とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第三八話、投稿します。
次は八月一一日木曜日です。


第三八話:〈事件黒幕〉の手先と対峙する

垣根は真守のことをしっかりと抱きあげて、上条と共に地下送電網のメンテナンス通路を走る。

一方通行(アクセラレータ)がこの地下の道に繋がるマンホールを塞いでいるため、確実に追手は来ない。垣根もそこら辺は信用していた。

そんな垣根へと、真守は垣根のコートの肩部分をトントンと叩いて告げる。

 

「かきね。あくせられーたすごいたのしそうだったけど、やっぱりひーろーという人種にあこがれているんだろうか。もう自分がひーろーなのに」

 

「さあな。興味ねえけど、生き生きしてたからそうなんだろ」

 

垣根が真守の舌足らずな言葉に適当に答えていると、頭を押さえていた上条が叫んだ。

 

「待って……ちょっと待ってちょっと待って! 朝槻はその体に魂? みたいな生命エネルギーを移して動いてて、それで本体はAIM拡散力場を操作されて動けないってマジなの!?」

 

垣根が分かりやすく説明してくれたが、それでも理解がすぐにできなかった真守の現状について上条が問いかけると、真守はコクッと頷いた。

 

「おおマジだ。わたしの体がつかえないのはAIMじゃまーのせいだ。そっちはていへいさんたちがなんとかしてくれてる。だからすぐにからだに戻れるようになるとおもうけど、わたしはいま、確かにこの体にはいっているんだ」

 

「今の真守は超能力者(レベル5)としての本来の力の使い方しかできない。しかもこの状態だからな。いつもみてえに真守に頼りっぱなしになるんじゃねえぞ」

 

垣根がするどく上条を睨むと、上条は頷いた。

幼女になるしかない程に追い詰められた真守を、自分は守る立場なのだ。

上条が真守を矢面に立たせてはならないと決意している中、真守はぺたぺたと自分の体を触りながら告げる。

 

「れべるふぁいぶとしての力しかつかえないのは、れべるしっくすに必要なりそーすがたりないからだ。ほんかく的にからだをくみかえていないのが原因だな。むしろよくここまでこの体をきちんとつかえるようにできたってよろこんでくれ」

 

「……ちょっと無能力者(レベル0)の上条さんには分からないんですけど、超能力者(レベル5)としての力は使えるってことでオッケー!?」

 

「おっけー」

 

真守がちっちゃい手で丸を作る中、真守を抱き上げた垣根と上条は『避雷針』の地下へと出た。

そこには丁度施設警備員の男女がいて、真守たちを見ると即座に両手を上げた。

 

「だいじょうぶだ、この人たちはぼうとじゃない。わたしを助けてくれたからな!」

 

真守が舌ったらずにそう嘘を(まじ)えて告げると、警備員はどこからどう見ても幼女の真守を無条件に信じて、手を下ろした。

 

「はち歳くらいのきんぱつの女の子をみなかったか? ここに入ってきたはずなんだが」

 

「…………ええっとキミの友達を探しているのかい? は、入ってきていないけど不審な警報なら響いたぞ」

 

「ふしんなけーほー?」

 

真守が優しく話しかけてくれる警備員を見てコテッと首を傾げると、その様子に癒されたのか女性警備員が口を開く。

 

「東-2に面したダストシュートの集積所だ。ゴミ詰まりの警報なんだが……もしかしたらその八歳くらいの女の子? ……が、そこに入ったかもしれない。丁度入れる大きさだ」

 

垣根は暴徒たちに恐怖する施設警備員たちにカブトムシを護衛で付けさせる。

 

現在カブトムシはスタンドアローンで自己判断に基づいて行動しているが、事態収拾を目的として個々で判断をして動いている。

 

そのため多くのカブトムシが力になるために、この『避雷針』へとやってきているのだ。

 

垣根は真守を再び抱き上げて、上条と共にその場を後にして非常階段を駆け上がり、地上のフロアに出る。

そして博物館エリアへと向かうために、停止したエスカレーターを階段よろしく駆け上がった。

 

金属製の防火扉が道を塞いでいたが、垣根が真守を抱き上げている手を片方外して手のひらを向けると、鍵がひとりでにガチャッと開いた。

 

未元物質(ダークマター)で防火扉の鍵に干渉すれば、鍵を開けることなど垣根にとって簡単なのだ。

別に蹴破っても良かったのだが、あいにくと真守が手の内にいる。あまり乱暴なことをしたくない。

そのためもっとも平和的に辿り着いた博物館エリアへとやってきた上条は、叫ぶ。

 

「フレメア! どこだ!? いたら返事をしてくれ!」

 

「はまづらから言われてきたぞ。ふれめあ、大丈夫だからでてこい!」

 

上条が叫んだ後、真守が幼女特有の幼い声で叫ぶ。

浜面仕上、という名前を聞いて、フレメアはひょこっと顔を出した。

フレメアは恐竜の骨格標本の口の中に収まっていたのだ。

その手には垣根がフレメアに貸し与えていたカブトムシが、大事そうに抱えられていた。

 

「おい、フレメア=セイヴェルン! それ寄越せ!」

 

