とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第四四話、投稿します。
次は九月五日月曜日です。


第四四話:〈世界終焉〉でも残されたモノ

世界は終わった。

船の墓場(サルガッソー)』でオティヌスと上条当麻が対峙した時だ。

 

魔神オティヌスは上条当麻と対峙する前にオッレルスと右方のフィアンマの連携によって『妖精化』という術式を撃ち込まれていた。

 

妖精化の術式とは異教の神々を無力化・矮小化し続けた十字教の歴史を抽出し、神の座から引きずり下ろして人間に戻すというものだ。

 

だがこの妖精化を魔神オティヌスは利用した。

魔神オティヌスは、勝敗半々(フィフティフィフティ)という状態から脱することができれば、それで良かったのだ。

妖精化という『失敗一〇〇%』を獲得できたオティヌスは、自身を完成させた。

 

しかも魔神オティヌスが製造しようとしていた『槍』とは、何も一種類の製造方法だけが存在するのではない。

 

魔神オティヌスは自身の(うち)から『槍』を取り出した。

 

 

そして、手っ取り早く世界を終わらせた。

 

 

何もなくなった世界で上条はオティヌスと対峙して、一度は折れた。

絶望して、絶叫し。慟哭(どうこく)した。

 

だって何もない真っ暗な世界なのだ。

 

三六〇度。地平線だって見えない、見渡す限りの暗闇。

思考が停止しても仕方がない。何故ならこんなことは誰にも想定できないことだ。

世界にただ一人、自分が取り残されることなんて考えられる人間なんていないのだから。

 

絶望した時、上条当麻は確かな指標を見つけた。

 

全ての元凶、魔神オティヌスを倒せばいい。

 

上条当麻は現実逃避から帰還し、当てもなく彷徨(さまよ)った道を戻った。

魔神オティヌスは、地面に突き刺した槍にもたれかかって立っていた。

 

「なんだ。てっきりどこかで折れて野垂れ死んでいるものだと思っていたのに」

 

上条当麻はオティヌスその言葉に応えなかった。

 

「ここには何もなかった」

 

「最初からそう言っていた」

 

「でも、これで終わりじゃない」

 

上条が断じると、オティヌスが槍に体をもたげるのを止めた。

 

「こんな風になってしまった世界を元に戻す方法はあるはずだ。いなくなってしまった人たちともう一度会う方法があるはずなんだ!!」

 

「目の前に広がる世界の終わりをどうやって乗り越えたかと思えば。まさかお得意の楽観論がその源だとはな」

 

オティヌスは上条当麻の妄想を笑って告げる。

 

「良いか。世界は終わったんだよ。どんな方法を使ったなんて関係ない。とにかく終わったんだ。お前の右手は打ち消すだけしかできない。燃え尽きて灰になったものを元に戻せない。それと同じだ。消す力しか持っていないお前にはもうどうにもできない」

 

「本当に?」

 

上条当麻はオティヌスの断言を聞いて疑問を持った。

オティヌスの言葉が、オッレルスから聞いた言葉とまるで違うからだ。

幻想殺し(イマジンブレイカー)とは、あらゆる魔術師の祈りと恐れによって生み出されたものだ。

世界を好き勝手に歪めた後、幻想殺し(イマジンブレイカー)は基準点や修復点として機能する。

 

「だとすれば、まさにその時だ」

 

上条は右手で拳を握ってそれを突き出す。

 

「お前が何を考えているかなんて知らない。俺なんかに理解できないかもしれない。だけど、そんなのどうでも良い。……ここでくじくぞ。お前がめちゃくちゃにしてしまった全てを、どうにかして元に戻す。そのための材料だけなら、ここにある」

 

上条当麻の宣言に、オティヌスは応えた。

 

「良いだろう。……正直に言って、私も最後の関門はお前だと思っていた。ああ、勘違いするなよ。その右の手首から先のことだ。幻想殺し(イマジンブレイカー)は時代や場所によって一つの形に留まらない。お前を殺して何か別のものに宿ってしまうと厄介なことになるからな」

 

「……?」

 

上条当麻はオティヌスの言っている意味が分からない。

 

「だから」

 

オティヌスは理解できていない上条当麻を放っておいて告げた。

 

