とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一六話投稿します。
次は八月二一日土曜日です。


幻想猛獣篇
第一六話:〈本領発揮〉で敵を討つ


真守と垣根は車で学園都市外周に位置する第一〇学区へと向かっていた。

木山春生の青いスポーツカーは既に警備員によって囲まれており、木山春生は警備員の声掛けによって車から降りて両手を頭の後ろに組んでいた。

 

《確保じゃん!!》

 

警備ロボの列の後ろに並んだ警備員(アンチスキル)が黄泉川愛穂の号令によって銃を構えて近づく。

そんな警備員の前で、木山は不敵に笑って目を細める。

 

その左目の白い部分が、赤く染まった。

それと同時に警備員の一人が仲間の足を銃で撃った。

 

撃たれた警備員が仰向けになって地面に倒れ伏すと、それを見ていた仲間が声を上げる。

 

「一体何を!?」

 

「ち、違う! 俺の意志じゃない!!」

 

警備員は何が起こったか分からずに困惑する。

警備員の包囲網が崩れたところを見計らって、木山は右手を前に突き出した。

 

その右手の掌から突如、突風が巻き起こった。

 

「バカな!? 能力者だと!?」

 

木山が突然能力を行使し出したので、それに黄泉川が悲鳴に似た驚きの声を上げた。

木山は黄泉川の荒らげた声に満足したのか、ニヤッと笑うと、能力を行使した。

大気をコントロールしてその場に大爆発を引き起こした。

爆発した道路へと近づくことができないため、垣根が随分と手前で車を急停止させる。

真守はシートベルトを外して助手席から降りて、木山と警備員の下へ駆け出した。

真守の目の前で、木山は突風を起こして警備員(アンチスキル)をけん制、そして生み出した大量の水の濁流で警備員の車両を押し流した。

次に念動能力(サイコキネシス)を使用して車両と警備ロボを浮かせ、なぎ倒して道路にランダムに落とし、警備員(アンチスキル)たちを散り散りにさせる。

 

多重能力(デュアルスキル)!? 実現不可能なはずだろ!?」

 

多重能力(デュアルスキル)とは二つ以上の能力を使える能力者の事だ。

多くの研究所がその研究を行って人体実験をしていたが、脳への負担が大きすぎるとして諦められた能力だった。

その結果を出すために数多くの少年少女たちが犠牲となった。

その忌むべき力を、何故能力開発を受けていない木山春生が使えるのか。

 

「────木山春生!」

 

垣根が疑問視する隣で、真守は破壊の限りを尽くした木山に鋭い声を上げる。

 

「学園都市の第二位? ……それと、そっちはまさか。消えた八人目?」

 

 

木山は振り返って垣根を見て、次に真守を見て首を傾げた。

 

「……お前、真守が都市伝説と同じ外見しているからって物分かりが良すぎないか?」

 

真守が消えた八人目の超能力者(レベル5)である噂は都市伝説として根付いている。

だが一般の大脳生理学者が都市伝説を知っていようと、眉唾ものだと一蹴するはずだ。

それでも木山春生は真守のことを正確に看破した。

 

垣根が警戒心を(あら)わにしていると木山は一瞬、口を噤んだが、その事実を切り出した。

 

「……昔、とある研究所にいてね。そこで聞いた事がある」

 

どうやら木山は研究所で真守の話を聞いたらしい。

真守の話を聞くとは相当な『闇』の中にいたはずだ。

 

(ただの大脳生理学者じゃない?)

 

「その消えた八人目が何故ここに?」

 

垣根が訝しんでいると、木山が真守に質問してきた。

 

「用があるからに決まってる」

 

真守がぶっきらぼうに不機嫌に告げると、木山は慎重に訊ねた。

 

「……一体何の用だね?」

 

「お前の作った幻想御手(レベルアッパー)を使った人間、一〇〇名以上に私は襲撃された。これだけでもお前を潰す理由になるのに、よくもAIM拡散力場を利用したな。その二重の意味を込めてお前を潰す。覚悟はいいな?」

 

「ちょっと待て、それは一体どういうことだ?」

 

木山はいきなり真守に事情を説明されて困惑する。

 

幻想御手(レベルアッパー)は木山春生が高度な演算処理として用いるために作成したものだ。

それで誰かを傷つけるつもりはなかったし、全てが済んだら彼らを解放するつもりだった。

その幻想御手使用者が徒党を組んで消えた八人目を何故襲ったのか、理解できない。

 

