とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第二六話、投稿します。
次は七月六日水曜日です。


第二六話:〈最愛存在〉の手綱捌き

深城は林檎と共に、夜に近い夕暮れの学園都市の街を歩いていた。

朝、真守に伝えた通りに、林檎の歯科医に行った帰りである。

 

「林檎ちゃん。今日のお夕飯どうしよっか」

 

深城はカブトムシを頭に乗せて、自分と手を繋いでいる林檎に声を掛ける。

 

「垣根と朝槻は?」

 

「今日は何時になるか具体的に分からないから、適当に済ますって言ってたよ。ねえ、帝兵さん」

 

深城は林檎と繋いでいない手で、林檎の頭に乗っているカブトムシの背を撫でる。

 

『真守はまだ手伝いがあるので時間がかかりそうです。それに加え、別件ができましたので。気にしなくてよろしいかと』

 

「別件?」

 

林檎が首を傾げると、カブトムシは首を傾げた林檎の頭の上で器用にバランスを取ってヘーゼルグリーンの瞳をカメラレンズのように収縮させる。

 

『詳細は追って説明します。心配は要りません』

 

「分かったよぉ。林檎ちゃん、だったら今日はお外で食べよっか。ねえ?」

 

「お外! 深城のご飯も好きだけど、深城が選ぶ外食もおいしくて好き」

 

深城ははしゃぐ林檎の隣で携帯電話を取り出して、近くのおすすめのお店を探し始める。

 

「って、アレ……?」

 

だが視界の端に気になるものを見つけて、深城は首を傾げた。

第七学区の案内板。その前で、見たことのある少女二人が言い争いをしている。

それは打ち止め(ラストオーダー)とフレメア=セイヴェルンだった。

深城はなんだかいがみ合っている二人へと声を掛ける。

 

打ち止め(ラストオーダー)ちゃん。フレメアちゃん、何してるのぉ?」

 

「む、誰だ誰だってミサカはミサカは!! ……って、あれ? あなた、なんでここにいるの、ってミサカはミサカは問いかけてみたり」

 

「うにゃああっ大体うるさいにゃあっ。……って、いつかどっかで会った人!」

 

打ち止め(ラストオーダー)とフレメアは深城と林檎を見て、同時に声を上げる。

声を上げたのが同時だったのが許せないのか、打ち止め(ラストオーダー)とフレメアは顔を突き合わせて再び互いに睨みを利かせる。

そんな二人を見て、林檎は顔をしかめて二人にトテトテと近づいた。

 

「喧嘩、めっ。大人げない」

 

「なっなんだと、子供に言われたくない! ってミサカはミサカは叫んでみる!」

 

「私はあなたたちよりも身長大きい。しかもブラしてる」

 

「なーっ!!」

 

『どっちが大人なのか』という、口ゲンカの内容をちゃっかり聞いていた林檎と、衝撃の真実に驚く打ち止め(ラストオーダー)

優位に立てた林檎は控えめ過ぎるが、それでも確かに、ほんのちょっとだけ膨らんでいる胸を張る。

 

「深城と朝槻が一緒に選んでくれた。だから下着には自信がある」

 

林檎の自信たっぷりな様子に固まった打ち止め(ラストオーダー)をよそに、フレメアは大声を上げる。

 

「ふ、フレメアだって自分の庭であるせくすぃーな下着売り場で買った下着に、自信があるもんっ!!」

 

「ちゃんとその後、自分のおっぱいの形に合わせてもらうためにテーラーさんのところに行った?」

 

「てーらー……? ふ、フレメアだって知ってるし、知ってるし!!」

 

「仕立て屋さんのことだよ。ぶらじゃーはフィット感も大事だから。そうじゃないとおっぱいの形が悪くなるんだって」

 

林檎は深城と真守の厳重な審査が通った、高級ブランドの子供用のブラジャーに包まれた自分の胸をふにふに触りながら告げる。

 

アイドル体型で普通の下着が合わない真守だが、林檎も林檎で研究所にいて発育不良なので、仕立て屋さんに調整してもらわないといけないのだ。

 

自分に合わせて作ってもらったブラジャーを服の上から触る林檎を見て、フレメアは自分が付けているブラジャーが良いものではない(そんなことはない)と知って愕然(がくぜん)とする。

 

(うーん、かわいいなあ)

 

