とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第二九話、投稿します。
次は七月一五日金曜日です。


第二九話:〈懸念事項〉ありつつも開幕

真守はICUから一般病棟に移った、上条当麻の病室を訪れていた。

 

「よしよし。ちゃんと寝てるな」

 

真守はお見舞いの花を花瓶に飾りながら、ベッドに横たわっている上条を見る。

 

「……そりゃこれだけ厳重に監視されたら逃げられないだろ」

 

上条は天井を見上げながら告げる。

 

天井にはびっしりとカブトムシが張り付いて、上条当麻を監視していた。

 

ちなみに病室の扉のドアノブにもカブトムシは張り付いていて、上条が外へと出ようものなら『幻想殺し(イマジンブレイカー)で私に触れれば私は死ぬでしょう』と脅しを掛けていた。

 

カブトムシのネットワークの構築具合から見てそんなことは絶対にありえないのだが、人間というのは物にも感情移入する生き物である。

 

そのため上条は強引に幻想殺し(イマジンブレイカー)でカブトムシを打ち消して、外に出ることができなかった。

 

「ふむ。とりあえず体調は安定したようだな」

 

真守は上条の体をサラッと見て、一つ頷く。

上条はそんな真守を見上げた。

 

「帝兵さん? から聞いたけど、フロイライン=クロイトゥーネの件は本当にありがとな。俺がICUに入ってる間に収束したんだって?」

 

「うん。友達もできて楽しそうにしているよ。一端覧祭が始まったら、私たちの学校に一目散に来るって」

 

自分の()りたい形。

それになれたフロイライン=クロイトゥーネは、本当に楽しそうにしている。

真守はそれが嬉しくて、柔らかく微笑む。

そんな真守に、上条は真剣な表情を向けた。

 

「……バードウェイたちは?」

 

「バードウェイなら聖人たちとまだ学園都市にいる。……って、おいおいちょっと待て。どうして体を起こしてるんだ。まったくもう」

 

真守は体を起こし始めた上条の体に触れて、上条が体を起こすのを手伝う。

上条は自分の事を支えてくれる真守に向けて、決心の瞳を見せた。

 

「バードウェイとは話を付けなきゃならない」

 

「その件については利用されたお前と、利用したバードウェイの問題だからな。私が口出すわけにもいかない」

 

真守はため息をついて、天井にびっしり張り付いているカブトムシの一匹を呼ぶ。

上条当麻は自分の周りの人々を守るためならば、絶対に止まらない。

その事実をよく分かっている真守は、カブトムシを上条の頭に乗せる。

 

「帝兵さん、上条のケアよろしく。本当に危なかったら止めてくれ」

 

カブトムシは、ヘーゼルグリーンの瞳を肯定の意味で動かす。

 

『承りました。上条当麻、私を振り払って行くならば幻想殺し(イマジンブレイカー)に触れてでも止めますからね。その場合、この個体は消滅しますが、第二第三の私があなたを捨て身で止めるでしょう』

 

「嫌だなあその脅し。分かったよう……」

 

上条は頭に乗ったカブトムシから嘘の脅しをされて呟くと、真守が持ってきた学生服を手に取る。

 

「吹寄と小萌先生にはいい感じに言っておくから。無理しちゃダメだぞ」

 

真守は着替えたがっている上条に手を振ると、そのまま部屋から出るために歩く。

 

「朝槻、本当にありがとな。お前には感謝してもしきれねえよ」

 

上条は真守への感謝を告げて微笑む。

真守は上条の笑みを見て、コクッと頷くと目元を柔らかくした。

 

「じゃあな、上条。終わったらちゃんと報告するんだぞ。帝兵さんがいるからって、私に面と向かって何をしたか教えてくれ」

 

真守はひらひらと手を振って、上条の病室から出る。

 

「さて。とりあえずの面倒事は終わったから、一端覧祭に集中しよう」

 

真守が通う学校は真守が超能力者(レベル5)に認定された事で大賑わいなのだ。

それに真守自身もやらなければならない事がたくさんある。

 