「頭の先から足の先まで粉々にするよりは精神を折った方が最適か。幻想殺し(イマジンブレイカー)はお前という檻に入れておくことにするよ。それでせっかくの力も宝の持ち腐れにしておけるのだから」

 

「……来るなら来い」

 

上条当麻がオティヌスを睨むと、オティヌス不思議そうに首を傾げた。

 

「私が? これでも私は神のはしくれだぞ。まさかこのオティヌスが、矮小(わいしょう)な人間ごときとわざわざ戦ってやるわけないだろう」

 

オティヌスは呆れた様子で『槍』を掴む。

 

「ガキ一人圧し潰すのに、魔神が直接手を動かす必要などない。忘れたか? 魔術の神とは、魔術でもって世界の全てを操る者を指す。全ては私の配下なんだ。面倒な流れ作業は駒に任せておけばいい」

 

オティヌスの言葉と共に、槍が光り輝く。

辺り一面の暗闇に、光が差し込む。

それは、創造の前兆となるべき光だった。

 

「何を……」

 

上条が困惑して言葉を呟くと、オティヌスは淡々と告げる。

 

「最初に言ったはずだ。お前の精神をへし折ると」

 

そして、オティヌスは上条当麻への攻撃方法を宣言した。

 

「お前が守りたかったもの、お前がもう一度帰りたかった場所、お前が再び出会いたかった面影、その全て。……根底から覆し、認識を破壊する。たかだか十数年で獲得したものがどれだけ矮小だったのかを教えてやる」

 

オティヌスの言葉と共に、世界が真っ白へと染め上げられる。

世界が変貌する。

この世界に降り立った一人の神の、思い通りに。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

上条当麻は、オティヌスの説明を聞いて段々と理解してきた。

この世界は、魔神オティヌスが『見方』を少しだけ変えた世界なのだと。

 

そんな世界で、上条当麻は全人類から恨まれていた。

 

上条当麻を殺すためだけに学園都市や日本が攻撃されて、上条当麻の守りたいものたちは蹂躙(じゅうりん)された。

そしてクラスメイトである青髪ピアスは怒りから上条当麻に殺されそうになっていた。

 

「少しだけ見方を変えてみた世界がこれだ」

 

オティヌスは崩落した駅舎の地下にいる少年の背後で(ささや)く。

 

「お前は気に食わない者に片っ端から牙を剥き、少しでも目についた女は横から奪い取り、抵抗する者には容赦なく拳を振るった。お前は問題の解決手段に拳を選んだんだ。確かに剣や銃に比べればかわいいものだ」

 

オティヌスは淡々と告げる。

 

「だがその積み重ねが第三次世界大戦の行方までも左右されるに至った。そんな暴力の化身を見せつけられて、黙って受け入れられる方が不思議でならないよ。もはや一国の独裁者程度の嫌悪感では済まされないんだ」

 

オティヌスは囁いた後、即座に消えた。

すると、目の前で懐中電灯を持っていた青髪ピアスが懐中電灯の持ち方を変えた。

鈍器として使うために。その持ち方を変えたのだ。

 

「カミやんにも色々あると思うけどさ、何でボクたちの近くでやらかすねんな」

 

青髪ピアスは心底忌々しそうに呟く。

上条当麻のせいで学園都市は崩壊した。

学園都市から逃げようとした少年少女たちは疎開先で連合勢力から空襲を受けた。

そして日本という国は物資を絶たれ、関東は焼け野原になったとしてもしょうがないと人々から思われた。

 

「どうせやったら地球の裏側でやってくれ!!」

 

青髪ピアスは叫ぶ。

 

上条当麻のそばにいただけで、こんな理不尽な目に遭わなければならないのが分からない。

上条当麻が何もしなければ自分たちは平和で過ごせた。

上条当麻がじっとさえしていれば、こんな絶望的な状況にはならなかった。

 

その怨嗟(えんさ)を聞いた上条当麻は、だからこそ絶対に譲れないと思った。

 

これまで自分が介入してきた出来事を、上条当麻はその性質上、どうしても無視することはできない。

今起こっている事態だってそうだ。

こんな世界は間違っている。そんな元凶をみすみす見過ごせるはずがない。

 

全ては、元の世界へと帰るために。

 

その決意を、今の青髪ピアスは絶対に受け入れられない。

上条当麻が折れない事で、この悲劇が生まれているからだ。

上条当麻が上条当麻だから、ここまでの事態が起こってしまったのだ。

 

