とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第三二話、投稿します。
次は七月二四日日曜日です。


第三二話:〈不意遭遇〉は幸か不幸か

真守は垣根と共に、以前にも来たことがあったショッピングモールへと来ていた。

せっかく前と同じパスタ専門店で食事したのだから、ショッピングモールにも行こうと真守が言ったのだ。

ショッピングモール内にはゲームセンターがあり、ゲーセン好きな真守は垣根と共にゲーセンに入り、アーケードゲーム機を順番に見ていく。

 

「ほほう、スキルアタックか。そういえば超能力者(レベル5)として承認されてなかったから、こういうのは避けてたんだよなあ」

 

真守が見ているのはスキルアタッカーと呼ばれる、難易度激高のゲームだ。

能力測定機械を応用したゲームで、対ショック機構を備えたミット型の『標的』に能力を叩きつけ、スコアを叩きだすというゲームである。

 

割とどこのゲーセンにも置いてあるストレス解消マシン。

垣根は真守とと一緒に、『最新バージョンは能力の仕様を前提としています。超能力者(レベル5)解禁! 実地データ収集のご協力、ありがとうございました!』と書かれている一文をつらつらと読む。

 

「嘘くせえ。本当に耐えられるのか? つーか誰がデータ収集に協力したんだよ」

 

垣根は八人しかいない一癖も二癖もある超能力者(レベル5)の中で、極めて奇特なヤツを思い浮かべる。

 

「……御坂美琴、アイツか」

 

垣根はゲーセンが好きで、ストレス解消にこういうゲームを使いそうな能力者を思い浮かべる。

 

「私もやってみよう」

 

真守はいそいそと、先程キャッシュカードから降ろして崩した硬貨を取り出す。

 

「やめとけ。お前は超能力者(レベル5)の出力でやっても筐体(きょうたい)が木っ端みじんになるぞ」

 

「垣根、筐体を壊さずにカンストさせるやり方なんてたくさんあるんだぞ?」

 

真守は当然としてカンストを前提に、一〇〇円硬貨を入れながら微笑む。

 

「……確かにお前なら、耐震補強具引き千切らねえでできるだろうけど」

 

垣根は執拗に強靭にされている、アーケードゲーム機本体と床を繋いでいる耐震補強具に首を傾げながら、片手をポケットに入れる。

誰か耐震補強具を引き千切ったのか。引き千切りそうなのは御坂美琴だが。

垣根が考えている前で、真守は筐体の前に立つと、にっこりと微笑んだ。

 

「えいやっ」

 

真守はかわいらしい声掛けと共に、トンッと柔らかくミット型の『標的』に触れる。

 

その瞬間、ドォン!! と、凄まじい衝撃がミット型の『標的』に駆け抜けた。

 

だがゲーム機は無事だ。

真守はスキルアタックのアーケードゲーム機が壊れないようにミット型の『標的』だけに力が伝わるように衝撃を加えたのだ。

 

ピロリンピロリンピロリーン♪ っと、カンスト表示である『99999』が出る。

 

真守はカンスト表示を見て、ご満悦に『ふふーっ』っと笑う。

 

ゲームとはルールが全てだ。

ルールを遵守(じゅんしゅ)した上でいかにしてカンストを叩きつけるかが、真守にとっては楽しいものである。

 

ご機嫌にスキルアタックのハイスコアの名前に、『通りすがりの第一位』と入力する真守。

垣根は真守がゲームを破綻させずにルールの中で楽しむ真守を見て、心の中で呟く。

 

(かわいい)

 

「あれ。垣根じゃん」

 

「あ?」

 

垣根は穏やかな想いを抱いていたのに、突然名前を呼ばれて振り返った。

 

「ゲ」

 

そこには、垣根と同じ学校の少年少女が私服姿で立っていた。

 

垣根が暗部で働いていると知らない、『表』の学生たち。

学校の制度である特別公休をサボりだと思っているクラスメイトだ。

実は真守と初めて不意の遭遇を果たした時も、彼ら三人と垣根は適当に遊んでいた。

 

垣根はその事を思い出しながら、とても面倒くさそうな顔をする。

 

「あー、垣根が女の子とデートしてるー!」

 

真守は突然声を上げられて、きょとっと目を見開く。

声を上げたのは少女で、その少女の隣に立っていた垣根によくメールを送る男子高校生が笑う。

 

「なんだよー! やっぱり最近目に見えて付き合い悪いって思ってたけど、彼女かよーっ!! しかも超能力者(レベル5)第一位の子じゃんっ! どーやって捕まえたんだよっ!」

 

