とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一一八話、投稿します。
次は一二月一六日、木曜日です。


第一一八話:〈逢瀬翻弄〉でも幸せで

「それでな、垣根。林檎は昨日、ついにガレットを自分で作ることに成功したんだ。ちょっと焦げてしまったけど、とってもおいしかったんだぞ」

 

真守は垣根と第二二学区の地下街の中を手をつないで歩きながら、ここ数日で起こったことを話していた。

林檎は元々食事への関心が高かったが、深城が不在だったことを理由に料理を始めた、という話だった。

最初は火を使わないで電子レンジ調理などをやっていたが、昨日の朝食はついに林檎の大好きな料理であるガレットに林檎が手を出したと、真守は垣根に林檎の成長が嬉しくて幸せそうに説明する。

 

「そうか。お前もそれくらい食事に関心があったらいいんだがな」

 

「さ、最近はちゃんと食べてるぞ」

 

焦りながらも主張する真守が愛しくて垣根が真守に笑いかけると、真守は垣根の顔からあからさまに目を()らした。

 

「……何か気に入らねえの?」

 

「あ。いや。……その、垣根。今日から冬服着てるから……かっこよくて……」

 

真守はちらちらと垣根の服装を見ながら呟く。

今日から学園都市は全校で冬服の慣らしを始めたので、昨日まで全員が夏服だったが様変わりして冬服になっているのだ。

真守も黒を基調としたセーラー服に変わっており、垣根も学園都市の五本指に入るエリート校の冬服に袖を通している。

 

「ふーん」

 

垣根が嬉しくてにやにやと笑って真守に顔を近づけると、真守は垣根が近付いてきたことによって、より直視ができなくなり、恥ずかしそうにしながら目を泳がせる。

 

「だ、だって。初めて見たからかっこよくて……べ、別にいいだろっしょうがないだろっドキドキしちゃうんだからっ」

 

「お前もかわいい。良く似合ってる」

 

垣根が真守の耳でそう甘く囁くので、真守は耳を押さえながら顔を真っ赤にして恥ずかしそうに身をよじる。

 

「は、恥ずかしい……けど、ありがとう。かきね……」

 

 

(((チッ。リア充が……!)))

 

 

道行く学生から美男美女の超能力者(レベル5)カップルに殺意が向けられているが、人から注目される事に慣れている二人は特に気にしないで歩く。

それにそこら辺の表で生活している人間の殺意なんて痛くもかゆくもないし、気にもならないのが本音だ。

そのため真守たちは柔らかい甘い雰囲気の中、幸せそうにして真守の携帯電話を受け取りに行くために地下街を歩いていた。

 

「さっきのご飯、とてもおいしかった。フランス料理ってやっぱり上品だよな。とても繊細で優しい味だったから私も美味しく食べられた」

 

心理定規(メジャーハート)も客に教えてもらったっつってたな。まあアイツは高給取りの人間捕まえてるから間違いはねえだろ」

 

「うん。後でお礼言わないとな」

 

「──ゲコ太とこの子を一緒にするな!!」

 

そこで見知った人物の怒鳴り声が聞こえてきて、真守と垣根は顔を見合わせていたが、そちらを見た。

 

「ゲコ太はこの子の隣に住んでいるおじさんで、乗り物に弱くてゲコゲコしちゃうからゲコ太って呼ばれてんのよ! こんな簡単な違いが分からないほどアンタおっさんだったワケ!?」

 

「……そのゲコ太おじさんのキャラ付けは本当にラヴリーなの?」

 

携帯電話ショップの前にいたのは美琴と上条で、何故か美琴はマスコットキャラクターとして一部の人間に大人気なゲコ太の設定について、若干引き気味の上条に力説していた。

 

「あ。……垣根、手ぇ離して」

 

真守は知り合いの前で恋人繋ぎを垣根としているのが恥ずかしくなり、垣根と繋いでいる手をゆすって垣根にお願いする。

だが垣根は離すどころか、ぎゅっと強く握りしめた。

 

「御坂に上条じゃねえか。こんなところで何やってんだ?」

 

「垣根!」

 

真守が顔を真っ赤にして垣根の名前を呼ぶので、美琴と上条は知っている人物たちの声が聞こえてきて真守と垣根を見る。

 

美琴と上条の視線の先には、当然として垣根と恋人繋ぎをして恥ずかしがっている真守と、しれっとした顔で見せつけるかのように真守の手を握っている垣根がいた。

 

