とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一一五話、投稿します。
※次は一二月一三日月曜日です。


第一一五話:〈大覇星祭〉は幕閉じて

「真守ちゃん見てたよーっ常盤台中学と対決して勝っちゃうんだねぇ!!」

 

「まあ高位能力者制限があろうと、流石に音速以上で動く(まと)は常盤台の子でも止めることはできないだろ」

 

大覇星祭三日目。

真守の高校と常盤台中学が直接対決となり、真守たちの高校が勝利した。

 

常盤台中学の女子生徒は超能力者(レベル5)である真守を集中的に狙ってきたが、真守が音よりも早く逃げ続けるので攻撃が当たらなかったからだ。

そして真守に常盤台のお嬢様たちが翻弄されているその隙に、真守の学校の生徒が得点を重ねるという戦法で真守たちは常盤台に勝利した。

 

途中から真守が囮になっていると分かった常盤台の少女たちは得点を重ねようと競技に集中したが、真守は自分を狙う常盤台中学の少女たちを引きつけながら得点を重ねる少女たちがいる方へと逃げて同士討ちを誘発して得点を抑えた。

 

あちらには超能力者(レベル5)が二人いるが、第六位の食蜂操祈は真守が少し小突いただけで体力を消耗してしまいほぼリタイア状態、体力があるとしても美琴の攻撃は真守を(とら)えることができないので二人共真守に翻弄されていた。

 

常盤台中学の少女たちはお嬢様なので真守一人に翻弄された試合結果に心が折れるかと思ったが、彼女たちは向上心の塊らしく来年は必ず勝つ! と真守用の対策部門を立ち上げるとかなんとか美琴が言っていた。

まあそれでも常盤台は追い上げが凄まじいので、真守のような平々凡々な学校に一度負けようが覇権争いに影響はないのだが。

 

「でもいいなあ。あたしも生で見たかったぁ。ビデオなのが悲しいぃ」

 

「しょうがないだろ。検査入院ってのはそんなものだ」

 

深城はぶーぶーと白いベッドの上で文句を言う。

深城は現在、あらゆる機材で精密検査をされて、AIM拡散力場でできた体について調べられている。

既に体には何の異常もないが、それでも深城は数日間病院にいなければならない。

だが今日はちょっと難しかっただけで、大覇星祭中ずっと病院にいなければならない羽目にはならないのだ。

 

「ちゃんと明日一緒に回るから。その時楽しみにしててな?」

 

「……うん」

 

そのため真守がそう元気づけると、深城は少し不満そうな声を出しながらも頷いた。

 

「深城? どうした?」

 

「真守ちゃん、ちょっとこっち来て」

 

深城の不満そうな声が大覇星祭に対してではなさそうなので真守が首を傾げていると、深城はちょいちょいっと手を動かして真守を呼んだ。

 

「うん?」

 

真守は深城に呼ばれてスッと体を深城の方へと寄せると、深城は真守を抱きしめてスンスンと匂いを嗅ぐ。

 

「…………真守ちゃん、垣根さんとえっちしたでしょ」

 

「なっなんで匂いだけで分かるの!?」

 

真守が慌てて声をひっくり返しながら問いかけると、深城はじとーっと真守を見つめながらぽそっと一言。

 

「垣根さんの香りがべったりする」

 

「お前の鼻は人間離れしているのか?」

 

真守が思わず真顔になってから『確かにあり得るけど……』と、動揺した声を上げると、深城はむすーっと口を尖らせる。

 

「…………あの、深城……」

 

「なぁに」

 

「……恥ずかしくて、言えなかったんだけど」

 

深城の不機嫌そうな声に、真守は眉をひそませて所在無さげに内ももをすりすりと()り寄せながらも告白する。

 

「……というか、言うタイミングを考えてたんだけど……」

 

「うん」

 

深城は珍しくはっきりしない様子の真守に口を尖らせながらも、その視線に優しく温かな感情を乗せて頷く。

 

「……………………かきねと…………その、え、えっ……ち、しました……」

 

真守が顔を真っ赤にして(うつむ)いてぽそぽそ呟くのを見て、深城はそこで口を尖らせるのをやめて、フフッと小さく笑って真守の頬へと手を添える。

 

「別に怒ってないよ」

 

「……ほんと?」

 

真守は深城が自分の頬に添えてくれる手に、自身の手を重ねながらおずおずと問いかける。

 