だから青髪ピアスは上条当麻を許せない。

こんな状況になったとしても決して折れない上条当麻を許せるはずがない。

それでも上条当麻は青髪ピアスを踏破して突き進む。

 

両親がどうなったのか気になる。

それにこんなことになった元凶をどうにかする必要があるのだ。

 

上条当麻は走る。

 

青髪ピアスに罵倒されながらも。青髪ピアスに会う前に吹寄制理に殺意を持って傷つけられたわき腹が痛もうとも。

 

「健気なものだな。まあその目で確かめたいと思うならそれも良いだろう」

 

オティヌスは必死に走る上条当麻を、コウモリのように天井からぶら下がりながら見つめる。

 

「だが、よそ見をしている場合か?」

 

オティヌスの言葉に上条当麻は気を取られる。

その瞬間、自身の体に鋭い刃物が突き刺さり、上条当麻は致命的な怪我を負ってもう駄目だと悟った。

上条当麻は真横へ倒れた後、なんとかして自身を後ろから刺した人物に目を向ける。

 

そこには、自分の教師である月詠小萌が立っていた。

 

「……小萌、先、生……」

 

「上条ちゃん……」

 

本来ならば、小萌先生は人を傷つける人間ではない。

だが、この世界は小萌先生が人を傷つけてしまうくらいには、世界が壊れてしまっていた。

 

「ごめんなさい、上条ちゃん……」

 

小萌先生は謝りながら、上条当麻の背中から包丁を引っこ抜いた。

上条当麻は包丁を抜かれたことにより、激痛が走る。

小萌先生が包丁を抜いたのは、上条当麻にとどめを刺すつもりなのだ。

上条当麻も、それは分かっている。

 

「だけど先生は、クラスのみんなが……大変な事になるのを、目の当たりにしたんです。どうしても、どうしても、あれだけは、起こってはいけない事だった。先生は、そのケジメを取らなければならないのです……」

 

小萌先生はぶつぶつと呟きながら、包丁を振り上げる。

上条当麻はなんとかしようと視線を彷徨わせていると、暗闇が広がっていた地下に放置された液晶モニタやテレビが一斉に点灯した。

 

『確かに、当麻は私と妻の二人の子供です。それは間違いありません』

 

聞き慣れた声がそう前置きをした。

上条当麻は液晶モニターに映って謝り続ける両親を見て、呆然とする。

オティヌスが何をしたのか分からない。オティヌスが言っている『見方』を変えるという意味も理解していない。

 

だが起きてしまったことは、大体理解した。

だから上条当麻は両親に向かって謝った。

だが次の瞬間、上条当麻は絶望に落とされた。

 

『上条当麻という絶対悪を滅ぼすためには、彼を良く知る人物の協力も必要なのです!! 私たちを裁くのは構いません。だけどそれは全てが終わった後にしてほしい! 今は、私たちに犯してしまった過ちを正すチャンスをください!』

 

両親の懸命な判断によって、世界は拍手喝采と祝福のコメントで溢れかえる。

両親は最後まで味方だと思った。だがそれは甘かったのだ。

 

絶望は、自分の想像の外にあったのだ。

 

上条が絶望して拍手喝采と祝福のコメントで溢れかえる液晶モニターやテレビを見ていると、その中によく分からない一文が浮かび上がった。

 

 

『まだ終わりじゃない。私がいる。だから折れるな、上条』

 

 

上条当麻はその言葉の意味が分からない。

『私』とは誰のことだろうか。全てが敵に回った世界で、自分を鼓舞する人物とは誰だろうか。

だが、上条当麻は何故だかそこで希望を見た気がした。

 

それでももう遅い。自分の命は終わるのだ。

そう悟ったとしても。もう何もできないとしても。

敵しかいないこの世界で、その言葉は燦然(さんぜん)と輝いていた。

 

「結局、誰がお前の事をきちんと見ていたんだろうな?」

 

オティヌスは倒れた上条当麻のすぐ近くにしゃがみ込んで、愉快そうに呟く。

 

魔神オティヌスは気が付いていない。上条当麻が一縷(いちる)の希望を垣間見たことを。

もしかしたら、オティヌスが()()()()()()()()()()()()()のかもしれない。

そう上条当麻が悟る中、オティヌスは子供の悪意無き無邪気をまとって、上条当麻を見つめる。

 

