とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

232 / 352
第六八話、投稿します。
※次は一二月一二日月曜日です。


第六八話:〈事態収束〉で幸福の時間

加納神華がヒーローとして立ちあがり。

真守たちは無事にサンジェルマンを撃破することができた。

そんな戦いの場となったダイヤノイド最下層。

 

浜面仕上は運搬着(パワーリフター)を着込んだまま、最下層の壁に走っているキャットウォークに立っていた。

浜面仕上がキャットウォークで見守っているのはダイヤノイドを支えるドーナツ型の人工重力制御装置──フレンダ=セイヴェルンが手を加えた重力爆弾だ。

 

「やべえ、やべえってあの変なドーナツ! なんか変な音がギコギコ鳴ってる!! やっぱ相当無茶な負担がかかってやがったんだ!!」

 

重力制御装置は限界なのか、変な音を響かせている。

それを見て焦りに焦る、キャットウォークにいる浜面。

そんな浜面を下から見ていた絹旗は特に焦っていなかった。

 

「洗濯機なら超まだまだ大丈夫な音ですよ」

 

絹旗がけろっとした顔を見せると、浜面は顔を真っ青にして突っ込む。

 

「洗濯機じゃねえんだよ!! グラビトン式とかいう人工重力制御装置! 吹っ飛んだら地球が握り拳サイズになるとかっていう話なんだけど!!」

 

浜面が死の恐怖に震えていると、絹旗の隣にいた麦野沈利が面倒そうに髪の毛を掻き上げた。

 

「何でも良いよ邪魔なら原子崩し(メルトダウナー)でまるっと消滅させちまえば良いじゃねえか」

 

「だから洗濯機じゃねえんだよおおおおお!! つーかこれはこれで七〇階建てのビルを支えてる基幹装置だろ、変にいきなり機能が消えたらばったり倒れるかもしれねんだぞ!!」

 

キャットウォークに張り付いて叫ぶ浜面。そんな彼に近づく影があった。

それは真守と垣根だ。

真守は未元物質(ダークマター)の純白の翼を三対六枚広げた垣根にお姫様抱っこされており、キャットウォークに降り立つと垣根の腕の中から降りた。

 

「何をみっともなく叫んでいるんだ」

 

「いやあああドーナツからぶしゃぶしゃ蒸気が出てる!!」

 

真守に話しかけられようが、浜面は完全に目の前の重力爆弾に意識が向いていた。

真守は浜面に無視されたことが気に入らずにムッと口を尖らせる。

そして真守は運搬着(パワーリフター)を装着している浜面の鋼の剛腕をコンコンと叩いた。

 

「おい浜面仕上」

 

「え!? ぶぼぅ!?」

 

騒ぎ立てまくる浜面が面倒になった真守は浜面の頬を思いきり殴りつける。

ゴロゴロと浜面仕上はキャットウォークの上で転がるが、真守の調整もあってキャットウォークから落ちることがなかった。

だがそれでも運搬着(パワーリフター)+それなりの身長のある男を殴りつけて吹き飛ばしたため、多大な轟音が炸裂する。

浜面は真守に殴られて吹き飛ばされたことで、『アネリ』に表示された警告文越しに真守を見る。

真守はそんな浜面を見つめて、腰に手を当てて仁王立ちをした。

 

「お前、私の存在を忘れているのか?」

 

真守は心底不愉快そうに顔を歪ませながら、ドーナツ状の人工重力制御装置へと手の平を向ける。

すると重力爆弾の異変は収束を始め、人工重力制御装置から伸びるホースの継ぎ目から水蒸気がぶしゅぶしゅ出るのが止まった。

 

「あえ?」

 

突然大人しくなったドーナツ状の人工重力制御装置を見て、浜面は呆けた声を上げる。

そんな浜面を見て、真守は片手間で重力制御装置を軽く操作しながら憤慨する。

 

「私は元々あらゆるエネルギーを生成できる能力者なんだぞ。あんなオモチャを制御できないはずがないだろう」

 

