とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一五一話、投稿します。
次は一月二五日火曜日です。


第一五一話:〈本格戦闘〉を前にして

垣根帝督は一方通行(アクセラレータ)に初めて打ち勝ち、膝を突いている上条当麻とその隣に立っているレッサーへと近寄った。

 

そこには雪にまみれた毛布にくるまった打ち止め(ラストオーダー)が倒れていた。

 

上条は打ち止め(ラストオーダー)の熱を測るかのように額に右手の幻想殺し(イマジンブレイカー)によって触れており、打ち止め(ラストオーダー)は柔らかな表情をしていた。

 

そして上条は打ち止め(ラストオーダー)に目を向けるのをやめて近寄ってきた垣根を見上げる。

 

「九月三〇日。打ち止め(ラストオーダー)は源白を天使にするために精神を縛られてたんだってインデックスが言ってたんだ。でも今、源白は天使になってないよな? だったらコイツに負荷をかけている存在は別にいるはずだ」

 

垣根はそれを聞いて一人呟く。

 

「……源白の天使化に掛かった時よりもヤバい負荷、か。だったら最終信号(ラストオーダー)に負荷をかけてる存在に科学が通用しないのかもしれねえな。だから一方通行(アクセラレータ)最終信号(ラストオーダー)を救う手立てを魔術に定めて、ロシアに来た」

 

垣根はそこで気になる事があって口を(つぐ)んだ。

 

(問題は誰が一方通行(アクセラレータ)に魔術という手段があると教えたってことだ。……もしかして、最終信号(ラストオーダー)に負荷をかけてる存在ってヤツか? ……ありえない話じゃねえな)

 

垣根が考え込む中、二人の会話を聞いていたレッサーは尻尾を揺らしながら後方を見た。

そこにはエリザリーナ独立国同盟の人々が遠くから様子を伺っていた。

 

「この二人はエリザリーナ独立国同盟に任せるべきでしょう。彼らを連れてフィアンマのもとに行くなんてありえないですし」

 

「お前たちより俺の方が信頼が厚いからな。俺が話を付けてきてやる」

 

垣根はエリザリーナ独立国同盟の人々に、一方通行(アクセラレータ)打ち止め(ラストオーダー)を任せるために話をしに行く。

 

「垣根」

 

そんな垣根を上条が止めた。

 

「なんだよ」

 

垣根が振り返って上条を見ると、上条は打ち止め(ラストオーダー)のそばから立ち上がり、膝から雪を払いながら垣根に笑いかけた。

 

「お前、カッコよかったぞ。ヒーローみたいだった」

 

上条がいい笑顔で告げるので、垣根は嘲笑しながら告げる。

 

「はん。俺はそんなモンじゃねえよ。せいぜい反英雄(アンチヒーロー)ってところだな」

 

自分がヒーローというものになれるのであれば、それはいつだって真守のためであって、それが真っ当な正義のヒーローだとは思えない。

そう思って垣根が笑うと、そんな垣根を見ながら上条は垣根らしいと笑った。

 

「そっか」

 

そんな上条から視線を外して、垣根は歩き出す。

こんなところで立ち止まっている場合ではないからだ。

そんな垣根に目を向けていた上条だったが、そこでレッサーを見た。

 

一方通行(アクセラレータ)のためにも手がかりを残しておきたい。レッサー、紙とペンあるか?」

 

上条がレッサーに問いかけると、レッサーは上機嫌に尻尾を揺らしながら前傾姿勢を取る。

 

「いいですよ。お安くしてあげます」

 

「もしもし? 何をお安くするんですか?」

 

上条がレッサーの言葉に顔をしかめている中、垣根は既にエリザリーナ独立国同盟の人間とロシア語で話を付けており、ほどなくして一同は出発する事となった。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

一方通行(アクセラレータ)をエリザリーナ独立国同盟の人間に預けてから垣根たちはロシアへと密入国し、とある街で休息を取っていた。

 

トラックの車内には肉とソースの匂いが充満しており、垣根はそれ一人で食べるんですかレベルのハンバーガーが入った大量の紙袋の一つからハンバーガーを取り出していた。

 

大食いだとされる方ではないが、ついさっき垣根は右方のフィアンマの襲撃によって致命傷を負わされたばかりである。

 

