とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一四九話、投稿します。
次は一月二三日日曜日です。


第一四九話:〈強固意志〉を胸に秘め

垣根の目の前で起きてはならないことが起こっていた。

 

この世の誰よりも愛しくて、自分が守りたいと思っている存在が傷つけられている。

 

あれくらいで真守は死なない。

絶対能力者(レベル6)はそんなチンケなものじゃない。

だが圧倒的な存在であり、大切な女の子である真守が傷つけられたことで垣根は思考が停止した。

 

そんな垣根の前で、フィアンマは機能停止したように動かない真守を光の剣で突き刺して宙に縫い止めたまま、じぃっと観察する。

 

「……コレの扱いにはアレイスターも随分と手間暇をかけているな。こんなあからさまな枷をするとは。……そんなもので果たしてコレを(ぎょ)せるのか? ……いいや、コントロールできているからこそ、こうなっているのか……」

 

フィアンマが思考を巡らせている声を聞いた瞬間、垣根は衝撃から脱することができた。

 

「………………ま、」

 

垣根はひりつく喉を唾を呑み込むことで懸命に震わせる。

 

「真守!!!!」

 

真守の名前を垣根が叫んだ瞬間、真守の指先が垣根の叫びに呼応するようにぴくッと動いた。

 

そしてマリオネットが糸で動かされるかのように、左腕をカクカクとさせながらフィアンマへと向ける。

 

だがフィアンマはそんな真守の体中を縫い止めるかのように細い光の剣を何本も突き刺した。

 

ドスドスドスッっと、容赦なく真守の体を貫く音が響き渡り、真守の体はめった刺しにされる。

 

「…………っ真守を、離しやがれェえええええ────!!」

 

垣根は真守が蹂躙(じゅうりん)される姿に激昂し、辺りに展開していた数千体のカブトムシを一斉にフィアンマへと向ける。

 

「ほう。その力……お前がこいつの『対』か?」

 

フィアンマはカブトムシの大群を見つめながらニヤッと笑った。

 

その瞬間、一斉攻撃をしたカブトムシがフィアンマの右腕一振りによって粉々に打ち砕かれた。

 

あの物量を一瞬で打ち滅ぼしたフィアンマの右腕に上条は驚愕する。

 

フィアンマの右腕は相手によってその出力が変化しており、いつだってフィアンマの右腕の力は相手の攻撃よりも少しだけ上回るように出力が調整されている。

そのため攻撃した側は必ず勝てないようになっている。

敵対者がどんな力を持っていようとも、フィアンマの右腕は敵対者の攻撃を上回り、全て無視して一撃で撃破する。

RPGのコマンドに『一撃必殺』という項目があるようなものだ。

だからちまちま『パンチ』やら『キック』やらを出す人間には勝てるはずがない。

 

彼と戦って勝ち目はどこにもない。

それは垣根にも分かっていた。

だが絶対に譲れないものがある。

 

だからこそ垣根は自分が展開させたカブトムシの陰からフィアンマに急接近して、カブトムシが全滅してしまうことを見越して攻撃を放った。

 

フィアンマも不意の攻撃には右腕が反応できないかもしれない。

 

そこに一縷(いちる)の望みをかけた垣根は、未元物質(ダークマター)の翼による渾身の一撃を放った。

 

そんな垣根の攻撃を、フィアンマの右腕は簡単に撃破した。

 

フィアンマの第三の腕から凄まじい力が吐き出され、それによって吹き飛ばされた垣根は地面の上で何度もバウンドしてから家屋に突っ込む。

 

ガラガラと瓦礫が崩れる中、それでも垣根はもう一度飛び出した。

 

垣根は未元物質(ダークマター)の翼が三対の片方が全て無くなり、ボロボロになっていた。

見るも無残な姿で必死になって、勝てもしない相手に策もなく、無謀にも向かって行く。

そんな愚かで冷静さが掛けた行動を本来ならば垣根帝督は嘲笑する側で。

そんな能無しが取る行動を、垣根帝督は普段なら絶対に取らない。

だからなりふり構っていられなかった。

余裕なんてない。

ただ真守を傷つけた右方のフィアンマへの怒りと殺意だけで、垣根帝督は動いていた。

 