二人は真守と垣根の顔を交互に見た後、恋人繋ぎをしているのを確認して、

 

「「やっとくっついたのか……」」

 

と安堵と呆れを見せた様子で同時に声を上げた。

 

「や、『やっと』ってなんだ!? 『やっと』ってぇ!!」

 

真守が物申したいと言った風に声を荒らげると、上条と美琴は二人して顔を見合わせる。

 

「いやー。垣根って大覇星祭中ずっと朝槻の競技見てたじゃん。移動する時だってずっと一緒だったし俺、それで付き合ってないってちょっとおかしいなあって思ってたんだよ」

 

「私は夏休み前、あんたたちとセブンスミストで初めて会った時からくっつくだろうなって思ってたわ」

 

「な、夏休み前!?」

 

美琴が言っているのは『虚空爆破(グラビトン)事件』の現場となったセブンスミストに、真守が夏に必要としているものを買いに行ったら途中で垣根と会って、そのままデートのような形で店を回っていた時のことだ。

幽霊状態の深城も一緒にいたにはいたのだが、それを美琴は知らないので、その時素直に『何もなさそうだけどそのうちくっつきそう』と感じていた。

 

そういやあの時から真守のことを意味合いは違うが好ましく思ってたか、と考えている垣根とまったくその気がなかった真守のリアクションを見て、美琴と上条は『やっぱり垣根(さん)から(せま)ったのかー』となんとなく考えていた。

 

「それで! ……そういう二人も、どうしてデートしてるんだっ!?」

 

「で、でーと!? ち、違うわよ!!」

 

真守が恥ずかしくて顔を赤らめてそう叫ぶと、美琴は大袈裟に慌てる。

 

「そうそう。大覇星祭の賭けの罰ゲーム中。ペア契約してゲコ太ストラップが欲しいんだと」

 

美琴が慌てている隣で、上条はこれからもっと振り回されるのか、と気落ちしながらも説明した。

 

「そそそそそうよ! ゲコ太が欲しいの!!」

 

「ストラップ?」

 

「あーなんか『ハンディアンテナサービス』って知ってるか?」

 

美琴の動揺しながらの答えに真守が小首を傾げると、上条が真守に質問してきた。

 

「……あの災害時以外はイマイチ実用性がないマイナー過ぎるあの制度? それがどうしたのか?」

 

『ハンディアンテナサービス』とは真守が言ったように災害時に頼りになる仕組みで、携帯電話が中継アンテナになるという代物だ。

 

災害時にアンテナが使えなくなってしまっても近くの人間とバケツリレーのように通信を飛ばして連絡を取りたい人物と連絡を取るもので、災害時用なため音質などに気を配っていないという欠点がある。

だがあくまで非常事態用の仕組みなのでそこまで力を入れないのは当然なのだ。

 

それに利用者が全員、携帯電話の電源をオンにしてなくてはうまく機能せず、しかもアンテナとして電波を発信し続けるのでバッテリーを異常に消耗するという欠点もある。

 

日常生活で使わないサービスについて真守が頭の中で考えていると、上条が携帯電話ショップのガラスの壁に張られているポスターに視線を向けた。

 

真守と垣根も視線を向けると、そこには『ペア契約ならさらに! 通話料割安! さらに男女ペアなら特製ゲコ太ストラップをプレゼント!』と書かれており、その隣には美琴が好きなマスコットキャラクター、ラヴリーミトンのゲコ太の写真が載せられていた。

 

垣根はその張り紙を見ていたが、そっと美琴に目を向けた。

 

「マスコットが欲しいっつうのを建前にして、上条とペアになりたいのか?」

 

「ゲコ太が欲しいに決まってるでしょぉがぁぁぁ!!」

 

垣根の問いかけに美琴は顔を真っ赤にして叫び、前髪からバチバチと電気を散らす。

そんな美琴を他所に、上条はそこで真守を見た。

 

「で? 朝槻と垣根はデートしてるのか?」

 

「うん。デート、だけど。……携帯電話を取りに来たんだ。大覇星祭の時に壊れてしまって今まで代替機使ってて」

 

真守はそう言って垣根と繋いでいない手でポケットから携帯電話を取り出す。

それは『代替機』とでかでかとラベルシールが張られている二つ折りの携帯電話で、あからさまに型落ちしているものだった。

 