(大覇星祭の時みたいに一般開放していないから、魔術師がやってくることもないし。……確かに魔術師が数人まぎれこんでるケド、帝兵さんに監視してもらっているし、大丈夫だろう。──私は楽しもう)

 

何せ、一端覧祭に本格的に参加するのは今年が初めてなのだ。

真守は柔らかく微笑むと、飛んできたカブトムシを抱きしめて学校へと向かった。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

一端覧祭は滞りなく開催し、久しぶりのほのぼの日常がやってきた。

 

「ここがあの人たちの通う学校なんだね、ってミサカはミサカは叫んでみたり!!」

 

打ち止め(ラストオーダー)一方通行(アクセラレータ)の歩行用の補助杖にくっついたまま、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。

 

「前に来たことあンだろォが」

 

一方通行(アクセラレータ)が言っているのは九月三○日のことで、あの時は黄泉川愛穂に会うために、教師用の裏口から学校へとやってきていたのだ。

 

「でもでもあの時は先生が使う裏口からだったから、正面から来たことがなかった、ってミサカはミサカは主張してみる」

 

「そォかよ」

 

一方通行(アクセラレータ)は自分が突いている杖に(すが)りつきながら、ぶんぶんと興奮で手を振る打ち止め(ラストオーダー)を見てため息を()く。

 

「……アイツらの学校ねェ」

 

一方通行(アクセラレータ)は何の変哲もない、コンクリートでできた校舎を見上げながら呟く。

 

一方通行(アクセラレータ)は真守に、この学校に入学するように勧められていた。

それでも真守は一方通行のことを考えて、退院してすぐにではなく、ゆっくり準備をすればいいと言ってくれたのだ。

 

だが一方通行(アクセラレータ)はその後すぐに暗部へと落ちた。

そして表向き、長点上機学園に所属している事となった。

 

暗部に落ちなかったら所属していたかもしれない学校。

それを見上げて一方通行は目を細めた。

暗部から抜け出した一方通行(アクセラレータ)は、現在も一応長点上機学園の所属となっている。

 

真守と上条と同じ学校に所属できるならばしたいが、どうにも踏ん切りがつかない。

 

そんな一方通行(アクセラレータ)をよそに、フレメア=セイヴェルンがにゃあにゃあ言いながら打ち止め(ラストオーダー)へと近づいた。

 

「大体、こんなに人が多いのは何でなの?」

 

「ふっふっふ。ここには超能力者(レベル5)第一位が所属しているからなのだ、ってミサカはミサカは解説してみる。だからここが第七学区で一番ホットな場所と言っても過言ではないのだ!」

 

「にゃあ! 大体その上から目線が気に食わないと何度言えば……ッ!」

 

フレメアが得意気に語る打ち止め(ラストオーダー)に怒りを燃やしていると、林檎は垣根にもらったお小遣いで買ったりんご飴を舐めながら二人に近づく。

 

「ケンカ、めっ。ケンカするなら朝槻のところ行こう」

 

林檎が告げると、打ち止め(ラストオーダー)とフレメアは顔を突き合わせながらも林檎の正論に歩き出す。

一方通行(アクセラレータ)は歩き出した幼女三人を見つめて、どうしようもない場違いを感じて遠い目をした。

そんな一方通行へと近づいたのは、真守の心を開いた偉業を持つ源白深城だった。

深城はフロイライン=クロイトゥーネを抱き上げたまま、にへらっと笑う。

 

「だいじょぉぶだよ、一方通行(アクセラレータ)さん。場違いなんて考えなくて。楽しもうよ!」

 

「……面倒なガキィ三人いるのに楽しめるわけねェだろ」

 

「問題ないよ、三人の肩には帝兵さんくっついてるし。どっか行ったらなんとかしてくれるから」

 

一方通行(アクセラレータ)は深城の言葉に、幼女三人がそれぞれ抱えているカブトムシを視界に入れた。

 

「……やっぱりアレってお守用のマスコットキャラクターなンじゃねェの?」

 

深城の隣を歩き、滝壺と浜面を背後に連れて移動していた垣根は一方通行(アクセラレータ)のことを睨む。

ちなみに垣根、一端覧祭なんて面倒なものはサボるに限ると思っている。

そのため真守のいる学校へと、深城たちと一緒に来ているのだ。

 