「やっぱりあいつらをけしかけた上層部とは別口か。だがお前のせいで私は大迷惑だ。この落とし前は付けさせてもらう」

 

真守の言い分に木山は目を見開いた。

 

上層部は何らかの手法で朝槻真守を幻想御手(レベルアッパー)使用者に襲撃させた。

その被害にあった彼女が、元凶となった木山を討とうとするのは当然の反応だ。

 

木山春生が幻想御手を開発しなければ、上層部にそれを利用されて真守が襲撃されることなどなかったのだから。

 

「……上は私のやることを散々邪魔したあげく、私が行動を起こして事件を引き起こせばそれを利用する。まったく、反吐が出る」

 

「どうやらお前も上層部と何かあったらしいな」

木山春生は吐き捨てるように嗤って、真守は目を細めた。

 

木山はそれに答えなかった。

何かを悔しがって、堪えているようだった。

 

 

そんな様子を聞いていた人間がこの場に他にいた。

 

「──朝槻さんが消えた八人目?」

 

御坂美琴だ。

タクシーでここまで来た美琴は白井と通話しながら非常階段を登って、その会話を聞いていた。

 

美琴には都市伝説が好きな友人、佐天涙子がいる。

 

彼女から『消えた八人目の超能力者(レベル5)流動源力(ギアホイール)』という能力者がいると、聞いたことがあった。

あらゆるエネルギーを生成する能力者。

黒猫のように優美であり、それでいて不吉。遭遇すると『不幸』になる。

 

都市伝説の内容と真守の外見は一致している。

 

「まさか……本当に?」

 

美琴はその時、違和感の正体に気が付いた。

真守は幻想御手使用者に消えた八人目の超能力者(レベル5)として襲われていた。

 

だが真守が自分が超能力者(レベル5)ではないのにどうして襲ってくるのか、そうやって怒っていたことが一度としてなかった。

 

それは自分が本当に超能力者(レベル5)であって、否定する理由がなかったのだ。

 

「上層部と仲が悪いってことは何があった。お前、何が目的?」

 

真守が黙った木山に問いかける中、美琴は非常階段を駆け上がって青いスポーツカーに近づくと中の初春に声をかけた。

 

「初春さん! しっかりして!」

 

真守は美琴の声で人質がいることをすっかり忘れていた事に気が付いた。

深城に関係のあるAIM拡散力場を木山に利用された憤りで、すっかり周りが見えなくなってしまっていたのだ。

 

「安心しろ」

 

真守が初春の安否を心配して慌てて振り返ると、木山は既に気持ちを切り替えたのか、美琴に冷静に話しかけた。

 

「戦闘の余波を受けて気絶しているだけだ。命に別状はないよ」

 

木山春生はそう告げると、三人を見つめた。

 

「公式では学園都市に七人しかいない超能力者(レベル5)。第二位、垣根帝督。第三位、御坂美琴。そして、消えた八人目の朝槻真守。超能力者(レベル5)が三人も揃うとは……だが、流石のキミたちも私のような相手と戦ったことはあるまい。キミたちに一万の脳を統べる私を止められるかな?」

 

「止められるかなですって……? ──当たり前よ!」

 

美琴がそこで前に出た。真守と垣根も臨戦態勢に入った。

 

その瞬間、木山春生が目を細めた。

駆け出していた美琴の足元、そして垣根と真守が立っていた場所のコンクリートが丸く削り取られて焼失した。

駆け出していた美琴はそれをギリギリ避けたが、真守と垣根は足場を失った。

 

垣根は即座に未元物質(ダークマター)の翼を広げて、宙に浮く。

真守も即座に自身の能力を開放。

蒼閃光(そうせんこう)でできた猫耳と尻尾を現出させると空中にエネルギーを放出してホバリングするように空中で制止していた。

真守と垣根、それと逃げる美琴の隙を狙って、木山春生が爆発を起こした。

 

真守と垣根はその爆発から逃げるように高く空を飛ぶ。

 

美琴も爆風の中から前へと飛び出した。

 

「驚いたわ! 本当に幾つも能力が使えるのね。多重能力(デュアルスキル)だなんて、楽しませてくれるじゃない!」

 

「私の能力は理論上不可能とされるアレとは方式が違う。謂わば──多才能力(マルチスキル)

 

木山が告げると同時に宙に浮く真守と垣根、それと美琴めがけて風の刃が襲う。

垣根はその風の刃を未元物質(ダークマター)の翼で防ぎ、真守はその風の刃に自身の手から発したエネルギーをぶつけて相殺した。

 