自分の能力である未元物質(ダークマター)によって体の損傷個所を補い、未元物質(ダークマター)によって肉体の再生速度を上げているが、能力を使用するにはやはり食事によるエネルギーが必要である。

 

幸い超能力者(レベル5)としての地位を確立しているため資金には事欠かない。

そのためハンバーガー程度をどれだけ買っても、垣根には問題なかった。

 

だが隣の苦学生が学歴社会に憎しみを込めて睨みつけてきていたので垣根が嘲笑してみせたら、上条は悔しそうにハンカチを噛んでいた。

 

「しっかし、ロシアまで来てこの味を(たしな)むことになるとはなあ。せめてロシア限定ボルシチバーガーとかないもんなのか」

 

そんな苦学生、上条当麻はナゲットを口に放り込みながらぼやく。

垣根たちが食べているのは万国共通で食されているハンバーガーチェーン店のハンバーガーだ。

ロシアまで来て変わらないジャンクフードの味に上条が思わず呟くと、上条の隣に座っていたレッサーが口を開いた。

 

「いやあ、世界全土で変わらない味っていうのも便利なものなんですよ。現地の料理が口に合わない時には重宝します」

 

レッサーは世界を渡り歩いているからこそ持てるありがたさを上条に伝えながら、紙袋からポテトを取り出してもぐもぐ食べる。

 

「戦時中の団体旅行、それも密入国ブローカーに紛れてここまでやってきましたが、車両で進むのはこの辺りが限界でしょうね」

 

「そうだな。……それにしても密入国ブローカーかぁ」

 

上条がもろに犯罪を犯していることについて顔をしかめていると、レッサーは顔を上げてきょとんと上条を見つめた。

 

「ありゃ、聞き慣れません? 日本なんてめちゃくちゃ縁がありそうですけどねえ。陸地で地続きの国境が伸びる国では、夜中にフェンスを越えるだけで手軽に不法移民になれますし、ましてや今は戦争ど真ん中。鈍い爆音に押されるように『国を出たい』と思う人は後を絶ちませんよ」

 

上条はレッサーの淡々とした状況説明を聞いて表情に影を落とす。

 

「……エリザリーナ独立国同盟に流れていく人っていうのは、そんなに多いのか」

 

「いや、あの国に流れ込んでるっつーより、戦勝国に身を寄せたいって感じだな」

 

表情に影を落として呟く上条に声を掛けたのは垣根で、上条はジュースを手に取りながら垣根を見た。

 

「? どういうことだ?」

 

「ロシアと学園都市、どっちが勝つかは学園都市の力を知ってる俺たちにとっちゃ明白だ。だがそれは誰にでも分かることじゃねえ。それでも短期決着するってことは誰もが理解してる」

 

垣根は新しいハンバーガーの包みを開けながら続ける。

 

「敗戦国の人間になったら人生終了だ。だから戦線を読んで反復横跳びみてえに国を行き来している人間もいるだろ。だから一概にエリザリーナ独立国同盟に流れてるって言えるわけじゃねえんだよ」

 

垣根の分かりやすい説明に上条は大きく頷いた。

 

「嫌な流れが来てるってことか。……そういえばここまでエリザリーナの指示でトラックで一緒に来てくれた人たちはどうするんだ? これだけの人数で潜入なんてできないだろ」

 

上条が今後の心配をしていると、しっぽをふりふりと振りながらレッサーが顔を上げた。

 

「彼らとはここで別れて、私たちは地下にある資材搬入路の列車を使って潜入します。フィアンマのいるロシア軍基地まではおおよそ四〇キロってところですかね」

 

「……前に侵入したのとは違う方角じゃないか? こんな街なんてなかったぞ」

 

車の外を見つめてそんなことを言っている上条を、垣根は呆れながらジト目で睨む。

 

「上条。お前もうちょっと頭使って考えやがれ。侵入されてんだから対策されて警戒レベルを引き上げられてるに決まってんだろ。まったく同じルートで入ったら速攻でバレる。普通分かるだろ」

 

「そ、そうか。……確かにそうだな」

 

上条が垣根に気づくべきことを気づかなかったと責められ、分かってる風を装って慌てて頷く。

そんな上条の隣でポテトをパクパク食べていたレッサーが手に摘まんだポテトを振りながら垣根が知らない情報を口にする。

 

