とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第五六話、投稿します。
次は一〇月二四日月曜日です。


第五六話:〈休日突入〉で遊び尽くす

林檎は朝早くに目が覚めた。

目をぱちぱちと(またた)かせて、ここはどこかと考える。

 

林檎が眠っているベッドがあるのは、一発で高級ホテルと分かるスイートルームだ。

 

自分がいる場所をホテルだと認識すると、林檎は遊園地で遊び尽くすために昨日ホテルに泊まったのだと思い出した。

 

今日は垣根と朝槻と深城と、朝槻を神さまとして必要としている少年と遊園地で遊ぶ。

そう思うと楽しみで笑みがこぼれてしまう。

隣のベッドで眠っている深城と少年を置いて、林檎はトテトテと歩いて他の部屋へと向かう。

 

扉を開けるとそこも寝室で、部屋に置かれているダブルベッドでは真守と垣根が一緒になって眠っていた。

 

「朝槻、垣根! 朝!!」

 

林檎は寄り添って眠っている二人の布団をバタバタ大きく動かして、起きるように声を掛ける。

 

「さむぃ……」

 

そう呟いたのは真守で、真守はううーんと(うな)りながら垣根の胸の中へと深く(もぐ)る。

 

「朝槻、朝。あーさ!!」

 

林檎は真守が着ている垣根のシャツ──所謂(いわゆる)彼シャツとなるものをぎゅーっと引っ張る。

 

「ん……。おはよう、林檎」

 

真守は自分の腕よりも大分長いシャツの裾で、くしくしと目を(こす)りながら声を上げる。

 

「おはよう、朝槻!」

 

満面の笑みを浮かべて林檎が声を掛けてくるので、真守は眠そうにしながらもコクッと頷く。

真守は自分のことを抱きしめてすぅすぅ眠っている垣根の頬へとぴとっと手を添える。

 

「垣根、起きて。今日は遊園地だぞ」

 

垣根は小さく唸ると、真守の事をぎゅーっと抱きしめる。

どうやらすぐには起きられないらしい。

真守はそう判断すると、垣根に抱きしめられたままひらひらと林檎へと手を振った。

 

「林檎、垣根は私が起こすから。ご飯食べに行く用意してくれ」

 

「分かった!」

 

林檎はパタパタと走って行って、深城のもとへと戻って行く。

 

「垣根。朝だぞ、垣根」

 

真守はトントンと柔らかく垣根の胸を叩いて垣根を起こす。

 

「かきね」

 

真守が何度目かの名前を呼ぶと、垣根はぴくッと動いてから目を開けた。

 

「おはよう、垣根。今日は遊園地に行く日だぞ」

 

「……はよ、真守」

 

垣根の服を着ている真守と違い、パジャマをきっちりと着た垣根はぼーっとしたまま、真守に朝の挨拶としてキスをする。

 

「ん。おはよう、垣根。さっき林檎が起こしに来たんだぞ」

 

「……ガキは朝から元気だな」

 

垣根が眠そうに告げるのを見て、真守はきょとっと目を見開いてからくすくす笑う。

 

「その言葉、よく漫画とかに出てくる休日のお父さんみたい。垣根、まだ高校生なのに」

 

「ガキ二人抱えてるから似たようなモンだろ。将来誓いあった女もいるし。あと俺には高校生だからって常識は通じねえ」

 

垣根は朝から平常運転で真守にすり寄る。

真守はくすっと笑うと、垣根の腕にそっと触れた。

真守のちんまい手は着ている垣根のシャツが大きすぎて、ちょこんとしか出ていない。

 

(……かわいい)

 

恒例行事となっている運動会の後に、寒いからと言って適当に自分のシャツを着て眠った真守。

そんな真守がかわいくて、垣根はじーっと真守の姿を目に焼き付ける。

真守は垣根に見つめられて恥ずかしそうに俯いた後、ちろっと垣根を見上げた。

 

「か、垣根はどうして朝からいつもかっこいいんだ……」

 

真守は少し顔を赤らめて小さく呟く。

 

朝日に輝くさらさらとした茶髪。

寝ぼけていて気だるげな雰囲気が、整っている顔立ちにとても合っている。

 

垣根は真守が自分と同じく相手の姿を見ていたと知ると、起き上がってベッドの上で膝を立てて、その上に顔を乗せて真守に笑いかけた。

 