垣根が声を上げると、フレメアはカブトムシの主人である垣根を見て目を大きく開く。

そして骨格標本の中から這い出て、タタタッと垣根に駆け寄った。

 

「にゃあ。帝兵さんがおかしくなったの。だからなんとかしてもらいたくて外に出たんだけど、追いかけられて、それで、それで……」

 

「お前を不安にさせるために敵がコイツをおかしくしたんだ。こんなのすぐに直る」

 

垣根は真守を地面に降ろして、沈黙してるカブトムシに意識を向ける。

 

『……再起動完了。ネットワーク切断中、思考ルーチンに基づき自己判断で行動開始。報告。ハッキングにより、ここまでフレメア=セイヴェルンを誘導させられてしまいました』

 

「にゃあ。なんか大体喋り方変だけど、大丈夫?」

 

「問題ねえ。今ちょっとネットワークが切断されてるからこういう話し方なんだよ」

 

垣根は不安そうに自分を見上げるフレメアに、そう説明する。

詳しいことは分からないが、カブトムシを造り上げた垣根が大丈夫だと告げるのだから、大丈夫だとフレメアは安心する。

 

「フレメア。コイツ持ってていいから、お前は俺たちから離れるんじゃ、」

 

フレメアに垣根がカブトムシを渡してそこまで告げた瞬間。

 

 

博物館エリアの一面の壁が砕け散った。

 

 

元々博物館エリアの壁は、一面のガラス窓であったところに遮光性の高いシートを張り付けて壁の代わりにしていたのだ。

それを何者かが叩き割った。

そのせいで、外からヘリコプターの投光器による純白の光が差し込んだ。

 

垣根が未元物質(ダークマター)でガラス破片から真守たちを守っていると、メタリックな赤紫色のボディを持つサイボーグが目の前に降り立った。

 

「へい。へいへいへい! こうして恋査ちゃんがやってきたからには諦めるしかないぜい? 諦めたヤツから楽に殺してやる。つっても、もう命運は決まっているんだけどな、ひひひ☆」

 

「……命運っつうのは、この施設に仕掛けられた爆弾のことか?」

 

『避雷針』まで移動してくる間、垣根は多くのカブトムシから、事前に仕掛けられていたであろう爆弾を複数解除したと聞いていた。

おそらくその爆弾を仕込んだサイボーグであろう恋査に垣根が先回りして問いかけると、恋査は軽やかに笑った。

 

「ひひひ。なんだバレてやがんのか。まあしょうがねえっちゃあしょうがねえな。あの人もこんなことは予見してて、オレを送り込んでるだろーし」

 

恋査は背後に(ひそ)む黒幕の事を、大切そうにして呟く。

上条はその様子を見て、首を傾げた。

 

「あれ、本当に前と同じ人間か? まるで違うんだけど……」

 

真守は上条の疑問を聞きながら、恋査というサイボーグに声を掛ける。

 

「ふれめあを『しゅうかく』するために来たのか?」

 

真守が問いかけると、恋査は怪訝な表情をした。

 

「はあん? なんだおチビ」

 

恋査は目の前の白っちい幼女が、『人的資源(アジテートハレーション)』プロジェクトで一番警戒する人物である朝槻真守だと知らない。

ただのガキとしか(とら)えておらず、恋査は告げる。

 

「お前みたいなガキがどこまで知ってるかは知らねえけど、オレの主が邪魔になったから消せってさ。その先が見たいらしいぜ? 風船を膨らませて、糸を切るのが狙いって感じか。さらなる高みに上るためには、()えて一度完成したものを徹底的にぶっ壊す必要があるんだよ」

 

(『人的資源(アジテートハレーション)』プロジェクトのその先?)

 

濃淡コンピュータ、という次世代コンピュータの理論モデルがある。

それは量子コンピュータの仕組みである流体の濃淡を、気体や液体の濃度や粘性に適応させたものだ。

 

濃淡の定義が存在する流体であれば、それを量子コンピュータのように演算機器として使用することができる。

 

つまり濃淡の定義が存在するAIM拡散力場も、濃淡コンピュータとして成立するのだ。

 

人的資源(アジテートハレーション)』プロジェクト。

ヒーローとヒーローを共倒れさせるための計画。

 

それは濃淡コンピュータの理論を用いて、AIM拡散力場を発生させている能力者を間接的に操ることで成り立っているのだ。

 

真守もそれを理解している。

だが恋査の抽象的な言葉を聞いて、引っかかりを覚えた真守は高速で思考を巡らせる。

 

(フレメア=セイヴェルンはAIM拡散力場の方向性をまとめる核だ。フレメアが薬味久子を縛っていて、薬味久子はフレメアを殺すことで自由に高みへと至れる。……ということは、薬味久子はAIM拡散力場に意識を落とし込んでいるということか!?)

