とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第五一話、投稿します。
A Very Merry Unbirethday篇。
次は一〇月六日木曜日です。


新約:A Very Merry Unbirthday:Ⅴ篇
第五一話:〈健闘慰労〉のために腕を振るう


世界は終焉し、再構成された。

そして一人の少女を巡った世界騒動は収束に向かい、学園都市でのいつもの日常が帰ってきた。

細々とした後始末が終わった中。

 

垣根帝督は自宅の二階のラウンジにて、不機嫌に表情をむすっとさせていた。

 

視線の先には、エプロンを付けた真守がいる。

 

エプロン。料理をする時に付ける服を真守がつけているのだ。

つまり、料理中である。しかもお菓子を作っている。

 

「垣根、そんな顔するな。垣根にも作ってあげてるだろ」

 

真守は深城の監修のもと、さっくり混ぜるというクッキーの大事な工程を華麗にこなす手を止めて垣根を見る。

垣根はそんな真守に見つめられて、不機嫌なまま吐き捨てるように告げる。

 

「ついでみたいなモンじゃねえか」

 

現在、真守は一方通行(アクセラレータ)や上条当麻のお見舞いの品を作っているのだ。

上条は言わずもがな、一方通行も実は病院に一時的に入院している。

デンマークで上条当麻に大きな岩で心臓の上を思いきり強打されたからだ。

 

一方通行(アクセラレータ)は第二位の自分が早々に倒されれば、他の超能力者(レベル5)が不用意に動かないとして、わざと上条当麻に負けた。

負けることで守れるものもある。

一方通行が成長して理解できたからこそ、一方通行はわざと負けることができたのだ。

 

真守は一度上条と一方通行(アクセラレータ)に会いに行っているが、何か労いのものを用意した方が良いかな、と思っていた。

そう考えていた時、真守は御坂美琴の事を思い出した。

美琴は『絶対能力者進化(レベル6シフト)計画』で助けてもらったお礼として、真守と上条にクッキーを焼いてくれた。

 

初めて誰かの手作りを貰った真守は、ひどく感動したものである。

 

だから真守は美琴にならって、頑張って手作りクッキーを作っていた。

それが垣根帝督は気に入らないのである。

なんで女に囲まれてちやほやしている無自覚ハーレム野郎と一方通行(アクセラレータ)のためなんかに。

そんな文句を言いたげな垣根を見て、真守はクッキーの生地を休める工程に入りながらため息を吐く。

 

「深城、なんとかする案出してくれ」

 

真守は隣で自分の作るクッキーを見守ってくれていた深城に目を向ける。

真守は特に料理に興味がなかった。

だからこれまでやってこなかったし、深城がいつも嬉しそうにやっていたから任せていた。

だが真守は大体のことはコツを掴めばそつなくこなせる。やってできないことはない。

それでも慣れていないことなので深城に手伝ってもらっており、真守は垣根の機嫌を直すために料理作りが得意な深城へと相談したのだ。

 

「あ。じゃあ垣根さんのためにタルトでも作る? オーブン使わないタイプの」

 

深城の言葉に反応したのは、不機嫌な垣根の隣で携帯ゲーム機で遊んでいた林檎だった。

 

「タルト! 朝槻のクッキーに加えて、朝槻のタルト!!」

 

林檎があからさまに元気になった様子を見て、垣根はムッとする。

真守が自分のためにタルトを作ってくれるのは嬉しい。

嬉しいけど、なんかちょっとやっぱりムカつく。

垣根が複雑な心境になっていると、垣根の隣に座って本を読んでいた少年が顔を上げた。

 

「作ってくれると言っているのだから、素直に喜べばいいものを」

 

真っ白な髪にヘーゼルグリーンの瞳。そしてズボンタイプのセーラー服を着ている少年だ。

名前はセイ。人間の生きる意志、前に進む意志を体現した概念的存在である。

世界が何度造り替えられても変わらずに残ったもの。

それがたまりにたまって意思を持ち、人々に接することを夢見て神を求めたもの。

心が折れた人々に生きる意志を、もう一度立ち上がる意志を与えることができる少年。

それがセイだ。

 

「うるせえ。ちんまいのがいっちょ前に俺に指図するな」

 

「ちんまいのは垣根帝督が朝槻真守に乞われてそういう風に造ったのだろう。というか性が未分化のままで朝槻真守が維持してくれているのは、私がこれから男女どちらの性別も選べるようにだな、」

 

「俺が造ったんだ。そんなこと一々説明されなくても分かってる」

 

垣根はむすっとした表情で、白い少年を睨む。

この少年はこんななりをしているが、これでも人間が生きる意志を体現した存在である。

人間の事を良く理解している。だからこそ垣根に呆れているのだが、それもまた垣根にとっては気に入らない要素だった。

何もかもが面白くない中、真守は深城に教えられてタルト作りを始める。

垣根はそれを見ていたが、少し気になったことがあって白い少年を見た。

 

「そういやお前にも好みとかあるの?」

 