「うるせえ早くどっか行け」

 

垣根が鬱陶しそうにすると、もう一人の少女が声を上げる。

 

「私、知ってる。垣根ってば鋭利学園のベストカップルコンテストにノリノリで出てた。マジで彼女大事にしてる感じだったし、ぶっちぎりで優勝してたんだよ。しかもめちゃくちゃ幸せそうな顔で写真撮ってた」

 

「それマジ!? 垣根ってそういうコンテスト出るの!?」

 

「垣根が彼女作っただけでも驚きなのにな、うわー意外すぎるっ!!」

 

「うっぜえ」

 

垣根は心底ピリピリした空気を(かも)し出して告げる。

 

それでも彼らが気に入らないからと言って、垣根は誉望を追い詰めるような威圧感を出さない。

 

何故なら彼らは『闇』に関係ない。

青春を謳歌する、蝕んではならない害のない存在だと垣根は感じているのだ。

 

真守は目を(またた)かせる。

だが彼らが垣根にとってある意味特別な存在なのだと気が付いて、目を輝かせた。

 

「か、垣根。垣根」

 

「あ?」

 

真守は鬱陶しそうにしている垣根の服の(すそ)(つか)んで、キラキラとした目で垣根を見上げる。

 

「垣根の友達にちゃんと挨拶させてくれっ」

 

真守が見た事もないほどに目を輝かせている。

新鮮に思えるほどに、きらきらと輝かせている。

 

「……と、友達じゃねえ」

 

垣根が真守の新鮮な反応にあからさまに動揺しながら返答すると、男子高校生が笑った。

 

「あーダメダメ、彼女ちゃん。垣根って絶対にそーいうコト認めないんだぜ?」

 

垣根はその言葉にギンッと男子高校生を睨む。

 

「うるせえ認めるとか認めねえ以前だ。お前らなんて所詮、執拗につきまとってくるだけだろ」

 

「素でそういうコト言うんだよね、このツンデレーっ。せっかく私たちが面倒な女の子たちを遠ざけてるのにさー」

 

「もっとありがたがってほしいね」

 

垣根が本気で舌打ちすると、クラスメイトはいつもの事だと楽しそうにする。

 

(新鮮だ……っ垣根の新鮮な姿だ……っ!!)

 

真守は垣根が普段、学校でどんな態度を取っているのか知らない。

だから今の垣根の態度は、本当に学校でクラスメイトに対して取っている態度なのだ。

真守は垣根の知らない側面を垣間見た事で、いっそう目を輝かせる。

 

「あ、あの……ちょっといいか……?」

 

真守は垣根とぎゅっと手を繋ぐと、自分よりも背が高い彼らを見上げる。

 

「ん? なにー?」

 

三人は優しい表情をして真守を見る。

真守は嬉しくてドキドキしながら、垣根にすり寄る。

 

「私は朝槻真守というんだ。……その、垣根と真剣にお付き合いしてるんだ」

 

真守は垣根の友達に遭遇するのが突然の出来事過ぎて、何を言えばいいか珍しく迷ってしまう。

垣根は珍しく焦っている真守がかわいくて、思わず目を細める。

 

(どうしよう。垣根の友達と遭遇するなんて、流石に想定してなかった。……何を話せばいいんだ)

 

真守は高速で思考を巡らせる。

だがどこから話せばいいか分からない。話したいことがたくさんあるのだ。

真守はそれでも、一番彼らに伝えたい大事なことを口にした。

 

 

「垣根のことが、だいすきなんだ」

 

 

真守の一言によって、場は静まり返る。

ド直球な言葉を聞いて垣根が硬直する中、真守は真剣な表情で告げる。

 

「だから私は垣根と真剣にお付き合いをしているんだ。決して生半可な気持ちじゃない。それだけは絶対に分かって欲しい」

 

真守が少し顔を赤らめながらも宣言すると、胸を矢で射抜かれたような衝撃で固まっていたクラスメイトは震える。

そして、ダムが決壊したかのように垣根に詰め寄った。

 

「お前、こんなすごい真面目でカワイイ子を、どうやって本ッ当に捕まえたんだよっ!!」

 

「真面目ちゃんだ、純情すぎるっちんまいし、超能力者(レベル5)だって知ってたけど、やっぱり映像じゃなくて生でみると全然印象ちがうっ!」

 

「こんな真面目な子捕まえて……ッ垣根、悪い男だ……っ!」

 

きゃあきゃあ声を上げる垣根のクラスメイトたち。

垣根がげんなりしていると、真守は恥ずかしそうにぽっと顔を赤らめながらも、垣根の友人たち(自称)を見上げる。

 

