とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

243 / 352
第七九話、投稿します。


第七九話:〈救世女神〉は事実を述べる

上里翔流。

学園都市でもない、ただの地方都市の高校に通っていた平凡な男子学生。

そんな上里翔流の周りでは、必ずといっていいほどにトラブルが起きる。

そして上里翔流はそのトラブルで、必ずと言っていいほどに女の子を救う。

そしてその女の子たちは全員、上里翔流に惹かれて慕うようになる。

 

その境遇を、人々は単純にハーレムと呼ぶだろう。

女の子にちやほやされて幸せな日々を送るという、誰でも一度は夢見る状況。

だがそんなものを、上里翔流は望んでいなかった。

 

それでも上里翔流は日々トラブルに巻き込まれて、女の子を救う毎日を送る。

 

自分が助けた大切な少女たちが楽しそうにしているのは嬉しい。

だがどこか虚しいのだ。

だから上里翔流は自らの右腕に宿っている理想送り(ワールドリジェクター)を憎んだ。

 

右手の力が全てをおかしくしたと考えた。それ以外に平凡な男子学生が女の子たちにちやほやされる理由がないからだ。

 

だから上里翔流は自分に厄介な願いを押し付けた魔神たちが憎んだ。

そして右手がおかしくしてしまった女の子たちを元に戻すために、元凶である魔神たちを残らず新天地へと送るために、学園都市にやってきた。

そして。魔神たちの願いを受け止めきれなかった上条当麻をも、邪魔であれば打倒しようと考えていた。

 

「成程な」

 

紅茶を片手に上里翔流の話を軽く聞いていた朝槻真守は、話を聞いて頷く。

真守も垣根も、既に上里翔流の境遇をカブトムシによって知っている。

だがそれを言うと面倒なことになるので、真守は上里の話をきちんと聞いていた。

 

「お前が何を抱えているのか分かった。その上で私はお前に伝えよう」

 

上里翔流は絶対的に公平な存在を見て、ごくりと喉を鳴らす。

真守は特に気負う事無く、誰もが理解できる真実を口にした。

 

「お前が上条に昨日言われたことは、全て正しいと思うぞ」

 

上条当麻は上里翔流に告げた。

 

平凡な男子高校生を尊敬する少女たちがいてもおかしくない、と。

少女たちは別に何の脈絡もなく上里翔流に惹かれたわけではない、と。

 

右手の力はただのきっかけに過ぎないのだ。

 

火のないところに煙は立たない。

だから結局、見えない種が右手の力をきっかけにして芽吹いただけなのだと。

上条当麻の言い分に同意した真守を、上里翔流は睨む。

 

「結局、キミもあの男と一緒で魔神に毒されているんだな」

 

上里翔流は上条当麻と同じく、ハーレムを認めるようなことを告げる真守を敵視する。

魔神に毒されているから女の子たちが平凡な男子高校生を慕うなどという世迷言を信じるのだ。

そうやって自分をすぐに敵視した上里翔流を、真守は早計だと睨んだ。

 

「勝手に結論を出すな、聞け」

 

真守は即座に上里翔流を威圧する。

真守の怖さを十分に知っている上里翔流は、それで大人しくなった。

真守はそんな上里翔流から目を逸らして、テーブルの上に目を向ける

そして数あるデザートやサンドイッチから、ガトーショコラを選んで手に取る。

 

「私は垣根を選んだぞ、上里翔流」

 

選択肢が多くある中で、真守はガトーショコラを手にした。

まるでそれが重要であるかのように見せる真守を見て、上里翔流は目を瞬かせた。

真守は垣根にフォークを取ってもらいながら、淡々と言葉を紡ぐ。

 

「お前は平凡な男子学生の自分に女の子たちが惹かれるのはおかしいと考えている。だから女の子たちが歪んでいるのは右手のせいだと考えている。──その理論で行くと、ちょっと特別な女の子である私も上条を好きになってるハズだろ」

 

上里翔流は真守に問いかけられて、大きく目を見開く。

 

真守は完成された人間、神人だが立派な女の子だ。

右手に宿っている異能はその異能を持つ少年と周囲の女の子たちを、誰彼構わず歪めてしまう。

そんな上里翔流の理論で言えば、少し特異な少女である朝槻真守だって上条当麻を好きになっていなければおかしいのだ。

 