「うん。だって真守ちゃんが言いたそうにしてたの分かったもん。ただ真守ちゃんの口から早く聞きたかったからいじわるしただけ」

 

深城の優しさに触れて、真守は今度こそちゃんと言わなくちゃいけないと思ってはっきりと告げる。

 

「……垣根とえっち、した」

 

深城は真守の告白にくすくすと笑い、真守の頬に添えている手で真守の頬を優しく撫でる。

 

「そっか。幸せだった?」

 

「…………生きてるって、実感できた。不安じゃなくなった」

 

真守の一言に深城は目を見開く。

そしてすぐに切なそうに顔を歪ませながらも優しい笑みを浮かべた。

 

「……そっか!」

 

深城が笑ってくれたので、真守も釣られて顔を少し赤らめながらふにゃっと微笑む。

 

「ところでさ、真守ちゃん」

 

「うん?」

 

二人で幸せに浸っていると深城が真剣な表情をして問いかけてくるので、真守はきょとっとした様子で首を傾げる。

 

「真守ちゃんってば、あぶのーまるな恋愛してるってことに気が付いてる?」

 

「へ」

 

真守はそこで目をぱちくりとさせる。

 

一般人の思い描く学生の男女の健全なお付き合いというのは、まず友達から恋人になり、そしてそこから健全な関係を少し育み、記念日で肉体的な関係を持つ、というものだ。

冷静に考えなくとも、真守と垣根の恋愛は前提からしておかしい。

 

垣根は夏休みの時から自分を一人にしない、一生そばにいると宣言してくれていたが、アレははっきり言って最早プロポーズ並み、いやそれ以上の宣言かもしれない。

 

それを真守は深城と同じことを言ってくれている、嬉しいとしか考えていなかったが、普通の人間が聞いたらそれで付き合ってないの!? ……と、度肝を抜かれるような事態である。『スクール』の面々が驚くのも無理はないことだった。

 

そしてしかもやっと明確な恋人になった翌日に事を致すのだ。

絶対に普通じゃない。

いやむしろ超能力者(レベル5)同士の恋愛が普通なのも逆におかしいかもしれないが、確かに普通じゃない。

真守はそのことに気が付いて再び顔を真っ赤にする。

 

「か、垣根がしょっちゅう常識は通用しないとか言ってるから普通じゃない恋愛しちゃうんだぁ……!」

 

「俺のせいにするんじゃねえ!」

 

真守が顔を真っ赤にしてぷるぷると震えていると、タイミングよく部屋に入ってきた垣根がガウッと吠えた。

 

「あ。えっちな人だ」

 

深城は真守のことを庇うようにぎゅっと自分の胸を圧しつけながら真守の腕を取って真顔で告げる。

 

「誤解を招くような言い方するんじゃねえよ!」

 

垣根が叫ぶと、垣根に買ってもらったクレープを一心不乱に食べていた林檎がぐむっとクレープを呑み込んでから顔を上げる。

 

「垣根、えっちなの?」

 

「ほら源白テメエ! ガキが信じるからそういうことぽんぽん言うんじゃねえ!!」

 

林檎に純粋なまなざしを向けられて聞かれた垣根は、怒りを込めて深城を睨んで怒鳴り声を上げる。

 

「林檎ちゃん。垣根さんには常識が通じないから、えっちとかえっちじゃないとかの次元を超えているんだよ」

 

そんな怒れる超能力者(レベル5)を他所に、深城は恥ずかしそうに俯く真守の腕に抱き着いたまま人差し指を立てて林檎に言い聞かせる。

 

「そうなの。すごいね、垣根」

 

「……その評価は俺をおちょくってるんじゃなくてマジで純粋にそう思ってるんだよな。……お前の頭ん中で俺はどういう位置づけにいるんだよ」

 

林檎がきらきらとした目で自分を見上げてくるので林檎をジト目で睨みつけていた垣根だったが、ここまで真守が一言も発していないのに気が付いて真守に視線を移した。

 

真守は学校指定のジャージの袖を口に当て、恥ずかしそうに垣根に目を合わせないで俯いている。

冷静になった今、垣根の顔を見たら昨日の事を思い出してしまうので、今日の朝からずっと真守はこんな調子なのだ。

 

一回くらいで顔が見られなくなっては困るが、自分を意識しまくってる真守がかわいい。

 

垣根は意地悪く笑うと、林檎と共に何気なく深城のベッドへと近づく。そして真守が俯いているからこそ分からない角度から、真守のその小さな背中につうっと人差し指を走らせた。

