とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一三一話、投稿します。
次は一二月三〇日木曜日です。


第一三一話:〈理想先駆〉は助言をし

浜面仕上は廃墟となったビルで一人震えていた。

彼は武装無能力集団(スキルアウト)だったが、とある任務に失敗して『アイテム』の下っ端として働くことになった。

『スクール』が襲った素粒子工学研究所へ『アイテム』の構成員を送り届けた次の仕事は、遺体の焼却処分だった。

 

ただの遺体ではなかった。

浜面は中身を見てしまったのだ。

正確には、焼却処分を言い渡してきた麦野沈利に見せられたと言った方が正しかった。

 

 

浜面が見せられたソレは、変わり果てた姿をしたフレンダ=セイヴェルンだった。

 

 

『ああ、見ちゃったの。あんたも「アイテム(わたし)」を裏切ったらそうなるから』

 

麦野から放たれた言葉によって浜面は震えが止まらない。

ただただ目の前にある実験動物廃棄用の電子炉を体を震わせて見つめるしかできない。

その中で、三五〇〇度の熱によってDNA情報すら破壊されて燃えていくフレンダ=セイヴェルンを見つめる以外何もできない。

麦野は味方だろうが容赦しない。

ただただ裏切ったら殺されて、全て焼かれて消えていく。

 

「はまづら」

 

そこで浜面は背後から名前を呼ばれてビクッと震えた。

ゆっくりと振り返ると、そこには『アイテム』のメンバーである滝壺理后が立っていた。

 

「……あ、」

 

なんて言えばいいのだろう。いや、言えないに決まっている。

麦野沈利が仲間であるフレンダを『粛清』して、そして自分は麦野に反抗して殺されるのが怖くて、仲間の死体を焼いているなんて口が裂けても言えない。

 

「はまづら。どうしたの?」

 

浜面は滝壺から目を()らしてガタガタと震える。

力があったとしてもなかったとしても、あの超能力者(レベル5)には勝てない。

 

「……人の命ってなんなんだろうな」

 

浜面の口からそんな空虚な言葉が(こぼ)れ落ちた。

 

「俺たちの命って……一体何なんだろうな。学園都市は何考えてんだろうな。なんでこんなに命が安くなっちまったんだろう。……なんで……」

 

浜面の情けない声を聞いても、滝壺理后は何も言わなかった。

ただ自身の命の軽さ、そして他の人間の命の軽さに震えているしかない浜面を、ただじぃっと見つめていた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

(『メンバー』の追撃はなし。やっぱ『滞空回線(アンダーライン)』をアドバンテージにして人員を()いたか。『グループ』と『ブロック』の方も争ってるみてえだし、こっちはすぐに終わらせるか)

 

垣根は『アイテム』のアジトがある第三学区の個室サロンの中を堂々と歩いていた。

カブトムシという学園都市を網羅する独自ネットワークがある今、『アイテム』がどこにアジトを構えていようが、見つけることなど垣根には造作もないことだ。

目的のVIP室まで向かうと、垣根は一息ついて扉を蹴り破った。

 

未元物質(ダークマター)……!!」

 

中でくつろいでいた麦野沈利が自分のことを憎たらしそうに呼ぶ。

その(かたわ)らには絹旗最愛と目的の滝壺理后、そして『アイテム』の構成員ではない男が一人いた。

 

「名前で呼んで欲しいもんだな。俺には垣根帝督って名前があるんだからよ」

 

能力名で呼ばれるのはあまり好きではない。

お前はそれしか能がない人間だと言われているようで、学園都市につけられたラベルこそが自分の全てだと言われているようでムカつく。

だが自分の能力には絶対の自信があるのは確かで、それを誇りには思っている。

当然だった。

真守が教えてくれた『無限の創造性』は何もかもを叶えることができるし、そもそも圧倒的な『創造性』を持つ自分の能力が誇れないはずがない。

 

「その右腕は……『ピンセット』か」

 

麦野が呟いた通り、垣根の右手には誉望に組み直させた、金属製のグローブの中指と人差し指からガラス質の爪が伸びた『ピンセット』が装着されていた。

『ピンセット』は元々クローゼットほどの大きさだったが、盗難防止のために肥大化させられていただけであって、これが本来の形状なのだ。

 

「カッコイーだろ。勝利宣言しに来たぜ」

 

