とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一三四話、投稿します。
次は一月六日木曜日です。


第一三四話:〈純愛存在〉と再び会話を

垣根は真守が使っている部屋を訪れた。

自動扉をくぐって垣根が部屋に入ると、真守は変わらずにベッドの上で丸くなって眠っていた。

 

部屋の家具は全て真守が好むようなシンプルな家具が置かれている。

そんな家具に囲まれて天蓋付きのベッドで眠っている真守は、神さまとして本当に大事に扱われているらしい。

 

垣根はすぅすぅと寝息を立てて眠っている真守のベッドへと近づいて、そっと腰を下ろした。

真守は自分の高校のセーラー服を着ており、少し乱れているそれを垣根は直してやる。

すると垣根はあることに気が付いて薄く目を見開いた。

 

真守の右手薬指。

 

そこには垣根が真守に渡した、光の角度で虹色に光り輝く精緻な模様が刻まれた銀のペアリングが嵌められていた。

 

垣根はそれを見て胸が詰まってしまう。

真守は絶対能力者(レベル6)になっても人のことを大切に想う気持ちを忘れていなかった。

 

自分のことをちゃんと愛してくれていた。

 

それが本当にうれしくて。

垣根は躊躇(ためら)いがちになりながらも、真守の頭をそっと撫でた。

頭を(おお)っている真守の黒い艶やかな猫っ毛は何も変わっておらず、前と同じ手触りで垣根は酷く安堵した。

 

「真守」

 

垣根は眠っている真守に柔らかく笑いかけて髪の毛を撫でてやる。

 

「源白も、林檎と一緒に来るからな」

 

垣根の告げた通り、現在『スクール』の三人が深城と林檎を迎えに行っている。

三人で迎えに行かせたのは統括理事会が何かしてくるかもしれないからだ。

当初の予定では垣根も一緒に行くはずだったが、心理定規(メジャーハート)が大丈夫だから真守のそばにいればいいと気を使ってくれた。

垣根は真守の頭を撫でるのをやめて、真守が眠っている姿を見つめていた。

 

ここ数日、本当に苦しかった。

真守はずっと不当に扱われていて、苦しいはずなのに苦しいという感情を持てないようになっていたのだと思っていた。

まさか緋鷹が真守を統括理事会から隠し通していたとは夢にも思わなかった。

 

ずっと真守の無事を祈っていた。

 

だから真守が大事に扱われていて、心底ほっとした。

緋鷹が言うには、絶対能力者(レベル6)へと進化(シフト)した真守は自分の不必要な機能をスイッチを切り換えるようにオンオフできるらしい。

そのため緋鷹は真守が寝ているのではなく『休眠状態』だと表現したのだ。

 

 

垣根がずっと真守を眺めていると、その時がやってきた。

 

 

ぴくッと真守のまぶたが動き。

 

 

真守は、ゆっくりと目を開いた。

 

 

「真守」

 

垣根は真守の名前を震える声で呼んだ。

すると真守は、待ち焦がれていた愛しいその声に目を見開いた。

真守はもぞもぞと体を動かして起き上がると、澄んだエメラルドグリーンの瞳で垣根を見上げた。

 

「垣根」

 

いつものダウナー声ながらも無機質さを秘めている声音だった。

その声音で真守が本当に人から離れてしまったのだと垣根は気が付いた。

でも、真守の本質は何も変わっていないとも気が付かされた。

 

垣根はどうすればいいか分からなくなってしまった。

 

たくさん言いたい事があった。

たくさん抱きしめてやりたかったし、頭を撫でて、それでキスもして、できればそれ以上もしたかった。

 

だがいざ目の前にすると、どうしたらいいか分からなかった。

 

垣根がどうしようもなく動けないでいると、真守がスッと手を出した。

 

そして、その小さな手で垣根の頬に手を添えてそっと撫でて、柔らかく微笑んだ。

 

「来てくれてありがとう」

 

その言葉を聞いた瞬間、垣根は真守の手を引っ張って抱きしめた。

 