「ふざけんじゃねェエエエエエエエ──────!」

 

「おいおい。(つがい)を取られて激昂するなよ、()()()

 

フィアンマは叫び声を上げる垣根を嗤って、もう一度右腕を振る。

 

凄まじい速度で突っ込んでいった垣根はフィアンマによって再び吹き飛ばされ、家屋を幾つもぶち抜いてから沈黙した。

 

「垣根!!」

 

上条は吹き飛ばされた垣根の名前を呼ぶ。

そして右方のフィアンマをギンッと睨みつけた。

 

「フィアンマアアアアアアア!!!!」

 

上条は右手を振りかぶってフィアンマに向かって疾走する。

だが真守すら拮抗するのがやっとだった第三の腕に、上条は軽々と吹き飛ばされた。

右方のフィアンマは、真守を光の剣で宙に縫い付けたまま上条を見た。

 

「愉快なヤツだ。お前は本当に愉快なヤツだよ。多くの他者に触発されて自ら危地へと(おもむ)いておきながら、結局すべての成果や報酬はお前自身の中へと蓄積されていっている。それがとても愉快だ」

 

「何が、言いたい?」

 

上条は雪の上を転げ回って止まってから体を起こして、フィアンマを睨みつけた。

 

「お前は自分の行動が本当に正しいと確信を持っているのか?」

 

フィアンマは笑いながら上条に問いかけた。

 

「俺様の行動と、お前のこれまでの行動は根本的な所で何も変わらないよ。俺様は自身の問題を解決するために右腕を振るう。お前は自身の周囲の問題を解決するために右腕を振るう。だが俺様はお前と違って、自らの行動によって絶対的な善の到来が来るという確信がある」

 

上条は喋るフィアンマを睨みながら震える膝で懸命に立ち上がろうとするが、お尻が重くて立ち上がることができない。

 

「……そのために、インデックスが散々苦しめられても放って置けって言うのか。朝槻が傷つけられるのを見過ごせって言うのか。ふざけるんじゃねえよ!」

 

上条がフィアンマに噛みつくと、フィアンマはそんな噛みつきを特に何とも思わずに上条当麻を睥睨する。

 

「なら、それを止めるお前は善だと?」

 

「善かどうかなんて関係ない! お前が始めたクソくだらない戦争のせいで、どれだけの人が泣いていると思ってやがる!? インデックスが苦しんでいるんだ! 目を覚ますこともできない女の子のために戦おうと思うことは、そんなに悪いことかよ!」

 

上条が拳を振り上げながら自分の気持ちを吐露すると、フィアンマは獰猛に嗤った。

 

「愉快だな。そのセリフ。お前が嘘を吐き続けているシスターの前でも言えるのか?」

 

「……!」

 

フィアンマの言葉に全身に嫌な怖気が走った。

 

上条当麻がインデックスに嘘をつき続けているという右方のフィアンマの言葉。

 

それはつまり上条当麻が実は記憶を失くしていて、それを知って悲しむインデックスを見たくないから記憶があるフリをしているとフィアンマに知られたということだ。

 

「遠隔制御霊装を通して、あの女の意識は俺様と繋がる時がある。俺様の見聞きした情報があの女へ伝わることもある」

 

右方のフィアンマは真守を貫いている光の剣が飛び出している遠隔制御霊装を見つめながら嗤う。

 

「さあ、この状況で、この条件で。お前はまだ同じことを言えるのか? 間違っていても問題はない。本当にそう思っているのだとすれば、お前は何故あの女の前で白々しい演技を続けている?」

 

上条はその言葉に呆然とする。

危機感などなかった。

ただ、とある少女を支えているはずの砂の城がサクサクと削り取られて不安定になっていくのを感じていた。

それを感じていて、上条当麻は動けなかった。

 

