな感じなんだし、わざわざおかしいと叫ぶほどの事でもない……のか?」

 

上条は刀夜の隣に座っている若々しい詩菜をちらっと見つめながら呟く。

すると、隣に立っていたインデックスが眉を跳ね上げて叫んだ。

 

「おかしいに決まってるんだよ! とうまの周りには『こもえ』とか『しいな』とか不自然に若い大人がたくさんいるけど、こんなの普通に考えたらありえないもん! 何なのかな、この若さいっぱいの世界は。ここはピーターパンが案内役を務める子供たちの楽園なの!?」

 

インデックスが思わずツッコミを入れる中、一同は自己紹介が終わりそれぞれ昼食の話になる。

 

「じゃーん。今日のメニューはライスサンドです。あら、少し形が崩れてしまっているわね」

 

上条宅は詩菜が作ってきたお手製のお弁当で、インデックスはそれを見て目を輝かせる。

 

「で? ママは何にするの?」

 

「何も頼まないわよー。ほら、私だってちゃんと弁当持参してきたんだぞ。どうよ美琴、これってちょっと母親っぽくない?」

 

その隣で美琴がメニュー表を手繰(たぐ)り寄せながら美鈴に問いかけると、美鈴はバッグをごそごそと探りながら得意気に告げる。

 

「母親っぽいんじゃなくてちゃんと母親してくれないと困るのよッ! で、昼食は何を作ってきたの?」

 

「へっへっへー見て驚くんじゃないわよ?」

 

美鈴は得意気にしながらバッグから次々に食材を取り出す。

各種チーズに白ワイン、平たい丸い形状の鍋、そして小型ガスコンロ。

 

「じゃーん! 今日のメニューはチーズフォンデュー!」

 

「学園都市に危険物(プロパンガス)なんか持ち込んでくるんじゃないわよ!」

 

美琴は声を上げながらスパーン! と美鈴の頭を手ではたく。

流石の美琴も能力者ではない母に電撃を浴びせてはならないという分別が付いているらしい。

 

「うわぁー娘にぶたれたー。……もう、私がなんでこんなに大量の乳製品(チーズ)を持ち込んできたと思ってんのよ。小さなお弁当でチマチマ食べても育って欲しいところに栄養が行き渡らないでしょう?」

 

「なっちょ…………。育つとか大きくなるとかって、いきなり何の話を始めてんのよ!!」

 

美琴は美鈴の言葉に控えめ過ぎて絶壁な胸を見降ろしてから顔を真っ赤にして胸を押さえて叫ぶ。

そんな美琴を見て美鈴はにやにやと笑う。

 

「あらーん? 何の話かしらーん? 私は骨の健康を考えてカルシウムを摂りましょうって言っただけなんだけどー……もしかして、美琴ちゃんてば他にもどっか具体的に大きくなりたいトコロがあっるのっかなーん? そもそもなんで大きくなりたいって急に考え始めちゃったのかにゃーん?」

 

「だっ黙れバカ母!!」

 

美琴は美鈴のイジりに大声を上げる。

その横で刀夜が美鈴の大きな胸に見惚れていると、詩菜が笑顔のまま刀夜を見つめて、刀夜はそれに気まずさを感じて目を()らした。

 

上条はそんな二人の前でちらっとインデックスの胸を見つめてから、

 

「いっぱい食べたら大きく……か。なるといいよなぁ」

 

と、ぽそっと呟き、インデックスの怒りを買った。

 

「とうま!!」

 

インデックスは大口を開けて上条に噛みつこうとするが顔を真っ赤にして俯く。

先程インデックスは上条に着替え現場をいつものように(のぞ)かれた際に、いつものように怒って頭に噛みつこうと思ったら誤って頬にキスするかのようにかぶりついてしまったのだ。

 

そのことが頭から離れずにインデックスがわなわなとしている横で、アシュリンは笑顔のままくるっと真守を──正確には女性の理想サイズのふくよかで形の良い胸を見つめる。

 

「そういう真守ちゃんは胸が大きいけど、それは学園都市の力かしらー? ウチの家系はあの子も含めて控えめなのに。とても興味があるわぁ?」

 

「いや、その……ちょっと色々事情があって……や、ヤバい。確かな圧を感じるぞ……ッ!?」

 

ないわけではないが真守と比べると明らかに劣るアシュリンの控えめながらもふっくらとした胸を見ないように目を泳がせた真守は、アシュリンから放たれる黒いオーラを感じてダラダラと冷や汗を流す。

 

言えない。『実験』の弊害(へいがい)で成長してなかったから女性の理想サイズ(自分の願望含む)まで成長させたなんて自分の胸にコンプレックスを持っている人間に言えない。

 

アシュリンににっこり責められて焦っている真守がそれでも楽しそうにしているので、垣根と深城は柔らかく目を細めて、林檎は楽しそうに控えめに口角を釣り上げてその様子を見ていた。

 

「まあその追及は後にして。ご飯にしましょう」

 

アシュリンは姪っ子をいじめるのをやめて、机の横に置かれていたボディーガードがここまで運んできた保温ボックスの蓋を開けながら告げる。

 

中には大量の高級弁当が入っており、高級フレンチや中華など、和洋折衷(せっちゅう)色々入っていた。

 

「真守ちゃんたちの好みが分からなかったから、わたくしが学園都市で気に入ったお店の料理を取りそろえたの。食べたいもの食べてね」

 

「どれも学園都市有数の高級レストランだな。流石ご令嬢……」

 

「……私の家ってとっても裕福なんだなあ」

 

アシュリンが次々とテーブルの上に置く弁当につけられた店名を見ながら垣根と真守は思わず呟く。

 

「ご飯を食べたら少しお散歩しましょう。真守ちゃんと二人っきりで学園都市の中を歩きたいわ」

 

「? 分かった」

 

アシュリンの提案に真守は小首を傾げながらも素直に頷く。

 

(ここで話せねえってことは、魔術とか家の話すんのか。まあ二人じゃなきゃやりづらいだろうし、ここはカブトムシで見守っておくか)

 

垣根は次々にテーブルに並べられていく高級料理に目を輝かせる深城と林檎の前で、心の中でそう呟き、食事を始めた。

 




真守ちゃん久しぶりに登場です。
アシュリンと真守ちゃんの胸の話はしておきたかったので満足しました。

ちなみに超電磁砲だと、昼休憩の時はソファタイプのテーブルに座っているのでそっちを起用しました。インデックスの方は最初から座れる人数が決まっているので、そしたら色々面倒だな、と思って超電磁砲の方にしました。

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