脂肪がないながらも女の子らしい柔らかな感触に垣根の手は震える。

それでも真守がここにいると感じられて、胸が締め付けられる思いだった。

真守は垣根に抱きしめられると、両手を動かして垣根の腰に手を回した。

そしてゆっくりと垣根の背中を腰の下から撫でて、垣根の頑張りを(いたわ)った。

 

「……真守」

 

垣根が切なくなって思わずぽそっと呟くと、真守は『ん』と小さく(うな)る。

 

「またねって言った。だから会えるって分かってた」

 

真守はそう言って垣根の胸へとすり寄って告げる。

 

「でも……やっぱり寂しかった」

 

垣根は真守の言葉を聞いて切なくなり、真守を抱きしめる腕に力が入った。

 

「真守」

 

垣根がそう告げると、真守はすり、と垣根の首筋に頬を摺り寄せる。

猫のような仕草が本当に真守だと垣根は理解できて、ほっと安堵の息を吐いた。

垣根はそこで真守をぎゅっと抱きしめて、真守の存在を一身に感じて口を開いた。

 

「会いたかった」

 

「私も」

 

「お前が心配だった」

 

「心配してくれてありがとう、垣根」

 

真守が柔らかく薄く笑って呟くと、垣根は真守の頭に頬を摺り寄せた。

 

「また会えて、よかった」

 

「うん、私も良かった。……とても良かったぞ」

 

真守は垣根の広い背中をギュッと抱きしめて告げる。

 

「垣根、私の気持ちは変わらないから。でも垣根が変わってしまった私のそばにいるのが辛くて、離れたくなったら離れてもいい。私はそれで構わない」

 

真守がゆっくりと(さと)すように告げるので、垣根は真守の腰に手を回したまま体を少しだけ離して、真守の顔を見た。

 

「ここまで必死こいてお前のところまでたどり着いたのに、そんなことできるわけねえだろ。舐めてんのか」

 

真守はそんな垣根を見て、くすくすと小さく笑う。

 

「垣根、相変わらず口悪い。……なあ、垣根」

 

「なんだ?」

 

真守は垣根を見上げて、ふにゃっと笑った。

 

「だいすき。それだけは変わらなかったよ」

 

垣根は真守が『それだけは』と言ったのが本当に苦しかった。

それでも、真守が自分のことを好きでいてくれて本当に良かったと垣根は思う。

別に真守が自分のことをもう愛してくれなくても、そばにいることができれば垣根はそれで良かった。

真守がひとりぼっちにならないで、非道な扱いを受けなければそれでいいと思ってた。

それでもやっぱり、想われている方が断然幸せだった。

 

「ああ。俺も愛してる。当たり前だ」

 

垣根は真守から離れてそっと頬に手を寄せる。

 

「キスしてもいいか?」

 

一応垣根が問いかけると、真守は即座に薄く頷く。

 

久しぶりに感じた真守の唇の感触は変わらなかった。

 

それが本当に良かったと、垣根帝督は心の底から思っていた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「緋鷹から聞いていると思うがな。垣根」

 

真守は自分のことを抱きしめたまま離さない垣根の背中を撫でながら口を開く。

 

「学園都市が隙を見せたことで生まれた争いと並行して、私が私を狙う学園都市の各所と争いをしてたら、どんなに最低限のダメージを心掛けても学園都市には致命的になる」

 

垣根帝督率いる『スクール』は真守を探し出すために動いていたが、『ブロック』という組織も動いており、アレイスターの居城である『窓のないビル』に奇襲を掛けようと学園都市の外から傭兵を(つの)っていた。

 

そんな『ブロック』を殲滅する目的で動いていた『グループ』を、『メンバー』はこの混乱に乗じて殲滅しようとしていた。

そんな『メンバー』は『スクール』にもちょっかいをかけてきたが、いくら『滞空回線(アンダーライン)』という最強の情報網を使えようと超能力者(レベル5)という最強戦力には勝てない。

 