「その。一つ聞きたいことがあるんだ」

 

真守は垣根の同級生という事で、自分よりも年上の彼らに珍しく緊張した様子で声を掛ける。

 

「か、垣根って……学校ではどうなんだ……?」

 

真守が知りたい知りたい知りたいと控えめに目を輝かせているので、垣根の友人(自称)(大体真実)はニヤッと笑う。

 

「いいぜ、話してやる!! 俺も真守ちゃんから垣根の話聞きたいなーっ!」

 

垣根は知人の『真守ちゃん』呼びに鋭く目を細める。

 

「……オイ、テメエ。真守のこと気安く呼ぶんじゃねえ」

 

垣根が低い声を出すと、女子高生は感嘆の声を上げた。

 

「マジで垣根、溺愛してる!!」

 

「真守! 真守だって、下の名前呼びっあの名前を決して呼ばない垣根が!」

 

垣根は何を言っても火に油を注ぐ結果となり、遠い目をする。

真守はというと、先程から垣根の反応が新鮮で楽しくてドキドキしてしまう。

 

(垣根が初期の私に見せてたような顔してる。……本当に彼らは垣根の友達なんだ……っ! 垣根は認めないけど、これは絶対に友達!)

 

真守は興奮した様子で目をキラキラと輝かせている。

 

「だから友達じゃねえんだよ……ッ」

 

真守が考えていることが理解できる垣根は、(うめ)いたあとにそっとため息を()いた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

ちゃぷちゃぷと、揺れるお湯の表面をアヒルが泳ぐ。

真守はご機嫌に、お湯に浮かべたアヒルの隊列をツンツンと触る。

 

「楽しかった」

 

真守は両手を自分の頬に添えて、ご機嫌ににまにま笑う。

 

あの後真守は垣根のクラスメイトと一緒に垣根を引きずって喫茶店へと入った。

垣根のクラスメイトと話している真守は終始ご機嫌で目を輝かせており、それを聞いていた垣根は終始目が死んでいた。

いつまでも話が終わらないので、垣根は用事があるから帰ると言った。

 

用事と言っても本当だ。

旅館の夏祭りブースがもうすぐ開放される時間だし、ムシャクシャしたからその前に真守と露天風呂で疲れを癒したいと思ったのだ。

 

垣根は気が短い。

それなのに垣根は目を輝かせている真守のために耐えていた。

それが分かった真守はまだまだ喋りたかったが、大体満足したのでニマニマご満悦で垣根の友達(断定)と別れた。

そして現在、真守は()ねている垣根を(なだ)めるために、一緒に露天風呂に入っているのだ。

 

「最悪だった、疲れた」

 

垣根はぶすーっとむくれたまま、真守の事を後ろから抱きしめる。

 

学園都市中をカブトムシで監視している垣根だが、害のない学校の知人までつぶさに監視しているわけではない。

だから彼らが第二二学区に来ている事などもちろん知らない。

 

気を付けようがない最悪の遭遇だったと垣根がため息を()くと、真守はご機嫌に笑う。

 

「垣根、話が聞きたい私のために我慢してくれてありがとう。とっても楽しかった」

 

真守はご機嫌に笑って垣根の腕の中でくるっと回転すると、垣根の頭を優しく撫でる。

 

「垣根、垣根が学校でどうしてるか分かったから……とてもうれしい」

 

真守は垣根へとぎゅっと抱き着いて、ご機嫌にちゃぷんっと湯を揺らす。

 

大層ご機嫌な真守はタオルを体に巻いていない。

というかタオルを巻くと十中八九不機嫌な垣根に、真守はタオルを剥ぎ取られると思った。

 

それに今は垣根の知らない側面を知る事ができて気分が良い。

そのため真守はご機嫌なまま、あれだけ入りたくないと言っていた露天風呂に垣根と一緒に入っているのだ。

 

垣根もタオルを巻いていないため、素肌と素肌が密着するが、機嫌がいい真守は照れる事無くニコニコ笑っていた。

 

「垣根、学校ではそっけないんだな」

 

「……面倒だから適当に相手してるだけだ」

 

垣根は真守の事を抱き寄せながら顔をしかめる。

 

「でも授業はすっごく真面目に受けるからサボりがすっごく目立つんだな。それに加えてなんでもさりげなくソツなくこなすから、男の子からも女の子からもとっても人気なんだな」

 

「知らねえよ。勝手に周りが言ってるだけだ」

 

垣根はじとっと真守を睨んで、真守のふくよかな胸に手を伸ばす。

 

「ん。えっちなことは禁止だぞ」

 

