とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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一〇八話、投稿します。
次は一二月五日日曜日です。


第一〇八話:〈交友関係〉は変わらず良好

一方通行(アクセラレータ)

 

真守はガラッと病室の扉を開けてひょこっと顔を出すと、ベッドの上で靴を履いて横たわって足を組んでいる一方通行(アクセラレータ)の姿が見えた。

 

「よォ」

 

「あ! 久しぶり! ってミサカはミサカはあなたの顔が直接見られて嬉しくて飛び跳ねてみたり!」

 

自分の枕もとに座っていた打ち止め(ラストオーダー)がぴょんぴょんと飛び跳ねるので、一方通行(アクセラレータ)は迷惑そうに打ち止めを見ていたが、打ち止めはそんな一方通行を欠片も気にせずにぴょんっと跳んで真守のもとへと駆け寄る。

 

「久しぶりだな、最終信号(ラストオーダー)。元気にしてたか?」

 

「うん! あなたも元気そうって、ミサカはミサカは昨日のあなたの選手宣誓のかっこいい姿を思い出しながらはしゃいでみたり!」

 

「見てくれていたのか? ありがとう」

 

真守は目の前ではしゃぐ打ち止め(ラストオーダー)に柔らかな笑みを向けていると、打ち止めは突然コソッと声を小さくして真守に耳打ちするように手を口の横に添える。

 

「あのね、ミサカはテレビで見てたんだけどね。どうやらあの人は開会式のグラウンドまで行ってたみたいなの、ってミサカはミサカは蚊帳の外にされた悲しさで告げ口してみる」

 

一方通行(アクセラレータ)、会場まで来てくれたのか?」

 

真守が目元を柔らかくして一方通行(アクセラレータ)を見ると、一方通行は気まずそうにして目を()らす。

 

「……ッチ。行ったら悪ィかよ」

 

「ううん。お前に見てもらえたなんてとっても嬉しい。見世物みたいで嫌だったが、やった甲斐があるというものだ」

 

「……そォかよ」

 

真守が柔らかく目を細めて嬉しそうにしているその様子を見た一方通行(アクセラレータ)は、そう(こぼ)して照れ隠しにふいっと顔を背ける。

 

「それならミサカも連れて行ってくれればよかったのに、ってミサカはミサカはぶーたれてみる」

 

「オマエがいると寄り道ばっかさせられて開会式会場に辿り着かねェだろォが。そっから場所取りとかもしなくちゃなンねェンだしよォ」

 

打ち止め(ラストオーダー)の主張に一方通行(アクセラレータ)がケッと吐き捨てるように告げると、打ち止めは頬を膨らませる。

 

「ミサカだってちゃんと時と場合は考える、ってミサカはミサカは主張してみる!」

 

「そンで昨日の午後にオマエに付き合って大覇星祭回った後、検査があるからまっすぐ病院に帰らなくちゃなンねェ、……って時に秒でいなくなったのはどこのどいつだァ!?」

 

一方通行(アクセラレータ)が怒鳴ると、打ち止め(ラストオーダー)は気まずそうに目を逸らして頬をぽりぽりと搔く。

 

「あ、あれは美味しそうな屋台がたくさん並んでたのが悪いかも、ってミサカはミサカは誘惑がたくさんあるのがいけないって主張してみる!」

 

「学園都市中がテメエにとって誘惑だらけなンだから開会式までに絶対に辿り着かねェだろォが!!」

 

「う、ぐぐぐ……! でもミサカはミサカは!」

 

「ほら。朝から騒ぐな。それにしても一方通行(アクセラレータ)、すっかり最終信号(ラストオーダー)の保護者だな」

 

一方通行(アクセラレータ)打ち止め(ラストオーダー)の言い合いが終わらないと思った真守はクスクスと笑いながら仲裁に入る。

 

「……コイツが糸の切れた(たこ)みてェにどっかに行くから目が離せねェだけだ」

 

「んー。そこはかとなくその気持ちが分かるのが悲しいなあ」

 

一方通行(アクセラレータ)打ち止め(ラストオーダー)に対する表現を聞いた真守は、糸の切れた凧代表の深城を思い出して苦笑する。

 

「あなたは今日も競技に出るの? ってミサカはミサカはあなたの姿が中継されるのかワクワクしながら聞いてみる!」

 

「ああ。今日も出るから見といてくれ。パンフレットあるか? 印つけてやるから出してくれ」

 

「あるよ! ってミサカはミサカは即座に身を(ひるがえ)して持ってきたり!」

 

真守は打ち止め(ラストオーダー)が持ってきたパンフレットに赤いペンで印をつけていく。

 