「ついさっきまでさんざん逃げ回ってたくせに、態度ががらりと変わってくれたわね」

 

「別に変えてるつもりはねえけどな。最初からお前なんて眼中にねえ」

 

垣根が余裕たっぷりでいると、絹旗は近くにあったテーブルを片手で持ち上げて垣根に不意打ちとして投げつけた。

バガン! という轟音が響き、テーブルが粉々に砕け散ったが、垣根の表情に変化はなく、静謐(せいひつ)な雰囲気を(まと)ったままだった。

一つの信念のために動いているような鋭さを保持したままだ。

 

「痛ってえな」

 

垣根は特に気にも留めずにそう告げると、絹旗を見た。

 

「そして、ムカついた。まずはテメエから粉々にしてやる」

 

垣根が笑いながらそう宣言すると、絹旗は即座に麦野とアイコンタクトを取り、小さな拳に窒素装甲(オフェンスア-マー)(まと)わせて多大な破壊力でサロンの壁を容赦なくぶち抜く。

そして滝壺と浜面の手を取って逃げ出した。

 

「テメエが俺に敵うわけねえだろ、格下。さっきの戦闘で思い知っただろうが」

 

垣根は面白くもなんともなさそうに歯ぎしりする麦野を見つめる。

そして未元物質(ダークマター)の翼を広げて、事実を率直に告げる。

 

「お前の原子崩し(メルトダウナー)は俺の未元物質(ダークマター)に効かないからな」

 

そう。

以前まで垣根の未元物質(ダークマター)の翼は超電磁砲(レールガン)までは楽々耐えられたが、麦野沈利の原子崩し(メルトダウナー)には耐えられなかった。

だが今は違う。

垣根帝督は朝槻真守の真髄(しんずい)を見た時に、自分の能力が本当はどんなもので、どこからその力を引き出しているのかを悟った。

そのため、この世界の攻撃は既に垣根帝督には効かないのだ。

 

「とっとと終わらせるぞ」

 

垣根は視線を鋭くして、戦闘に入った。

結果は言うまでもない。

麦野沈利は垣根の猛攻までもいかない攻撃に耐え切れずにあっさり沈黙した。

 

 

 

 

垣根は悲鳴が至るところから上がる個室サロン内を歩いていく。

『スクール』の構成員や下部組織に指示しているから、死人は出ていないハズだ。

垣根が死人が出ていないか懸念していると、個室サロンの廊下を走ってきた絹旗にばったり出くわした。

 

「よお。『暗闇の五月計画』の生き残り。『優等生』?」

 

「……流石に超事情通ですね、()()を引き取ってるくらいですから」

 

絹旗の言う彼女とは、『暗闇の五月計画』で同じ被験者だった杠林檎のことだ。

絹旗最愛は元々、大気制御系能力者であり、一方通行(アクセラレータ)の演算パターンを植え付けられたことにより一方通行の『反射』よろしく、自分の周囲に能力で作った防御フィールドを自動展開させる窒素装甲(オフェンスア-マー)を手に入れた。

 

だができるようになったと言っても、彼女にとってそれが『限界』だ。

 

何故なら『暗闇の五月計画』の真の目的は一方通行(アクセラレータ)と同等の超能力者(レベル5)を生み出すこと。

だからこそ彼女は『優等生』止まりで『卒業生』にはなれなかった。

 

「麦野はどうしたんですか?」

 

「ああ。大したことなかったな」

 

垣根が心底どうでも良さそうに告げると、絹旗は心の底から理解した。

垣根帝督にとって麦野沈利は遊びの相手にもならないのだ。

同じ超能力者(レベル5)でも、今の第一位と第三位までとそれ以下の能力者には絶対的な壁があると言われている。

だがその壁は今や、どこまで高い壁か分からなくなっているのではないのだろうか。

絹旗が圧倒的な力の差に内心で焦っていると、垣根は軽い調子で口を開いた。

 

能力追跡(AIMストーカー)はどこにいる? こっちが知りたいのはそれだけだ。場所を教えりゃ見逃してやる」

 

「そんな交渉に応じるバカがいるとでも思うんですか?」

 

「誇りと死を天秤にかけて誇りを選ぶってのか? 嫌いじゃねえな、そういうの」

 

垣根は口で(たた)えながらも嘲笑すると、絹旗は視線を鋭くした。

 