「むーん。甘いもの、という概念自体にあまり触れていないからな。ただ朝槻真守が味覚の中で甘味が一番好みだとは知っているぞ」

 

何せ朝槻真守は私たちの神さまだからな、と自信を持って胸を張って答える姿を見た垣根は、やっぱりなんかちょっとムカついてムッとする。

 

「アイツが甘いのを好んでるのは俺だって知ってる。つーか真守に食事の楽しさ教えたの俺だからな」

 

何故か張り合っている垣根を見て、林檎はため息を吐く。

 

「垣根。垣根が朝槻のことよく知ってるのは私もこの子も知ってる。だから張り合わなくていい」

 

「張り合ってねえよ、コラ。事実を言っただけだ」

 

垣根は林檎の事をじとっと睨みながら告げる。

 

(垣根帝督は器が小さいなあ。朝槻真守の言う通りだ)

 

少年は林檎に睨みを利かせている垣根を見て、心の中で呟く。

イライラした様子の垣根は、長い脚を組んでソファに深く寄り掛かりながら少年を見た。

 

「つーかお前たちって具体的に何人いるんだ? ……というか、まだ人じゃねえのに何人って数えていいモンなのか?」

 

「ん? 世界が変わっても変わらなかった概念の数だけ存在するぞ。ちなみにオティヌスが朝槻真守たちとの戦いの間に世界を何度も造り替えたからな。その分多くなってる」

 

「それなのに真守の(はら)を使ってこの世界に生まれようとしてたのかよ。エゲつねえな、おい」

 

朝槻真守は垣根帝督やアレイスター=クロウリーが技術などがなかった場合、自分のお腹を痛めて彼らを産むこととなっていた。

そんなポンポン子供を産ませられる身にもなって欲しいものである。

それでも真守は彼らのための神さまだ。本当に必要ならやってのけただろうし、そこに嫌悪感などなかっただろう。

何せ垣根帝督に会っていない世界線の話なのだ。おそらく永遠を誓った人間などいないだろう。

 

「別に朝槻真守に無理をさせる気などなかったぞ。そしてそれは最終手段だ。朝槻真守はあれでも一人の女の子だからな。垣根帝督も学園都市もなければ、自分で人造細胞技術か魔術で体を用意して、それを使っていたことだろう」

 

「……まあ、そうだろうがな」

 

垣根はむすっとしたまま、少年の納得のいく推察に目を細める。

 

「現実には朝槻真守と垣根帝督が会えた。それ以外を考えても仕方ない。そうだろう?」

 

「……そうだろうが、そういう未来があったってことすらもムカつく」

 

垣根がイライラした様子で告げると、白い少年はため息を吐いた。

 

「面倒くさい男だな、垣根帝督。よく朝槻真守は付き合ってられる」

 

「なんだとコラ」

 

垣根はそう告げると、白い少年の髪の毛をがしがしと掻きまわす。

 

「垣根、その子をあまりイジメるな」

 

真守はタルトの底に敷くためのクッキーを砕きながら、垣根を睨む。

 

「むー! そうだぞ、私のこともちゃんと大事にしろ、垣根帝督!」

 

「お前の体を丁寧に造ってやっただろうが。ありがたく思いやがれ」

 

垣根が吐き捨てるように告げると、少年はバタバタと両手を動かした。

 

「もっと大事にしてほしい!」

 

「人間みてえに欲張ってんじゃねえよ、この概念。……あ? そういやお前たちは何があっても変わらなかった人間の一部分だから、ある意味人間より人間っぽいのか……?」

 

垣根は少年の強欲っぷりに呆れながらも疑問を浮かべる。

真守を神と掲げる少年たちは世界をいくら変えても変わらなかった人間の純粋な概念だ。

彼らは自分たちに意思を持たせた人間たちに会いたくて、この世に生まれ落ちることを望んだ結果、朝槻真守を神として求めることになった。

人一人の人生を捻じ曲げてでもこの世に生まれ落ちたいと叫んだ彼らは、強欲に決まっている。

 

(あ? つーかこいつらのせいで真守は大変な目に遭ったんじゃねえのか? 全ての元凶であり恨むべき存在って、実はこいつらなんじゃねえの……?)

 

垣根はじろっと白い少年を見つめる。

白い少年は意味ありげに笑った。

朝槻真守は神として、生まれるべく生まれたのだと。

垣根帝督は、それをつまらなそうに見ていた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「垣根、どう? おいしい?」

 

真守は手作りクッキーをラッピングしながら、目の前で自分が作ったレアチーズタルトを食べている垣根に声を掛ける。

真守の作ったクッキーはアイスボックスクッキーと呼ばれるもので、棒状の生地を組み合わせて金太郎あめのように切る事で、綺麗な模様の入ったクッキーになるというものだ。

真守がドキドキとする中、垣根はレアチーズケーキタルトを食べて告げる。

 

「美味い」

 

真守は垣根の正直な感想にぱあっと顔を輝かせる。

 