美琴は横に少しだけ動いて最小の動きで避けると、体の表面に電流をバチバチと鳴らす。

 

「呼び方なんてどうでもいいわよ! こっちがやることに──変わりはないんだから!!」

 

美琴は声を挙げながら右手を前に突き出して、木山に向かって電撃を飛ばした。

 

自分を中心に半円のシールドのように誘電力場を張った木山は、その美琴の雷撃を上空にいる二人に直撃するように器用に受け流した。

 

「うわ」「あ?」

 

真守は驚きの声を挙げながらも余裕でその電撃をシールドで相殺し、垣根は翼が自動的に展開されてその攻撃を防いだ。

 

「あれ?」

 

美琴は自分の電撃が利用された事に気が付いて表情を引きつらせる。

 

「……御坂、もう少し周りをよく見て」

 

「ったく、お前それでも超能力者(レベル5)か? 自分の電撃の面倒は最後まで見ろよクソッタレ」

 

「ご……ごめんなさい!」

 

軽蔑の眼差しと非難の言葉を向ける二人を見て、美琴は平謝りする。

 

美琴は電撃を利用されただけで悪くない。

だが能力者にとって、自分が発動した能力が自分のコントロールを離れて利用されるなんて、赤っ恥もいいところだった。

 

「どうした。超能力者(レベル5)たち。複数の能力を同時に使うことはできないと踏んでいたのかね?」

 

木山は自身の身から衝撃波を辺りに生み出す。

 

その衝撃波が空中にいる真守と垣根の下まで届いた。

二人はその衝撃波からシールドを展開、翼を広げて身を守った。

 

美琴はと言うと、彼女が立っていた鉄筋コンクリートは衝撃波によって粉々に砕け散った。

 

高速道路がガラガラと崩れ落ちていく。

 

立て直しをしようとしていた警備員(アンチスキル)は高速道路が崩れたことによって悲鳴を上げた。

 

木山は崩れ落ちた高速道路の真下の地面へと、ゆっくりと降下する。

 

崩落に巻き込まれた美琴は高速道路の鉄筋コンクリートの柱に電気で磁場を形成して張り付いて無事だった。

 

(なんてヤツ……! 自分を巻き込むのもお構いなしに能力を振るってくる!)

 

「拍子抜けだな。超能力者(レベル5)という力を見せてくれないのか?」

 

「──潰す」

 

木山が挑発したので、真守は空中からフッと消えた。

 

真守がエネルギーを効率的に循環させて体を動かした結果、そのスピードが速すぎて消えたように見えただけだ。

 

真守は音速に近いスピードでまっすぐと木山に向かっていく。

木山はそんな真守を正確に把握して、真守を止めるべく再び衝撃波を繰り出した。

 

それで真守は止まる、木山はそう思っていた。

 

だがその衝撃波を前方に展開したシールドによってなんなく跳ね除けた真守は、スピードを落とすことなく木山の懐に入り込んだ。

 

至近距離にいる真守に、木山は驚きの目を向けた。

 

「跳べ」

 

真守は冷たくそう言い放つと、その足で思い切り蹴り上げた。

真守の生み出した破壊的な蹴りによって、木山はぎりぎり崩落していなかった高速道路へと吹き飛ばされて激突する。

 

激しい爆発音と共に、再び高速道路の崩壊が始まった。

 

真守は地面にトッと軽く降り立つ。

そして自分に向かって落ちてくる高速道路の瓦礫へ右手を向けて、自分の頭の上に源流エネルギーを展開。

その瓦礫を源流エネルギーによって塵も残さずに焼き尽くした。

 

「手ごたえがないな」

 

真守がつまらなさそうに言い放つと、余裕の表情をして木山が爆風の中から姿を現した。

真守は一瞬の隙も見せずに顔を上げて木山を見据えた。

 

初めて目の当たりにした真守の能力のほんの一端にすら、垣根は驚きを隠せなかった。

 

真守が急降下したのは目で追えずに、垣根は事象の揺らぎによってその攻撃を知覚していた。

その速さの中、即座に防御するという真守の演算能力の並列処理を見せつけられた。

 

消えた八人目の超能力者(レベル5)流動源力(ギアホイール)

超能力者の第二位と第三位の間には、絶対的な差があると言われているが、真守はその壁を楽々と超えている。

 