だが事実として。真守は上条当麻に惹かれることなく、垣根帝督を選んだ。

 

上里翔流の理論に基づいて言えば、例外である真守。

真守はガトーショコラを小さいお口でぱくっと食べる。

ガトーショコラは一級品でとても上品な甘さだ。

真守はその甘さを堪能しながら、隣に座って長い脚を組んでいる垣根を見上げた。

 

「私は上条じゃなくて垣根を選んだぞ。上条のことは好ましいと思うけど、それは友達だからだ。私は別にアイツと恋愛したいとは思わない」

 

真守はガトーショコラを手にしたまま、少し恥ずかしそうにしながらも自分の気持ちをきちんと吐露する。

 

「私は自信たっぷりな男の子が良い。思慮深くて、私のことだけを考えてくれるヒトが良い」

 

真守は自己主張が強すぎて、もはや傍若無人の域にまで達している垣根にすり寄りながら、上里を睨んだ。

 

「はっきり言ってお前と上条は私のタイプじゃない。糸の切れた凧みたいに大事な女の子を放り出して、ふらふら他の女の子救いに行くヒトなんて……私は嫌だ。大切なひとにはずぅっとそばにいてほしいし、私だけを見てほしい」

 

真守は上条も上里も論外だといわんばかりに、ぷいっとそっぽを向く。

別に告白してもいないのに、女の子にフラれた。

その事実が上里翔流の心をぐさっと抉る。

そして初めての感覚だとも、上里翔流は思っていた。

何故ならこれまで、一ミリたりとも可能性がない女の子にフラれたことがなかったからだ。

垣根はそんな上里翔流を見つめて、チッと小さく舌打ちする。

真守は垣根の隣で、新感覚にドキドキしている上里翔流をじとっと睨む。

 

「女の子にだって男の子を選ぶ権利はある」

 

真守は怒った様子で、当たり前のことながら上里翔流が失念している事実を口にする。

だがすぐに破顔して微笑むと、垣根を見上げた。

 

「私は女の子として垣根を選んだ。垣根が良かったから。上条じゃなくて、私は垣根が素敵だったから垣根を選んだんだ」

 

真守は笑うと、ガトーショコラの皿をテーブルに置く。

そして真剣な表情をして、まっすぐと上里翔流を見た。

 

「私は神さまとして、垣根に出会うことが決まっていた」

 

朝槻真守には垣根帝督が──というより、未元物質(ダークマター)という能力が必要だった。

朝槻真守はエネルギーを操る能力者であり、未元物質(ダークマター)という無限の創造性を持つ能力者ではないからだ。

 

「私には器を造れる物質が必要だった。でも私は垣根の事が好きになった。女の子として、垣根と一緒にいたいと思った。……もし私が垣根のこと好きじゃなかったら。私は垣根の意思なんて気にせずに甘い幸福な夢に浸らせて、未元物質(ダークマター)を吐き出すだけの道具にしただろう」

 

それが、神さまとしての生きる意味を全うするために必要ならば。

朝槻真守は神さまとして躊躇いなく垣根帝督を利用しただろう。

 

だが朝槻真守にとって、垣根帝督は愛する人だった。

愛する人の自由を願うのは当然だ。だから真守は垣根帝督が運命に逆らって自分の進みたい道へと向かってもいいと思っていた。

 

本当に自分との運命が嫌ならば、新しい道を選択すればいい。

だからこそ真守は第三次世界大戦の場へと向かったのだ。

 

「私は垣根がだいすきなんだ。垣根の全部がすきなんだ」

 

真守は少し恥ずかしそうに、それでも幸せそうに目を細める。

だがすぐに不愉快そうにむっとして、上里を見つめた。

 

「自分のことを好きな女の子たちの気持ちはおかしい。それってとても女の子に対して失礼だぞ、上里。上条の言う通り、平手が飛んだらかわいいものだな」

 

ふんっと鼻を鳴らす真守。それでも上里を慕う女の子たちのことを考えて、くすっと笑った。

 