「お前は自己満足であの女を庇っているようだが、あの女がそれを知ってどう考えるかはあの女次第だ。救いなのか、否なのか。ジャッジが下るのが楽しみだ」

 

フィアンマはそこで上条から視線を外して真守を見上げた。

 

「さて、問題はコイツだ。俺様の計画と干渉する恐れがあるし、機能停止から復帰されて再び邪魔されるのは面倒だ。となると、面倒だが手元に置いておかなければならないか……」

 

フィアンマは呟きながら、真守を光の剣で射貫いたまま高く(かか)げた。

 

「! 朝槻!!」

 

上条が叫びながら懸命に立ち上がろうとする中、右方のフィアンマは少し思案する。

 

「この翼は持ち運びには邪魔だな」

 

フィアンマは心底面倒そうに呟く。

 

 

そして真守の五対十枚の翼を『神の如き者(ミカエル)』の右手の象徴である第三の腕で(むし)り取った。

 

 

「Cemeit穢E我fel失──────…………」

 

真守は小さな口からブレた言葉による絶叫が響き渡らせる。

そしてガクガクと震えたかと思うと、再び機能停止するようにがくんとうなだれた。

 

その場にいた人間は息を呑んだ。

 

上条は大切な友人が傷つけられて。

そして十字教徒に連なる魔術師であるエリザリーナ、レッサーは別の意味で。

ローマ正教の最暗部と呼ばれる前方のヴェントは同胞であったフィアンマの横暴に、息を呑んだ。

 

絶対能力者(レベル6)である真守は一神教の十字教から見たら極めて冒涜的な存在だ。

 

だが十字教徒が真守を見て危機感や嫌悪感を覚えるのは、真守が完璧な救いの神だから。

 

すぐそばに信じれば救ってくれる神がいる。

だからこそ、少しでも心を真守に許してしまえば。

あの神が自らに救いの手を差し伸べてくれれば。

 

十字教の神など放り出して、真守という神を妄信してしまうかもしれない。

 

それほどまでに真守の存在は神々しかった。

だからこそ、十字教の人々は真守を見て危機感や嫌悪感を覚えるのだ。

 

そんな自分たちの信仰心が揺らぐほどの圧倒的な神として顕現している絶対能力者(レベル6)である朝槻真守。

 

その権能の象徴であるはずの純白と漆黒を互い違いに持ち合わせる翼。

 

それを右方のフィアンマは(むし)り取った。

 

その白と黒の翼は暗に善意と悪意の肯定を告げている。

善意も悪意も全て受け止めて救いを差し出す、とその翼は宣言しているようなものである。

それらを肯定していることがどんなに難しくどんなに尊いか、人々はそれを深く理解している。

 

その全てを許す背徳的で魅惑的な印象を受けるその翼を(むし)り取る。

 

力の象徴である翼をもがれるということは、神が人の手によって(おとし)められることを意味する。

 

フィアンマは十字教徒にとってこの世で最も冒涜的な存在に最も冒涜的な行いをしたのだ。

 

だからレッサーやエリザリーナ、そしてヴェントまでもが顔を悲痛で歪ませたのだ。

 

フィアンマに吹き飛ばされて沈黙した垣根しか知らないことだが、真守の絶対能力者(レベル6)としての象徴である翼にはとある役割があった。

 

それは演算機能を拡張するために外付けされた機構ということだ。

 

それを毟り取られたということは、拡張している脳の一部を無理やりもぎ取ることに等しかった。

 

フィアンマが(むし)り取って無造作に放り投げた翼は形を保つことができずに、白と黒の翼が抜け落ちて骨組みだけとなり、そんな無残な骨組みすらもぼろぼろと崩れ落ちていく。

 

抜け落ちた白と黒の羽根はひらひらと宙を舞って地面に落ちて、白と黒の光となってどろどろと溶けるように散っていった。

 

「面倒だが、これ以上の面倒事はごめんだからな。コレと天使の素体は貰っていくぞ」

 

フィアンマはその人間の両手で真守を俵抱きにして右手と左手で支えて肩に抱え上げると、サーシャ=クロイツェフの体を第三の腕で掴んだ。

 