真守の流動源力(ギアホイール)とは、あらゆるエネルギーを生成する能力だ。

 

それは新たなベクトルを生み出すということと同義だ。

真守はその新たなベクトルを既存のベクトルにぶつけて間接的に全てのベクトルを操っている。

 

真守の能力は既存のベクトルを操作する一方通行(アクセラレータ)に、大打撃を与えるだろう。

 

真守の能力の汎用性は極めて高い。

エネルギーを生成するという『創造性』と、全てを焼き尽くすという『破壊性』。

一方通行が持つ『破壊性』と垣根帝督が持つ『創造性』、その二つの性質を持つのが、朝槻真守の能力、流動源力(ギアホイール)だ。

 

(真守が『計画(プラン)』の要になるのも頷ける。あの能力はアレイスターにとって利用価値が大いにある)

 

真守の能力を分析していた垣根の近くで、美琴は真守の能力に呆然としていた。

 

格の違いを見せつけられた気分だった。

自分の前に置かれたハードルは飛び越えなければ気が済まない美琴だが、真守というハードルを越える事は不可能かもしれない、そう感じてしまった。

 

垣根と美琴は初めて見た真守の能力に驚きを隠せなかった。

 

そんな二人の前で、木山は真守を捉えて腕を振りかぶった。

その手に光の刃が伸びて、真守へ向けて放たれる。

真守はガガキ! という歯車が軋むような音を一度響かせると、蒼閃光で形成されたエネルギー球を飛ばした。

 

光の刃は、真守の源流エネルギーの塊に焼き尽くされて消え去る。

源流エネルギーの塊は減衰することなくそのまま木山に直撃して爆発した。

 

木山は爆風に呑まれながら地面に落下するが、地面に直撃する体勢を立て直して地面に片膝を突きながら満身創痍の状態で降り立った。

 

「格の違いを理解した?」

 

真守が冷徹な声で木山にそう話しかけると、木山は咳き込みながら真守を見つめた。

確かに消えた八人目の超能力者(レベル5)は強い。

恐らく自分は手加減されているのだろう。

それでも、引き下がることなんて木山春生にはできなかった。

 

 

「私は、ある事柄について調べたいだけだ。それが終われば全員解放するつもりでもある。それまではたとえ、超能力者(レベル5)三人でも相手にする」

 

「……お前、何を抱えている?」

 

真守が木山の目的を知るために問いかけた。

木山は本当に悔しそうに顔を歪めながら、真守の問いかけに答えるために切り出した。

 

「……キミたちが日常的に受けている能力開発。あれが安全で人道的なものだとでも思っているのか?」

 

美琴はその言葉の意味が分からなかったが、真守と垣根はピクッと反応した。

 

二人が反応したことを受けて、木山は薄く笑った。

 

「どうやら、超能力者(レベル5)の中で世間知らずなお嬢様なのはキミだけだそうだ。第三位」

 

「……どういうこと?」

 

「学園都市の上層部は能力に関する重大な何かを隠している。それを知らずにこの町の教師たちは学生の脳を、日々開発しているんだ。それがどんなに危険なことなのか──分かるだろう?」

 

真守は薄く目を見開いた。

 

この街の大人にしてはありえない思考を持つ木山を、驚愕の表情で見つめていた。

 

「なかなか面白そうな話じゃない!」

 

そんな真守の前で美琴は不敵に笑った。

そして高速道路の柱に張り付くのをやめて地面に降り立つと、手を地面にピタッとつけた。

 

「あんたを捕まえた後でゆっくりと──調べさせてもらうわ!!」

 

美琴は砂鉄を帯のように操ると、それを何本も木山に向けて伸ばした。

木山は能力を行使して鉄筋コンクリートの塊を動かして壁にして、表面が高速で振動して切れ味が鋭くなっている砂鉄の帯から身を守った。

 

「残念だが、まだ捕まるわけにはいかない」

 

木山はゴミ箱に捨ててあった大量のアルミ缶を念動力(テレキネシス)で操作して三人へと向かわせる。

 

「空き缶!? ……──虚空爆破(グラビトン)!」

 

大量のアルミ缶が空に浮かぶ様子を見て、美琴はアルミを基点に重力子を加速させて爆弾に変えていた虚空爆破(グラビトン)事件を思い出して叫ぶ。

 

「さあ──どうする?」

 

木山春生が挑発した瞬間、美琴がバチバチ! と前髪から電流を迸らせた。

 

