次は一二月一日水曜日です。
真守は夕暮れの中、最後の競技が終わって夜が
深城たちに会いたくなかった。
垣根にはもっと会いたくなかった。
だからクラスメイトが作り出すグループとグループの間に入って一人で歩いていた。
あの後。
真守はオリアナ=トムソンの心に傷が残らないように処置をして土御門に身柄を渡した。
オリアナ=トムソンの身柄を受け取った土御門は冷静で真守に必要以上のことは聞いてこなかった。
真守はオリアナの記憶を読み取り、リドヴィア=ロレンツェッティが学園都市内にいないこと、そして学園都市の外にある『
そしてその『
土御門やステイルは後始末をするとその場を後にして、上条は声を掛けて欲しくなさそうな真守に『とりあえず姫神のことは任せておけ』と声を掛けて姫神のもとへと向かった。
垣根とは一言も話さなかった。
そしてそのまま別れて、真守は最後の競技へと向かった。
(何がダメだったか言ってくれないと分からない)
自分が遠くへ行かないように必死に
(最低限のことは守っていたのに、一体何が悪かったんだろう)
「朝槻さん!」
真守がぼーっと考えて歩いていると、突然声を掛けられた。
そこには垣根と同じ学校の生徒が三人立っていた。
「あの、少し時間いいですか?」
話しかけてきたのは真ん中に立っていた少年で、少し気弱ながらも意を決している様子が見て取れた。
「…………うん」
真守は意を決した少年が何をしようとしているか察して、頷いた。
少年に付き添っていた二人とは公園の入り口で別れて、真守は少年に連れられて公園の中を歩く。
そして少年はピタッと止まって真守を真正面から見つめた。
「大覇星祭の選手宣誓で
真守の予想通り、少年は真守に恋人になって欲しいと告白してきた。
一目惚れ。
それはその人のことを何も知らないのに一目見て気に入ってしまったということだ。
その感情にやましいものなんてない。一目惚れとはそういうものだ。
だが一目惚れでは朝槻真守がこれまで行ってきた悪事の数々を測ることなどできない。
自分がここで人を殺したことがあると言ったら、きっとこの少年は自分を怪物だとでも言わんばかりの目で見つめるだろう、と真守は思う。
真守が先程も他人に死んだ方がマシと思わせるような苦痛を与えて、それなのに何の
目の前の少年のように、垣根も真守が過去、どんなにひどい怪物だったか知らない。
知っているのはずっと真守のそばにいた深城だけだ。
深城は実験に連れて行かれる人を真守が見殺しにしようが、自分の『知識』の
深城は朝槻真守の全ての罪を
でも垣根はそれを聞いたことしかなくて。目の当たりになんかしていない。
「ごめんなさい」
真守は頭をしっかりと下げる。
一目惚れの少年と付き合っても、いつか絶対に彼は離れていく。
垣根帝督のように、自分の怪物性を目の当たりにして呆然とするに決まってる。
だから付き合うなんて到底不可能だ。
大好きな垣根が自分に見切りをつけてどこかへ行ってしまうのが、哀しかった。
大好きだから、離れていってほしくなかった。
この大好きは、きっと深城のことを誰よりも大事にしたいと思う気持ちと違う。
そう思った時、朝槻真守は垣根帝督のことを一人の男の子としても必要としているのだと、そこでやっと自覚した。
だって、いつも頭を撫でてくれた。その綺麗で大きな手が優しくて大好きだった。
何度も壊れ物のように扱って抱きしめてくれて。何もかもから守ってくれるような感じがして、実際に守ってくれるから、とても安心できた。
恥ずかしいけれど何度も頭にキスをされる
「………………好きな、ひとが」
真守が断りを入れた時点でやっぱりか、と諦めた少年に、真守が続けて言葉を告げようとすると、ボロっと真守が大粒の涙を零したので、少年は目を見開いてあからさまに慌てる。
「………………好きな、ひとが……いるの…………だいすきなひとが……」
真守が胸の前でぎゅっと両手を握って縮こまって