「お前は前から一体何を勘違いしてやがる。あれは学園都市中を監視するために作ったんだよ。真守をあらゆる脅威から守るためにな」

 

垣根は以前、一方通行(アクセラレータ)にカブトムシを『子供受けする外見』と評価されたことを思い出しながら告げる。

 

「学園都市中……ってそンなにいンのか? 具体的にはどれだけいるンだよ、一匹見たら三○匹はいるアイツかァ?」

 

「ゴキブリと一緒にするんじゃねえよ。…………そういや今どんだけいるんだ? 勝手に自己増殖してるだろうし、分からねえな」

 

「……それで良く離反しねェよな…………」

 

一方通行(アクセラレータ)は意外と大雑把な垣根の一面を見て、思わず呆れる。

 

ちなみにカブトムシは垣根帝督のAIM拡散力場の一部を植え付けられているので、そこそこ自己中心的に動く。

 

そのためちょっと本気で真守の事を翻弄する垣根帝督(オリジナル)を亡き者にしようかと考えることもある。

 

だが垣根帝督(オリジナル)を亡き者にすれば、自分たちが垣根帝督(オリジナル)から守りたい真守が悲しんでしまう。

それは絶対に、一番避けたい。

 

だからカブトムシは真守が抑止力となっており、垣根帝督に服従していた。

つまり朝槻真守がいなければ、カブトムシたちはいずれ反逆していた。

 

所詮、悪党になり切れないチンピラ風情。

それがカブトムシの垣根帝督に対する評価である。

 

保護者一団がほのぼの歩いている中、ちびっ子たちは人が多い校内へと突き進む。

 

幼女三人の話題は、林檎が食べているりんご飴に移っていた。

 

「大体、いつりんご飴買ったの?」

 

「二人がケンカしてる時。なんかスタンプラリーやってた。何これ?」

 

林檎は台紙を渡されて、一つ埋まったスタンプラリーの紙を見つめながら首を傾げる。

 

「ふっふっふー。知らないの? 一端覧祭ではスタンプラリーも開催してるのだ! ってミサカはミサカは懐から台紙を取り出しながら高らかに説明してみる! こういうのを事前に用意しておかなければ、イベントは楽しめないのだよーってミサ」

 

「にゃあにゃあ!! それぐらいなら私も持ってるし!!」

 

フレメアは打ち止め(ラストオーダー)の特徴的な口調を(さえぎ)って、(ふところ)から台紙を取り出して叫ぶ。

 

「屋台だ! 大体、学校の屋台巡りで勝負だ!!」

 

「スタンプラリーは枠を埋めるのだけなら簡単だけど、どんなスタンプで埋め尽くされているかでエレガンスさが変わるのだよ、ってミサカはミサカは解説してみたり。超能力者(レベル5)がやってるたこ焼き屋とかじゃないと、ミサカに勝てるとは思えんなーっ! ってミサカはミサカはあの人のレアさには絶対に勝てないと断言してみたり!」

 

打ち止め(ラストオーダー)の勝利宣言に、フレメアは声を上げる。

 

「にゃあ! こーなったら速攻でそのたこ焼き屋に行ってそのスタンプもらって、デンジャラスレア級のスタンプを全部独占してやる!!」

 

フレメアはそう意気込むと、りんご飴を食べている林檎の手を引っ張って走り出す。

 

「ふにゃははは! デンジャラスレアが最上級だと思っている時点でミサカに勝てるとは到底……待って待って! 話を最後まで聞けってミサカはミサカは……!!」

 

ぴゅーんと去って行く打ち止め(ラストオーダー)たち。

 

その様子を見ていた一方通行(アクセラレータ)は、『行き先分かってるから問題ねェな』と考えて歩いており、深城は興味深そうにあちこち見ているクロイトゥーネに一つずつ丁寧に解説していた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「だ、だから。頼まれてもミスコンには出ない」

 