深城はレディとして必要な知識を、限りなくしかも少ししか持っていないマセている少女たちを眺めて、優しい笑みを浮かべる。

林檎はそんな深城の前で、得意気に微笑んで告げる。

 

「ケンカやめるならテーラーさんのこと教えてあげる。ケアするのは早い内からが良いって朝槻が言ってた」

 

実験で成長が停まってしまった真守だが、できれば林檎には自分のように体内エネルギーをイジッて発育不良をどうにかするやり方はしたくない。

そう思った真守が林檎に掛けた言葉を林檎が口にすると、フレメアと打ち止め(ラストオーダー)は同時に叫んだ。

 

「「ケンカは終わりだ!!」」

 

同時に林檎のもとへと集まった打ち止め(ラストオーダー)とフレメア。

彼女たちを見て、林檎は得意気に微笑む。

それでもお腹がぐぅ、と鳴ったのに気が付いたので、林檎は深城を見上げた。

 

「深城、ご飯どうしよう」

 

林檎が深城を見ると、深城はにこっと微笑んだ。

 

「じゃあ四人でご飯食べに行こうか! 打ち止め(ラストオーダー)ちゃんとフレメアちゃんがどぉしてここにいるのかも、ゆっくり聞かせてね?」

 

深城はフレメアと打ち止め(ラストオーダー)の手をしっかりと握って歩き出す。

 

そうしないと二人はどこかへと行ってしまいそうだからだ。

 

林檎はお利口さんなので、ふらふらとどこかへ行くなんてことはしない。

だがそれでも深城は林檎にしっかりとワンピースの(すそ)を握らせる。

そして幼女三人と深城は歩き、レストランへと入った。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「深城。このしょーろんぽー? おいしい。ジューシー」

 

林檎は器用にレンゲの上で割った小籠包を、肉汁ごとはふはふ食べながら微笑む。

 

深城たちが入ったのは中華料理屋で、点心が美味しいと有名の店だった。

店内はもちろん中華チックになっており、きらびやかとなっている。

深城は幼女が三人集まっている事を考慮して個室を選んだ。そのため防音性はばっちりである。

 

「エビが入った水餃子もおいしいよ、林檎ちゃん。……それで打ち止め(ラストオーダー)ちゃん。話を聞くにお夕飯のお鍋の薬味の細ネギを求めて飛び出したけれど、一端覧祭の様子に惹かれてトテトテ歩いてたらフレメアちゃんに会ったって事だよねえ?」

 

「むふーこの肉まんおいしい! ってミサカはミサカは頬に手を当ててうっとりしながら、源白のおねえちゃんの言葉に頷いてみたり!!」

 

「そぉなの。おいしくて幸せだねえ。……帝兵さん、こっそり一方通行(アクセラレータ)さんに連絡とってくれる? とりあえず捕まえたよぉって」

 

『分かりました』

 

多分、保護者的な立場である一方通行(アクセラレータ)は一向に帰ってこない打ち止め(ラストオーダー)を探して、学園都市中を文字通り駆け回っているに違いない。

そのため深城は一方通行(アクセラレータ)にコンタクトを取るようにカブトムシにお願いする。

 

「で、フレメアちゃん。フレメアちゃんは歯医者さんに行った後、いつの間にかいなくなっちゃった浜面さんを探してたのぉ?」

 

「にゃあ、大体そう!! 源白、源白! この蒸しパンとってもおいしい!!」

 

「うん。それはマーラーカオって言う蒸しパンだよぉ。おいしいねえ。……帝兵さん。重ねて悪いんだけど、浜面さんも探してくれる?」

 

『問題ありません。私たちは数なら余りあるほどいますので、並列処理ももちろん可能です』

 

深城が申し訳なさそうにしているので、カブトムシは柔らかくヘーゼルグリーンの瞳を(またた)かせながら告げる。

 

カブトムシは深城の事を尊敬しているので、力になれるならばなりたいと考えている。

何故なら深城は真守の心を開いた人物であり、真守の事を本当に大切にしているからだ。

しかもフレメアや打ち止め(ラストオーダー)と言った、子供の扱いに長けている。本当に尊敬できる少女だ。

 

それに深城は自分の事を考えて、あんまり無茶なお願いをしようとしない。

 

本当に優しい少女だと、カブトムシは本当にそう感じていた。

 

「あ、林檎ちゃん。お箸上手に使えるようになったねえ」

 

深城は一方通行(アクセラレータ)と浜面を探し始めたカブトムシの前で、柔らかく林檎に微笑みかける。

 