「私は『魔神』としての力を『槍』で整え、『見方』の違う世界を作った。お前は、ある側面ではヒーローで、ある側面では破壊の化身だった。……だけど、それが一体何なんだ?」

 

オティヌスは命がもう少しで失われる上条当麻を見て問いかける。

 

「もしもお前という人間を正しく見ることができる人間がいれば、誰か一人くらいは助けに来てくれたかもしれなかった。だが、結果はこれだ。結局、お前のことをちゃんと見てた人間はいないんだよ。だから簡単に印象を『操作』され、『見方』の方向性に振り回された」

 

オティヌスは包丁を振り上げている小萌先生のことなど気にも留めずに告げる。

 

「なあこんなのが本当に必要なのか? 命を懸けて守るほどの価値があるっていうのか? お前たちは所詮、個人と個人に過ぎないというのに」

 

上条当麻は人の繋がりを笑うオティヌスを見て力なく呟く。

 

「あるさ」

 

上条当麻は一縷(いちる)の望みに(すが)ったまま、口を動かす。

 

「だって世界はまだ終わってない。希望は一つだけでも残されている。……そうさ。まだ残ってるんだ。この手に残ってる。きっとこの手を信じてるんだ」

 

上条当麻は影も形も幻影すらない存在を想ってなんとなく呟く。

だって。神さまは一人じゃない。

自分には、救いの女神がいたじゃないか。

真っ白で透明な自分に、初めて手を差し伸べてくれた──『彼女』が。

 

「……なるほど」

 

オティヌスはこんな状況になっても、世界に価値があると思い込んでいる上条当麻を見て嗤う。

 

「『右手』の不変性が最大の敵だと思っていたが。どうやらそれ以外にも障壁はあったらしい。あまりにもくだらなく、真面目に取り組むのも馬鹿馬鹿しいものが。だったらこちらも趣向を変えて楽しむとしようか」

 

オティヌスの言葉を聞きながらも、上条当麻は諦めなかった。

だって趣向を変えると言うことは、次があるということだ。

だから大丈夫。

絶対に、救いの女神は()()微笑んでくれる。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「なあ真守。あれだけで本当に良かったのか?」

 

学園都市、第二学区にあるとある核シェルター。

施設(サナトリウム)』と呼ばれたそこは、現状とある神さまの神域となっていた。

 

つまり、世界から観測できない領域と化しているのだ。

だから当然、魔神オティヌスにもその存在を感知できない。

 

その神域を設定した絶対能力者(レベル6)、朝槻真守。

垣根帝督は外の世界と限定的に繋がることができるノートパソコンの前に座っている真守に声を掛けた。

 

真守は制服姿だが、蒼ざめたプラチナブロンドの髪に六芒星を(もと)にした転輪、そして六対一二枚の翼を広げている。

半端な状態を取っているのは人間らしさを真守が残したいからだ。

 

「上条はアレだけでもちゃんと分かってくれるぞ」

 

「……なんでそう思うんだよ」

 

「ふふ。上条の事を理解しているからな、私は」

 

真守がふくよかな胸を張って告げると、垣根はピキッと表情をひきつらせた。

 

「すげえムカつく」

 

「……これだけで嫉妬するとか。相変わらず器が小さいなあ」

 

真守は地面に置いたノートパソコンの前にぺたんと座ったまま、垣根を遠い目で見つめる。

 

「なんだとコラ」

 

垣根は真守の近くでヤンキー座りをすると、真守の頬を思いきり引っ張る。

 

「ふえ。やめへ(やめて)よ。ふぁひね(かきね)

 

真守は垣根が自分の頬を引っ張ると分かっていたが、逃げたら逃げたでそれ相応が待っているので、顔をしかめたまま大人しく頬を引っ張られる。

垣根はそれすら不服に思いながら、ちらっとノートパソコンを見た。

 

何の変哲もないノートパソコンだ。だがそれには一体のカブトムシが接続されており、そのカブトムシはヘーゼルグリーンの瞳を明滅させていた。

 

真守が世界から切り離した『施設(サナトリウム)』と外を繋ぐ、唯一の窓口。

 

帝兵さんという既存の生命の神秘にとらわれないネットワークを媒介とすることにより、自身が切り離した世界へと真守はアクセスすることができるのだ。

 