暗部全体での争い。

あの戦いは何も垣根が引き起こしたものではなかった。

学園都市が隙を見せた事で、起こるべくして起こった暗部抗争だった。

そんな暗部抗争と絶対能力者(レベル6)である真守を巡る争いが同時に起こったら、それこそ学園都市は大ダメージを喰らう。

 

「私と同じでそれが分かっていた緋鷹がな、隠れるところを確保しているって言ったんだ。だからここにいた」

 

もし真守が身を隠さずに普通に過ごしていたら、真守を利用しようとする学園都市の上層部が攻撃を絶対に仕掛けてくる。

だが真守が身を隠すことで、真守を狙う者たちは『攻撃』ではなく『捜索』という方針を取るのだ。

攻撃をしなければ被害は出ない。捜索ならば水面下で事を進める。

だから学園都市が致命傷を受ける事はない。

 

真守は絶対能力者(レベル6)となって、この先自分に対する学園都市の動きがどのようになるか分かっていた。

緋鷹は限定的な未来しか()ることができないが、それでも真守が絶対能力者(レベル6)として顕現した時に学園都市で何が起こるか想定できていたので、対処するために既に動いていた。

 

九月三〇日。

真守は垣根から貰った指輪を絶対能力者(レベル6)進化(シフト)した余波で壊さないために、傷つけないように細心の注意を払って演算し、遠くへと放り投げた。

その指輪を拾いに行った時に、緋鷹は真守にしか分からない形で接触してきたのだ。

そして真守は緋鷹と共に『施設(サナトリウム)』に身を隠した。

それが、絶対能力者(レベル6)へと進化(シフト)した九月三〇日から今日までの真守の足取りだった。

 

「垣根が来てくれるか保証がない。それが()えないって緋鷹は言ってたけど、私は絶対に来てくれるって分かってた。絶対に来てくれて、私の味方になってくれるって信じてた」

 

真守はずっと信じて待っていてくれた。

真守が人の心を忘れてなくて本当に良かったと、垣根は真守と会話をしながらずっと思っていた。

 

「でもな、待ってるの苦しかった。だからここ数日間はずっと『眠って』た。みんなにすごく会いたかった」

 

垣根は寂しい思いをしていた真守のことを想って、真守の背中をそっと撫でた。

 

「約束通り、俺はお前のそばにちゃんと来たからな」

 

その手の感触が完璧に垣根のものだったので、真守は背中を撫でられて気持ちよくて目を細めながら、垣根を見上げた。

 

「垣根も、ここ数日間何があったか聞かせてくれるか?」

 

垣根は話をした。

人を傷つけて真守を求めたこと、その時死人を極力出さなかったこと。

それでもやっぱり死人が出てしまって。それを自分はどうしても止めることができなかったこと。

 

「俺がお前に辿り着くためにやったことだ。死人が出たことはお前のせいじゃない。絶対に気にするな。分かったな?」

 

「垣根、闇咲逢魔みたいなこと言ってる」

 

真守が言っているのは八月三一日、呪いを受けた愛する人間のためにインデックスを襲った神道系魔術師のことだ。

彼も愛する人間に罪を背負わせないために『俺のためにやったことだ』と再三に渡って宣言していた。

 

「……しょうがねえだろ。本気でそう思ってんだから」

 

闇咲逢魔と同じことを言ってしまってもしょうがないと垣根が顔をしかめると、真守は垣根の頬に手を添えて撫でながら控えめな微笑を浮かべる。

 

「垣根、『アイテム』の子たちのこと気に掛けてるのか?」

 

真守の問いかけに垣根は硬直する。

真守には今日あったことを全て話したのだ。

その中で『アイテム』と交戦して麦野沈利に粛清されたフレンダ=セイヴェルンのこと、自爆して生死の境をさまよっている滝壺理后のことももちろん包み隠さず話した。

 

「……。……ああ、そうだな。はっきり言って気にしてる。お前を取り戻す戦いでお前の全ての始まりを生み出しちまわないか……気になってる」

 

「じゃあ会いに行くか?」

 