「それにあそこの発着駅でロシア成教の魔術師を一人拘束していますからねえ。連中の言葉遣いの(かす)かな訛りから、ほぼ確実にこの街に住む魔術師を動員していることは分かっています。となればこの街、あるいはその近辺に別の地下鉄が用意されていると考えるべきです」

 

「……そんなもんなのか?」

 

「秘密基地っていうのは、当人たちに使いやすいようにカスタマイズされていくものなんですよ。迷路やトラップだらけにするのは簡単ですが、そこを通るのに時間をかけてたら迅速な作業なんてできないでしょ。私もイギリス国内にこっそり拠点を構えていますからね。断言できます」

 

「アジトなんて極論見つからなきゃいいんだよ。俺にとっちゃ使い勝手が重視で、トラップは逃げる時に情報破棄するための時間稼ぎだな」

 

イマイチピンと来ていない上条にレッサーが説明し、垣根が自身の考えを上条に伝えると、そこでレッサーは目を細めてにやっと笑った。

 

「おや、もしかしてあなたは分かるクチですか? アングラな組織に身を置いたりしています?」

 

「はん。生憎と力を根こそぎ奪ったまま離反してやったぜ」

 

垣根が暗部を引っ掻き回して手に入れた力について嘲笑交じりに告げると、レッサーは目を鋭くさせて顎に指を当てた。

 

「ほほう、反逆して成功したというクチですか。……マクレーン家の直系である彼女のボーイフレンドですし、使えるかもしれませんねえ」

 

「あ?」

 

垣根がレッサーから不穏を感じて声を上げていると、隣から驚愕した上条が声を荒らげた。

 

「え!? 垣根、お前なに!? いつの間に学園都市でクーデター起こしてんの!?」

 

「起こしたっちゃあ起こしたが、別に学園都市を破壊しようとかは思ってねえよ。あいつらが真守に手ぇ出せないようにしただけだ。……そうだな。カッコよく言えば自治権を手にしたって感じか?」

 

垣根がふっと勝ち誇ったように告げると、上条はそれを聞いて顔を真っ青にして、とんでもないことをしでかした垣根を恐怖の目で見つめる。

 

「えええ……お前そんな大それたこといつの間にやってたのぉ? 超能力者(レベル5)恐るべし……御坂とは大違いだ……」

 

「お前は周りに超能力者(レベル5)がいすぎて感覚麻痺ってるが、俺たちは一八〇万人の頂点なんだぜ。もうちょっと俺たちのすばらしさ感じて敬いやがれ」

 

垣根が吐き捨てながらハンバーガーにかぶりつくと、上条は悔しそうに目を細める。

 

「……そうですね、苦学生の俺と違ってたっかいオーガニックバーガー十個も頼んでますし、超能力者(レベル5)はすごいですねえ……っ」

 

上条が学歴社会に悔しさを感じていると、レッサーはハンバーガーが入った箱を袋から取り出して声を上げた。

 

「何はともあれとりあえずパパっと栄養補給を済ませてしまいましょう! このトリプルなヤツでっ!!」

 

「おいおい、そんな跳び箱みたいなハンバーガー、分解しないと食べられないんじゃないのか?」

 

上条はレッサーが箱から取り出したハンバーガーの大きさについて心配になって問いかけると、それを聞いていた垣根は食べ終わったハンバーガーの包み紙を丁寧に折り畳みながら嘲笑した。

 

「値段じゃなくて量で決めるから不格好なモン買うことになんだよ」

 

「……そうですね。そういう垣根さんはお金をたくさん持っていますからね。金の暴力で解決できますね。くっ……学歴社会……!」

 

上条がふんだんに金を持っている垣根へと劣等感と憎しみを向けていると、そんな二人の前でレッサーは得意気に少し控えめな胸を張った。

 

「お二人共、ご安心ください。こう見えて私は周りのみんながびっくりするほど大きなものをほお張れるのが自慢なんです。多少卑猥な想像をしてもらっても構いません」

 

「……お前、もしかして上条に色仕掛けでもしてんのか?」

 