「言っておくが大能力者(レベル4)窒素装甲(オフェンスア-マー)は俺の未元物質(ダークマター)にゃ勝てねえよ。分かってんだろ?」

 

絹旗はそれでも臨戦態勢を解かない。

垣根は一つため息を吐いて、胡乱げに絹旗を見つめた。

 

「しょうがねえ。──じゃあな」

 

その瞬間、絹旗は未元物質(ダークマター)による単純な爆発を受けて吹き飛ばされた。

 

「っと」

 

垣根は吹き飛んで気絶したまま落ちるはずだった絹旗の服を引っ張って引き上げる。

 

「まあ使えそうだな」

 

垣根は一人で面白くなさそうに告げると、そのまま絹旗を連れて歩き出す。

 

垣根にとって『アイテム』の殲滅は心底面白くなかった。

自分の邪魔をしなければ特に気にも留めなくていい人間だからだ。

垣根にとっての敵は『アイテム』なんかじゃない。

 

垣根が敵と認識しているのは、真守を利用しようとする学園都市と、真守を亡き者にしようとしているローマ正教の『神の右席』だ。

学園都市の方はなんとかなるが、ローマ正教の『神の右席』に関しては一筋縄ではいかない。

 

早くこんなことを終わらせて真守のもとに行かなければならない。

それでも垣根は全く焦っておらず、逆に酷く冷え切った精神で行動していた。

もしかしたら冷え切っているというより、消耗して何も感じなくなっているかもしれない。

 

そう自嘲しながら垣根が歩いていると、エレベーターの前では必死に逃げようとしている滝壺理后と下部組織の男がいた。

 

「よお。お前がサーチ能力者で良いんだな」

 

垣根がこちらに気づいてない滝壺と男に軽快に声を掛けると、二人は汗を頬から流しながら垣根を見た。

そこで垣根は脅しの意味を込めて小脇に抱えていた絹旗を二人に向けて放り投げた。

 

「絹旗!!」

 

下部組織の男は絹旗を見て悲鳴を上げ、明確な焦りを見せた。

 

「(……お前はエレベーターに乗って下に降りろ)」

 

「(……でも、はまづら)」

 

「(……どっちみち、ここでテメエを見捨てて『スクール』から逃げたって、そんなことすれば今度は『アイテム(麦野)』に潰されんだ! 板挟みなんだよ、ちくしょう!!)」

 

垣根は話をしている二人を見て、面白くなさそうに顔をしかめた。

あの二人は自分たちを庇い合っている。

だが能力追跡(AIMストーカー)をここで潰さなければ、どこまでも『アイテム』は自分たち『スクール』を追ってくる。

 

「ッチ。嫌な役回りだぜ。まるで俺が悪者みたいじゃねえか。……でもまあ、俺のモンを取り戻すためには、仕方ねえよな?」

 

垣根が舌打ちをしながら笑って脅すと、浜面は滝壺を到着したエレベーターへ突き飛ばそうとしたが、滝壺はそれを避けて浜面を逆にエレベーターに突き飛ばした。

 

「テメエ、何してん──」

 

「ごめん、はまづら」

 

滝壺は閉じていくエレベーターの中で座り込む浜面を見つめる。

 

「でも、電子炉の時から考えてた。はまづらにはあんな『灰』になってほしくない。……大丈夫。私は大能力者(レベル4)だから。無能力者(レベル0)のはまづらをきっと守ってみせる」

 

滝壺はそう告げると、垣根に体を向け直した。

滝壺は垣根を見て、思わずきょとんとしてしまった。

 

垣根が心底嫌そうな顔をしていたのだ。

その顔の意味が滝壺には分からない。

それでも自分は守りたい人がいる。

 

そのため滝壺は(ふところ)からそっとそれを取り出した。

小さなピンクのタブレットケースだ。

その中からさらさらとした白い粉を取り出すと、それを一気に呑み込んだ。

 

「テメエッ!!」

 

垣根が声を上げるのを聞いて、滝壺はおかしいな、と思っていた。

何故か垣根帝督は自分が『体晶』を使った瞬間、酷く傷ついた表情をしていたからだ。

でも、もう遅かった。

滝壺は垣根のAIM拡散力場を乗っ取ろうと能力を暴走させた。

 

 

そして滝壺理后は自爆した。

 