「……楽しいか?」

 

そんな真守を見て、一方通行(アクセラレータ)はぽそっと訊ねた。

 

「うん? うん、楽しいぞ。初めてだからな。お前も来年ならきっと一緒に出られるぞ。頭蓋骨の亀裂も良くなってきたんだろ? それと一緒に髪の毛も伸びてるけどな」

 

真守は一方通行(アクセラレータ)の問いかけに笑顔で答え、そして自分の頭をトントンと人差し指で叩きながら、一方通行の頭蓋骨の亀裂を治すためにベクトル操作をしたことにより副作用的に伸びた髪について言及する。

 

「……あと少しで退院できる」

 

「そしたらどうするんだ?」

 

「芳川にアテがあるからこのガキと一緒に行くつもりだ」

 

一方通行(アクセラレータ)は真守が印をつけているパンフレットを覗き込んでいる打ち止め(ラストオーダー)をちらっと見ながら告げる。

 

「そうか。じゃあお前が落ち着いたら会いに行くよ。お前も落ち着いたら私のところに来てくれ」

 

「……気が向いたらなァ」

 

真守は一方通行(アクセラレータ)の言葉にフッと微笑み、印をつけ終わったパンフレットを打ち止め(ラストオーダー)に差し出した。

 

「はい、最終信号(ラストオーダー)。これで全部だ」

 

「わーい、ありがとう! ってミサカはミサカはクルクル回って喜びを表現してみたり!」

 

打ち止め(ラストオーダー)は真守からパンフレットを貰って喜びの舞を踊る。

そんな打ち止めから目を離して、真守は一方通行(アクセラレータ)を優しいまなざしで見つめた。

 

「じゃあ私は行くよ。これから予定が詰まっているからな。またな、一方通行(アクセラレータ)

 

「あァ。気を付けろよ」

 

「うん。ありがとう!」

 

随分とスムーズに真守への心配の声を掛けられるようになった一方通行(アクセラレータ)に、真守は柔らかく微笑を浮かべて手を振り、病室を後にする。

 

「あの人、なんだか前より楽しそうだね。ってミサカはミサカは伝えてみる」

 

「……あァ。アイツの周りには愉快な人間がいるからなァ。楽しいンだろ」

 

一方通行(アクセラレータ)が少しだけ寂しそうに告げると、打ち止め(ラストオーダー)はにぱっと太陽のような笑みを一方通行に向けた。

 

「あなたもきっとあの人にとってかけがえのない大切な人だと思うな、ってミサカはミサカはあの人が思ってることを代弁してみる! もちろん、ミサカもそうだけどね、ってミサカはミサカは付け加えてみる!」

 

「……そォだな」

 

一方通行(アクセラレータ)は笑顔で去っていた真守のことを考えて、フッと優しく笑い、打ち止め(ラストオーダー)からパンフレットを貰って真守の出る競技を見ていた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「で。あなたは一体こんな場所で。一体何をしているの?」

 

姫神は自動カーテンにより個人スペースが仕切られた六人一部屋の普通の病室のベッドで、床に座って上半身をベッドになだれ込ませていたインデックスを見た。

 

「あふぁ……。朝になるとベンチ使っちゃダメって言われるから、あいさのところまで避難してきた次第です。ふかふかベッドー……」

 

「こらこら。布団は噛むものではなく掛けるもの。あと。無意味によだれを垂らすと、白い目で見られるのは私」

 

インデックスは本能の(おもむ)くままにあったか布団を求めて、もぞもぞと顔を押し付けて顔をうずめる。

 

「あったかー……」

 

そしてインデックスがぬくぬくとしている姿を見ると、姫神はインデックスが眠くて覚醒していないのかと思い、ベッドの(かたわ)らにある高さ一メートル前後のミニ冷蔵庫の扉を開けて氷を取り出す。

 

「冷凍庫の氷で。覚醒を(うなが)してみる。えいや」

 

「冷たーっ!?」

 

氷をおでこにぶつけられた直後、インデックスは絶叫。病室にいる全員から白い目を向けられてしまったので、姫神は一度ぺこりと頭を下げると、仕切りの自動カーテンを閉じた。

 

「あいさはもう大丈夫そうだね。だってまもりが治してくれたんだもん」

 

インデックスは、姫神が自分のおでこにくっつけて飛び上がったことにより跳ね返ってしまった氷を空中でパクっとキャッチし、口に含みながら告げる。

 

「……うん。骨まで見えるような傷だったのに。治してくれた。傷の方はカエル顔のお医者様が。残らないようにしてくれるって」

 