幻想殺し(イマジンブレイカー)もいただきたいところだが、予期していないことにこの手は塞がってしまった。それにお前の右腕の特殊効果で阻害されてしまうし、ここまでが限度かな。簡単に死ぬなよ。その右腕には、用があるからな」

 

「待て!」

 

上条の制止の声を聴くことなく、爆風が辺りを凌辱(りょうじょく)せしめた。

上条がとっさにそれを右手で打ち消した時にはフィアンマは既にそこにいなかった。

 

「くそったれ…………っ!!」

 

上条の言葉が無情にも響き渡る。

 

右方のフィアンマはサーシャ=クロイツェフと朝槻真守を簒奪(さんだつ)して、その場から消えた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

自らも重症のエリザリーナだったが、それよりも優先する事があり、彼女は重症の身を懸命に動かして進む。

 

その行き先は垣根帝督がフィアンマによって吹き飛ばされて撃沈した家屋だった。

 

エリザリーナは数日前から垣根帝督と朝槻真守と一緒に国の防衛をしてきた。

朝槻真守が何かを欲してここに来て、垣根帝督は朝槻真守が何を欲しているのか知らないのに彼女を助けようとしていると、エリザリーナは聞かされていた。

朝槻真守と垣根帝督が互いに互いを想い合っているのを、エリザリーナは一目見て理解していた。

そして朝槻真守が垣根帝督に何らかの後ろめたいことを考えていることも、エリザリーナは察していた。

真守が垣根のことを想っているからこそ、真守は心苦しくしているのだとも、エリザリーナはなんとなく考えていた。

 

そんな互いを想い合っている二人はフィアンマによって引き裂かれた。

 

真守は絶対能力者(レベル6)だ。神々しいあの存在に死があると、エリザリーナには到底思えない。

それに真守は現在機能停止に(おちい)っているだけで、時間が経てば機能を回復するだろうとフィアンマは予想していた。

機能を回復されて何かの計画を邪魔をされ、その計画に真守の存在が干渉するのが面倒だからこそ、右方のフィアンマは真守を監視下に置いたのだ。

 

フィアンマには勝てる可能性が万が一になくても、真守が神である限り真に滅されることはない。

だから問題は垣根帝督の方だ。

垣根は人間である。

命の危機に瀕しているのは当然として、もしかしたら既に死んでいるかもしれない。

 

そう思ってエリザリーナが倒壊した家屋へと必死に向かうと、それを見て思わず硬直した。

 

垣根の右腕は肘の下からない。

そして左足も太ももの途中からなくなっていた。

横っ腹も大きく(えぐ)れているし、残っている内臓はメチャクチャに潰れていた。

 

 

だがそれでも、垣根帝督は生きていた。

 

 

エリザリーナはそこで垣根帝督の体が天使の肉体に近づいていることを悟った。

天使の肉体のように頑強になっていたからこそ、フィアンマのあの攻撃を二回受けても生きていたのだ。

その天使に限りなく近い頑丈な肉体。

 

それでも右方のフィアンマによって傷つけられた肉体を、垣根帝督は真っ白い物質である未元物質(ダークマター)で『修理』していた。

 

千切れた神経を未元物質(ダークマター)で繋ぎ合わせ、血管も足りない肉も機能を停止した内臓もその全てを補っていく。

 

その行いを『治療』ではなく『修理』だと感じたエリザリーナは驚愕の瞳のまま、固唾(かたず)を飲んで見守っていた。

 

そんな垣根帝督の周りに、垣根がカブトムシがわらわらと集まってきた。

垣根が自分の能力である未元物質(ダークマター)で造り上げた人造生命体群で、彼らを垣根は遠征に出していた。そのため右方のフィアンマの攻撃に加わらず、無事だったのだ。

 

そのカブトムシが集まってきたことによって、垣根帝督の『修理』はスピードアップしていく。

 

