とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一一話、投稿します。


第一一話:〈要塞襲来〉で一時中断

『アイテム』が襲来したが、バードウェイの話はまだ終わっていない。

そのため浜面は『アイテム』の少女たちに出てってほしいと告げた。

 

だが問題はそのお願いの仕方で、浜面は『出てって! 出てってよう! バニー? それは見るよ、絶対見る!! チャラになんかしないからねっ! っていうかもうお前等全員バニーになっちゃえ!!』と気持ち悪く懇願していた。

 

結果、『アイテム』の彼女たちは気味悪そうに顔を歪ませながら散っていった。

 

ただ普通に懇願しただけなのに気色悪がられた意味が分からずに、浜面は首をかしげる。

どこからどう見ても自分の株を自分で下げているのだが、それが理解できない浜面を真守たちは可哀想な視線を向けていた。

 

「結局『ヤツら』ってのは何なンだ」

 

首をひねった浜面が炬燵に戻ってくると、一方通行(アクセラレータ)がそう問いかけた。

 

「学園都市とイギリス清教、ローマ成教。そして、その争いに巻き込まれたその他大勢。あの第三次世界大戦から生まれた組織っつっても、そもそも関わってた連中の分類がかなり違う。──『ヤツら』ってのはどこから出てきた組織だ? そもそも『ヤツら』の団体名は何なンだ」

 

「そうだな」

 

一方通行(アクセラレータ)が核心を迫る質問をすると、バードウェイは口を開いた。

 

「まず初めに断っておくが、おそらく『第三次世界大戦にどう関わってきた連中なのか』という部分については、お前の予想を裏切る結果の答えができるだろう」

 

「ここまで来てはぐらかす気か?」

 

「そんな面倒なことはしない。『ヤツら』の名に関しては極めてシンプルだ。『ヤツら』がこの世界に何を示したいのかを表現するためにつけたものだからな。下手に小難しくして誰にも伝わらないようなものでは意味がない。そう。『ヤツら』の名前は……────む?」

 

バードウェイは本題に入ろうとしたところで言葉を止めた。

 

「……またもったいぶるつもりじゃねェだろォな?」

 

一方通行(アクセラレータ)が睨みを利かせて問いかけると、バードウェイは首を横に振った。

 

「そんなことをする理由はない。……それどころではなくなってきたようなんだ」

 

バードウェイは炬燵から出て、ベランダの繋がる窓へと近づいた。

そんなバードウェイを上条は(いぶか)しむように見つめる。

 

「外に何かあるのか? つっても、ここは似たような寮がずらっと並んでいる場所だからな。隣の寮まで数メートルしかない。窓の外なんて壁しかないと思うけど」

 

上条が声を掛ける中、バードウェイはベランダに出て手すりにお腹を乗せて身を乗り出した。

 

「いや、ちょっと待て……こうして、こう……」

 

お腹が苦しそうでスカートが大変なことになりかけているバードウェイ。

 

そんなバードウェイをベランダに出た真守はひょいっと抱き上げて、外を見やすいように抱えてあげる。

バードウェイはびっくりしつつも、そんな事を気にしている場合ではないと、ビルとビルの隙間から遠くを眺めた。

 

真守もバードウェイが見たい方向を見つめていると、その()()()()にきょとっと目を見開いた。

 

「どうした、真守?」

 

真守の行動の機微に鋭い垣根が問いかけると、バードウェイが呻いた。

 

「ちくしょう、やっぱりだ」

 

「何があるんだよ?」

 

浜面が(たず)ねると、バードウェイはちょいちょいと部屋にいる一同を呼びながら告げた。

 

「来たんだよ。……『ヤツら』が」

 

その言葉に驚いた四人はベランダに向かう。

だが流石に定員オーバーなため、一方通行(アクセラレータ)は土御門の部屋がある方向の防火壁を蹴り破った。

そして一同は広がるようにベランダに出る。

 

「うっ!? 何だありゃあ!!」

 

『ソレ』を見て叫んだのは浜面だった。

 

夜の学園都市は街灯(がいとう)や建物の光で明るくなっているが、光の強い星は(かす)かに見える。

 

そんな微かに見える星を遮るかのように、『ソレ』は巨大な入道雲か何かのように地平線の向こうに浮いていた。

 

『ソレ』とは。

 

 

いつかの『ベツレヘムの星』を連想させるような、巨大な構造物だった。

 

 