姫神はパジャマを引っ張って、胸元に輝く十字架の下に巻かれている包帯を見つめながら呟く。

酷い怪我に思えるが、それは真守が内部から傷を修復していったから結果的に表面が(おろそ)かになっているだけであり、その傷も冥土帰し(ヘブンキャンセラー)という医者が治してくれるそうだ。

 

『まったく、彼女は本当にやりがいがあるところを残してくれるよね?』と心なしかあの医者、自分の傷を治すことにうきうきしていたのは何故だろうかと姫神は理由を考えてみるが、やっぱり分からない。あの超能力者(レベル5)ならば分かるのだろうか。

 

「そっかあ。良かったねえ」

 

姫神が真守のことを考えていると、インデックスも真守に傷を治してもらったことがあるので、姫神が真守に傷を癒してもらったのが我がごとのように嬉しくて微笑みながらそう告げた。

 

「……でも、あの人。すごく怒ってた。こっちが怖くなるくらいに」

 

姫神は麻痺している思考の中でもはっきりと分かるほどに怒っていた真守を思い出してゾッとする。

 

「そりゃそうだよ。まもりは人が傷つくのが嫌だもん。正確にはね、命を粗末にする人が嫌いなんだよ」

 

だがインデックスは姫神のその恐怖を感じて、怖いものじゃないと微笑みながら告げる。

 

「そうなの」

 

「うん。だからまもりは傷ついた人の味方なんだよ。あいさの味方なんだよ」

 

インデックスは得意気に告げてからにへらっと微笑む。そんなインデックスを見つめながら姫神は真守の事を思い出していた。

 

時々学校をサボっているが、どうやらそれはいつも面倒ごとに巻き込まれているらしい、と上条は言っていたし、他のクラスメイトも真守が登校してない時は大体人を助けている時だと笑って言っていた。

 

「あの人。とても忙しそうだから。私はあまり話したことがなくて。気まずかったんだけど。……優しい人ね」

 

姫神がとっつきにくくて近寄りがたい、それでも近寄ってみたいという高貴なお猫様な外見をしている真守の事を思い出しながらふふっと笑う。

 

「そうだよ。まもりは外見で勘違いされるかもだけど、すごく優しい人なんだよ。だからね、あいさも気まずいとか思わないで、ガンガン話しかければいいんだよ。まもり、笑った顔がかわいいんだよ」

 

「うん。上条くんも言ってた。朝槻さんはとっても優しい人で。とってもかっこいい人だって」

 

インデックスが真守の柔らかく控えめに笑う表情を思い出しながら告げると、姫神はインデックスの言葉に頷いた。

 

「とうまからまもりの話聞いたの?」

 

きょとんとするインデックスの前で、姫神は気後れしながらもこくっと頷いた。

 

「昨日のナイトパレードの時に。かけがえのない大切な友達で恩人だって。……私も。友達になれるかな」

 

「なれるよ! だって私の友達でもあるんだから!」

 

「っつか、吹寄さ──」

 

インデックスが叫んだ瞬間、廊下の向こうから聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

「いきなり人の病室訪ねてきて最初にビンタ浴びせるってのはどういうことなんだっつの! そんな元気いっぱいなら病院にいる意味とかなかったんじゃねーの!?」

 

「だっ黙りなさい貴様! いきなり男の裸なんて見たら誰だって驚くわよ!!」

 

「いや、確かにちょっと気まずいけど、着替えている途中にいきなり病室に入ってきたのはお前()()じゃ、」

 

「上条当麻! さっさと準備しろまだ寝ぼけ気味なのそれなら脳の活性化にはテアニンよ紅茶に多く含まれているからグィーッといきなさい!」

 

「熱ァああっ!? ふ、吹寄のお馬鹿さん! 照れ隠しで人の喉奥に熱湯を流し込むんじゃねぇよ!」

 

「──で、姫神さんの病室はこっちで良いの、朝槻?」

 

どうやらそれは上条と吹寄のようで、姫神は吹寄が声を掛けた人物の存在に自分の心臓が高鳴ったのが分かった。

 

「うん。こっちだ」

 

今まで静かにしていただけで、どうやら真守もいたらしい。そんな真守に柔らかく確認を取った吹寄はキッと声を荒らげた。

 

「というか、いきなり行っても迷惑に思われないでしょうね、上条当麻!」

 

「あん? っつか、姫神は無口だけど静かなのが好きってわけじゃないぞ。よく見ると分かるんだけど、アイツは嬉しい時には口元がちょっとだけほころぶんだ。隠れ世話好きな吹寄さんならこんぐらいわかってるモンだと思ってたんだけどなー」

 

