とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第六話、投稿します。


新約:ラジオゾンデ要塞襲来篇
第六話:〈開門世界〉はただ広く


第三次世界大戦の終盤、北極海で行方不明になっていた上条当麻が学園都市に帰還した。

 

上条が悲しませた女の子たちはバードウェイの部下によって帰され、上条が使っている学生寮には真守、垣根、一方通行(アクセラレータ)、浜面。そしてフレメアと放っておくと悪さをしかねない黒夜だけが残った。

 

そんな面々の前で、上条当麻は心配しすぎて怒り狂ったインデックスに後頭部を噛みつかれて叫んでいた。

 

真守が制裁を加えられている上条を見ていると、インデックスが一方通行(アクセラレータ)に気づいて首を傾げた。

 

「あれ、まもり。迷子の人がいるよ」

 

「迷子の人?」

 

真守がインデックスの言葉にきょとっと目を見開くと、一方通行(アクセラレータ)は苦い顔をする。

 

「どォいう覚え方してやがンだ」

 

実は一方通行(アクセラレータ)とインデックスは、九月三〇日の時に会っている。

 

その時一方通行(アクセラレータ)はどこかへ行ってしまった打ち止め(ラストオーダー)のことを探しており、インデックスはそれを完全記憶能力で覚えていたのだ。

 

そんな真守たちの横でバードウェイは炬燵へと一直線に向かって座って足を突っ込む。

 

「早く座れ。奥様向けの陶芸教室じゃないんだ。背中から張り付いて手取り足取りやるつもりはないぞ」

 

バードウェイが急かしてきたので一同は話を聞く態勢に移る。

 

ただ炬燵に座れるのは四人だけなので、浜面、上条、一方通行(アクセラレータ)がバードウェイと共に炬燵に入って、真守と垣根は上条のベッドの布団を勝手に折り曲げて背もたれにして隣同士で座った。

 

「にゃあ、定位置」

 

フレメアは一鳴きすると、真守から受け取ったカブトムシを両手で抱えたまま浜面の膝の上に腰を下ろす。

だがフレメアは『新入生』に命を狙われて追いかけまわされていたので疲れており、一五秒で眠りについてしまった。

 

「話を聞く準備は終わったか?」

 

「……これが、何の準備になるのかは知らねえけどな」

 

浜面ががっくんがっくん揺れてあらぬ方向へと体が傾こうとしているフレメアを支えながら答えると、バードウェイはそれを見てからパン、と手を叩いた。

 

「それじゃあ、お待ちかねの説明タイムといこうか」

 

一同の注目が集まったところで、バードウェイは炬燵のテーブルの上に肘を置いて手を組んで話し始める。

 

「お前たちとも無関係でなくなった魔術の神を(かか)げる『ヤツら』と……その根幹にあるもう一つの法則、『魔術』について」

 

バードウェイは専門家であり、上条の隣にちょこんと座っているインデックスに適宜説明を補助するように告げてから説明を始める。

 

「いきなり『ヤツら』に触れても意味は分からないと思う。だから、まずは『ヤツら』を生み出した土壌である、魔術や魔術師といったものについて説明しておこう」

 

魔術とは。

科学的な法則とは無関係なもの。所謂、オカルトと呼ばれるもの。

扱える者にならば手から火を出すことも、水を出すことも、傷を癒すこともできるし、逆に傷を腐らせることもできる。

 

「そうは言っても、魔術だってそんなに便利なものじゃないんだよ。そもそも魔術っていうのは、一部の例外を除けば基本的には『才能のない人間が、才能のある人間へ追いつくため』に存在するから」

 

インデックスが補足説明すると、バードウェイは肩をすくめる。

 

「簡単に言えばみんな無能ってことだ。一人前になれない分を、他の何かで補っている。……まだ科学もオカルトも区別がなかった頃。何かしらの宗教的奇跡や天然能力者の力を見た誰かが、自分だって特別になりたい、平凡では納得できないと考えるようになった。そこが魔術の始まりだ」

 

バードウェイはそこで区切って、自嘲気味に一つ笑う。

 

「ただし無能が無能なりのコンプレックスを利用して生み出した魔術と言うのも便利ではある。例えば、お前たちの使う『科学的な能力』というヤツは基本的に一人一個だろう?」

 

浜面は突然バードウェイに話を振られたので、少し戸惑いつつも頷く。

 

「それは、まあ」

 

浜面は無能力者(レベル0)なので能力を持つということがイマイチ分からない。

そのため一方通行(アクセラレータ)が口を開いた。

 

「攻撃パターンを変えてェ場合は、ベースとなる能力をどォ応用するか、それができるかで勝敗が分かれる。火を出す能力者の場合は、それを使って煙を作ったり酸素を奪ったりな」

 

「だから定義が広く万能な能力が有利に立つ。俺たち上位(三人)は特にな」

 

一方通行(アクセラレータ)の説明に補助したのは意外にも垣根で、垣根はこの場にいる超能力者(レベル5)上位三名について言及する。

 