「まあでも女の子たちがお前を怒らないということは、そんな優柔不断なお前もだいすきだということだな。それともいつか分かってくれると信じているのか。そんなところだな」

 

真守が女の子目線で上里翔流に対しての女の子の気持ちを予測していると、垣根は呆れた様子で目を細めた。

 

「つーかよ。テメエはどこにでもいる何のとりえもない、平凡な男子高校生ってヤツなんだろ。そんな人間の魅力なんて、()()()()()()()()()()()()()()ってんだ」

 

垣根は上里翔流を品定めするように、じろじろと見つめる。

 

「ルックスは悪いわけじゃないけど良いわけでもねえ。地位も金もない、頭の出来だっていいように見えない面構え。そんなお前に、どうして()()()()()が惹かれるんだよ」

 

垣根帝督はどこからどう見てもカースト最上位に位置する男だ。

ルックスも地位も金も全てを兼ねそろえている。

頂点に立っているだけあって、垣根は世の中の女性が男性に何を求めているのか理解している。

その上で、女性から求められる素養を何一つ持っていない上里翔流を垣根は睨む。

 

「現実知らねえ非モテ童貞野郎に教えてやるよ。世の中の女ってのはシビアだぜ。それに狡猾で現金だ。普通の女は価値として見えるモンにしか寄って来ねえ。その点、何も持ってないお前なんかお遊びにもなりゃしねえ」

 

ぐさり、と鋭く、垣根帝督の言葉が上里翔流に突き刺さる。

垣根は真守の事を抱き寄せて、イイ女だと誇示するように上里を睥睨する。

 

「俺は黙ってても女がすり寄って来るけど。テメエに普通の女が惹かれる要素なんて何一つありゃしねえよ。テメエの周りにいるのは平凡ってヤツにしか惹かれねえ女だよ。当然だろ」

 

垣根は何度も何度もぐさぐさと言葉で上里翔流を刺す。

そして最終的に、断言する。

 

「要はテメエには変な女しか近寄って来ねえんだよ。社会的に大成する可能性や最初からモノ持ってる男にしか利口な女は近づかねえんだよバーカ」

 

真っ当な少女は絶対に寄ってこない。

一癖も二癖もある女の子しか寄ってこない、普通に魅力がない男。

垣根帝督が上里翔流を断じると、真守はくいっと垣根の腕を引っ張った。

 

「か、垣根……あの。上里涙目になってるぞ……?」

 

垣根は半泣きになっている上里を見て、はんっと嘲笑する。

 

「アイツが現実みねえで自分の考えばっか語って甘ったれたコト言ってるのが原因だよ。だから分からせただけだ。……つーかお前だって、あの男は嫌だって言っただろ」

 

「…………だって、私は上里に魅力感じないもん」

 

垣根帝督の言葉よりも、真守の言葉が一番上里翔流に深く突き刺さる。

だがフォローする気は真守にはない。何故なら。

 

「私はやっぱり垣根が良い」

 

「やっぱりとかいうな、当然だろ」

 

「うんっ。私は絶対に垣根が良いっ」

 

真守は嬉しそうににへらっと笑う。

上里翔流は真守の笑顔を見て、ゴンゴンゴーンッと垣根の勝利のゴングが鳴ったような気がした。

垣根は完全に自分に敗北した上里翔流を睥睨して、真守の頬を撫でる。

 

「だいたい普段から女の手綱が取れないヤツがベッドの中で主導権握れるワケねえだろ。そこからして男失格だ、失格」

 

上里翔流は垣根に突然ぶっこまれて、思わず咳をする。

そんな上里の前で、真守は垣根に愛でられながらもじろっと垣根を睨んだ。

 

「……垣根、そーいう明け透けな話は流石にしないで」

 

「男として大切な話だろうが。ああいうのは男の風上にも置けねえヤツだ。本番になったら緊張で萎えちまうタイプだな」

 

「垣根、だから話を続けないで。……恥ずかしいだろ」

 

「なんだよ、事実だろ。お前は俺だから満足できるんだぜ。あの男は絶対に女を満足できねえタマなし野郎だ」

 

「言いたい放題いうなよこのルックス地位最強男!」

 