「世話好き? ……誰が?」

 

「ぷぷー。そりゃお前、姫神の病室がどこか分からなくて俺んトコまで相談に来たり、売店で果物とお花を選ぶのに三〇分も悩みまくるところが健気な友達想いだって熱がぁ!? だから紅茶は流し込むモンじゃねえっつってんだよ!」

 

「吹寄。これ以上上条が無駄に活性化しても面倒だ。……というかテアニンってそんな効果じゃなかった気がするけど? まあ、いいか。早いところ姫神連れてクラスに合流しよう」

 

「それもそうね。今日は第一種目からヘビーな全校男子騎馬戦・本戦A組なんだから。上条当麻、怪我で見学している人も応援に参加してよかったって思えるような競技内容にしなさいよ!」

 

「分かってるって声がデケェよ。姫神、いるかー?」

 

上条が声を掛けてきたので、姫神はカーテンを開くボタンを押す。

ゆっくりと開いたカーテンの先には、姫神秋沙の望んだ世界がそこにあった。

 

「一時退院できるらしいから大覇星祭の空気感じに行こうぜ!」

 

その世界の中心に(たたず)む上条が車椅子を持ったままにこっと笑う。

その頬には昨日と同じように湿布が張ってあり、戦いに勝利してきた証拠だった。

 

「姫神さん? 傷の具合はどうかしら?」

 

「む。私と先生が治したんだから大丈夫だぞ。そこは気分はどうだ、と聞くべきだ」

 

「ああ、ごめんごめん。気分はどう、姫神さん?」

 

真守の抗議に吹寄は困ったように笑い、そのまま姫神に声を掛ける。

 

「うん。大丈夫。……あの、朝槻さん。……と、吹寄さん」

 

「うん? なんだ?」

 

「何かしら?」

 

姫神の問いかけに真守と吹寄はきょとんとしており、そんな二人に姫神はおずおずとお願いを口にした。

 

「友達に…………なってくれる?」

 

真守と吹寄はその姫神のお願いを聞いて微笑んだ。

 

「クラスメイトだからそういうこと遠慮しないの」

 

「私はクラスメイトになった時点でお前を友達だと思ってたぞ」

 

姫神が吹寄と真守の言葉に密かに微笑んでいると、吹寄は突然バッと真守を睨みつけるように見た。

 

「なにをう!? それだったら私の懐が浅いみたいじゃない!」

 

「友達の定義は人によって違うから、そういうこともある」

 

「うっ。相変わらず朝槻の意見に反論できない。……まあ、さっきまで友達じゃなくても今友達になったから別にいいけど!? ね、姫神さん!?」

 

突然自分に話題を振ってきた吹寄に驚きながらも姫神はこくこくと頷く。

 

「え。あ。うん。……友達、だね」

 

「じゃあ、行こうか。姫神」

 

真守がスッと手を差し出してくるので、姫神はその手をそっと握った。

柔らかく体温の高い小さな真守の手を感じて、姫神は微笑む。

 

そして、姫神秋沙は自分の望む世界へと一歩足を踏み出した。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「……で? お前もクラスメイトだろうが。行かなくていいのか?」

 

垣根は病院の一階にいある待合場所にて、隣に座った土御門元春に声を掛けた。

 

「イギリス清教として、そして学園都市の人間としても色々後始末があるからにゃー。こういう時は配下が欲しくなったりするが、裏切られた時どうもなー。そこんところどう思う?」

 

「知らねえよ。使えるモンは使えばいいじゃねえか。裏切られたら即処分だ」

 

垣根がすっぱりと告げると、土御門は口で『ひゅー』と、口笛を吹く真似をして擬音を口にした。

 

「流石組織のてっぺんに君臨する人間は違うぜよ。まあ、土御門さんは軽い身でいたいから、何から何まで自分でしないと気が済まないっていう意味もあるがにゃー」

 

「……で、オリアナの奴は?」

 

土御門が軽口をたたく中、垣根は苛立ちを見せながらも気になっていた事を直球で訊ねた。

 

「朝槻に会いたがってる」

 

「……あれだけ苦痛を与えられたのに会いたがってんのか?」

 

普通、苦痛を与えられた相手に会いたいなんて言う人間がいるはずない。

垣根が(いぶか)しんでいると、土御門は言いにくそうにぽりぽりと頬を搔いた。

 

「いやはや。……それがにゃー……。んー、ていとくんに言った方がいいか迷ったんだが……まあ、言った方がいいか」

 

「なんだよその曖昧な返事。つーかナチュラルにていとくんって呼ぶんじゃねえ」

 