垣根が真守の言葉に目を逸らして告げると、真守がそんな事を言いだした。

 

「は?」

 

「私がいればその子を助けられる。だから行こう。垣根」

 

真守は絶対能力者(レベル6)である前に人体にエネルギーを通して操ることができる超能力者(レベル5)だった。

化学物質に侵されて瀕死になっている人間の命を繋ぐことなど容易い。

それになんと言っても真守は能力体結晶について詳しい。

それでも垣根は、真守の言葉にたっぷり固まってから声を絞り出した。

 

「……お前、ここから出られるのか?」

 

自分のために真守が行動してくれるのは嬉しい。

それでも垣根は学園都市に実験材料として狙われている真守の立場が一番心配なのだ。

真守はそんな垣根の心配を消し飛ばすためにふにゃっと笑った。

 

「垣根が力を示してくれたから学園都市も下手な手を出せなくなった。だから私が外に出ても様子見するしかない。私を巡って垣根たちを巻き込んで、大きな争いを生み出すことは得策じゃないって上層部も分かってる。だから密かに動けば大丈夫だぞ」

 

垣根は自分の頬に手を添えている真守の手を取って優しく握る。

 

「……分かった」

 

「じゃあ行こうか、垣根」

 

真守は垣根の優しい言葉に柔らかく目を細める。

 

「……その前に、源白と林檎には会えよ」

 

「うん。分かってるぞ、大丈夫」

 

真守は垣根を安心させるために微笑んだ。

その笑みが変わっていなくて、垣根は本日何度目か分からない安堵の笑みを浮かべた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「真守ちゃん!!」

 

部屋に入ってきた深城は真守を見て、うるうると瞳をうるませる。

 

「深城、久しぶり」

 

真守が無機質な声音で告げても、深城は驚き一つ見せずに真守へと突進する。

 

「真守ちゃぁあああん!!」

 

凄まじいスピードで真守が座っていたベッドに突進し、真守をぎゅっと抱きしめる。

真守の隣に座っていた垣根は、とんでもないスピードで近づいてきた深城に反射的に体をのけぞらせた。

深城はそんな垣根を気にせずに真守にすりすりすり寄ってえっぐえっぐとしゃくりあげながら告げる。

 

「苦しかったでしょ、寂しかったでしょお? 不自由してたでしょぉ、もう大丈夫だからねえ!!」

 

「うん」

 

真守が頷くと、深城は真守をぎゅうぎゅうと谷間に溺れさせるかのように抱きしめて後頭部を撫でる。

 

「真守ちゃん、だいすき。愛してる。この世で一番だいすきこの世で一番大切にしてる!!」

 

「……むぐ、知ってる」

 

真守が胸から顔を出して告げると、真守のことをじぃっと正面から捉えた。

 

「真守ちゃんの幸せ、守ってあげるからねえ!」

 

「ありがと」

 

深城が自分のことを思って決意しているのを真守が聞いていると、そこに林檎がトテトテやってきてベッドの前に立つ。

そして、ていっと真守の膝を軽く叩いた。

 

「朝槻のばか。なンで約束破ったンだ!! おしおきだァ、おしおき!!」

 

林檎はぽかぽかと何度も軽い拳で真守を叩く。

深城を迎えに行って一緒にご飯を食べる約束を真守は林檎としていたが、それを破ったのだ。

若干一方通行(アクセラレータ)口調になっているのは林檎の感情が高ぶって、一方通行の口調に引っ張られてしまっているからである。

林檎は真守に一方通行(アクセラレータ)の演算パターンに合わせて脳の電気信号を最適化してもらったため、根底には一方通行の思考パターンがある。

気持ちが向上して口調が引っ張られるのは、一方通行(アクセラレータ)の演算パターンを植え付けられた人間の特徴だった。

 

「うん。おしおき受けてやる」

 

真守が深城に離してもらって自分を叩く林檎を抱っこすると、林檎はふん、と鼻を鳴らしてぷりぷり怒った様子でそっぽを向いた。

 

「朝槻」

 