「いやああああ第一位さまぁああああありがとうございますぅぅぅ!」

 

浜面が感激で涙を流している中、頑張ってキャットウォークに昇ってきた滝壺が浜面に近付く。

 

「はまづら。おつかれさま」

 

滝壺が倒れこんでいる浜面を抱き寄せて立ち上がらせるために近づくと、浜面はそれを器用に避けた。

滝壺は浜面に拒絶されたので、無表情のまま浜面を見た。

 

「はま……?」

 

「いや待って、俺じゃない、俺の意思じゃない! 何だこれ、あっまさか『アネリ』のヤツ……ッ!?」

 

浜面仕上は自分の身に何が起こったか分からなかったが、自分の運搬着(パワーリフター)に搭載されている『アネリ』が滝壺の助けを拒否したことに気が付く。

『アネリ』。どこからどう聞いても人名。ついでに言うなら女っぽい。

 

「アネリって誰?」

 

滝壺はいつもぼーっとしている瞳をカッと見開き、小首を傾げて無表情で問いかける。

 

「まってよう、行動補助プログラム相手にヤキモチとか難易度が高すぎねえか滝壺!? 待って待って、じゃあきちんと説明する。一から説明するから! 『アネリ』も『アネリ』で滝壺に足払いかけようとしてんじゃねえ!!」

 

人工知能と恋人に挟まれるという奇妙な三角関係になっている様子の浜面。

真守がその様子を何やってるんだと見つめていると、キャットウォークの下で深城が顔を輝かせる。

 

「すごぉい!!」

 

「深城?」

 

真守は垣根の横をするっと降りて、深城の近くへと着地する。

垣根が下着の見えそうな真守にあっと声を上げるが、真下には深城たちしかいなかったのでまあいいかと寛大な心で許した。

 

「どうした、深城。何を興奮してるんだ」

 

「だってあれすごいよ真守ちゃん! ロボットと恋人に迫られて本当の愛はどれかってヤツだねえ!!」

 

深城がわくわくしているのはどうやら浜面仕上と滝壺理后、それとアネリの関係らしい。

真守はマイナーな恋愛模様が好きで、よく映画館に行ってはタダで上映を見ていた深城を見て、目を細める。

 

「お前はまた変な映画でも見たのか?」

 

「えぇ~メジャーなジャンルだよぉ機械と人間の愛は!! B級とかだと愛し合ったらその瞬間ダイナミックに爆散して終わるからねえ!」

 

深城が興奮している様子を遠くから見ていた絹旗は、深城の言葉にきょとんっとする。

 

「あの子とは超いい話ができそうです……っ!」

 

きらきらと目を輝かせるB級映画好きの絹旗。

そんな絹旗の隣で、麦野は付き合ってられないとばかりにため息を吐く。

 

「知るか。とっとと帰るよ」

 

「あ。待ってくださいってば」

 

『アイテム』の二人が去っていく中、垣根は真守の隣にトンッと降りる。

そして垣根は真守の事を後ろから抱きしめて、真守の頭に顎を置いた。

 

「なあ真守」

 

「なんだ垣根。拗ねた声して」

 

ぎゅっと抱きしめてきた垣根の腕にちょこんっと触りながら、真守は自分の頭に顎を置いている垣根に意識を向ける。

すると垣根は真守の小さな頭にすり寄りながら拗ねた様子で告げた。

 

「デートの続きしようぜ」

 

本当ならば深城たちが観覧していたテレビ局の収録が終わるまで、自分と真守は二人きりでデートできたはずなのだ。

ダイヤノイドには巨大な噴水もあることだし、二人で見に行きたかった。

だがそれはサンジェルマンのせいでできなくなってしまった。

垣根はそのことに納得がいっていないのだ。

真守はそんな垣根を見て眉をひそめる。

 

「えーそんなこと言っても、今回の顛末を警備員(アンチスキル)に説明しなくちゃダメだろ」

 

「そんなの上条当麻とカブトムシ(端末)に任せてりゃいい。行くぞ」

 

「あ、ちょっと」

 