「うれしいっ」

 

真守は垣根に褒められるのが嬉しくて、にまにま笑う。

 

「ふむ。美味しいぞ、朝槻真守」

 

垣根の隣でレアチーズケーキを食べていた白い少年は興味深そうに呟く。

 

「私は甘いのが好きみたいだ。これからも定期的に作ってほしい。源白深城が作ったものではなく、朝槻真守が作ったものも食べたい」

 

「ふむふむ。それは真心というヤツが違うからだな。分かった」

 

真守は柔らかく微笑んで、垣根を見る。

 

「垣根も何が食べたい? 垣根のためだけに作るからリクエストしてくれ」

 

垣根は不機嫌だったが、真守が自分のために作ってくれると聞いて顔をしかめたまま告げる。

 

「チョコ系」

 

「分かった。深城に教えてもらって頑張って作る」

 

真守が微笑む姿を見て、垣根は目を細める。

そして不機嫌にしていたが、真守に自分のレアチーズケーキを差し出した。

 

「食べさせろ」

 

「え」

 

真守はフォークも出してきた垣根を見て、顔をしかめる。

 

「……そうしたら元気になってくれるか?」

 

「ああ。それで機嫌直してやる」

 

垣根がそう告げるので、真守はレチーズケーキをフォークで取って垣根に差し出す。

 

「はい、あーん」

 

「ん」

 

垣根は幸せそうに目を細めて、真守の手から食べる。

 

「お前に食べさせてもらった方が美味い」

 

「垣根のばか。ばかっぷるだと思われるだろっ」

 

真守は頬を赤らめながら、垣根のためにもう一口食べさせる。

 

「別に外で惚気てるわけじゃねえんだから、良いだろ」

 

この場には、深城や白い少年、林檎など身内しかいない。

身内の前では良いだろ理論で垣根が話をしていると、深城が微笑んだ。

 

「別にいいんじゃない、真守ちゃん」

 

「む。深城がそう言うならいいけど……」

 

真守はそう言って、紅茶を飲んでいる垣根をちらっと見る。

 

「しょうがない人だな」

 

真守はふにゃっと笑うと、クッキーをラッピングする作業に戻る。

 

「はい、垣根。垣根のはちょっと多くしといたぞ」

 

真守は可愛らしくラッピングされたクッキーを垣根に差し出す。

 

「…………なんか色々複雑だったが、やっぱり普通に嬉しい」

 

垣根はそう告げると、真守が真心こめて作ってくれたクッキーに目を細める。

真守は垣根が嬉しそうにしているのを見てふにゃっと笑うと、林檎と白い少年に向き直った。

 

「林檎とセイは垣根より少ないのは許してくれ。垣根の機嫌を取るためだ。それと、後でクロイトゥーネが帰って来たら渡してくれ」

 

林檎は真守から自分とフロイライン=クロイトゥーネの分を貰って微笑む。

 

「ありがとう、朝槻」

 

「うむ。器が小さい垣根帝督のために私が譲ってやろう」

 

林檎が礼を告げる中、垣根は真守にクッキーを手渡してもらってご満悦な白い少年の言い分にムッと顔をしかませる。

 

「オイ、テメエまで器が小さいとか言うんじゃねえ」

 

「なんだ。朝槻真守なら良いのか? 垣根帝督はやっぱり面倒な男だな」

 

垣根は静かにブチ切れると、少年のチーズタルトに載っているブルーベリーとブルーベリーソース周辺のケーキをごっそりフォークで掬って、ぱくっと食べる。

 

「わあああああ垣根帝督のバカーっ!!」

 

白い少年は残しておいた一番おいしいところを垣根に食べられて声を上げる。

垣根はふいっと顔を背けて、不機嫌な様子で無言でもぐもぐ食べる。

 

「朝槻真守、垣根帝督は大人気ないぞっ!!」

 

「当たり前だろ、垣根なんだから。後で私の分あげるから。これに懲りたら垣根のことイジらない。分かったか?」

 

真守が頭を撫でると、白い少年はぐすんっと鼻を鳴らす。

 

「垣根もあまりこの子をイジめないでくれ。な?」

 

真守は優しく白い少年の背中を撫でながら笑う。

 

「その白っちいのが生意気なこと言うのがいけねえんだよ」

 

「この子はまだ子供なんだ。だから優しくしてほしい。それにこの子は私の大事なひとなんだから」

 

垣根はそれを言われて、嫌そうに顔をしかめた。

 

「……分かったよ」

 

垣根は拗ねた表情でそう告げると、レアチーズケーキを食べる。

真守はくすっと笑うと、白い少年の頭を撫でてあやしていた。

その様子を見て、垣根はますます機嫌が悪くなる。

深城は大切な少女が取られてしまって様子でイジけている垣根を見て、『そんなことはないのに』と、柔らかく苦笑していた。




A Very Merry Unbirthday:Ⅴ篇始まりました。
少し重要な話も入ってきますので、お楽しみいただけたら幸いです。
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