それでもとっさに、その少年は真守の小さな背中を撫でた。
だけど真守はその手の平の感触が自分の欲しいものではないと心の底から思い知らされて、尚更涙が止まらなくなってしまった。
──────…………。
垣根は夕暮れから夜に変わりゆく学園都市の街中を一人で歩いていた。
自分がやめろと言った時の真守の呆然とした顔が頭から離れない。
本当にやめてほしかっただけだ。
真守が怒り狂ったまま人を傷つける姿を見たくなかった。
だがその後、どう声を掛けていいか分からなくなってしまった。
あの放心状態は普通じゃなかった。
取り返しのつかない事を自分はしてしまったと、よく理解できないながらも呆然としていた感じだった。
そんな真守にどう声を掛ければいいか、垣根帝督には分からなかった。
垣根はそこで携帯電話に着信があったのに気が付いて、ジャージのポケットから携帯電話を取り出した。
『源白』と表示されていて、垣根はそれに出た。
〈垣根さん、大変だよ! 非常事態だよ!!〉
「非常事態?」
既に非常事態に見舞われている垣根が顔をしかめて声を上げると、深城がその非常事態の内容を口にした。
〈真守ちゃん、告白されたみたい!!〉
「は!?」
垣根は思わず人目もはばからずに大声を上げてしまう。そんな垣根に、深城はつらつらと経緯を説明する。
〈なんかね、真守ちゃん競技中から様子おかしかったんだけど、その後どっか行っちゃったの。だから頑張って探して会いに行ったらぼーっとしてててね。『告白された。少し考えたいから一人にして』って! なんかあそこまでぼーっとしてるの五年ぶりに見たからあたし、びっくりしちゃって! そんなに告白が衝撃的だったのかなあ!?〉
(…………か、)
垣根は思わず心の中で呆然とする。
(…………考えたいって……考えたいってなんだよ!?)
そして、ふつふつと真守に対して怒りがこみあげてきた。
あんなに自分が真守のことを
今更その全てを放り出して他の男になびくのか。
(そ、んなにその男がいいのか……っ俺よりも……っ!)
垣根が嫉妬を超えた怒りで打ち震える中、ふと気が付いた。
自分と真守は今、とてもマズい別れ方をしてしまった。
もしそれで『もう垣根は自分のことが嫌いになってしまったんだ』と真守が勘違いして傷心していたら?
そこで良い男が都合の良いように
普通の思考ができない傷心真守はコロッといってしまうかもしれない。
サーッと垣根は自分の血の気が引いていくのが分かる。
奪われる。
横からかっさらわれる。
絶妙なタイミングで現れたどっかのクソ野郎に。
奪われて、自分が大切にしてる女の子が本当に遠くに行ってしまう。
〈垣根さん!? 放心している場合じゃないよ! 真守ちゃんこのままじゃ遊ばれるかもしれないんだよ!?〉
「ま、真守は……それで真守はどこ行ったんだ!?」
垣根は深城の真っ当な意見を聞いて、カブトムシに捜索命令を出せばいいのに思わず動揺して深城に問いかけてしまう。
〈真守ちゃんがどこに行ったかはなんとなく見当ついてるよ! 真守ちゃんはね、一人で考え事したい時はよく病院抜け出してそこに行ってたの。そこに行くときはあたしに来ないでーってことだったから、あたしは近寄ったことないんだけど〉
「そこってどこだ?! もったいぶってねえで早く言いやがれ!!」
〈第七学区の一番高い鉄塔だよ。今もそこにいるんじゃないかな!〉
垣根は深城に礼を言うのも忘れてブチっと通話を切って、人目もはばからずに三対六枚の
──────…………。
真守は深城がおそらくいるだとろうと言った第七学区で一番高い鉄塔のてっぺんに座り、背が高い割にちんまりとした体を縮こませて、ぽろぽろと涙を
大好きな垣根にそばにいてほしい。
でももうきっと駄目だ。それは叶わない。
深城は自分の怪物性を知って一緒にいてくれたが、自分の全てを知らないで一緒にいてくれると言った垣根が自分の怪物性を知っても一緒にいてくれるとは到底思えない。