 

「ひゃっ!!」

 

真守は突然背中にぞくぞく走った感触で思いきり飛び上がり。そのまま丸椅子から転げ落ちる。

 

どんがらがぁーん! と音が響き渡り。垣根のいたずらが見えなかった林檎は目をぱちくりとしており、深城は困った様子で笑った。

 

真守は椅子から落ちた状態で魚のように口をパクパクとさせていたが、垣根が意地悪をしたと理解した次の瞬間、

 

「ふぇ」

 

と一言漏らし、即座に目を潤ませてぽろっと涙を一つ(こぼ)した。

 

恥ずかしくて気まずいのにびっくりさせられて、しかも足やら何やらが痛み、真守は許容量をオーバーしてしまったのだ。

 

「わ、悪かった。真守!」

 

垣根はぎょっとして真守を抱き上げて、自分の腕に座らせる。

真守は垣根の肩に片手を乗せてバランスを取りながらひっくひっくとしゃくりあげて涙を(にじ)ませる。

 

「別に恥ずかしいことじゃねえって! むしろそんな意識されてる方が嫌なんだよ!」

 

「……っじゃあ、どうしてそう言ってくれなかった? どうしていじわるしたんだ?」

 

真守がしゃくりあげながら告げるので、垣根はウッと(うめ)いてから顔を背けて気まずそうに告げる。

 

「………………お前がかわいくて、つい……」

 

「……いじわるしたくなったんだ?」

 

真守が問いかけると、垣根は目を泳がせて真守の追求から逃れようとする。

 

「そうなんだ」

 

「……、」

 

真守が問いかけても垣根が答えないので、真守はひっくとしゃくりあげて口を大きく開けて叫んだ。

 

「やっぱりかきねも好きな女の子イジメる男の子だーっ! どうせ垣根もいつか私にメイドさんのこすぷれさせて恥ずかしいことさせるんだきっと!! あんな欲望丸出しのこと、私は恥ずかしくてできる気がしないっ!! ばかばかばかばか垣根のえっち!!」

 

「オイちょっと待て! それは誰の欲望だ、もしかして土御門か!?」

 

垣根が真守の口から出た衝撃発言に思わず大声で訊ねるが、真守は垣根の腕の上でバタバタと暴れる。

 

「あぶねえ真守、落ち着け!」

 

垣根は暴れる真守を落とさないために地面に優しく降ろして、真守のことを(なだ)めにかかる。

 

「何してもいいからその後はぎゅってしてなでなでしてって言った!」

 

真守は垣根に向けて両手を広げ、抱きしめるのを強要する。

 

「ああっもう、分かった! 悪かった、真守! な?」

 

垣根は真守をぎゅっと抱き寄せてよしよしと頭を撫でる。

ちなみに真守が泣き始めたのでびっくりした林檎は、深城が抱き寄せて耳と目を塞いでいるので今の様子は伝わっていない。

何が何だか分からないままなので林檎は深城の腕の中で疑問符をずっと上げており、深城は苦笑していた。

 

「……べつに」

 

垣根に慰められていた真守は、垣根の顔を見ずに垣根の胸に顔をうずめたままぽそっと呟く。

 

「なんだ?」

 

垣根が真守の機嫌を損ねないようにするために、真守に接するいつもの態度の三割増しくらいで優しく問いかけると、真守は垣根のジャージの布を握り締めながら告げる。

 

「…………べつに、怒ってないから……垣根、いじわるだったけど……でも、いじわるするって私のことだいすきってことだから…………ゆるしてあげる…………」

 

(あ。マジでイジメても抱きしめて頭撫でりゃ機嫌取れんのか)

 

垣根は自身の嗜虐心に火が付くのを感じた。

だが即座に垣根が悪いことを考えていると気が付いた真守がじろっと自分を睨み上げてくるので、垣根は真守のことをぎゅっと抱きしめる。

 

「そうだな。愛あるイジメはいいよな」

 

「調子乗るな」

 

「いやお前が言ったんだろうが」

 

「……調子乗るな」

 

真守は垣根のツッコミを聞きながらもすりっと垣根に頬を摺り寄せる。

幸せそうに自分に甘えてくる真守が愛おしくて、垣根は真守の腰を引き寄せて抱きしめる。

 

「あのーここ病院なんでいちゃいちゃしないでくれるかなあ。というか林檎ちゃんがいるからやめてくれなあい?」

 