 

「クソッ!」

 

垣根は能力を暴走させ、AIM拡散力場経由で自分を乗っ取ろうとして倒れた滝壺理后に近づく。

 

現在、垣根のAIM拡散力場は垣根一人に宿っているものではない。

垣根はAIM拡散力場を媒介にしてネットワークを構築した、未元物質(ダークマター)で造り上げた人造生命体群であるカブトムシのネットワークに自身を接続している。

そのため垣根帝督は人と比べ物にならない多量のAIM拡散力場を保持しているのだ。

その余りあるAIM拡散力場をどうこうして能力を乗っ取ることなど、能力を暴走させたとしても大能力者(レベル4)の普通の能力者である滝壺理后には最初から不可能なことだった。

 

(最悪だ……っこの女、体晶使って能力暴走させてサーチしてたのか……っ!)

 

垣根は倒れた滝壺を仰向けにさせ、楽な体勢を取らせると容体を見る。

 

(まだ『崩壊』には至ってねえ。だが『まだ』ってだけだ。後一回か二回チカラを使えば確実に『崩壊』する)

 

滝壺が使ったのは体晶。

だがそれはただの通称で、本来の名前は『能力体結晶』。能力の暴走を引き起こす化学物質だ。

 

源白深城は、体晶を使用させられて過去に一度死んでいる。

真守は深城を死なせた世界を憎み、深城を死なせる原因を作った大人たちを片っ端から殺し回った。

体晶とは、真守が罪を犯す元凶となった因縁深い代物なのだ。

 

幻想御手(レベルアッパー)事件』の時に木山春生という研究者と真守と垣根は対決した。

その時木山が関わった能力体結晶を使った『暴走能力の法則解析用誘爆実験』の記憶を見て、真守が錯乱状態となった時に垣根は知ったのだ。

 

だから真守は『暴走能力の法則解析用誘爆実験』の被験者になった 置き去り(チャイルドエラー)の子供たちを必死で救おうとしていた。

自分が本当の意味で救えなかった源白深城と重なって無視できなかったからだ。

 

能力追跡(AIMストーカー)、滝壺理后をこのままにしていたら体晶を使ったという理由で死亡する。

真守が深城を一度喪うことになった原因で、この少女の命を喪わせてはならない。

 

「大丈夫かしら? いまあなた、能力乗っ取られそうになってなかった?」

 

垣根が滝壺の脈を取っていると、そこに銃を手にした心理定規(メジャーハート)が現れた。

どうやら掃討が終わったらしい。

 

「今の俺の能力をAIM拡散力場経由で乗っ取れるわけねえだろ。心理定規(メジャーハート)。お前、今すぐに冥土帰し(ヘブンキャンセラー)に連絡を、」

 

垣根がそこまで言いかけた時、エレベーターが到着する音が響いて扉が開いた。

 

「滝壺っ!!」

 

そこに現れたのは、滝壺理后が必死で逃がした『浜面』という下部組織の男だった。

 

「丁度いい。お前、この女を第七学区の一番デケエ病院に連れて行け」

 

「はっ!?」

 

垣根が素早く告げると、浜面は混乱した様子で垣根と心理定規(メジャーハート)を見た。

 

「なっ何言ってやがる!! 滝壺をこんなにしたのはお前たちだろ!?」

 

男はレディース用の拳銃をバッと取り出すと構える。

だが垣根に標準を合わせるか心理定規(メジャーハート)に標準を合わせるか迷っている間に、垣根がはっきりとした事実を告げた。

 

「こいつは自爆したんだよ」

 

「……じ、ばく?」

 

「お前、知らねえのか?」

 

「どういう意味だよ!? 何言ってんだ?!」

 

垣根は滝壺の近くに落ちていた体晶が入ったタブレットケースを拾って、浜面に向かって放り投げた。

 

「『体晶』……正確には『能力体結晶』ってモンだ。この女が使ってるのは知ってたか?」

 

浜面は手の中にあるピンク色のタブレットケースを見ながら必死で頭を動かす。

 

「……能力を発動させるためにいつも使ってた。けど……!」

 

「『体晶』は意図的に拒絶反応を起こし、能力を暴走させる化学物質だ。それは『絶対能力者進化(レベル6シフト)計画』に使われていた亜種みてえなモンだ。大抵の場合はデメリットしかないが、ごく稀に『暴走状態の方が良い結果が出せる』ヤツもいる。この女もそういう能力者だったんだ」