先程からレッサーが上条に攻めたことばかり言っているので、若干引き気味になりながらも問いかける。

するとレッサーは大きく頷いた。

 

「はい、そうです!! イギリスの利益になりそうな人を放っておけるわけないじゃないですか! それにはあなたとイギリスにばっちり直結している神人(しんじん)も含まれていますよ!! 色仕掛けはしませんけど!!」

 

「良い返事どうもありがとうクソアマ。言っとくがこいつはフラグ立てて気を持たせては放っておくハーレム野郎だぞ。ハーレム要員に数えられて捨てられんのがオチだよ」

 

「ふごっ!? おいちょっと! 垣根は俺のことどう思ってんの!?」

 

ハンバーガーを食べていた上条がまさかの垣根の評価に声を上げると、垣根は上条を『たくさんの人間に気を持たせて一人を選ばない』畜生だという意味を込めて睨みつける。

 

「今言ったとおりだが」

 

「まあまあなんにせよ、私は食べますよーあーん!」

 

レッサーはそう前置きすると、思いきり巨大ハンバーガーにかぶりつく。

 

直後。

レッサーがかぶりついたハンバーガーから牛ひき肉の塊とケチャップソースが発射され、それが上条の学生服の上に着弾した。

 

「チャッ、チャンス!! 体で支払います!!」

 

「何で瞳にお星さまをキラキラ輝かせて舌なめずりしてんだよ! ちっとも反省してねえだろ、お前!!」

 

「オイ俺の前で色仕掛け始めんな! 気色悪ぃモン見せるんじゃねえよ、このメスガキ!!」

 

車内でバタバタとちょっとした争いが起こる。

だがこれからフィアンマという強大な敵と戦うための良い気分転換となり、一同はここで一息ついて動き出した。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

源白深城は虚空を睨みつけていた。

 

彼女にしては、非常に珍しい険しい顔で。

 

深城がいるのは『施設(サナトリウム)』の一室で、周りには林檎や心理定規(メジャーハート)、弓箭もいるが、全員気を失っていた。

 

その元凶は深城の目の前にいる『ソレ』だった。

 

自分を製造ラインとして生み出された怪物エイワス。

 

深城はそんなエイワスを睨み上げていたのだ。

 

「というわけで、朝槻真守は敵の手に落ちた。垣根帝督は彼女を取り戻さんとしている。朝槻真守の最初のヒーローであるキミはどうする?」

 

エイワスはロシアで起こっていることを簡潔に説明してから深城に問いかけた。

 

「ヒーロー?」

 

自分がどうするかをエイワスに伝えるよりもその単語が気になった深城が問いかけると、エイワスは淡々と説明する。

 

「この地には多くのヒーローがいる。誰に教えられなくても、自身の(うち)から湧く感情に従って真っ直ぐに進もうとする者。過去に大きな過ちを犯し、その罪に苦悩しながらも正しい道を歩もうとする者。誰にも選ばれず、素質らしいものを何一つ持っていなくても、たった一人の大切な者のためにヒーローになれる者」

 

(上条くんに、一方通行(アクセラレータ)さん……後一人は誰だろう?)

 

深城がエイワスの言うヒーローというものに当たりを付けていると、エイワスは深城をすっと指さして告げた。

 

「キミは自身の(うち)からの衝動に身を任せ、見初(みそ)めた者に無償の愛を与えて寄り添い、手を差し伸べ続ける者。そして垣根帝督はたった一人のために、世界を滅ぼそうとすら考える者……と言ったところか」

 

「真守ちゃんは私のヒーローだよ」

 

深城が聞き捨てならないと即座に告げると、エイワスはただ淡々と事実を説明した。

 

「彼女の本質はヒーローではない。むしろそれに限りなく遠い素質を持っている。朝槻真守にあるのは圧倒的な公平だけだ。……それも、人に対しての公平じゃない」

 

深城はエイワスの真守に対する評価を聞いて顔をしかめる。

 

「それでも、真守ちゃんは私のヒーローなの。だって、あたしのことを助けてくれたんだから。それが仕組まれていたとしても、あたしにとって真守ちゃんはヒーローだよ」

 

深城が反論するとエイワスはふむ、と頷いてから深城に問いかける。

 