深城は未だ深城の胸に抱かれて状況が分かってない林檎がいると伝えて、二人の世界に浸るのを強制的に止めさせて現実に帰還させた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「大覇星祭も終わりだねえ」

 

最終日。

深城は糸引き飴の糸を口から垂れさせている林檎と手を繋ぎながら、りんご飴を食べて微笑む。

深城は現在大覇星祭の最終日ということもあって外出が許可されているが、明日から本格的な検査が始まるので数日マンモス病院に泊まることになっている。

そのため深城は林檎に数日間会えないので、林檎と一緒に大覇星祭の最後を全力で楽しんでいた。

 

「楽しかった。朝槻、かっこよかった」

 

「そうだねえ。真守ちゃんかっこよかったねえ」

 

深城と林檎はにこにこと真守の話で盛り上がり、そんな深城と林檎の後ろで真守と垣根は並んで歩いていた。

真守の手にはかき氷が握られており、垣根の手にはプラスチックカップに入ったジュースが握られているので手は繋いでいない。

それでも寄り添って幸せそうに歩いているので、カップルであるということは周りになんとなく気が付かれていた。

 

「……深城、あれ何してるの?」

 

そんな真守と垣根の前で、林檎は目の前の広場でキャンプファイアーを中心として学生たちが輪を作って踊っているのを指さして深城に問いかけた。

 

「ん? あれはフォークダンスだねえ」

 

深城が顔を上げてそう答えると、林檎はきょとんとしたまま首を傾げた。

 

「ふぉーくだんす?」

 

「そういう踊りがあるんだよぉ。男女で踊るの!」

 

「へー」

 

林檎が踊っている学生たちを物珍しそうに眺めていると、垣根はフォークダンス会場の近くに見知った少年を見つけた。

 

「あれ上条じゃねえの?」

 

「ん? 本当だな。上条!」

 

垣根が呟くので真守が呼ぶと、誰かと待ち合わせていたらしい上条が顔を上げた。

 

「おう、朝槻! 垣根! それに源白も……ええとその友達もか!」

 

上条はその場から動かずに手を振ってくる。待ち合わせしているから動けないのだ。

そのため四人が上条へと近づいた。

 

「上条はこれから踊るのか? もちろん女の子?」

 

「ああ、そうだよ。借り物競走の時にお守り借りた子にお礼に一緒に踊ってくれないかって頼まれたんだ」

 

「へえ。その相手は一体どこにいやがるんだ?」

 

垣根はこのカミジョー属性とかいうのがあると言われているこの女たらしにまた引っかかった少女がいるのかと呆れながら辺りを見回し、上条に頼んできた後輩を探す。

 

「後から来るって言ってたぞ。垣根は朝槻と踊らねえの?」

 

「あ?」

 

「垣根はそういうの好きじゃないから」

 

真守が上条の問いかけに機嫌悪そうに声を上げた垣根のフォローをするので、上条はふーんと声を上げる。

だが次の瞬間、上条は真守へと顔を近づけてじーっと見つめた。

 

「なんだ? 何かおかしいか?」

 

「いや、ずっと気になってたんだけどよ」

 

真守が怪訝そうな顔で問いかけると、上条は顎に手を当てて真剣な表情で真守に訊ねてきた。

 

「……なんか雰囲気変わった?」

 

「へ」

 

真守が小首を傾げると、上条は顎に手を当てるのをやめて腕を組んで真守をじろじろと見る。

 

「いやー数日前からなんか変わったなーって気がしてて。正確には……大覇星祭三日目くらいから」

 

「「……、」」

 

真守は上条の洞察力に絶句して、垣根は上条の洞察力に目を見開いて固まる。

 

「べ、別に変わってない!! 私は、正常! 正常だ!!」

 

真守が顔を真っ青にしてそう主張すると、上条は首を傾げながら真守を見た。

 

「そうなのか? ……まあ、俺の推察なんて当てにならないからなあ。朝槻がそう言うんだったらそうなんだろうな」

 

だが真守がそう言うのであればそうなのだろうと上条が納得すると、真守はそれが正しいと何度もこくこく頷いて肯定した。

 

「そそそそそう! 別に変わってない!! ちょっと二日目の事件が大変だっただけで、なんともない!!」

 

「あー確かに二日目の事件は大変だったなあ。あれは流石に死ぬかと──」

 