真守はぐいぐいと手を引っ張られる中、深城たちを見た。

 

「そういえば収録も中止されちゃったけど。林檎、結局てんうさには会えたのか?」

 

「収録が始まる前にちらっとだけ見た。でも収録が中止になったから、そういう意味では会えなかった。悲しい」

 

林檎は番組が始まる前にちょろっと姿を見ただけで、収録が中止になってしまって『天使なうさぎ様』に会えなかったことを悔やむ。

そんな林檎を見て、深城はにへらっと笑った。

 

「番組はもう一度収録し直しだから、また観客いれてやるかもねえ」

 

「! 深城、またチケット取ってくれる?」

 

「いいよぉ」

 

林檎は表情を明るくして、嬉しそうにはしゃぐ。

そんな林檎を見て、クロイトゥーネが微笑んだ。

 

「良かったですね、林檎ちゃん」

 

「うんっ」

 

林檎が笑顔を見せると、ぐーっとお腹が空いた音が鳴った。

すると。それに呼応するように、白い少年のお腹も鳴った。

 

「垣根、お腹減った」

 

「垣根帝督。私もお腹が空いたぞ」

 

「おう。俺たちも飯がまだだったし、第二二学区で仕切り直すか。……デートじゃなくなるけど」

 

垣根は少し不満そうにする。

そんな垣根を見て、真守は垣根の手をぎゅっと握って微笑む。

 

「垣根、また今度デートしよう。約束だ」

 

「そうだな。約束だ」

 

垣根は真守と約束をすると、思案顔をする。

 

「今日はこれからみんなで飯食って、その後気分転換にちょっと店回るか。それでいいか、真守?」

 

「ふふ。垣根が納得するならそれでいいよ」

 

真守はくすりと笑うと、垣根と繋いでいる手を胸元に引き寄せながら笑う。

 

「垣根はどこ見たいの? もう夜も遅くなるし、移動しながら行く店をしぼっておこう」

 

「俺の服。お前が選んでる姿、見てて飽きねえから。もう一回見たい」

 

「分かった、じゃあその後林檎とセイの服、クロイトゥーネの服も見よう。今日はみんなの服を見る日だ」

 

真守が笑いかけると、林檎と白い少年、クロイトゥーネは目を輝かせる。

 

「真守ちゃんに洋服見てもらえるの、うれしいです」

 

「お洋服買ってくれるのうれしい。垣根に選んでほしい」

 

「朝槻真守。私はもこもこの服が欲しいぞ」

 

真守はそれぞれ声を上げる三人を見て、くすっと笑う。

 

「ふふ、分かった。行こう、深城。みんな」

 

真守は垣根と手を繋いで、そして並んで歩く。

ちなみに重力制御装置は既に真守の制御下にあるため、それ相応に離れても大丈夫だ。

そのため後のことは上条たちに任せて、真守たちはその場を後にした。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

第二二学区で仕切り直し、真守たちは自宅へと帰ってきた。

夜も大分深まってきた頃。真守は二階のラウンジのソファに座って、カブトムシの背中を撫でていた。

カブトムシのヘーゼルグリーンの瞳はぴかぴかと明滅している。

真守はその様子を、黙って見守っていた。

 

「まーもりちゃんっ」

 

「ん。なんだ、深城」

 

真守はソファの背もたれ越しに、深城に抱きしめられて柔らかく笑う。

 

「林檎たちは眠ったのか?」

 

「うん。今日は色々あったからね。ぐっすりだよぉ」

 

深城はにこにこと微笑んで、真守にすり寄る。

そしてふわっと真守から香った匂いに気が付いて、深城は真守の髪をすんすんと嗅ぐ。

 

「真守ちゃんいつもと違うけど、すごい良い匂いがする。トリートメント違うの使った?」

 

「伯母さまが送って来てくれたお試しのトリートメントだな。髪の毛の調子が結構良いよ」

 

深城はするすると自分の髪を撫でる深城の手を感じながら微笑む。

 