垣根がわざとかっこいい姿を取ったので、真守は顔を赤らめて眉を八の字にする。

 

「……っわ、私っシャワー浴びるっ!」

 

「逃げるんじゃねえよ」

 

垣根はシャワーを名目に自分から離れようとする真守のことを抱き寄せ、腕の中に閉じ込める。

 

「おねがいやめて離してちかづかないで……っ」

 

真守が心臓をばくばくと高鳴らせているのが可愛くて、垣根はにやーッと笑う。

 

「そういや昨日、えっちなお願い以外は聞くっつってたよな?」

 

真守は昨日夕食を食べ、レストランを出た時のことを思い出させられて、顔を真っ青にする。

 

「いやな予感がする……っ!」

 

びびびっと真守の背中に嫌な予感が駆け抜ける中、垣根は真守の耳元で囁く。

 

「朝風呂しようぜ?」

 

「いやぁあああっ!!」

 

恋人だろうが、真守は垣根と風呂を共にするのがやっぱり苦手なのだ。

理由はもちろん明るくて、目に毒すぎるかっこいい垣根の裸を直で見てしまうからである。

 

「やだやだやだっお風呂だけは勘弁してぇっ!!」

 

叫んで拒絶する真守だが、男である垣根には力で敵わずにずるずるとバスルームへと連行されていく。

そのどったんばったん大騒ぎを聞いていた深城はにへらっと笑った。

 

「朝から元気だねえ、真守ちゃん」

 

(真守ちゃんが恥ずかしがる姿がかわいくて、垣根さんが尚更一緒にお風呂に入りたくなるの、真守ちゃんに教えるべきかなあ)

 

林檎に起こされた深城はふわふわと柔らかい笑みを浮かべながら着替えて、未だに眠りこけている白い少年を起こしにかかった。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「ゆーえんちー!」

 

林檎は遊園地に入場し、真正面に置かれている象徴的なモチーフ像を見て叫ぶ。

そんな林檎の前で、真守は垣根と共に携帯電話とパンフレットを見て、感心したように呟く。

 

「なるほど。遊園地って便利なんだな。電子チケットで指定された時間に行けばアトラクションに並ばなくていいのか」

 

「ふーん。テーマパークも割と客のために色々と考えてるんだな」

 

真守と垣根は感心しながらパンフレットを見て、効率よくアトラクションを回れるように予定を立てていく。

 

実はこのテーマパーク、林檎が好きなマスコットキャラクター『天使なうさぎ様』と呼ばれる、三対六枚の翼が生えたウサギのマスコットキャラクターが出演するパレードがある。

 

そのパレードはとあるレストランの前を通るので、真守と垣根はそのレストランの良いところを予約しておく。もちろん金に物を言わせてだ。

 

「真守ちゃん、真守ちゃん。予定立てたらさ、カチューシャとかお帽子買いに行こうよ」

 

深城は白い少年と手を繋いだまま真守と垣根に近づき、提案する。

 

「そういえばテレビでよく見るけど、遊園地を楽しむためにはそういう装飾品を付けたりするよな」

 

「うん! やっぱり来たからにはそぉいうの買わないとね!」

 

深城がノリノリで頷くと、遊園地のモチーフ像の近くにある噴水に目を向けていた林檎が目を輝かせた。

 

「朝槻、朝槻! てんうさの翼もあるんだよ!!」

 

「翼?」

 

どうやら林檎が言うには、『天使なうさぎ様』の背中に生えている翼を模したリュックサックが売られているらしいのだ。

垣根は真守と一緒にパンフレットに付属していたキャラグッズのカタログで、てんうさの羽を模した翼がついているリュックサックを確認する。

 

「最近じゃぬいぐるみ持って遊園地回る女とかいるしな。あっても別に珍しくねえか」

 

「それは私もテレビで見たことあるぞ、垣根。確かぬいぐるみさんとお揃いの服を着て写真を撮ったりするんだよな」

 

「ぬいぐるみさんて」

 

垣根は真守の言い方がかわいくて不意打ちを喰らっていると、深城がにこにこと笑う。

 

「ふふっ。真守ちゃん、あたしにけっこう影響されるからねえ。なんでもさん付けちゃうんだよぉ」

 