流石に垣根に散々言われた上里翔流は、ソファから立ち上がって垣根を睨む。

 

「平凡だろうがなんだろうが僕だって男だ! 女の子を幸せにすることくらいできる!!」

 

「はん、やってみろよタマなし野郎」

 

垣根は顔を真っ赤にして怒る上里を見上げて、嘲笑する。

 

「男が責任取って幸せにできる女は一人きりって決まってる。優柔不断なテメエはまず相手を選ぶところから始めなくちゃいけねえ。きちんと自分の気持ちにケリつけられないその時点で、テメエは俺に負けてるんだよ」

 

「せ、責任……!?」

 

上里翔流は垣根の畳みかける言葉に硬直する。

垣根はハーレム野郎を睨んで、心底不愉快そうに眉をひそませた。

 

「男が責任取って女を幸せにできるのは嫁にすることだ。当然だろこの優柔不断ハーレム野郎」

 

垣根は上里翔流を心底軽蔑すると、真守の腰に手を這わせる。

 

「俺は真守を幸せにする。絶対に覆られねえ決定事項だ。──テメエも男なら、いっぺんきちんと女の幸せについて考えてみろバーカ」

 

真守は垣根に抱きしめられたまま、ぽぽぽっと頬を赤く染める。

 

「…………垣根は、約束してくれたから」

 

真守は右手薬指に嵌っている指輪を意識して、呟く。

 

「お嫁さんにしてくれるって約束してくれたの。だから、私は女の子としてとっても幸せ」

 

真守は女の子ならば誰もが一度は絶対に求める夢のカタチを考えて、ふふっと笑う。

 

上里翔流は真守の女としての表情を見て、悟った。

勝てない。あの男には絶対に勝てない。

そして同時に上里翔流は、真守が上条当麻や上里翔流になびかない理由も理解できた。

 

自分の気持ちに素直で率直で。そして自信たっぷりで自分が決めたことには誇りを持つ。

そしてその信念を絶対に曲げない。

そんな垣根帝督が真守は好きなのだ。

 

なんだかんだ言って、真守は自分勝手な垣根に振り回されるのが好きなのだ。

女の子に散々振り回される自分や上条当麻を絶対に真守が選ぶことはない。確実に。

 

真守は恥ずかしくなりながらも、気を取り直してこほんっと一つ咳をする。

そして上里を見つめて、総括した。

 

「上里翔流。お前の右手に異能が宿ったのは、お前の性質に引き寄せられてきたから。そして女の子たちはお前の平凡という性質に引き寄せられた。それが事実だ、分かったか?」

 

真守はそう告げると、再びじとっと女の敵を睨む。

 

「あと神人としても、女の子としても忠告するけど。……お嫁さんのことはちゃんと考えるんだぞ。そうじゃなければお前のことを好きになった女の子たち全員に失礼だからな」

 

女の子の幸せは、やっぱり好きなひとのお嫁さんになることだからな。

 

上里翔流は完璧な人間と言えど、たった一人の女の子に幸せそうに正論を告げられて再び硬直する。

 

お嫁さん。

当然としてお嫁さんになれる少女は一人だけだ。

それ以上は不誠実になってしまうし、生涯を誓うのは離婚する結果になろうとも一回につき一人だけだ。

 

上里翔流は人生最大の命題を真守に投げかけられて、頭を悩ませる。

自分と同じ立場である上条当麻。

上条当麻も、最後は一人を選ぶのだろうか。

 

上里翔流は自分のお嫁さん問題に悶々としながら、朝槻真守と垣根帝督の超絶お似合いカップルから解放された。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

既にとっぷりと陽は暮れている。

そんな中、真守と垣根はホテルが用意してくれた送迎車──リムジンに乗っていた。

 

真守たちが上里と話をするために選んだホテルは会員制の高級ホテルだ。

垣根は当然として会員だったが、真守はそうでなかった。

だが真守はホテルの人間に会員になってくれと懇願され、会員となった。

 

超能力者(レベル5)第一位。それも非公式だが、真守はマクレーン家と呼ばれるイギリス貴族の傍系だ。

そんな少女が会員だとホテルに箔が付く。

そのため普通ならば厳正な審査が必要なところをすっ飛ばし、真守は会員になった。

 