「うん。垣根が教えてくれた」

 

林檎が得意気にすると、自分たちより大人への道を一歩先に進んでいる林檎をライバル視して、打ち止め(ラストオーダー)とフレメアはムッと口を尖らせる。

 

「み、ミサカだって上手く持てるもん!! ってミサカはミサカは主張してみる!」

 

「にゃあっ! 大体フレメアだってうまく持てるもん!!」

 

「うんうん、そぉだねえ。じゃあ二人共ふかひれスープのふかひれ掴めるかなぁ? ほろほろだから掴みにくいと思うしぃ、……できるかな?」

 

深城は対抗し始めた二人に、優しいほんわかとした笑みを浮かべる。

 

「ミサカネットワークの司令塔、このミサカを舐めるなっ!!」

 

「にゃあっフレメアだって大体できるっ!」

 

深城がスープを二人の前に出すと、打ち止め(ラストオーダー)とフレメアは競ってふかひれスープのふかひれに箸を伸ばす。

 

(やはり真守の心を開いた源白の包容力は凄まじい……ッ!)

 

カブトムシはにへら~っと笑って打ち止め(ラストオーダー)とフレメアの相手をして、林檎のことにも注意を向けて食事をしている深城を見て、戦々恐々とする。

 

母性の塊のような深城にカブトムシは驚愕するしかなく、ただただ圧倒され続けていた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

『源白。一方通行(アクセラレータ)と浜面仕上に連絡が付きました。私たちの自宅に来るように指示もしました』

 

「うん。ありがとぉ」

 

深城が会計を済ませてバッグに財布を入れていると、林檎がくいくいっと深城のワンピースの(すそ)を引っ張った。

 

「深城、打ち止め(ラストオーダー)とフレメアが行っちゃったから追いかけたけど、誰かと話をしてる」

 

「うん?」

 

深城は戻ってきてちゃんと教えてくれた林檎と共に、大通りから外れた道へと入ろうとする。

 

『……源白、そちらに行く事は推奨しません』

 

カブトムシはヘーゼルグリーンの瞳を赤く染め上げて告げる。

カブトムシの瞳は警戒している時に赤くなる。

ここから先は本当に危ない。カブトムシはそう告げているのだ。

 

「……うーん。でも打ち止め(ラストオーダー)ちゃんとフレメアちゃんが行っちゃったし……何かあったら帝兵さんが守ってくれるから、大丈夫っ!」

 

深城はカブトムシをぎゅっと抱きしめると、前へ前へと進む。

 

(この少女もこの少女で頑固なところがありますし……最悪、戦闘になったら真っ先に源白たちを逃がしましょう)

 

カブトムシはネットワークに呼び掛けて、他の個体を呼んで臨戦態勢を取る。

打ち止め(ラストオーダー)とフレメアが向かった先。

そこにいた、危なっかしい『彼女』を見て、深城は大きく目を見開いた。

 

「!」

 

二メートル近くの身長。足首近くまで長い銀髪。

薄い合成繊維のワンピース。それには女性用の下着が思い切り透けている。

表情は長い前髪と(うつむ)いている姿勢のため、見えなかった。

 

「どぉしたの?」

 

深城は林檎を連れて、ぼうっと立ち尽くす女性に声を掛ける。

 

「なんか、懐かしい。いつかの真守ちゃんみたいに(うつ)ろな目ぇしてるねえ?」

 

「…………まもりちゃん?」

 

女性がぽそっと呟いて問いかけると、深城はにへらっと笑った。

 

「そぉ。真守ちゃん、あたしの大事な人!」

 

女性――フロイライン=クロイトゥーネは深城をじぃっと見つめる。

目の前の少女の言う大事な人が、フロイライン=クロイトゥーネには分からない。

それでも深城の言葉を一から崩して組み直して精査した結果、それが温かいものを指すことが理解できた。

深城は柔らかく微笑んだまま、フロイライン=クロイトゥーネに手を差し伸べる。

 

「とりあえずこんな薄暗いところにいないで、もっと明るい方へ行こうよ」

 

深城の手を断る理由がないフロイラインは頷く。そうするべきだと判断したからだ。

 

フロイライン=クロイトゥーネは深城と林檎と、そして打ち止め(ラストオーダー)とフレメアと一緒に歩き出す。

 

カブトムシはハラハラしていたが、深城は大丈夫だ、と抱えていたカブトムシのその背中を撫でた。

 