垣根がいつまでも自分の事を馴れ馴れしく呼んでくる土御門を睨みつけると、土御門はサングラスの表面をきらっと光らせ、

 

「初体験」

 

と言い放った。

 

「は?」

 

当然の如く垣根が顔をしかませると、土御門は口を尖らせてぶーぶー言う。

 

「だーかーらー。初体験を朝槻に奪われたからもう一回会いたいと。まったく高次元過ぎて土御門さんには分からない世界ですたい」

 

「……は、つた?」

 

垣根が土御門から聞かされたオリアナの言い分がぶっ飛びすぎてて困惑していると、土御門は人差し指をフリフリと動かして講釈垂れる。

 

「朝槻が苦痛を与えたのにぜーんぶなかったことにして戦いの傷もぜーんぶ治した状態で俺に引き渡したから、夜の大運動会の後で疲労困憊(ひろうこんぱい)なのに妙に満たされた感じに近くてもう一度体験してみたい……って言うのがヤツの言い分ですたい」

 

「本物の変態か」

 

「流石に常識が通用しないていとくんでもそう思うかにゃー?」

 

垣根が片頬を引きつらせながら告げると、土御門はにやにやとして垣根を『お前が言うな』と言わんばかりに顔を向けてくる。

 

「うるせえその話するんじゃねえ。つーかそんな危険人物、早くイギリス清教に引き渡せ。そんで情報搾り取りやがれ」

 

垣根はここに来る前、深城に『どうせ常識ないから真守ちゃんにあぶのーまるなこと教えればいいのに!』とイジられている。

嫌なことを思い出させられた垣根は、殺意を込めて土御門を睨みつけて、そう命令口調で告げた。

 

「拷問に長けたイギリス清教に渡したら渡したで情報抜き取れっけど、その前に学園都市がやりたいって話だぜい。学園都市がイギリス清教に負けず劣らずの情報収集できんの、お前も知ってんだろ?」

 

「……まあな」

 

垣根の所属する暗部組織『スクール』にも心理定規(メジャーハート)という心の距離を自在に操って尋問する能力者がいるので、学園都市がその気になれば何でもできると垣根は知っている。

 

そのためそう返事すると、土御門は怪我を感じさせない軽快な挙動で立ち上がった。

どうやら無能力者(レベル0)と言っても肉体再生(オートリバース)が十分機能しているらしい。

 

「つーわけで土御門さんは後始末に行ってくらー。吹寄に見つかんない内にお(いとま)(いとま)

 

「オリアナが会いたいって言ってるまでは言わねえが、真守にオリアナは問題ねえって伝えるぞ」

 

歩き出した土御門にそう告げると、土御門はニヤッと笑って振り返る。

 

「よろしくだにゃー。んじゃー朝槻とお幸せに♪」

 

「……やっぱりアイツ、どっかから見てやがったな?」

 

垣根はぺたぺた靴をわざと鳴らして歩いていく土御門に、真守と自分が昨日くっついた事を見透かされて苛立ちを込めて呟く。

 

垣根が少し待っていると、よく聞いたことのある少女のぶっきらぼうな口調でのダウナー声が聞こえてきた。

 

その声が聞こえてきた廊下の方を見ると、車椅子を押した上条の隣に吹寄、そして車椅子に乗っている姫神を挟んで隣に立って歩く真守の姿があった。その後ろには、ジュースを手に持った深城と林檎が手を繋いで歩いている。

 

(源白と林檎の後ろからついていきゃいいか)

 

垣根が考えていると、真守が垣根に気が付いて二人の目が合った。

その瞬間、真守がふにゃっと微笑み、隣にいた姫神に声を掛けて、姫神の視線を誘導して垣根を見た。

 

どうやら彼らの輪に入って共に移動することになりそうだ、と垣根は察した。

 

本来ならばただの学生と仲良しこよしするのにはストレスがかかるが、真守が大事にしているクラスメイトと、何より自分にとって大事な真守が一緒なら苦にならない。

 

垣根は立ち上がって両手をジャージのポケットに突っ込み、自分の存在に気が付いて手を上げる上条や真守たちに近づいた。

 

姫神秋沙と同じように、垣根帝督も自分の心のどこかで密かに望んでいた穏やかな世界へと、ゆっくりと近づいてその世界の中心へと入っていった。

 




垣根くんと姫神ちゃんが幸せそう。

とあるの原作、一一巻の最後、刺突杭剣と、使徒十字騒動の後日談でした。
オリアナが高度な遊びを覚えてしまっていますが、愛に溢れている女性ということで……。
流石の垣根くんも動揺する初体験。ある意味一番ヤバい。

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