「真守ちゃんはなんだかんだ言ってハーフだもんねえ。マクレーンの人たちとそっくりだしぃ、外国の製品の方が合うのかも」

 

「ふふ。単に伯母さまが良いものを送ってくれただけだよ。外国でもピンからキリまでだから」

 

真守は労わるように深城に頭を撫でられて、ふふっと微笑む。

深城はにへらっと笑うと、歩いて真守のソファの隣に座った。

 

「なぁにしてるのぉ?」

 

深城はにこにこと微笑んで、隣から真守にすり寄る。

真守はどこからどう見てもカブトムシを愛でているようにしか見えなかった。

だが深城は分かっている。真守は隠し事ができないと小さく笑うと、口を開いた。

 

「ちょっと気になることがあってな。まだ垣根には内緒にしておいてくれ。私の口からちゃんと話したい」

 

「うん。分かったぁ」

 

深城はにこにこと微笑みながら、真守にすり寄る。

 

「加納さんかっこよかったねえ」

 

加納。加納神華。

大切な友達のために男として立ち上がった少年。

フレンダの死を踏みにじられた彼は、きちんとケリをつけることができた。

 

「……大切な友達の死を乗り越えるのは辛いことだけど、一歩が踏み出せてよかった」

 

フレンダ=セイヴェルン。

彼女が死んだきっかけを作ったのは真守だ。

そして真守が垣根のそばを離れなければならなくなったのは、この街の王が真守を学園都市の悲願である絶対能力者(レベル6)へと進化(シフト)させたからだ。

統括理事長、アレイスター=クロウリー。

真守は彼のことを思って、そっと目を細めた。

 

「あたしは真守ちゃんのそばにずぅっといるよ」

 

深城は何か大きな決意をしている真守にすり寄って、柔らかく微笑む。

 

「いまの真守ちゃんはちゃんと分かってるから。ひととしてやっちゃだめなコトと、絶対に守らなくちゃいけないコト。だからあたしは真守ちゃんの行動を信じてる。全部何もかもを良くしてくれるって分かってる」

 

「ありがとう、深城」

 

真守はこの世で一番大切な女の子の体温を感じながら微笑む。

 

「お前が私を見つけてくれたから、私はこうしてここにいられるんだ」

 

「うん、知ってる。あたしも真守ちゃんを見つけることができてうれしいよ。だって全力で愛せる子が見つかったんだもの」

 

深城はすりすりと真守にすり寄って、そして幸せそうに呟く。

 

「ずぅっと一緒だよ、真守ちゃん」

 

深城は柔らかく微笑むと、顔を上げた。

 

「ね? そぉだよね、垣根さん。ずぅっと一緒だよね」

 

深城の視線の先。そこには風呂から出てきた垣根が、寝巻にしているシンプルな長袖シャツとスウェットを着て立っていた。

 

「そうだな」

 

垣根はタオルを首に掛けたまま、真守に後ろからしなだれかかる。

 

「絶対に離れねえから。約束は守る。ちゃんとな」

 

垣根は真守の頬にそっとキスをする。それに真守は幸福を感じて目を細めた。

 

「私は幸せだ」

 

真守はふにゃっと笑うと、垣根に後ろから抱きしめられたまま深城の手を握った。

 

「色々あったけど、こうして二人と一緒にいられることは本当に幸せなことだ」

 

「うん。あたしも幸せだよぉ。大切にしたい女の子たちと一緒にいられるんだもん」

 

深城はふんわりと笑うと、自分の手を握る真守の手を空いた手で撫でる。

垣根は柔らかく微笑むと、真守の頭を優しく撫でる。

 

「俺も幸せだ、真守。お前がいてくれればそれでいい」

 

「良かった」

 

真守はふにゃっと笑って、カブトムシの背中を撫でる。

そして一つ頷くと、真守は気持ちを固めた。

この幸せを絶対に壊させない。それこそ『永遠』のものにする。

真守はそう決意しながら、一番幸せなひと時を過ごしていた。

 




サンジェルマン襲来篇、終了です。
次回。魔神・理想送り襲来篇。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。