真守は垣根の手を掴むと、自分の頬に添えさせた。

 

「私の方からすり寄ってあげるから。それで許してくれ」

 

真守はご機嫌に垣根にぴとっと抱き着いて、素肌を密着させる。

その拍子(ひょうし)にむにっと真守のふくよかな双丘(そうきゅう)の感触が垣根の体に伝わった。

 

すごく嬉しいけど、気に入らない。

垣根はどっと疲れが押し寄せてきて、露天風呂の(ふち)に寄り掛かる。

 

真守にとってはとても嬉しい偶然だったが、垣根にとっては面倒な事極まりない偶然だった。

垣根は疲れた様子で(ふち)に寄り掛かっており、真守はご機嫌でそんな垣根に寄り添っていた。

ちゃぷちゃぷ湯を揺らしてアヒルで遊ぶ真守が、とても愛おしい。

 

「……覚えとけよ、真守」

 

垣根は浴衣を着て夏祭りに行った後の夜のことをあれこれ考えて、闘志を燃やす。

ここでという方法もあるが、それだと夏祭りに行けなくなる。

 

真守の浴衣が見たい垣根は、ぐっとこらえる。

そんな垣根を、真守はニコニコしたまま見上げた。

 

「あんまり乱暴なコト考えると、友達に言っちゃうからな」

 

「真守」

 

垣根は流石に耐え切れず、ぐいーっと真守の頬をつまむ。

 

「ふふ。いひゃい(いたい)よ、ふぁひね(かきね)

 

いつもなら嫌だ嫌だと抵抗するのに、真守はにまにまと笑ったままだ。

なんとも面白くない。

 

「……ちぇ」

 

垣根は真守の事を腕の中に閉じ込めると、お湯に深く浸かる。

 

「…………すごいね」

 

「あ?」

 

垣根が真守の首筋に顔を(うず)めながら声を上げると、真守は自分を抱きしめている垣根の手に触れる。

 

「垣根、本当にすごい。……学園都市の悪い部分知ってるのに、それを感じさせないほどに学校に溶け込めてて。……誰にも言われないのにちゃんと学校生活してて、それと一緒に暗部でも働いてて。学園都市に牙を剥いて、本当にすごい」

 

真守は垣根に体重を預けながら微笑む。

 

「垣根は本当にすごいよ。なんでもソツなくこなせるんだからな。……私は、教えてもらわなくちゃできなかったから。だからすごい尊敬する。そういうところ、本当にすごいって思ってたけど、今日とても実感した」

 

真守は垣根にすり寄って笑う。

垣根はそんな真守の頬を後ろから優しく撫でて、目を細める。

 

「………………でも、本当に欲しいモノは手に入らなかった」

 

大切な命は、失われた。

学園都市がどうしようもないほどに腐っていると知った。

それから見返そうと頑張った。なんでもやった。自分の有用性が認められるならば。

そうしないと、どうしようもなく。浮かばれなかったからだ。

 

だがそれでも、学園都市は自分の有用性を認めなかった。

第二位。一方通行(アクセラレータ)の下。目の上のたん(こぶ)

自分の方が素晴らしい能力なのに、そんな自分よりも有用性があると認められた一方通行(アクセラレータ)

だから、一方通行(アクセラレータ)が嫌いだった。

 

学園都市も嫌いだ。だが利用する価値だけはある。

どんなに腐っていても、学園都市がこの世界を支配しているから。

 

だから頂点に立ちたかった。それで、報われると思った。

救われると思った。満たされると思った。

 

だがきっと。学園都市を手に入れても、満たされる事はなかったのだろう。

 

本当に欲しいものは。本当に自分を満たしてくれるモノは別にあった。

 

「真守」

 

垣根はどうしようもなく自分を満たしてくれる存在を抱きしめて、目を伏せる。

 

「ん。なんだ、垣根」

 

自分の腕の中。絶対に離したくない存在。

やっと手にする事ができた、愛しい存在。

 

「愛してる」

 

「ふふ。私も垣根のコト、だいすきだぞ」

 

真守は垣根にすり寄って、笑う。

 

「垣根の知らないところが見られて、とても良かった。垣根の良いところをもっと知る事ができた」

 

「…………ああ、そうだな」

 

垣根は真守にキスをする。

真守はキスに応えながら、幸せに目を細めた。

ぎゅっと真守が抱き着くと、湯がちゃぷんっと跳ねる。

アヒルが揺れる中、真守は垣根と幸せな時間を過ごしていた。

 




ずっと垣根くんの学校での姿は考えてたんですけど、今回書けて良かったです。
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