だからきっとここでお別れで。
明日から垣根のいない朝が来る。
それからずっとそうやって生きていって。
いつか
深城は一緒にいてくれると言った。だから
それでもやっぱり、一緒にいてくれると言ってくれた大好きな男の子である垣根がそばにいないのは耐えられない。
でもどうやって垣根を繋ぎ留めればいいか分からない。
いつだって自分を繋ぎ留めようとしてくれたのは垣根で、自分はどうやったら彼を引き留められるのか、真守には全く分からなかった。
分からなくて、寂しくて。
そばに垣根がいてくれなくて、哀しくて。
どうすればいいか分からなくて、涙がずっと
「真守!!」
そんな中、真守は突然名前を呼ばれて涙をぼろっと一つ零しながら振り向いた。
そこには酷く焦った表情をした垣根が立っていた。
「どうした、なんで泣いてんだ!?」
「……や、」
垣根が慌てて鉄骨を歩いて自分へと早足で近寄ってくるので、真守はどうすればいいか分からなくなった。
会いたかったけれど、会ってどうすればいいか分からない。
どうして垣根がここに来たか、分からない。
もう何もわからなくて、どうすればいいか分からない。
「来ないで……来ないで……っ!!」
大切な女の子である真守が自分を全力で拒絶するので、垣根は胸が張り裂けそうだった。
それでも大切な女の子が一人で泣いているのを放っておけるはずがない。
自分が拒絶しても垣根が近づいてくるので、真守は恐怖で
「あっ、」
だが、次の瞬間。動揺から真守は鉄骨から足を滑らせてしまった。
「真守!」
ずるっと鉄骨から落ちた真守が受け身を取ろうともしないので、垣根は展開していた
「やだ……離して、離してっ……! やだやだっ離して……おねがっお願いだからっ……!」
「大丈夫だ、落ち着け。大丈夫だから」
真守がパニックを起こしているので、垣根は鉄骨の上にそっと降り立ち、真守の背中を落ち着けるようにそっと撫でる。
その大きくて優しい手が自分の欲しかったものだったので、真守は身を固くしたままひっく、としゃくりあげた。
「……だって、垣根。どっか行っちゃうんだろ……?」
「なんでそう思うんだよ」
垣根は自分の腕の中で硬直する真守の緊張を解くために背中を優しく撫でたまま問いかける。
「だって、垣根。幻滅した……」
真守は体に力を込めたまま、震える声で告げる。
「っ垣根、私の酷い時、知らないから……深城は私が一番悪いことしてた時のこと知ってて、それでも一緒にいてくれるって言った。でも垣根、その時のこと知らない。聞いたことしかない。だからさっき幻滅したんだろ?」
真守はぽろぽろと涙を
「私が怪物に見えて、どっか遠くに行っちゃうと思ったんだろ? そういうところが私にあるって初めて見て知って、呆然としたんだろ? だから垣根、もう一緒にいてくれないって思って……。化け物の私を見たら、嫌になったと思って。もう、きっと一緒にいられないって……」
「そんなことありえねえ。絶対にない。お前はそんな心配しなくていい。大丈夫だから落ち着け」
真守が何に恐怖しているのか知った垣根は力強く告げる。
「わかんないよ。だって私、垣根の信じてる私じゃない。私は人でなしだ、化け物だ」
それでも垣根の言葉が信じられなくて、真守はぽろぽろ涙を零しながらしゃくりあげて告げる。
「垣根がひどいって思うこと、私……オリアナにしてもなんとも思わなかった。正当な罰だと思った。そう思った時点で化け物だ。深城は化け物の私のこと知ってて一緒にいてくれる。垣根、知らないだろ。垣根、何もわかってない。……だから、だから、絶対に、」
真守が『何もわかってない』と先程からしきりに告げるのでいら立ちが
「んっ……──!?」
真守はそれに驚愕して目を見開く。
「や、やだやだ離してやっ……──んぅ!」