超能力者(レベル5)第一位、流動源力(ギアホイール)はあらゆるエネルギーを生成する能力者で、はっきり言ってしまえば世界に新たな定義を加えることができる能力者だ。

 

超能力者(レベル5)第二位、一方通行(アクセラレータ)はこの世に存在するベクトルを自身の中で再定義することで周囲のベクトルを操ることができる。

 

超能力者(レベル5)第三位、未元物質(ダークマター)はこの世に存在しない物質を世界に加えることで既存の物理法則を捻じ曲げる。そしてその能力の性質故に『無限の創造性』を有している。

 

彼らが万能であるのはあらゆるものにそれぞれの能力でアクセスできるからで、それ故に彼らは万能とされているのだ。

 

一方通行(アクセラレータ)と垣根を見ながら、上条は告げる。

 

「魔術にはその制限がないんだ」

 

「その通り。だから我々は自由に火を生み出せるし、水だって出せる」

 

上条の言葉に肉付けしたのはバードウェイで、バードウェイは指を鳴らすと人差し指の先にライター程度の炎を灯したが、次にもう一度指を鳴らした時にはゴルフボール程度の水球でその指先の炎をかき消した。

 

「もちろん、これにもベースとなる法則はある。ケルトとか北欧とかな。だがそれにしたって厳密な区分はない。『ケルト文化に感化された北欧神話』なんていう風に、自由に取り込むことができるわけだ」

 

浜面はバードウェイの説明に頷く。

 

「……一度『身体検査(システムスキャン)』で系統だの強度(レベル)だの分かっちまったら、後はどうすることもできねえ俺たち能力者と比べると、随分便利に聞こえるな」

 

すると、()(たいら)の胸を無意味に張るバードウェイ。

 

「実際、便利なんだ。空を飛びたいでも女にモテたいでも良い。『目的』さえハッキリしていれば、後は自分の望むように組み合わせて異能のセッティングができる。才能依存のお前たちに比べれば、これはかなり大きなメリットとして機能するだろう」

 

浜面はバードウェイの言葉を聞いて黙った。

魔術があれば無能力者(レベル0)である自分も自身の守りたい人間たちを守れるかもしれない。

その思考を読み取ったインデックスは浜面を見ながら告げた。

 

「でもだからって、あなた達は魔術なんか使っちゃ駄目なんだよ」

 

「えっ」

 

浜面はインデックスに思考を読み取られてドキッとして声を上げる。

 

「どういうことだよ?」

 

浜面がインデックスの言葉の意味が分からずに問いかけると、真守がつらつらと説明する。

 

「能力者として整えられた体で魔力を精製すると、体が魔力精製に耐えられなくて血管が千切れるんだ。軽いところが千切れるならいいけど、大事な血管とかを傷つけてしまうと一発で死に至る。ロシアンルーレットが好きじゃないならやめた方がいいぞ」

 

「さっき言っただろう? 魔術とは才能のない人間が才能のある人間に追いつくために作られた技術だと。フォーマットの問題さ。元から才能のある人間のために作られたものじゃない」

 

真守が説明するとバードウェイが魔術的観点から告げ、そしてその穴を埋めるために浜面と同じ立場にいる上条が細かくする。

 

「ちなみに無能力者(レベル0)であったとしても、学園都市の技術で頭の中をいじっているのは同じだ。だから俺も魔術は使えない。……おそらく、スキルアウトのお前もな」

 

上条が才能が無くても魔術に(すが)りつくことはできないと告げると、それを聞いていた垣根はちらっと真守を見た。

 

「そうは言っても、能力的にその特性の穴を突けるヤツはいるにはいるけどな」

 

事情を知っている上条当麻はそれが無能力者(レベル0)でありながらも肉体再生(オートリバース)という傷を癒すことができる土御門元春のことを考えるが、垣根が言っているのは土御門ではなかった。

 

朝槻真守。

源流エネルギーにあらゆる数値を入力して電気エネルギーや重力など、さまざまなエネルギーへと変換することができる、あらゆるエネルギーを生成できる能力者。

 

その性質上、真守は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そこから数値を入力して魔力を生み出すことができるのだ。

 

まさに能力を応用して魔術を扱うことができる典型的な例なのだが、真守は絶対能力者(レベル6)だ。

 

そのため生命力を生み出してそこから魔力を精製し、魔術を使うという回りくどいやり方で万能性を求めなくてもいいのである。

 

だからこそ真守が魔術を使えると公言しなかった垣根だったが、それ故に真守が実は魔術を使えると理解できる人間はその場にいなかった。

 

「……で? どォして俺たちに使えない魔術についての仕組みを講釈垂れやがった?」

 

「『ヤツら』はそのセッティングを行って牙を向いているからさ。使うことはできなくても、対策を講じるために法則を知っておくのは悪いことじゃない。それとも、いつまでも『未知の法則を使う謎の敵』なんて手探りを続けるつもりか?」

 