フロイライン=クロイトゥーネは自分が感じたことのない温かい何かを感じながら、深城に手を引かれて歩いて行った。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

『深城。それでお前はいま何をしてるんだ』

 

深城はごそごそと自分の部屋のクローゼットに首を突っ込んでいたが、カブトムシから発された真守のその問いかけを聞きながら、首を引っこ抜く。

その手に持っていたのは大きめのワンピースだ。

前に懸賞で当たったが、自分の体に合わなかったので、いつか雑巾にしようと思っていたものだ。

 

「フロイラインちゃんのお洋服を探しているの。見つけたよ!」

 

深城はワンピースをカブトムシに見せながら微笑む。

 

『……クロイトゥーネは?』

 

ため息でも()かんばかりに真守が告げると、深城はにへらっと笑う。

 

「林檎ちゃんたちと一緒にいるよぉ。真守ちゃん、ちょっと移動するねえ。もうすぐ一方通行(アクセラレータ)さんと浜面さんが来ると思うから」

 

深城はワンピースとカブトムシを抱え込むと、自室から出て二階のラウンジへと向かう。

 

『今日は拾いものをいっぱいしたな、お前』

 

打ち止め(ラストオーダー)やフレメアに加えて、まさかフロイライン=クロイトゥーネまで拾うなんて。

真守がカブトムシにじろっと深城を睨ませると、深城は笑った。

 

「何でだろうねえ。そぉいう日だったのかなあ」

 

深城はトントン階段を下りながら、カブトムシから不機嫌に発された真守の言葉に答える。

 

『お前は意外とちゃんとしてるから大丈夫だと思うけど……夜明けまでには帰るから、絶対に』

 

「意外とって酷いなあ。これでも真守ちゃんができない家事がちゃんとできるんだよぉ?」

 

『舐めるな。私だって家事ぐらいやろうと思えば、本物のメイドさんより上手くできる自信があるっ。……って、そうじゃなくて。深城は運動音痴だけど、人の扱いだけは意外とちゃんとできるから。そう言いたかったの』

 

深城は人間や、人間ではないが知的存在であるモノの扱いが非常に上手い。

何故なら、他人の気持ちが分からない、自分の心にでさえ無頓着だった自分に温かい光をくれたのだから。

真守は救いようのない根っからの悪党を救う事だって、深城には容易くできると分かっていた。

 

「む。運痴は余計だよぉ! ……だいじょぉぶだよ。真守ちゃんは真守ちゃんのやりたいことをすればいいから」

 

深城はカブトムシを抱きかかえ直して、にへらっと微笑む。

 

「いつだって真守ちゃんはあたしの事を考えてくれるから。信じてるよ」

 

『……うん、ありがと』

 

「ふふっ。照れちゃって、かわいいねえ」

 

『照れてないっしみじみしただけだっ』

 

真守が否定する中、深城はくすくすと笑ってラウンジへと入る。

 

「深城、下に浜面仕上が来てる。一方通行(アクセラレータ)も一緒」

 

林檎は深城が抱きかかえているカブトムシと別の個体を抱えたまま、トテトテと深城のもとにやってくる。

深城は林檎に視線を合わせて頷く。

 

「うん。だいじょぉぶだよ、林檎ちゃん。一方通行(アクセラレータ)さんは悪い人じゃないから」

 

「? 知ってる。だって朝槻が助けたんでしょ?」

 

どうやら実験の元凶となった一方通行(アクセラレータ)のことを林檎は毛嫌いしているわけではないらしい。

深城はそれが分かると、にこっと笑って打ち止め(ラストオーダー)とフレメアを呼んだ。

 

打ち止め(ラストオーダー)ちゃん、フレメアちゃん。一方通行(アクセラレータ)さんと浜面さんが迎えに来たよぉ」

 

「にゃあ、もっと友達と遊んでたいっ! お()まりを希望するっ!!」

 

フレメアがカブトムシ(別個体)を抱えたままシュッと手を上げると、同じようにカブトムシ(またまた別個体)を持っている打ち止め(ラストオーダー)がアホ毛をピンと伸ばした。

 

「ミサカもミサカも友達ともっと遊んでいたい!! お泊まりを希望するっ!!」

 

「それは保護者さんと相談してねえ、とりあえず行こう?」

 

深城はフロイライン=クロイトゥーネに服を着るように指示した後、打ち止め(ラストオーダー)とフレメアを連れて一階に降りる。

 