「……学園都市を巻き込んでしまえば、もっと早い段階で科学サイドが落とすと思ったんだが……予想以上に向こうの対応が遅いな。やはり『計画(プラン)』の誤差とやらが響いているのか」

 

垣根はバードウェイの呟きに片眉を跳ね上げた。

 

「なんでお前がそれを知ってる?」

 

バードウェイは学園都市の人間ではない。

魔術世界の人間だ。

何故『計画(プラン)』のことを知っていて、しかもその誤差のことまで知っているのか。

 

バードウェイは柔らかく微笑んでから肩を(すく)めた。

 

それについて話している時間はないと言った風に、だ。

 

垣根が舌打ちをすると、バードウェイは事情を説明する。

 

「元々あれは行方不明になっていた幻想殺し(イマジンブレイカー)を追っていたんだ。全世界規模のサーチに、ド級の質量を持った浮遊要塞が二十四時間追尾してくる。……振り払うのは面倒だろう?」

 

バードウェイは巨大構造物を見つめながら、あからさまなため息を吐く。

 

「やったらやったで我々『明け色の陽射し』の切り札を解析される恐れもあるわけだしな。面倒事は面倒な連中に任せてしまうのが一番だ」

 

バードウェイの言葉を聞いて、思考が停止していた浜面が口を開く。

 

「……って事は、何か? 入道雲って何十キロも広がっているもんだろ。それをコンクリートで作ったような巨大オブジェが、今から学園都市に降ってくるっていうのか!? しかも、お前たちはわざと仕組んだだって!?」

 

「っていうか、俺も聞いてない!! 何アレ『ベツレヘムの星』じゃないだろうな!?」

 

浜面と上条がパニックに(おちい)る中、バードウェイは冷静そのもので淡々と告げる。

 

「ま、右方のフィアンマを撃破し、第三次世界大戦を止めた中心がこの男だ。第三次世界大戦を機に生まれた『ヤツら』は第三次世界大戦を止めた男の生死や消息を知っておきたかったんだろう」

 

バードウェイはちらっと上条を見上げながら腕を組む。

 

「『上条当麻を追っている』という情報を伏せて全世界をまとめてサーチするにはかなりの労力がいる。……となると、『惑星レベルの壊滅的なリスク』という大規模な事件にしてしまう方が良いということだな。だからあんなものをわざわざ使ってるんだ」

 

「どうするんだ……?」

 

バードウェイの淡々とした説明に、上条は思わず(うめ)きながら呟く。

 

「連中の目的はわかった。でもあんな小惑星みたいな要塞を学園都市に落とす訳にはいかないだろ!! 具体的にはどうやってあれを防ぐんだ!?」

 

上条が慌てていると、バードウェイは罰が悪そうに顔をしかめた。

 

「だから、そういうのは学園都市に頼みたかったんだけどな。海上でならいくらでもやりようはあるだろうが、陸の上に上がられると残骸なんかがバラバラ落ちるだろうし」

 

「……何も考えてないとこないよね?」

 

ゾッとすることをバードウェイが言うので上条が思わず問いかけると、バードウェイは人差し指を振りながら告げる。

 

「例のサーチ構造物……えー、イギリス清教式に言うと『ラジオゾンデ要塞』だったか? あれがどうやって幻想殺し(イマジンブレイカー)を追尾しているかは予測がついている。そして、方式さえ分かれば対処法の逆算もできるって訳さ」

 

「方式って言うのは?」

 

浜面が訊ねると、バードウェイは人差し指を無意味にふりふりと横に振る。

 

「地脈や龍脈と言うのは覚えているか?」

 

「……人体から作る魔力以外で、魔術に応用できるエネルギーの一種って話だろォが。確か、土地やら地形やらが関わってきやがるって……」

 

きちんとバードウェイの説明を理解している一方通行(アクセラレータ)がたどたどしくも言うと、バードウェイは深く頷いた。

 

「そうだ。そして、幻想殺し(イマジンブレイカー)はありとあらゆる異能の力を打ち消す能力を持つ。それは惑星を循環する力であってもとしても変わらない」

 

バードウェイがそう前置きしたので、真守が口を開く。

 

「上条の幻想殺し(イマジンブレイカー)は自然発生している異能についてはあまり機能しない。でも、あまり機能してないだけで少しは機能している。だからあの要塞はその痕跡を使って上条を追っていると?」

 

「そうだ。流石神人。よく分かっている」

 