「私が全部吹っ飛ばす!!」

 

美琴は力を体に込めて、全身から強力な電撃を放つ。

 

美琴は真守と垣根のことを純粋に守ろうと思ってアルミ缶を全て落ち落そうとするが、垣根は身を守るために上空に退避するし、真守はアルミ缶が降ってくるであろうポイントから弾かれるように離れる。

 

二人共、美琴をまったく信用していない防御姿勢だった。

その事実にちょっとショックを受けながらも、美琴はアルミ缶を全て電流で吹き飛ばした。

 

「すごいな。──だが」

 

木山は美琴の能力に関心していたが、手に持っていた三つのアルミ缶を空間移動(テレポート)させた。

 

「どう、ざっとこんなもんよ!」

 

美琴が言い放った瞬間、真守は自身の後ろで収縮するエネルギーを感知。

垣根も事象の揺らぎによって背後に何かが現れるのを感じて、即座に振り返った。

 

二人は背後で虚空爆破(グラビトン)が起きようとしていることに感づいて防御行動に出た。

だが美琴は直前まで気が付かなかった。

 

三人がいた場所で虚空爆破(グラビトン)が同時に引き起こされた。

 

木山は三つの爆発を見つめて呟いた。

 

「絡め手が通じるか、否か……」

 

木山が呟く中、美琴が後ろから木山に抱き着いた。

 

「つーかまーえた」

 

「バカな……!?」

 

木山が美琴がいた場所に目を向けると、美琴を守るように磁力で鉄骨やらパイプのシールドができていた。

 

「磁力で即席の盾を組み上げたのか!?」

 

「零距離からの電撃……あのバカには効かなかったけれど。いくらなんでもあんなトンデモ能力までは持ってないわよねえ!?」

 

木山がやられる前に美琴を倒そうと周りのパイプを念動力(テレキネシス)で動かして美琴を襲う。

 

「遅い!!」

 

美琴が叫んだ瞬間、木山を中心に凄まじい電撃が上がった。

 

「うわああああああ!!」

 

木山が叫び声を上げる。

虚空爆破(グラビトン)なんて物ともしなかった真守の隣に、同じく問題なかった垣根がそっと降りてきた。

 

多才能力(マルチスキル)ってヤツは、ネットワークに繋がった能力者の個々の力を、あいつが借り受けてるって感じだな」

 

「頭の中に二つの能力を入れるやり方とは違うから、確かに多重能力(デュアルスキル)ではないな」

 

真守と垣根は美琴から(ほとばし)って天へを伸びる電撃の光を悠長に見つめながら、木山の使った能力の仕組みについて、考察のすり合わせをしていた。

 

電撃が止むと木山の体から力が抜けて、それを美琴は後ろから支えた。

 

「一応手加減はしといたから…………!?」

 

そこまで呟いた美琴に異変が起きた。

目を見開いて、瞳の焦点を合わせないで何かを見ている。

 

「な、に……? 頭の中に、直接!? これは、木山春生の記憶? 私と木山の間に電気を介した回線が繋がって…………っ!」

 

真守は美琴の口から零れた言葉を聞いて即座に駆け寄った。

電気エネルギーをパリパリッと掌から迸らせながら、呆然としている美琴の前で木山の体にその掌を押し付けた。

 

「真守!?」

 

「御坂は電気のパスが木山と繋がって記憶を見てる! 御坂に出来るなら私にも可能だ、木山が何でこんなことしたか記憶を暴いてやる! コイツはずっと後悔してるから、絶対に記憶に何かある!」

 

真守はずっと木山が何故こんな事をしたのか気になっていた。

その手掛かりが過去にあって木山の過去を覗く事ができるのであれば、好機だと踏んだのだ。

 

真守は電気的な繋がりを構築すると、木山と自分を接続して記憶を覗き込んだ。

 

冥土帰し(ヘブンキャンセラー)は真守と深城の間には特殊な目に見えないバイパスによって繋がっていると言っていた。

 

それは他人とのバイパスを作る事に長けているという事だ。

動かなくなった真守と美琴を見て、垣根は木山春生に近づいてその背中に触れた。

 

「俺だけ見られないのは納得いかねえな。覗かせてもらうぞ」

 

垣根は蚊帳の外はつまらないとして、真守と美琴のパスを参考に未元物質(ダークマター)でパスを作り上げて記憶を覗いた。

 

 




幻想御手篇長いので幻想猛獣篇と分けさせていただきます。
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