 

「能力を暴走させてる……!?」

 

能力を暴走させる。

そんなことをすれば体に負担がかかるに決まってる。

それなのに滝壺は能力を使い続けた。

その事実を教えられて浜面が固まっていると、垣根は滝壺に目をやりながら告げる。

 

「こんな状態なら長くは保たねえ。それに処置を施したとしても今日から一生能力を使わないっつーなら大丈夫だろうが、後一回か二回チカラを使えば、この女は確実に『崩壊』する」

 

「なっ……死、死ぬ……滝壺が……?」

 

「死なせたくなかったら第七学区の一番デケエマンモス病院に行け。間に合わないって思ったら近くの病院に行って冥土帰し(ヘブンキャンセラー)に繋げろっつったら良い。そんで相手が出たら『体晶』使って死にそうだって言え。分かったか?」

 

「……な、なんなんだよ。滝壺を追いつめといて、なんでそこまで救おうとするんだよ」

 

浜面が至極真っ当な疑問を持つと、垣根がしかめっ面のまま毒吐く。

 

「こっちにも色々事情があんだよ。『体晶』使って死人出して助けましたなんて言ってハイ、そうですかで終われねえんだよ」

 

「……あの子と関係あるの?」

 

そこで静観していた心理定規(メジャーハート)が口を開くと、垣根は心理定規を見ずに答えた。

 

「お前は知らねえか。源白がこれで死んだ。あいつの全ての始まりだ」

 

垣根が心理定規(メジャーハート)に訳を話すと、心理定規は息を呑んだ。

その様子で浜面仕上は全てを悟った。

どうやら垣根帝督は大切な誰かを助けようとしており、その誰かは滝壺と同じように『体晶』を使って違う大切な誰かを喪っているのだ。

 

「お前、この女が大事か? 俺がいるって分かってんのに帰ってきたんならそうだよな?」

 

垣根は畳みかけるように浜面に問いかける。

 

「……あ、ああ」

 

「だったら早く連れてけ。そんでもう『闇』になんて関わらせるな。行くぞ、ここでの仕事は終わった」

 

「本命の仕事に取り掛かる前に、機材でチェックしてくれるかしら。あなた、あの子にAIM拡散力場経由で『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を乱されたんでしょう? 彼女のもとに辿り着いても、あなたが暴走したら意味ないじゃない」

 

「そんなこと言われなくても分かってる。誉望たちは?」

 

「既に撤収作業に入らせているわ」

 

「分かった」

 

垣根帝督はそこで滝壺理后を抱き上げた浜面仕上を一瞥(いちべつ)すると、その場を後にする。

 

垣根帝督は大切なものを取り戻さなければならない。

だから人の心配をしている場合ではないから浜面仕上と滝壺理后に構っている暇ではない。

それに。

 

(自分が守らなくちゃなんねえモンは自分で守れ。そうじゃなきゃこの先守り抜くなんて不可能だ)

 

垣根はそう心の中で呟くと、その場を後にする。

 

『ピンセット』は手に入った。

追ってくる暗部組織も撃退した。

ここまで前哨戦だ。

ここから、真守を取り戻すための戦いが本当に始まるのだ。

垣根は気合を入れて、その場を後にした。

 

大切なモノを取り戻すために戦う垣根帝督の姿を、浜面仕上は呆然と見つめていた。

だが、浜面も守らなければならないものができた。

 

二人のヒーローはそこで交錯し、そして再び自分の道を歩き始めた。

大切な存在のそばにいるために。

大切な存在の命を守るために。

二人は自分の戦いへと身を投じていった。

 




フレンダ死亡について。
『流動源力』はフレンダ救済が目的ではなく、あくまで原作に準拠しながら垣根帝督を救うという物語ですので、今後の『アイテム』の展開と新約でのフレンダの『遺産』の話を考えて、フレンダには原作通りに死亡してもらいました。
でもフレ/ンダにはなりませんでした。それだけが救いです。

そして垣根くん、真守ちゃんのことが大事なので滝壺ちゃんのことを見過ごせませんでした。
浜面も垣根くんの行動指針を理解しましたし、駒場利徳を殺した一方通行より、険悪ではありません。……多分。

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