その様子を見ていた上里翔流は密かに思っていた。これが格差社会か、と。

 

「昨日から色々なことが起き過ぎだなあ」

 

真守は夜の学園都市を見つめながら、ぽそっと呟く。

高級リムジンなので中は広々としている。

だが真守と垣根はくっついて座っていた。離れる理由なんてないからだ。

真守はこてっと垣根に頭を寄せると、恥ずかしそうにしながらも幸せそうにはにかむ。

 

「……垣根が、私の幸せを一番に考えてくれてるのうれしい」

 

「当たり前だろ、大事な女なんだから」

 

垣根は真守の艶やかな黒髪を撫でながら、柔らかく微笑む。

 

「お前以上にイイ女なんてこの世にいねえよ、真守」

 

「……えへへー……っ」

 

真守はとんでもなく嬉しい言葉を聞く事ができて、表情を緩ませる。

垣根はそんな真守を見て、ゆっくりと目を細めた。

 

神様のように公平で、誰にでも分け隔てなく接する。

そんな少女が自分のことを男として求めてくれるのはとてもうれしいことだ。

しかも垣根は別に真守が神さまだから惹かれているわけではない。

 

朝槻真守が朝槻真守だから。垣根帝督は一緒にいようと思ったのだ。

 

垣根はふっと笑うと、真守の頭を優しく撫でる。

 

「……ふふーっ」

 

真守は垣根の安心する大きな手に優しく頭を撫でられて、ふにゃっと笑う。

そしてこの上ない幸福を感じて、すりっと垣根にすり寄った。

 

「かきね、だいすき……っ」

 

「知ってる。俺も愛してる」

 

真守はにこにこ笑うと、一息つくために息を吐いた。

垣根はそんな真守を見て、目を細める。

 

「大丈夫か?」

 

「うん、大丈夫。体力的には問題ない。でも魂を創るために集中してたからな。そこがちょっと大変だった」

 

「……昨日も今日も色々あったからな。……明日は上里のクソ野郎のせいで夜バーベキューだしな。今日の夜はゆっくりしようぜ」

 

「うん、ありがとう。垣根」

 

真守は垣根に背中に手を回されて優しくされながら目を細める。

 

「バーベキューすることになった原因の上里翔流にも釘を刺せたからな」

 

上里翔流と別れる間際。

真守は上里翔流に忠告した。

上条当麻の奥にひそむもの。あれには関わらない方が良いと。

 

あれを育てているのはこの街の王である統括理事長アレイスター=クロウリーだ。

アレイスターは上里翔流を敵視している。

だから木原脳幹を派遣したり、色々と画策している。

 

そしてアレイスターはアクシデントを利用して自身の目的を達成させる。

 

前方のヴェントが学園都市に攻めてきた時。

ヴェントを撃破するために天使である深城を使い、ついでと言わんばかりに朝槻真守を安全に絶対能力者(レベル6)へと進化(シフト)させたように。

 

これまでもアレイスターは様々なアクシデントに対して臨機応変に対応し、そして自分の成果へと繋げてきた。

 

「あの人間がアクシデントを利用して前に進むなら、科学の申し子である私がアクシデントを利用しても問題ないというワケだ」

 

垣根は強かな真守の言葉に柔らかく微笑むと、真守の体重を預けさせる。

 

「着いたら教えてやる。ちょっと寝てろ」

 

「……垣根は大丈夫?」

 

「俺は問題ねえよ。元々体は強くできてる」

 

真守は垣根の頼もしい言葉を聞いて、小さく微笑む。

 

「今日は早く寝ようね」

 

「ああ、そうだな」

 

真守は頷くと、垣根にぎゅっと寄り添って目を閉じる。

垣根は真守の静かな寝息を聞きながら外を見る。

第七学区にある『窓のないビル』。

そのビルの中にいるこの街の王。アレイスター=クロウリー。

 

「……本当に、何考えてるんだろうな」

 

何があったら魔術を憎み。

何を考えたら科学サイドをまるごと造り上げることになるのか。

 

垣根帝督はアレイスターに疑問を抱きつつ、眠る真守の黒髪を優しく撫でた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。