真守はたこ焼き屋の(すみ)っこで人に囲まれていて、困った顔をしていた。

真守の目の前にいるのは、真守たちの学校の隣にある鋭利学園の運営委員だった。

真守はミスコンへの熱い勧誘を受けており、何度も出ないと首を横に振る。

 

「そう言わず! 朝槻さんのクラスメイトの方が水着も用意していますし!」

 

真守は運営委員が取り出した、真守のクラスメイトが用意した水着を見せびらかす。

 

「なんでメイド服っぽい黒ビキニなんだ。これ用意したの絶対に土御門だろう。……というか土御門どこ行った。どこほっつき歩いてサボってるんだ」

 

真守は白いフリフリと黒いリボンががついた、メイド風のビキニを見て顔をしかめる。

真守は一つため息を吐くと、恥ずかしそうに(うつむ)きながら告げた。

 

「こ、……恋人、が嫌がるから、出るのは絶対に無理だ」

 

あれは九月にプライベートプールに行った時。

垣根は知り合いしかいないのに、水着の上にパーカーを着ろと強要してきた。

真守は当然渋った。だって人目がないのにどうして着なければならないのかと。

知り合いだけしかいなくても、垣根は知り合いにすら真守の白い肌を見せたくなかった。

 

あの時、真守と垣根はまだ恋人同士ではなかった。

 

それなのにいま大勢の前で水着姿なんてさらしたら、垣根の怒りによってカブトムシが暴れて一端覧祭を崩壊させるかもしれない。

 

最早この学園都市で、一番の大量破壊兵器を所持していると言っても過言でない垣根帝督。

垣根の事を真守が考えていると、運営委員は(ひらめ)いたようにタブレット端末を動かした。

 

「だ、だったらベストカップルコンテストに出るのはどうですか!? 私たちとしてはそれでもいいですから!!」

 

何としてでも自分の学校に注目が集まって欲しい運営委員は、真守に熱い勧誘を続ける。

 

「べすとかっぷるこんてすと?」

 

真守が首を傾げると、運営委員はコンテスト概要を見せながら熱弁する。

 

「文字通り、カップルの一番を決めるコンテストです!! ミスコンに比べるとあまり人気が出ないんですけれど、朝槻さんが出れば注目度は上がりますし! お願いします!!」

 

「……えー……?」

 

真守は運営委員に腰から直角に頭を下げられて困惑する。

 

ベストカップルコンテスト。

それはつまり、恋人である事を前提として参加する事になる。

恋人同士だとイチャイチャしている様子を公衆に見せて、出場者の中で一番仲が良いと認めてもらうコンテスト。

 

「そんなのミスコンより恥ずかしいだろっ!」

 

真守が叫ぶと、それを聞いていた垣根は不機嫌なまま真守の後ろから声を掛けた。

 

「何が恥ずかしいんだよ」

 

「ひゃっ!?」

 

真守は突然耳元から声を掛けられて、キュウリを背後に置かれた猫のようにびくっと大きく飛び上がる。

 

「か、かきね…………」

 

面倒な人間が現れたと真守が固まっていると、垣根はコンテストに興味を示して運営委員のタブレット端末を見せるように顎で指示する。

運営委員は突然現れた、おそらく真守の恋人である美形に慌てながらも、垣根にタブレット端末を見せた。

 

「優勝賞品は第二二学区の宿泊施設ペアチケットなんです! ここは四季折々の行事を年中無休でやっているところで、今は冬ですから夏祭りや花火が体験できるんですよ!!」

 

運営委員が興味を示した垣根のために、優勝賞品の案内を見せる。

 

「夏祭り?」

 

垣根が反応すると、運営委員はさらさらと説明をする。

 

「はいっ。スクリーンに夜空を映し出して電子処理を施した花火を打ち上げるのですが、学園都市の最新技術によって本物と同じ花火風景を楽しめるんです! それに屋台や川辺を模した空間もあったりと、本格的なんですよ!」

 

「…………浴衣は?」

 

「もちろんレンタルできます! 持ち込みもオーケーです!」

 

垣根が出場を検討しているため、真守はおろおろと焦って垣根の制服の(すそ)を引っ張る。

 