そこまで上条が言いかけた時、早足で二日目の事件の中心にいた御坂美琴が近付いてきた。

そしてガッと上条の手を美琴は掴み、真っ赤な顔で涙目で上条を見上げた。

 

「へ?」

 

上条が声を上げる中、美琴は上条を連れて無言でずんずん進んで上条と共にフォークダンス会場へと入っていく。

 

「連れて行かれたな」

 

「後輩の子って美琴だったのか? なんか色々あったように感じるけど……」

 

真守と垣根は目の前から消えていった上条と美琴を見つめながら呟く。

そして真守は上条と美琴が踊る様子を、かき氷を食べながらじぃーっと見つめていた。

垣根がちらっと見ると、真守は楽しそうだなーとか、いいなーとか思ってそうだった。そのため垣根はチッと舌打ちをしながら、真守から少しだけ残っているかき氷をひょいっと奪い取る。

 

「垣根?」

 

そして奪ったかき氷と自分が飲んでいたジュースを深城に預けると、真守の手を引いてスタスタとフォークダンス会場へと向かう。

 

「か、垣根!?」

 

「源白、林檎。そっから動くなよ」

 

「うん、行ってらっしゃい」

 

「真守ちゃん! 楽しんできてねえ!」

 

深城と林檎が見送る中、真守はずんずんと進んでいく垣根に慌てて声を掛ける。

 

「か、垣根。別に嫌だったらいいんだから。ちょっといいなって思っただけだから、別に垣根に強要したいわけじゃ、」

 

「うるせえ。踊ってやんだから文句あるか?」

 

「…………な、ない」

 

真守は垣根に連れられてフォークダンス会場へと行くと輪に入って垣根とフォークダンスを始める。

真守は顔を赤くしながらもはにかみながらも嬉しそうに笑っており、そんな真守が見られて垣根はふっと柔らかく笑う。

美男美女の超能力者(レベル5)カップルがフォークダンスを初々しい様子で踊っているので周囲の注目を集めていたが、突然、わぁぁと悲鳴が聞こえてきた。

 

「え?」

 

真守が声を上げてそれと一緒に垣根が振り返ると、丁度白井黒子が上条当麻にドロップキックをして立ち上がっているところで、近くにいた美琴が驚愕して固まっていた。

 

「…………ふふふっ」

 

垣根は白井黒子の御坂美琴好きに呆れていたが、隣から真守の楽しそうな声が聞こえてきたので真守を見た。

 

真守は笑っていた。

幸せそうに、それを噛み締めるように。少し寂しそうに目を細めながらも。

楽しそうに鈴の音を転がすような軽やかな笑い声をあげていて笑っていた。

垣根はそんな真守を見て、愛しくなって切なくて。そしてこらえきれずにその頬にキスをした。

 

「なっ!」

 

真守は垣根にキスをされて慌てて辺りを見回すが、美琴と上条、それと白井に注目していた周りは見ていなかった。

 

「お前が恥ずかしがるからちゃんと人目気にしたんだぜ?」

 

「……だからっそれでもダメだからっ! 人前でしないでって言った!!」

 

真守が頬を赤く染めて恥ずかしがるので、垣根は真守の頭に自分の頬を寄せて甘く囁く。

 

「俺はこれからも変わらずに、俺がしたい時にお前にキスしてやる」

 

「だっだからそれじゃダメって、」

 

真守が目を泳がせてダメだと再三に渡って主張すると、垣根はちろっと真守の首筋を舐めた。

 

「!?」

 

真守はそれを受けてビクゥッと体を跳ねらせて硬直した後、驚愕で腰が抜けて足に力が入らなくなる。

 

「よっと」

 

そんな真守を、垣根は地面に尻餅をつく前にひょいっと抱き上げた。

 

「満足か?」

 

「……っもう、お腹いっぱい…………」

 

垣根はふにゃふにゃと恥ずかしそうにしながら目を泳がせている真守を見て、満足そうに笑った。

 

「お前との大覇星祭、案外楽しかったぜ」

 

「! ……私は、とっても楽しかった!」

 

垣根が楽しかったと言ってくれたので、真守はにぱっと満面の笑みで応える。

 

学園都市で七日間行われる大覇星祭。

真守にとっての初めての大覇星祭は、色々なことがありつつも垣根との仲をより一層深める形で無事に幕を閉じた。

 




垣根くん、真守ちゃんのためならフォークダンスだろうとなんだってしてくれます。太っ腹。
これにて大覇星祭篇は終了です。
次回、九月三〇日事件篇、開幕。

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