だが当然として真守が突然垣根にキスされてパニックに陥って顔を背けると、もう一度、今度は深く垣根は真守にキスをした。
そして真剣な瞳で自分のことを茶色く長い前髪の向こうからじぃっと見つめてキスをしてくる垣根から目を離せない真守はふ、ふぅと短く荒く息をしながら顔をしかめてそのキスを受ける。
真守が強制的だとしても大人しくなったので、垣根はそっと真守から口を離した。
「は、初めてらったのにぃ…………」
真守は初めての深いキスにろれつが回らない状態で呟く。
そんないっぱいいっぱいになって逆にパニック状態から脱した真守を確認した垣根は、真剣な表情のまま顔をしかめた。
「しょうがねえだろ。お前がパニック起こしてんだから」
「うぅ、ひどい。……ひどいよぉ、かきねぇ。ひどい……こんなのってない……あらりょーじに初めてを使わないでよぉ……いじわる。ばかばかばかばか、かきねのばかぁ……」
「真守」
真守が顔を
「言っただろ。お前を一人にしないって」
真守は垣根の言葉に切なそうに顔を歪ませた。
「だったら垣根、なんであんな顔してたの? わたっ……私、分からないよ。何が、何がいけなかったの? 私の何が気に入らなかったの? どうして」
「気に入らなかったんじゃない。お前が怒り狂ってたからびっくりしただけだ」
垣根は自分に答えを求めて
「怒りって……私、怒ってたのか?」
真守がきょとっと目を見開きながら垣根に訊ねると、垣根は先程拭った方と反対の目の涙を拭いながら優しく声を掛ける。
「怒ってただろ。お前、俺が見たこともないほどに怒り狂ってて、そんで我を忘れてた」
「……どうして?」
「そんなの分からねえよ。オリアナがお前のどうしても超えちゃならねえ一線を越えたんじゃねえの?」
垣根の問いかけに真守は沈黙する。
絶対的な基準点を求めていたオリアナ=トムソン。
誰かに自分の価値観を押し付けようとしていた彼女。
「…………多分、オリアナが昔の私に重なったから」
「重なった?」
垣根が問いかけると、真守は呆然と告げる。
「昔の私は、自分の基準で生きてた。自分のことを
真守はそこでくしゃっと顔を歪ませた。
「今だって私は深城に教えてもらった人の命だけは奪っちゃいけないって基準で生きている。深城に言われたことだけを守ってる。それだけ守れば人間として生きてられると思ってる。そうやって思ってる時点で、私は人間じゃない。化け物なんだ」
「そんなことねえよ」
「ある。あるよ……」
垣根の否定を聞いても、真守はふるふると首を横に振って悲痛で目を細めた。
「私、教えてもらえなくちゃ何もわからない。自分が怒ってるのも分からなかった」
真守は頑張って息を呑んでから懸命に垣根に伝える。
「深城はっ、誰かに私のことを愛してくれって言われなくても……私を、愛してくれた、大事にしてくれた。……垣根だって、誰にも教わってないのに普通に学校に行って溶け込めて、人と普通に付き合えてる。……私、そんなことできない。何もできない。できることなんてない。何もいいところなんてない」
「そうだな」
真守の弱弱しい発言に、垣根は一度同意する。
ひっぐ、としゃくりあげた真守の事を垣根は優しく抱きしめて、そして自分が感じていることを教えるために真守にそっと
「お前は教えてもらわなきゃ何もできないただの女の子だ。そばにいて誰かが支えなくちゃ何もできない、ただの女の子だ」
「おんな、のこ……?」
真守は垣根に抱きしめられたまま、びっくりして目を見開く。
「ああ。今のお前をどっからどう見たって、俺に嫌われたくないって一人で泣いてる女の子だよ」
真守は垣根の言葉に呆然としていたが、ふえ、と弱弱しく声を漏らした。
「うそだ、うそだよっ」
「嘘じゃねえ」
垣根は真守の言葉を即座に否定して、真守をもっと優しく抱きしめる。
「だって……何もできない女の子なら、垣根、一緒にいていいことなんてないよ」
真守はそれでもひっぐひっぐと何度も
「いいことなんて求めてねえ。ただ一緒にいたいから一緒にいるんだ」