一方通行(アクセラレータ)が問いかけると、逆にバードウェイが問いかけるので、一方通行は沈黙する。

 

「……じゃあ話せ。魔力は普通、どォやって精製する?」

 

「宗派や学派によっても変わるが、基本的にはまず自分の持っている生命力を魔力に精製するところから始める。……人間の体に元から流れているエネルギーが原油だとすると、魔術を使う前にガソリンへ生成する必要があるんだ」

 

「手軽な方法としては、呼吸法なんかが挙げられるんだよ。でもこれも体内の制御の一例に過ぎないね。瞑想でも、準備運動でも、食事制限でもいいの。要は血液の流れ、内臓のリズムなんかを自分の望み通りの数値で操れれば問題ない」

 

バードウェイがつらつらと説明するのでインデックスがそれを補足すると、バードウェイが総括する。

 

「体内器官の大半は自分の意思では操れないが、それを無理にイジると普段では手に入らないエネルギーが精製できるというワケだな」

 

だからこそ能力者として体裁を整えられた人間が体内器官の動きをイジると体が傷つくのだ、とバードウェイが説明すると、それを聞いていた浜面は曖昧な顔をしながらも頷いた。

 

「魔力を手にしたら、後は『自分の望みに合わせた形』で魔術を発動すればいいだけだ。自分自身の血管や神経に魔力を通し、既に存在する伝説やエピソードを参考にしてコマンドとして身振り手振りで記号を示す。より精密な儀式を行うなら、専用の道具を使えばいい」

 

バードウェイは懐から剣を取り出して、軽く振る。

 

「これを霊装という。霊装はあくまでも道具だ。だから霊装を体の一部として見立てて血管や神経を流れる魔力の一点を流し込み、循環させる必要がある。自分の血管や神経と接続しているから霊装が壊れればフィードバックを受けるが、最近は安全装置が開発されているから比較的安全だ」

 

バードウェイはくるくると華麗に剣を振った後、懐にしまい込む。

 

「今のところ、個人で精製する魔力を基にした魔術についての説明をした。だが他にもエネルギーがないことはない。地脈や龍脈といった土地に起因する物や『天使の力(テレズマ)』なんて呼ばれる同じ世界の別位相に溜まっている力などだな。ここら辺はそこの神人の方が詳しいんじゃないのか?」

 

バードウェイはあらゆるエネルギーを生成することができる能力者である真守を見た。

 

「『天使の力(テレズマ)』と源流エネルギーは明確に違うエネルギーだ」

 

「へえ。その源流エネルギーとやらは一体どこから来ているんだ? まさかお前の体が源流エネルギーなんて大それたものを生成している訳ではあるまい?」

 

「察しがついている質問に答えるつもりはないぞ、バードウェイ」

 

真守がバードウェイの問いかけに不愉快そうに目を細める。

そんな真守を興味深そうにバードウェイは見つめながらニヤッと笑う。

 

「やっぱりお前の体は()()()ということか。そしてお前はその入り口の()()()()()()()()()か」

 

「魔術的に見たらそうかもな」

 

真守がふいっと首を逸らしたので、バードウェイは垣根に睨まれながらため息を吐く。

 

「釣れないなあ。神人とはこんなものなのか」

 

バードウェイはそう呟き、そして一方通行(アクセラレータ)も自分に鋭い視線を向けているのに気が付いた。

 

一方通行(アクセラレータ)にとっても朝槻真守とはよほど大事な存在らしい、とバードウェイは理解しながらバードウェイはにっこり笑い、話を戻す。

 

「神人が能力で力を呼び込むのと同じように、魔術師もこの手の力は人の持つ魔力を使って呼び込むんだ。当然、個人の魔力では不可能なレベルの術式を扱えるが、単純に爆発の規模が変わるから、リスクも増加する。だから個人の魔力を操れない者に大規模な『天使の力(テレズマ)』は扱えないと考えるべきだ」

 

「一部例外的に人間の持つ魔力と天使の力のエネルギーの相似性を利用し、ダイレクトに強大な『天使の力(テレズマ)』を操る輩もいるにはいるけど、質の方が対応した天使にかなり制限されるから一般的な魔術は使えなくなるんだ。結局自由度は減ってしまうってわけだね」

 

インデックスが補足説明した『輩たち』というのは第三次世界大戦の重要人物たちなのだが、魔術について説明し始めた彼らにそれを伝えても分からないだろうとして、インデックスは()えて伏せていた。

 

だが事情を知っている垣根は真守の隣で目を細める。

 

「さてここまでは魔術師の基本的な仕組みに分かりやすく説明した。次は魔術師の生態について話そうか?」

 

バードウェイはそう宣言してにこっと微笑む。

 

説明は始まったばかりでまだまだ続く。

 

魔術の概要をここまで話した。

 

次は──魔術師の()(かた)についてだった。

 




ラジオゾンデ要塞篇、始まりました。
説明が多くなりますがいい感じに端折っているはずなのと、原作でも閑話休題が多かったのでそこまで長くならない予定です。

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