 

真守は目を見開き、フレメア=セイヴェルンを見る。

 

(いまの薬味久子はAIM拡散力場を体としている深城を侵す寄生虫か(がん)のような存在だ。薬味久子をどうにかしなければ、深城はおそらく目を覚まさない。……深城を助けるには、薬味久子の命綱になっているフレメアの協力が必要不可欠だ)

 

真守が深城のために何ができるか即座に考えていると、恋査が動いた。

 

「あの人のためにいっちょやらせてもらうぜ、未元物質(ダークマター)! お前の大好きな女の力でなあ!」

 

恋査はそう叫ぶと、背中からメタリックな赤い巨大な花を展開した。

それにはおしべやめしべのように見える、銀色の金属棒が複数ついている。

そんな巨大な花はガシャガシャと高速で金属の(こす)れる音を〇.七秒ほど響かせると、再び恋査の体内に戻った。

 

その瞬間、恋査の背後から灰色の竜巻のような翼が六つほど展開された。

 

学園都市第一位。流動源力(ギアホイール)

 

朝槻真守が自身の存在を組み替えるためにも使用する、源流エネルギーを(もと)にした推進ジェット。

 

「なああああああ────!?」

 

真守は叫んだまま、ぷるぷると小さい指先を振るわせて恋査の様子を指差す。

 

「流石にオレは第一位みてえに、自分の進化の方向性を間違わねえように体を組み替えちまうことはできねえ」

 

恋査は灰色の翼で、辺り一面を準備運動で破壊し尽くす。

そして激しい破壊音が響く中、恋査は『ひひひ☆』と笑った。

 

「それでも第一位の力は破格だ、超能力者(レベル5)だろうが第一位(かくうえ)の力に勝てると思うなよ!?」

 

「なぁんだとぉおおおおお──────!!」

 

真守は自分の能力が勝手に使われていて、小さい足で地団太を踏む。

上条当麻は恋査が超能力者(レベル5)のような力を使えると言っていた。

だがまさか、能力者と同じ身体構造にして疑似的に繋げることで、能力の噴出点を作るなんて知らなかったのだ。

 

「かきねぇ、かきねぇっ!! あれひどくないか!?」

 

真守は自分の力を勝手に使われて、思わず垣根に(すが)りつく。

 

すると、空間がミシミシミシミシ! っと、歪んで軋みを上げた。

 

事象に対する圧倒的な干渉力。

 

それを発することができるのは、この世の事象に新たな物質を投入して物理法則を歪めることができる、『無限の創造性』を持つ垣根帝督しかいない。

 

「テメエぶっ壊してやる!!」

 

垣根は未元物質(ダークマター)の翼を三対六枚、大きく広げて叫ぶ。

 

垣根帝督はこれ以上ないほどに怒りを燃やしていた。

朝槻真守の力を勝手に使えるようなサイボーグを造り上げた学園都市に対して。

そして何よりも許せないのは。

 

「俺のチカラも勝手に使えるってことだろォが!! そんな御大層なモンを俺の前に出したこと後悔しやがれ!! 二度と造れねえように関係者全員締め上げてやる!!」

 

空間が魔王降臨のようにゴゴゴゴ──!! と震える。

上条はガクガク震えるフレメアのことを抱きしめて、悲鳴を上げた。

 

「いやあああああ垣根さんとっても怒ってるぅ!!」

 

垣根帝督は自らの能力に自信と誇りを持っている。

そのため超能力者(レベル5)第二位という一番ではない称号が気に入らなかった。

 

そしてだからこそ、この学園都市の中枢に収まるために『第一候補(メインプラン)』であり、当時消えた八人目であった流動源力(ギアホイール)の能力を探るべく朝槻真守に近づいた。

 

垣根帝督は、超能力者(レベル5)の中で一番自分の能力を他人が良いように扱われるのが許せないタイプである。

 

真守はブチ切れている垣根のズボンをぎゅっと握りながら、反対の拳を振り上げた。

 

「やってしまえかきね! あんなヤツこわして解体してせっけいずまるはだかにして、たいこうさく練ってやる!! がくえんとしめー許せないっ!!」

 

「えええなんで朝槻さんそこで声援送るんですかーっ!? あなたいつも止める側でしょォー!?」

 

真守が舌たらずながらもぷんぷん怒って垣根のことを応援するので、思わず上条はツッコミの声を上げる。

 

「だってわたしのげんりゅうえねるぎーだぞ、わたしいがいに使えない、わたしだけのちからなんだ! それをあいつはかってに使ってるんだぞ、おこるにきまってるだろぉが!?」

 

真守も流動源力(ギアホイール)という能力に矜持がある。

そのためぷんぷん怒るが、それを見て恋査は笑った。

 

「ひひひ☆ 幼女が訳も分からずに怒ったって怖くないぜ? ()()()()()()()は見てるからなあ。飛び道具じゃなくて近接高速戦闘一択!! 付け入る隙なんてねえから基本って呼ばれるもんなんだぜえ!!」

 

怒れる魔王こと垣根帝督。

そして幼女になってかわいく怒る超能力者(レベル5)

 

殺る気に満ち溢れている二人の隣で無能力者(レベル0)、上条当麻は泣きそうになりながらも、全てを終わらせるために恋査と対峙した。

 




珍しく真守ちゃんもブチ切れです。

ところで八月六日付で、流動源力一周年を迎えました。
一年も続けられたのは読んでくださる皆様がいてこそです。
これからも更新続けさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
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