だがすぐに真守を見つめて、真守の名前を愛おしげに呼んだ。

 

「なんだ?」

 

真守が林檎の呼びかけに応えると、林檎は真守の頭をなでなで撫でながら微笑む。

 

「大丈夫。朝槻は神さまになってもきれいだよ」

 

真守は自分の頭を控えめながらも大切そうに撫でる林檎の手を感じて、柔らかく目を細めた。

 

「お前のその言葉、本当にとっても嬉しかったんだ。ありがとう」

 

「あら、随分と良い暮らしをしていたみたいね」

 

真守が三人に囲まれていると、そこに『スクール』の構成員たちがこぞってやってきた。

 

心理定規(メジャーハート)、久しぶり」

 

真守がダウナー声ながらも無機質に告げると、心理定規(メジャーハート)はそれに少しだけ目を見開いた。

それでもニコッとすぐに笑って真守へと近づく。

 

「ええ、久しぶり。……あなた、本当に変わってないわね。安心したわ」

 

「うん」

 

「朝槻さんっ!!」

 

真守が頷くと、うずうずとしていた弓箭がわぁぁんと声を上げて真守に近づく。

真守は林檎をベッドの上に乗せると、両手を開いて弓箭に抱き着くように促す。

弓箭はふるふると震えながらも真守の細い腰に手を回す。

それが真守のいつもの抱き心地だと分かると、弓箭はひっぐ、としゃくりあげてボロボロと涙を零す。

 

「不自由はしてませんでしたかっ!? 不当な扱い受けてませんかっ!! これからは猟虎が朝槻さんのそばにいます、絶対に一緒にいますからっ! もう大丈夫ですよ!!」

 

「ありがとう」

 

真守は戦闘の証として全身から火薬の臭いが立ち込める弓箭の後頭部を、優しく撫でる。

そんな真守に、誉望がおずおずと声を掛けた。

 

「その、……ご無事で何よりです。朝槻さん」

 

「ありがとう、誉望」

 

真守は誉望にお礼を言いながら、そこで誉望の手を小さな手で取った。

 

「「!?」」

 

垣根と誉望が同時に目を見開く中、真守は柔らかく微笑む。

 

「これからも垣根がお前のこと良いように扱うと思うけど、何かあったらちゃんと言うんだぞ。私にとって、お前はとっても頼りになる人だから」

 

「……ハッ、ハイッ!」

 

誉望は裏返った声で真守に応えながら『早く離してください』と言わんばかりに震える。

真守はくすくすと笑って誉望から手を離した。

そして、とんでもない顔で嫉妬している垣根を見た。

 

「垣根。誉望のことイジめちゃダメだぞ?」

 

真守が柔らかく声を掛けてくるが、垣根はブチ切れ寸前で真守を見た。

 

「真守。お前、イジめたおされてえのか……?」

 

垣根が地を這う声を出すので、真守は小さく笑う。

 

「垣根、相変わらず嫉妬深いな。心配しなくても私は垣根の恋人だぞ?」

 

「心配とかじゃねえよただ単に気に食わねえんだよ一生他の男に触るな」

 

垣根が早口でまくしたてるので、真守はくすくすと笑う。

 

「相変わらず独占欲強めね」

 

心理定規(メジャーハート)は垣根を見てため息を吐く。

 

「……垣根さん、必死ですね。なんかちょっとかわいい」

 

弓箭は真守のお腹に抱き着きながらぽそっと呟き、女の子はセーフなんだ、と妙な優越感に浸って真守の薄い腹に頬を摺り寄せていた。

 

弓箭が真守に抱き着いていることもギリギリ許容範囲の垣根だが、格下の誉望は完全にアウトである。

 

いつもと変わらない調子で器が小さい垣根を見て、真守はくすっと小さく笑う。

 

そして自分が変わっても、変わらずに信じてくれている彼らの姿を見て、真守は安堵していた。

 




垣根くんたち、真守ちゃんと話ができました。
ここから本格的に真守ちゃん復活です。
次回、もう一人のヒーローが出てきます。


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