一階のホールでは、浜面仕上と滝壺理后。そして一方通行(アクセラレータ)がそれぞれ待っていた。

 

「……そっちも大変だなあ」

 

浜面はフレメアの居場所が分かってドッと疲れが出てきたのか、大変くたびれた様子で呟く。

 

「……そっちもなァ」

 

一見澄ましている一方通行(アクセラレータ)も、能力行使をしたのでちょっとバッテリーが心配である。

保護者たちが悲壮感を漂わせていると、深城がフレメアと打ち止め(ラストオーダー)を連れて降りてきた。

 

「にゃあっ大体今日は源白のところにお()まりするの! 邪魔者浜面は帰って!!」

 

「邪魔者!? お前のこと散々探し回った俺を邪魔者扱いするってどういうこと!?」

 

再会した途端にフレメアに酷い事を言われた浜面はガーン、とショックを受ける。

 

「にゃあっ! 大体、浜面が勝手に迷子になったんでしょ! 浜面(ごと)きが大体邪魔するな!」

 

「如き!? しかもすっげえ捏造されてる! フルーツ入りのマシュマロに惹かれてどっか行ったのお前だろ!?」

 

浜面がフレメアの横暴に声を上げている横で、一方通行(アクセラレータ)打ち止め(ラストオーダー)を見た。

 

「……で、オマエは何か言うことねェの?」

 

「あのねあのね、今日は友達がいっぱいできたの! ってミサカはミサカは意気揚々と報告してみる! そんな友達と一夜を明かしてもっと絆を深めたいんだけど、ってミサカはミサカは、痛いっ! どーして無言で連続チョップをするの、ってミサカはミサカは文句を言ってみる!」

 

「文句を言いてェのはこっちだ、このクソガキィ!!」

 

一方通行(アクセラレータ)が怒りを爆発させている横で、浜面はフレメアの態度にむせび泣く。

その様子を見ていた深城は笑顔で呟く。

 

「……林檎ちゃんが聞き分けのよいお利口さんでよかったねえ、真守ちゃん」

 

『本当にな』

 

真守が呆れた様子を見せる中、真守と一緒に状況を見守っていた垣根は、フレメアと打ち止め(ラストオーダー)の自由奔放っぷりに呆れる。

 

「はいはい、打ち止め(ラストオーダー)ちゃん、フレメアちゃん。お叱り受けたしお願いしよっかぁ」

 

深城は打ち止め(ラストオーダー)とフレメアを並べて、一方通行(アクセラレータ)と浜面、滝壺を見つめて微笑む。

 

「にゃあ。今日は源白のところに泊まります! 浜面、よろしく!」

 

「ミサカも友達と楽しくやりたいから外泊許可が欲しい、ってミサカはミサカはあなたにおねだりしてみたり!」

 

フレメア、打ち止め(ラストオーダー)にそう言われて、保護者たちは微妙な気持ちになる。

 

「…………まあ、どこにいるか分かっているだけでもありがたいか……」

 

「オマエ、ダメだっつっても聞かねェだろォが」

 

最早言うことを聞かせることを放棄した保護者たちは、降参の旗色を見せた。

そしてお()まりする許可を無理やりもぎ取ったフレメアと打ち止め(ラストオーダー)は、狂喜乱舞する。

 

「はい、よくできましたあ。じゃあ浜面さんと一方通行(アクセラレータ)さん。フレメアちゃんと打ち止め(ラストオーダー)ちゃんのことはちゃあんと責任もって見ておくから。明日の朝、お迎えよろしくねえ?」

 

深城は保護者のお許しを貰ってはしゃぎまわる打ち止め(ラストオーダー)とフレメアを、二階のラウンジへ向かわせながら微笑む。

 

((手慣れてやがる……))

 

自由にさせているようでその実、しっかりと手綱を握っている源白深城。

 

そんな深城ならば大丈夫だろうと思って、一方通行(アクセラレータ)と浜面はそれぞれ頷いた。

 

幼女の心を鷲掴みにする源白深城。

それなら朝槻真守が(ほだ)されてしまうのも無理はない。

一方通行(アクセラレータ)はそう察した。

 

浜面は朝槻真守のそばには優秀なベビーシッターがいるんだな、と感動して、その場を滝壺と共に去った。




真守ちゃんの心を開いた深城さん、さすがの手腕……。


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