「こんな携帯電話を使わなければならないなんて耐えられなくて、ここ数日誰とも連絡を取らなかったくらいだ……」

 

真守が寂しそうにフッと笑うので、上条は真守がよく教室で情報機器の雑誌を読んでいるのを思い出す。

 

「おお……流石ガジェットオタク……筋金入りだな」

 

「と、いうワケで行くぞ」

 

真守はそこで感心する上条の前で垣根に声を掛けて、ごく自然に店内へと入っていく。

 

「……私たちも行くわよ!」

 

そして本物カップルと偽物カップルは目的のものをゲットするために揃って入店した。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「はー新しいケータイ……っ嬉しい、新品のケータイ……っ!」

 

携帯電話を受け取るだけだった真守は契約に時間がかかる上条と美琴に別れを告げて、うきうき顔で携帯電話ショップを後にする。

 

「よかったな」

 

「うん! このケータイ気に入ってるからとってもうれしい。帰ってバックアップ取ってたデータを全部移してー自分用に改造してーそれで垣根とおそろいのストラップ付けて──……」

 

真守にしては珍しい、キラキラした瞳で真守が楽しそうに携帯電話のセットアップの仕方を饒舌(じょうぜつ)に喋る姿を見て、垣根は柔らかく微笑む。

 

「楽しいか?」

 

「うん、楽しい!」

 

真守は垣根の問いかけに上目遣いで見上げてふにゃっと微笑む。

 

「そっか。良かった」

 

垣根は真守の頭にポンと手を乗せて優しく撫でる。

真守が垣根に頭を撫でられて恥ずかしそうに笑っていると、突然軍人が走るような規則的な軽い足音が聞こえてきた。

プロっぽいその足音に垣根が即座に反応して、真守を庇うために真守と恋人繋ぎしていた手で真守のことを自分に抱き寄せた。

真守はびっくりしつつも垣根と一緒に辺りを警戒した。

 

すると目の前から、何故かF200R、通称『オモチャの兵隊(トイソルジャー)』を構えたミサカが走ってきた。

 

「ミサカ? 一体どうしたんだ?」

 

「あなたでしたか、とミサカは辺りを警戒して上位個体を探しながら答えま──」

 

真守が声を掛けるとミサカは辺りを見回しながら真守に話しかけるが、その途中でピタッと言葉を止める。

現在真守は、垣根と恋人繋ぎをして抱き寄せられて庇われている状態だ。

その様子をきちんと視界に入れたミサカは、ガシャーンと派手な音を立てて銃を地面に落とした。

 

「ミ、ミサカ……?」

 

真守が心配になって問いかけると、ミサカはわなわなと震え、無表情ながらもショックを受けた雰囲気を醸し出して呟く。

 

「……勝、ち組……!!」

 

「え」

 

「た、確かにミサカよりもウェストは細いのに胸は大きいという生粋のアイドル体型のあなたはミサカよりも遥かに優秀……! そ、そんな人間が恋人を持っていない方がおかしい、とミサカは何故今まで気が付かなかったのだろうと愕然とします……!」

 

「あの、ミサカ……?」

 

ミサカが突然震え出してワケの分からないことを言い始めたので、真守は垣根と繋いでいた手を離してミサカに近づき、俯いたミサカの顔を覗き込む。

ちなみにミサカは真守よりも少し身長が大きいがどんぐりの背比(せいくら)べ程度なので、覗き込むことに不都合はない。

 

「で、では既に左手薬指に()める特別な指輪を貰っているのですか、とミサカは食い気味に訊ねます!」

 

「は!?」

 

真守が覗き込んでいると、ミサカがいきなり顔を上げて突然爆弾発言をするので、真守は顔をぼふッと真っ赤にする。

その後ろで垣根は『(かたよ)った知識をクローンに教えたのはどこのどいつだよ』とため息をつきつつも、カエル顔の医者のことを思い出していた。

 

「ば、ばばばばばばかなことを言うなっ! それは恋人を跳躍(ちょうやく)する行為だぞ!!」

 

真守が焦って赤くした顔で叫びように告げると、ミサカは無表情のまま首を少しだけ傾けた。

 

「? どういうことですか、とミサカは恋人以上に深い関係性は最早夫婦しかないと考えながらも問いかけます」

 

「そうだよ! 左手の薬指にするのは婚約指輪か結婚指輪だ!!」

 