「か、かきね。別にコンテストなんて出なくても私と垣根は通じ合ってるし、そもそも見世物みたいになるの、垣根キライだろ? 嫌だろ? な? な?」

 

垣根は真守が自分に出たくないと(すが)りつく姿を見て考える。

真守ははっきり言って、控えめに言ってもめちゃくちゃかわいい。

一人にしたらナンパが絶えないし、大体の人間は真守に垣根帝督という恋人がいるのを知らない。

 

真守が自分のモノだと公衆に示せるのであれば、ナンパの抑止力にもなる。

しかも優勝賞品も悪くないのだ。

ペア宿泊券という事は真守とどう頑張っても二人きりだし、ちゃんと言えば深城や林檎も着いてきたりしない。

 

しかも浴衣。この冬に夏祭り。

 

実は垣根帝督。真守と夏の初めに会ったのだが、夏に一つやり残したことがあったのだ。

 

真守の浴衣を拝んでいないのである。

 

夏祭りがやっている最中、真守は置き去り(チャイルドエラー)を救う事に専念していた。

それに垣根自身もカブトムシのネットワークを構築している事もあって、真守を夏祭りに誘わなかった。

しかも垣根は別に夏祭りなんて人ごみにわざわざ行かなくていいだろ、と考えていたのだ。

 

恋人となった今だったら、浴衣が見たいと自分が言ったら、真守は絶対に浴衣姿を見せてくれる。

 

だが夏祭りというシチュエーションで、真守の浴衣を拝めるのが一番だ。

 

「出てもいいぜ」

 

「ありがとうございますっ!!」

 

「垣根ぇえええええ!!」

 

垣根の承諾に運営委員は頭を下げ、真守の絶叫が(ほとばし)った。

 

「やだっやだやだやだっ絶対にやだっ!!」

 

真守が垣根にしがみついてぶんぶんと首を横に振ると、垣根は不機嫌そうに片眉を跳ね上げる。

 

「なんで?」

 

「な、なんで!? 恥ずかしいからに決まってるだろ! そ、そんなカップルですって宣言するコンテスト!!」

 

真守が顔を赤くして叫ぶと、垣根はわざと機嫌が悪くなった顔をする。

 

「俺と恋人だって公言するのがお前にとって恥ずかしいことなのか? 俺はお前と真摯に付き合ってるんだけど? じゃあ何か? お前は俺のことを付き合うのに恥ずかしい相手だって思ってんのか?」

 

「か、っかきねのいじわる~~~~っ!!」

 

そんなこと微塵も考えてないし、垣根自身も微塵も感じていないのに垣根が問い詰めてくるので、真守はふにゃふにゃと叫ぶ。

 

「わ、分かってるくせに……そ、そういうイチャイチャを人前でするのが私、すごく苦手だって垣根、分かってるくせにぃ……っ」

 

真守が涙目になって告げると、垣根は真守の腰をぐいっと引き寄せて微笑む。

 

「苦手ってのは克服するのが一番だ。なあ、真守?」

 

「うえぇえええん……っかきねのばかぁっ」

 

真守は大声を出して泣き言を呟く。

 

「……ええっと、朝槻さんすごく嫌がってますけれど……出てくれますか?」

 

「安心しろ、ちゃんと出てやる」

 

垣根は運営委員にそう宣言して、えっぐえっぐとしゃくりあげる真守の前でエントリーを済ませる。

 

「頑張ろうな、真守?」

 

「……頑張るなあ~……っ」

 

真守は垣根に抱き寄せられるので、必死に垣根の胸板をぐいぐい押して離れようとする。

 

その様子を見ていた一方通行(アクセラレータ)はぽそっと呟く。

 

「…………なンだかンだ言って(ほだ)されてンだな……」

 

本当に嫌なら、能力を使ってでも組み伏せばいい。

だが真守はそれをしない。

やっぱり真守も口では色々言っているが、能力を使いたくないと思う程に垣根の事が好きなのだ。

大概ゾッコンだな、と一方通行(アクセラレータ)は真守を見て思わず遠い目をしていた。

 

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