「だから行くのは必然だと? 大天使『神の力(ガブリエル)』はどうする? ……いいや、不完全性を個性として認めるならば、ここはミーシャ=クロイツェフと呼ぶべきか。ともあれ、あれは現在の人類の技術や軍事力でどうこうできる存在であるまい」

 

「うん、分かってる。あなたに言われなくてもちゃんと分かってる。……でも、」

 

深城が言いよどむと、エイワスは先回りして告げる。

 

「方策については問題ない。全世界に散らばった妹達(シスターズ)を媒介として使用し、AIM拡散力場に方向性を与えてやれば、学園都市からロシアの深部まで、帯状のAIM拡散力場エリアを伸ばせる」

 

深城はロシアへの向かう手助けをすると言うエイワスをじろっと睨み上げた。

 

「前は打ち止め(ラストオーダー)ちゃんの頭にウィルスを打ち込んであたしを天使にした。でもそれってあの子たちの意思があればいつだってあたしは『天使』の力を振るえるってことでしょ。あの時、打ち止め(ラストオーダー)ちゃんの頭にウィルスを撃ち込む必要はなかった」

 

「初めにウィルスを撃ち込むことによって形式(フォーマット)を造り上げる必要があった。……というのでは理由にならないか?」

 

「ならないね。あなたたちは打ち止め(ラストオーダー)ちゃんの頭に撃ち込んだウィルスで真守ちゃんの退路を断って、神さまに仕立て上げた。打ち止め(ラストオーダー)ちゃんに下地を作らなくちゃならなかったって言う陳腐な理由で、あたしが納得すると思う?」

 

深城が厳しい声を上げると、エイワスはそれに屈することなく自分にペースを保ち続ける。

 

「どちらにせよ、朝槻真守は神に成ることが運命づけられていた。先に話しただろう?」

 

「……それで、あなたはどうするの?」

 

深城が問いかけると、エイワスは突き放すように告げた。

 

「何も。私は見ていて興味のあることしか実行しない。ロシア国内での動きは多少面白そうだが、そのために戦うということに興味も価値も感じない」

 

深城はエイワスの言い分を聞いて(うつむ)く。だが即座に顔を上げて虚空に(たたず)んでいるエイワスをキッと睨み上げた。

 

()()が真守ちゃんや垣根さん、それと真守ちゃんが大切にしている人たちに手を出したら『共食い』になっても殺す。あたしは元の体があるから大丈夫だけど、お前は困るでしょ? この世界に形式(フォーマット)がないんだから」

 

「脅しと言うには、甘いな。だが、キミたちには興味がある。潰すには惜しいさ」

 

深城は自分の膝に頭を乗せて気絶している林檎を抱き上げてベッドの上に横たわらせて、弓箭や心理定規(メジャーハート)も楽な姿勢を取らせる。

 

「行ってくる。それで真守ちゃんと垣根さんと一緒に帰ってくる」

 

深城は宣言すると、そのまま部屋から出ていった。

 

そして誉望と共に気絶している緋鷹に書き置きを残して、『施設(サナトリウム)』から出る。

 

上空を仰ぎ見れば、自分の体であるAIM拡散力場の形が変化しつつあると深城は感じた。

既にエイワスが妹達(シスターズ)に指示を出しているのだろう。

 

深城は静かに目を閉じる。

 

すると即座に深城の薄桃色の髪の毛が光り輝き、カッと深紅に染まりあがった。

 

そして頭には天使の輪が幾重にも展開される。

 

目を開けた深城は、いつもの柔らかな笑顔から一切の容赦がないと思わせるほどの気高く凛とした表情へと変わった。

 

深城の背中からAIM拡散力場でできた何十本、何百本もの翼が孔雀の羽のように広がる。

 

 

そして深城はドンッ! と地面を蹴り上げ、空へと飛び立った。

 

 

凄まじい速度を出して、深城は一直線にロシアへと向かう。

 

自分にとって大切な存在であり、一目見た時に神さまだと感じた少女のもとへ。

本当に神さまに成るために生まれてきた少女のもとへ。

彼女のための天使として、彼女に振りかかる火の粉を払いのけるために。

 

源白深城はたった一人へのかけがえのない無償の愛を胸に抱き、翼をはためかせ飛翔した。

 







源白深城、参戦。

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