「婚約……では、あなたはそちらの方と婚約はしていないということですか、とミサカは純粋な疑問をあなたにぶつけます」

 

「こっ!?」

 

真守はミサカからの純粋無垢な質問に顔を真っ赤にするだけではなく、涙目になってぷるぷると震える。

 

「してないっ! というか、私も垣根もまだ結婚できない年齢だからぁ!!」

 

「成程。結婚できるようになったら婚約指輪をもらうということですか、とミサカは興味津々に訊ねます」

 

「────……っ──……っ!!」

 

真守はミサカの問いかけに追い詰められてしまって口をパクパクとするが言葉が上手く出ない。

真守が結婚という言葉に翻弄(ほんろう)されてぐるぐると目を回している様子が可愛くて、垣根はくつくつと顔を()らして笑う。

 

「うぅっなんでお前はそんな(かたよ)った知識を持ってるんだっ! 一体どこの誰に教わった!!」

 

「あのカエル顔の方です、とミサカは何故あなたがそこまで動揺しているか分からずに告げます。ちなみにあの方は一般男性は女性が痩せている方が優秀であり、優秀な女性を男性は選択する傾向が強いと言っておりました、とミサカは彼から教わった知識をひけらかします」

 

「それ偏見! 男に対する偏見だから!!」

 

「そうですか、とミサカはあなたが言うのであれば納得します」

 

自分の主治医である冥土帰し(ヘブンキャンセラー)(親代わりのような人)の知りたくない趣味趣向を知ってしまって真守が顔を真っ赤にしていると、ミサカは薄く頷き、真守の後ろで真守の翻弄されっぷりを面白そうに見ていた垣根に顔を向けた。

 

「ではあなたはこの方を何の基準で選んだのですか、とミサカは男子学生であるあなたに問いかけます」

 

「!?」

 

ミサカは生まれて一年も経っていない体細胞クローンの一体である。

学習装置(テスタメント)でしか知識を仕入れていないので、彼女たちは無垢であると言える。

無垢だからこそ──時々、とんでもない爆弾発言をするのはご愛嬌というヤツだ。

真守が口をパクパクとさせていると垣根は至極真剣な表情をして目を斜め上に寄越す。

 

 

「運命的だったから基準とかねえな。それに俺に基準なんて通用しねえし」

 

 

垣根が真守を翻弄させるために至極真顔な表情を作って告げると、真守はへなへなと足から力が抜けてぺたっと地面に座り込んだ。

 

「運命的……とはえらく抽象的な表現です、とミサカは苦言を(てい)します。具体的にどのようなところが運命的だと思ったのですか、とミサカは追加説明を求めます」

 

ミサカは背の高い垣根の顔を懸命に見上げ、無表情ながらも真剣な表情をして問いかける。

 

「俺は俺を変えてくれるようなかけがえのない存在が欲しいなんて全く思ってなかった。それなのに、俺と接点持ったソイツがそう思わせてくれた。だから欲しいと思った、それだけだ」

 

垣根が真剣な表情をして告げるので、ミサカは良い情報が入手できそうだと意気込んで垣根への追及を続ける。

 

「欲しい……欲しいとは手に入れたいという意味ですか? 意中の殿方にそう思わせれば勝ち、ということですか、とミサカは身を乗り出して訊ねます」

 

「そうだな。後、男の本能的に欲しくなった。欲に直結だが、男にそう思わせたら勝ちだろ」

 

 

「いやぁー垣根ぇ!! もうヤメテ!! お願い、何も知らないクローンに変なこと教えないでぇ!!」

 

 

真守が耐え切れなくなって叫ぶと、垣根はくつくつと嗤い、ミサカは『男の本能とは……?』と疑問符を浮かべていた。

 

純真無垢なクローンに翻弄(ほんろう)されて顔を真っ赤にした真守は、そこでもうこれ以上の恥ずかしさを感じるにはいかないとして、意地悪く笑う垣根を引っ張ってミサカに別れを告げてその場を後にした。




とあるの原作12巻ってオールスター大集合みたいな感じで、アニメで描かれなくてもほとんどの主要人物が出てきていいですよね。
12巻で出てきたミサカ一九〇九〇号ちゃん可愛い。
超電磁砲で感情表現が豊かになっている理由が明かされていましたが、完全に後付けでもとても良かったです。

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