バードウェイが自分のことを未だに抱き上げていると真守を称賛すると、上条が首を傾げた。

 

「……どういうことだ?」

 

記憶を失くしている上条当麻は、幻想殺し(イマジンブレイカー)の仕組みを理解していない。

 

そのため真守が何を言っているか分からないので問いかけると、真守が分かりやすいように説明する。

 

「お前の右手はこの世界を形作っている異能──地脈や龍脈といったエネルギーも実は打ち消してるんだ。けれど地脈や龍脈といったエネルギーは、右手が打ち消した分を惑星の方が補充してくれる。そういう風にできてるんだ」

 

上条当麻の幻想殺し(イマジンブレイカー)が龍脈や地脈のエネルギーを打ち消す。

すると周りが補填(ほてん)しようと流れが生まれる。

流れを見据えることができる真守にとって、その仕組みを理解するのは容易いのだ。

 

「……そんなに、都合よくカッチリあてはまるものなのか?」

 

真守の説明を聞いた上条が自身の右手を見つめながら首を傾げると、バードウェイが補足説明をする。

 

幻想殺し(イマジンブレイカー)に限った話じゃない。お前のような天然モノの場合、環境や状況に合致した設定を施されている場合が多いんだ。天然モノの『原石』とは地球環境に刺激されて能力を得た者たちを差す訳だしな」

 

バードウェイが上条に『原石』の話を簡単にしていると、垣根が口を開いた。

 

「ちょっと待て。幻想殺し(イマジンブレイカー)は惑星のシステムに組み込まれてる。それなのにその痕跡を追えるってことは、つまりあの巨大構造物は惑星のシステムに干渉してるってことか?」

 

魔術に関して中々に詳しくなっている垣根が問いかけると、バードウェイは頷いた。

 

「ああ、そうだが?」

 

「「…………」」

 

思わず絶句する真守以外に、バードウェイは淡々とその仕組みを説明する。

 

「神人の言う通り、世界に必要な異能で削り取られたものは、周りが自然と補うようにできている。そして未元物質(ダークマター)の推測の通り、『ヤツら』はそのサイクルに干渉したのさ。削られた分を修復する過程で、『ラジオゾンデ要塞』にだけ分かるような目印を残すようにな」

 

「どうやって……? 惑星に干渉なんて、言葉で言うのは簡単だが、実際どこからどう手を付けるものなんだ!?」

 

「風水の応用さ」

 

浜面の叫ぶような質問に、バードウェイは続ける。

 

「山や川の位置でエネルギーの流れが変わるから、最適の場所に宮殿を建てましょうってあれだよ。……だったら逆もできる。望む変化を地脈や龍脈のエネルギーに与えるために、山や川を規則的にぶっ壊してやればいいのさ」

 

バードウェイの言葉を聞いて真守は納得して目を細めた。

今だって上条当麻はAIM拡散力場もろもろを右腕の幻想殺し(イマジンブレイカー)で打ち消している。

確かに風水の応用を行えば、どこに上条がいるか特定できるだろう。

 

「そこまで……たった一人の人間を探すために、そこまでやるのか……?」

 

真守を他所(よそ)に、浜面はそのスケールの大きさに呆然とする。

 

「こんなものは『ラジオゾンデ要塞』そのものに比べればサブの術式に過ぎない。あれだけの大質量を浮かべさせるのにどれほどエネルギーを使うと思う? まあ、ガスタービンにできる程度の現象じゃないな」

 

真守は遠くに浮かぶラジオゾンデ要塞を見つめながら呟く。

 

「……魔術によって特殊配合されたエネルギー、かな。でもそれだと、科学に足を突っ込んでいることになる。……そうか、そういう連中なのか」

 

真守がぼそぼそと呟いていると、バードウェイは真守の独り言に驚愕の表情を浮かべた後に、興味深そうに微笑んだ。

 

「『ヤツら』は幻想殺し(イマジンブレイカー)を追うために、幻想殺し(イマジンブレイカー)が地脈や龍脈のエネルギーを破壊し、修復されるサイクルの過程に干渉して自動的に目印を生み出している。これによって地球のどこへ幻想殺し(イマジンブレイカー)が逃げても『ラジオゾンデ要塞』は正確に追尾するようになる。ここまでは分かるか?」

 

「それじゃ、逃げようがねえだろ!?」

 

逃げ場がどこにもないと浜面が焦ると、バードウェイは冷静さを欠かずに告げる。

 