損傷した血管や神経を繋ぎ合わせ、内臓を補い、四肢を繋ぎ直す。

その全てに壮絶な痛みが走るはずなのに、垣根帝督は虚空を睨んだまま必死に演算を続けていた。

 

その黒曜石の瞳には、確かな信念が宿っているとエリザリーナは感じた。

 

朝槻真守を右方のフィアンマから取り戻すという、一つの強い意志が。

 

やがて五体満足の完全な体を手に入れた垣根は薄く息を吐き出して、カブトムシに服を作らせた。

 

彼がこれまで着ていたのと同じ服だったが、それら全てが純白でできていた。

 

そこで垣根帝督は歪ながらも、右方のフィアンマに攻撃される前の状態に完全に復帰した。

 

垣根が体を起こすと、それを慌ててエリザリーナが支えて抱き起こした。

 

「いきなり動くのは危険だわ!」

 

エリザリーナが声を荒らげるが、垣根はそんなことを気にしている暇ではない。

そのため垣根は重症であるエリザリーナの首をガッと掴んだ。

 

「グッ!!」

 

「すぐにこの体を動かすのは無理だ。慣らしが必要だからな。だから車を寄越せ。お前の大切なモンに手ェ出されたくなかったら大人しく差し出せ、いいな?」

 

呻くエリザリーナを睨みつけたまま、垣根は冷えた声で物品を要求する。

 

「一人で……行くつもり……っ?」

 

「一人でも行くに決まってんだろ!!」

 

垣根が怒声を上げると、エリザリーナは首を掴まれたまま薄く頷いた。

垣根は自分の要求を呑んだエリザリーナの首から手を離すと、即座に立ち上がった。

エリザリーナは首を押さえて必死に息をする。

 

「……さっきの、彼と……魔術師の女の子にも車両が欲しいと言われたわ。彼らと一緒に、行った方がいいんじゃない?」

 

「そうだな」

 

垣根は首を押さえてゲホゲホと咳をするエリザリーナの言葉に頷いた。

 

「上条の右手は役に立つ。それにフィアンマのクソはアイツの右手を狙ってやがる。餌として使えんだろ」

 

垣根は吐き捨てるようにそう告げると、地面に膝をつくエリザリーナを抱き上げた。

 

「え」

 

「お前に死なれたら困る。行くぞ」

 

垣根は冷えた声で痩せぎすのエリザリーナを抱き上げると、未元物質(ダークマター)で造り上げた体をぎこちなく動かしながらも上条たちがいるであろう広場へと向かう。

 

大切な存在が奪われて怒り心頭でどんな行動に出るか分からない垣根だが、どうやらまともな思考回路がまだ残っているとエリザリーナは心底安堵した。

 

でもやっぱり重症の女の首を絞めて脅迫するのは普通じゃない。

 

そう思いながらも、この怒れる支配者を刺激しないようにエリザリーナは大人しく垣根に抱き上げられ、上条たちのもとへと向かった。

 

 

 

「垣根!」

 

上条がエリザリーナをお姫様抱っこしたまま広場に戻ると、ヴェントの体の傷の手当てをしていた上条が立ち上がって垣根へと走ってきた。

 

「お前、大丈夫なのか?!」

 

「問題ねえ」

 

垣根は抱えていたエリザリーナをロシアの兵士に任せると、上条に声を掛けた。

 

「俺はフィアンマのクソ野郎のところに行くぞ、上条当麻。足手まといになんなよ」

 

垣根が上条を睨みつけるようにまっすぐ見つめながら宣言すると、上条は悲痛で顔を歪ませながらも頷いた。

 

(絶対に取り戻す……何を利用しても、何があっても、……必ず!)

 

垣根は強い決意を胸の中に抱き、右方のフィアンマに殺意を(つの)らせる。

 

上条当麻は遠隔制御霊装によって昏睡状態となったインデックスを救うために。

垣根帝督は世界が滅亡しようとそばにいることを誓った朝槻真守を取り戻すために。

 

それぞれ守りたいものがある二人は、大切なものを取り戻すために行動を開始した。

 


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