朝槻真守はなんとなく、オティヌスが良いように世界を扱えるようになるのだと察していた。

だから先手を打った。

 

垣根帝督、八乙女緋鷹。そして源白深城と杠林檎と共に一二歳の源白深城の体と約一〇歳で年齢を固定した朝槻真守の避難先の体を持って、『施設(サナトリウム)』に移動。

そして『スクール』の面々を疑似的な空間移動(テレポート)で呼びつけた。

 

真守は絶対能力者(レベル6)としての力を存分に発揮して、世界から『施設(サナトリウム)』を切り離した。

世界から切り離された『施設(サナトリウム)』内にいる人間は、世界から観測できなくなっている。

つまり外の世界の人間は、なんとなくしか真守を思い出せない上条当麻も魔神オティヌスも含めて、朝槻真守たちの存在に気が付けなくなっているのだ。

 

魔神オティヌスは世界の『見方』を変えた。

朝槻真守も似て非なることをした。

確かにそこに存在しているのに、世界が見落とすように自分たちごと世界の一部分を隠したのだ。

 

垣根は絶対能力者(レベル6)としての万能性をフルに発揮している真守を見て問いかける。

 

「これからどうするんだ?」

 

「魔神オティヌスが何を考えているか探る」

 

真守はつねられた頬を触りながら、自身の目的を告げる。

 

「この世界はオティヌスの思いどおりに捻じ曲げられるんだ。それってオティヌスの願望が絶対に現れる。だからすぐに分かるぞ、魔神オティヌスが何を考えているのか」

 

真守はにまっと笑って、そしてノートパソコンを見つめる。

そこには、オティヌスによって翻弄されている上条当麻の様子が映し出されていた。

真守は顔をしかめて、申し訳なさそうに呟く。

 

「オティヌスの考えを知るためには、上条にちょっと頑張ってもらわないといけないけどな。でもすぐにオティヌスの考えは理解できるよ。そしたら助けに行く」

 

真守は画面上の上条当麻へと手を伸ばしながら、申し訳なさそうにする。

 

「魔神オティヌスは上条の心を全力で折りに来てる。でも私がここからフォローをすれば、上条の心は折れない。もともと簡単に心が折れるようなヤツじゃないから。でも上条にとっては苦しいことだから、早くオティヌスの考えを見据えないと」

 

垣根は上条当麻のことばかり口にしている真守を見て、不機嫌になる。

そして真守の翼を避けて、そっと寄り添った。

 

「お前は俺のだからな」

 

「まったく。世界終焉の危機だと言うのに、垣根は本当に平常運転だな」

 

真守が呆れていると、垣根はじろっと真守を睨んだ。

 

「うるせえ平常運転に決まってんだろ」

 

垣根は真守の手を恋人繋ぎでぎゅっと握って、むすっとしながらも真剣な表情をする。

 

「世界が終わっても俺たちはずっと一緒だ。そうだろ?」

 

真守は垣根の真剣な表情を見て、くすっと笑った。

 

「うん。垣根は約束してくれたからな。ずぅっと一緒だって」

 

真守は微笑むと、ノートパソコンへと目を向けた。

 

「私はオティヌスを理解したい。あの子の望みを知って、どうしてあの子がこんなことをするのか理解したい。──そして、寄り添ってあげたい」

 

真守は垣根に寄り添いながら、寂しそうに眉を八の字にする。

 

「人間は、そこまで強くない。だからオティヌスが何を求めているか、なんとなく分かる。でもなんとなくだから──あの子のことをきちんと知りたいんだ。そのためには上条にちょっぴり頑張ってもらわないと」

 

垣根は真守に体を寄せながら、目を細める。

 

人間として完成された朝槻真守。

そんな真守だって垣根帝督や源白深城、大切な人たちと共にいたいと思うのだ。

一人は寂しいと思うのだ。

 

神さまの領域に辿り着こうとも人間の枠組みから外れていないオティヌスが、孤独を耐えられるはずがない。

 

だから多分、オティヌスの望みとは。孤独から来るものだろうと、真守はアタリを付けている。

 

垣根は寂しそうな真守を抱きしめながら、真守と一緒にノートパソコンを覗き込んだ。

外へと繋がるたった一つの窓口を。二人で覗き込んで、魔神オティヌスに寄り添おうとしていた。

 

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