「地脈や龍脈が削られた力を補修するサイクルに相乗りしているとはいえ、『ヤツら』の術式は常時休まず目印を生み出し続ける訳じゃない。連中だってコストについては考えるからな。だから、正確には等間隔で設置されている発信器のようなものということだな」

 

「でもその発信器は等間隔で自動的に生み出されるんだろう? だったら新しい発見器が作られたら、やっぱり『ラジオゾンデ要塞』の起動も修正されるんじゃないのか?」

 

上条が問いかけると、バードウェイは首を横に振った。

 

「『ヤツら』はそこまで万能じゃない。おそらくもうリミットで、新しい発見器は作られない。だから今ある発見器を破壊してしまえばそれで良い」

 

バードウェイは断言してから、予測を口にする。

 

「そうだな。五〇キロ間隔で発信器設置されていると考えると、最後の発信器はこの学園都市の地下に敷設されるはずだ。そいつをぶっ壊せば『ラジオゾンデ要塞』は素通りする。後はどうせ無意味にハッスルしているイギリス清教辺りがケリをつけてくれるだろう」

 

上条はバードウェイの説明を聞いて、自分の右手、幻想殺し(イマジンブレイカー)をじぃっと見つめて告げる。

 

「そうか。……それだけ分かれば十分だ」

 

上条は頷く。そんな上条に真守が告げた。

 

「上条、手っ取り早く終わらせよう」

 

真守の言葉に上条が頷く。

 

真守の能力は流動源力(ギアホイール)

 

あらゆるエネルギーを生成する能力者であるが故に、あらゆる流れを感知することができる。

 

だから龍脈や地脈が幻想殺し(イマジンブレイカー)で打ち消されて、それを星が充填するサイクル(流れ)に『ラジオゾンデ要塞』が干渉しているのならば、真守に分からないことなんてないのだ。

 

真守は抱えていたバードウェイを下ろして柵に手をかける。

 

「待てよ」

 

だが二人が行動を開始しようとすると、浜面が声を掛けてきた。

 

「第三次世界大戦がバードウェイってヤツの言った通りなら、この世界はアンタらに借りがある。だったら今になってそいつをまた膨らませる必要はねえ。この辺りでちょっとずつでも借りを返させてもらうぜ」

 

浜面はパーソナルな領域を守るために戦ってきた。

 

それは外側に広がる大きな世界を守られなければ、自分が手を出す暇もなく失われていたはずだ。

 

つまり、上条当麻と朝槻真守が頑張らなければ、浜面仕上は自分の大切な世界を守ることができなかった。

 

そういうことだ。

 

「……、」

 

一方通行(アクセラレータ)も何も言わずに、浜面の言い分に同意した。

 

事情を説明してもらった上で彼らが再び世界と戦おうとしているならば、見過ごすことなどしてはならない。

 

一方通行(アクセラレータ)は真守の反応を待たずに首筋の電極のスイッチを切り換えると、ベランダから一気に屋上へと飛び上がる。

 

「アンタたちはそこで待ってな。ちょっと働きすぎなんだよ」

 

浜面は不安そうな顔をしているフレメアを見てから寮の玄関に走っていった。

上条は呆然としながらも真守を見た。

真守はバードウェイを降ろしながらにこ、と微笑む。

 

「任せるにしても……私は気になるから見に行くぞ?」

 

真守はそう前置きして、能力を解放した。

 

猫耳ヘアの上に蒼閃光でできた三角形を一つずつ現出させて、その三角形に正三角形を二つずつ連ねる。

 

そしてスカートの上から蒼閃光(そうせんこう)でできた細長い四角形のタスキのような帯を出して、その根元に正三角形を二つ、リボンのようにぴょこっと現出させた。

 

そしてベランダから空中へと尻尾と黒髪、そしてスカートをひらめかせて去っていく。

 

「おい、真守! スカートで飛ぶんじゃねえっていつも言ってるだろ!!」

 

垣根は真守の洗練されたデザインの下着が(あら)わになることを恐れて、未元物質(ダークマター)で造り上げられた三対六枚の翼を広げて飛翔する。

 

『えー今更もういいだろ?』という真守の声が響く中、真守はふりふりと上条へと手を振った。

 

「上条も気になるなら来い」

 

「わ、分かってるよ! お前たちは簡単に飛べるからいいよなあ!」

 

上条当麻はそう叫ぶと、自身も寮の玄関から外へと飛び出した。

 

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