垣根は真守を抱きしめるのをやめて、真守のエメラルドグリーンの瞳をまっすぐと見つめて自分の気持ちを伝えた。
「どうして…………どうしてなんだ? 分からない、私……っ」
「理由なんてねえ」
垣根は分からず屋、と真守のことを心の中で優しくなじりながらも、柔らかく微笑む。
「この想いに理由なんて必要ない。……ただ、そうしたいから俺はお前のそばにいて、お前を支えるだけだ」
真守はエメラルドグリーンの瞳でまっすぐと垣根から目を離さないで呟く。
「……理由、なくても一緒にいてくれるのか?」
「ああ」
真守の問いかけに力強く答えた垣根を見て、真守はぼろっと再び一つ涙を
「私……垣根と一緒にいたい。いたいよ……」
「一緒にいる。一緒にいるから」
垣根は泣き顔すら綺麗な真守をじぃっと見つめる。
「愛してる。真守」
垣根の愛の告白に真守はつーっと涙を流す。
垣根はそんな真守の頬にそっと手を添えながら、先程よりも真剣な瞳で真守を射抜く。
「俺と付き合ってくれるか?」
「私のこと……こ、恋人にして一緒にいたいの…………? ……え。……ほ、ほんとうに……?」
真守が
「ああ。お前がもし告白されても付き合ってる男がいるって言えるようにしたい」
先程、真守が告白されたと深城から聞かされて自分は本当に焦ったのだ。
今しかないと、垣根は思った。
この
そんな垣根の愛の告白を聞いて、真守はふるふると首を横に振った。
「……だめ、だよ。そんなことになっちゃいけないよ」
「なんで?」
弱弱しい真守の拒絶の言葉に垣根が優しく問いかけると、真守はそっと目をそらしながら呟く。
「だって私、いつか……いつか。きっと、垣根のこと、なんとも…………思わなくなるよ」
いつか
忘れるという保証もないが、覚えていられるという保証もないのだ。
だから愛しているだなんて言われても、自分自身が垣根をだいすきだろうと、その気持ちに応えることなんて真守はできない。
「大丈夫だ」
真守の不安を
真守は顔をしかめながらも、至近距離まで迫って祈るように目を閉じる垣根を
「きっと、お前の気持ちは消えないから。消えても、また俺が教えてやるから」
「…………じゃあ言っても良いの?」
ぐす、っと真守は呻きながら、そっとおでこを離した垣根を見上げた。
「ああ」
「垣根……だいすき。だいすきって、ずっと言いたかった……」
真守は垣根の腰に震える手を回してぎゅっと抱きしめると、そのまま垣根の胸に顔をうずめてうれし涙をぽろぽろと零す。
垣根はそんな真守の背中を優しく撫でていたが、真守が落ち着いたところで真守を少し離して優しいキスをした。
そんな優しい長いキスの後、真守は涙を一粒零して、縋りつくような瞳で垣根を見た。
「ずっと一緒にいて、垣根」
「ああ。絶対に一緒にいる」
真守の言葉に、垣根は力強く頷いた。
「よかった」
真守は心の底から安堵した表情でふにゃっと笑うと、そっと垣根の胸に頭を
「本当に、よかった…………」
真守の心の底から安堵した声を聞きながら、垣根は真守のことを優しく抱きしめる。
その時。
二人が結ばれたのを祝福するのかのように。
大覇星祭一日目、午後六時半からのナイトパレードの始まりを知らせる花火が夜空に打ち上がった。
心理定規が前に仄めかしていましたが、垣根くんは自信たっぷりで余裕しゃくしゃくなので、周りに触発されないと既に将来を決めて自分に好意を向けてきて、自分に虜になっている相手をわざわざ恋人にしようとしません。する理由があんまりない。
もう真守ちゃんは自分のモノだという意識が強いんですよね。言葉や明確な立場がないと色々困るのにそれに気づいていない垣根くん。
それでもくっついたのでこれで万事問題ないです。
恋愛モノと銘打っているということもあり、ここからイチャイチャ成分が多めになりますが、真守ちゃんと垣根くんをこれからもよろしくお願いいたします。