「む。……また深城に釣られた」

 

真守は恥ずかしそうにしながらも、行く先を決めると垣根の手を引いて全員で歩き出す。

 

(そういや真守って、前にもうどんのことをおうどんとか言ってたな……気にした事無かったが、あの時も源白はAIM思念体でいたからそばにいたんだよな……)

 

垣根は以前、自分の寮へと真守を匿った時にそんなことを言っていたと懐かしく思いながら、真守と共に店へと向かった。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「真守ちゃん真守ちゃん! 真守ちゃんにはこれが良いと思う!」

 

アクセサリーショップへと入ると、深城は一番に目に入った猫耳カチューシャを真守に見せて嬉しそうに告げる。

 

「私は髪型が猫耳ヘアだから、それをつけると猫耳が二重になってしまうぞ」

 

真守が顔をしかめて迫ってくる深城を見ていると、深城はグッと親指を立てた。

 

「大丈夫だよぉ! あたしが猫耳ヘアを違う髪型にかわいく結い直してあげるからっ!!」

 

ちゃんと櫛とか色々持ってきた! と用意周到な深城を見て、真守は『えー……』と嫌そうな声を上げる。

そんな深城の横で、林檎は『てんうさ』のうさぎ耳の子供用を取ってから、大人用も手に取った。

 

「垣根もうさ耳つけて」

 

「絶対につけねえ」

 

垣根が心底嫌そうな顔をして林檎を見ていると、林檎はぴょんぴょんと飛び上がる。

 

「つけて」

 

「つけねえ」

 

垣根が再び即座に拒絶すると、林檎はムーッと口を尖らせる。

 

「…………つけて?」

 

「かわいくおねだりしてもダメだ。諦めろ」

 

垣根にだって絶対に譲れないものがある。たとえ自分に拒絶されてしょんぼりとしている林檎を目の前にしてもだ。

すると、押しに押して真守の頭に猫耳カチューシャをつける権利を勝ち取った深城が商品棚を指差した。

 

「あ! じゃあじゃあ垣根さん、あのぬいぐるみ帽子頭につけよぉ!」

 

深城が手にしたのはてんうさをモチーフにしたぬいぐるみが帽子になったもので、これを被る者は丁度てんうさに頭を噛まれている状態になっている。

 

「そんなふざけたの誰が被るか」

 

垣根が一蹴すると、顔をしかめていた林檎があからさまなため息を吐いた。

 

「垣根、ノリが悪い」

 

「そぉそぉ。ノリが悪いよ、垣根さぁん!」

 

深城と林檎がぶーぶー文句を言っていると、垣根は大きく溜息を吐いた。

そして適当に棚にあるサングラスを手に取る。

サングラスと言ってもキャラクターモチーフにされているサングラスで、垣根が取ったサングラスにはグラスの部分にうさぎの耳がついていた。

 

「こっちのサングラスなら頭に付けてやる」

 

垣根がプラスチックではなく、きちんとしたメタル素材のお値段も雰囲気もリッチなサングラスだ。

深城と林檎は垣根が手に取ったものを見て、ぶーぶー文句を垂れる。

 

「えぇーそれなんか大人しいよぉ」

 

「こっちはこっちは?」

 

「うるせえ、これ以上は譲歩しねえよ」

 

垣根がガウッと威嚇して告げる中、真守はひょいっと白い少年を抱き上げて彼よりも高い棚に目線を合わせてやる。

 

「私は垣根帝督が拒否したこのぬいぐるみ帽子を被りたい」

 

真守は白い少年が指さしたぬいぐるみ帽子を少年を抱え上げたまま手に取ってやる。

 

「てんうさでいいのか? 他にも『悪魔なお猫様』というのもあるぞ?」

 

「おおっ。じゃあそっちがいい。それをくれ、朝槻真守」

 

真守は白い少年を降ろしてやって、その頭にぬいぐるみ帽子を被せてやる。

垣根は甲斐甲斐しく世話をする真守を見て思わず考える。

 

(………………子供の面倒見る真守もいいな)

 

実際にはあの白い少年の魂を創り上げたのが真守で、体を造り上げたのは垣根帝督なため、実質的にはセイも二人の子供のようなものである。

 

(そうは言っても、ちゃんとした子供も欲しい)

 

垣根がきちんとした生命の神秘による、自分たちの遺伝子を持った子供が欲しいと思っていると、垣根の視線に気が付いた真守は首を傾げた。

 

「垣根? どうした?」

 

「真守。やっぱりお前はもう少し体に肉付けろ。分かったな?」

 

「? うん。どうしたんだ突然……?」

 

真守は何の脈絡もなく肉を付けろと言われて首を傾げる。

あんな細っこい腰つきでは、どう頑張ったって子供を作る時に苦労する。

付き合った当初にもう子供の話をしていた深城ではないが、将来のためにも健康のためにも、肉を付けるに越したことはない。

そのため垣根は密かに真守に肉を付けさせようと計画を立て、真守はそんな思案している垣根に首を傾げていた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

真守と垣根は、遊園地で売っている屋台のファストフードを求めた深城たちをベンチで待っていた。

ちなみに現在、真守は深城に髪の毛を直され、ツーサイドアップテールにして猫耳カチューシャをしている。

 

「どうした、真守」

 

垣根は普段見ない真守の髪型をかわいいと思いながら、黙っている真守が何を考えているのか気になって問いかける。

 

「学園都市の中なのに、遊園地というのはここまで外と違うものなんだなって」

 

真守は遊園地の雰囲気が外と違い過ぎて、学園都市にいる感覚がなくなっていたのだ。

遊園地とは現実離れした楽しい世界を展開するために雰囲気を大事にしているが、それに真守は圧倒されていたわけである。

 

「学舎の園の中も大体そんな感じだろ。あそこは地中海風だったよな?」

 

「うん。でも学舎の園は結構現実味があるけれど、ここはあんまりないなあって思って」

 

真守はカラフルで角が丸くなっているベンチやオブジェ、そして柵や生け垣を見て呟く。

 

「博物館とか水族館は深城と行ったことがあったけど、遊園地は来ないようにしてたから。すごく新鮮なんだ」

 

「……どうして遊園地には来なかったんだ?」

 

垣根が当然の疑問として問いかけると、真守は寂しそうに告げる。

 

「遊園地は深城が一緒に楽しめないから。私だけが楽しくなったら、申し訳ないだろ」

 

垣根は真守の申し訳なさそうな声に目を細める。

 

朝槻真守は源白深城を完璧に助けることができなかった。

それに加えて、復讐心であっても犯してはならない殺人をしてしまったのだ。

 

それでも源白深城は、朝槻真守に幸せになって欲しかった。

 

だから人並みの幸せであるファッションや髪型の何がいいかを真守に伝え、水族館や博物館、それに複合施設などに真守を連れ出したのだ。

それでも真守には罪悪感がある。

だから深城が本当に楽しむことができない遊園地には、深城に何を言われても真守は絶対に行かなかった。

 

「深城と一緒に、大切なひとたちと一緒に遊園地に来られて本当に良かった」

 

真守は儚い笑みを浮かべながらも幸せそうに呟く。

垣根は真守の頬に手を添えて微笑む。

 

「良かったな、真守」

 

「垣根も一緒に来てくれてありがとう。私、とても幸せだ」

 

真守はふにゃっと笑みを浮かべて垣根の手の平へと自分の手の平を重ねる。

 

「神さまになっても幸せで、私は本当にうれしくて幸せ者だ」

 

真守が柔らかく微笑んでいると、そこで聞き慣れた声が響いた。

 

「あーっ!! 外でいちゃいちゃしてるカップルがいると思ったら、まさかの超能力者(レベル5)カップル!? ってミサカはミサカは大声を出して指を差してみたりー!!」

 

「あ?」

 

「この声は……」

 

垣根は怪訝な声を上げ、真守は聞き慣れた口調だと思って、一緒に声がした方を見る。

すると、真守と垣根は同時に固まった。

 

そこにはもちろん妹達(シスターズ)の司令塔、ゲコ太のカチューシャをした打ち止め(ラストオーダー)が立っていた。

 

そして、その隣には。

当然として一方通行(アクセラレータ)が立っていたが、彼はゲコ太をモチーフにしたサングラスをしていた。

 

真守と垣根が一方通行(アクセラレータ)の遊園地を楽しんでます感に驚く中。

一方通行は二人との不意の遭遇に、思わずチッと舌打ちをした。

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