とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第八五話、投稿します。


第八五話:〈親族登場〉で疑問に思う

統括理事長であり、稀代の魔術師でもあるアレイスター=クロウリー。

彼と付き合いがあったであろう、エルダー=マクレーン。そしてマクレーン家。

真守は伯母であるアシュリン=マクレーンから話を聞くために、自宅の二階へと上がる。

 

「伯母さま、家に来るのは初めてだよな」

 

真守は自分の後ろを歩くアシュリンへと、振り返りながら声をかける。

 

「ええ、そうね。真守ちゃんの家に立ち入るのは真守ちゃんの負担になると思ったから、初めてお邪魔するわ」

 

自分の伯母は、どこまでも自分のことを第一に考えてくれる。

真守はそれがうれしくて、それでも少し緊張しながらアシュリンを二階のラウンジに案内した。

 

「まあ。とても綺麗にしているのね。インテリアも愛らしいわ、真守ちゃんみたい」

 

アシュリンは広いながらも丁寧に片付けられているラウンジを見て、柔らかく微笑む。

 

「深城が部屋を片付けてくれるんだ。家事も、全部やってくれる」

 

真守はアシュリンの賞賛がくすぐったいけど嬉しくて、少しもじもじしながら答える。

垣根は嬉しそうな真守を見て、目元を柔らかく緩めた。

 

「真守。紅茶淹れてくるから。先に座ってろ」

 

「あ。ありがとう、垣根」

 

真守はキッチンに向かった垣根を見た後、アシュリンを三人掛けのソファへと誘導する。

そしてアシュリンを誘導して、真ん中に座らせる。その後真守は少し迷いつつも、アシュリンの隣にちょこんっと座った。

アシュリンは緊張している真守の頬に優しく手を添える。

 

「わたくしがいるから緊張しているのね。突然お邪魔してごめんなさい」

 

「……べ、別に伯母さまが悪いわけじゃない。絶対にっ」

 

真守は小さく首を横に振る。そして自分の頬に触れているアシュリンの小さな手に自分の手を重ねて、目を細める。

 

「伯母さま。手がちっちゃい」

 

「真守ちゃんだって小さいじゃない」

 

アシュリンはちょっと拗ねた様子で真守を見る。

真守はそんなアシュリンを見て、アシュリンの手を握ったまま笑った。

 

「ふふ。手がちんまいのはお揃いなんだな」

 

「そうよ。あなたはわたくしの半身が産んだ子なのだから」

 

アシュリンは真守の手を優しく握って、微笑む。

 

アメリア=マクレーン。アシュリンの双子の妹。

そして朝槻真守を産んで、亡くなった真守の母。

真守は既にこの世にいない母のことを考えながら、そっと目を伏せる。

そしてアシュリンの白くて小さな手を感じた。

 

冷凍倉庫で、朝槻真守はこの世の真実を知った。

科学と魔術。それに隔たりがないこと。そしてアレイスターが科学と魔術を隔てる認識制御を行っていること。

 

アレイスターの認識制御から逃れようとした時、真守は無防備になった。

無防備になって。その時、誰かの真っ白な手が伸びてきた。

そして夢を見させられた。在りし日のアレイスターとエルダー=マクレーンという女性の夢を。

 

誰かの真っ白な手。

その白い手はアシュリンや自分の手と、よく似ていた。

そして自分の頭を撫でる優しい手つきも。アシュリンの手にそっくりだった。

 

「ところで真守ちゃん。帝督くんとは()()()()一緒に住んでるのよね?」

 

思いを馳せていた真守はアシュリンに問いかけられて、きょとっと目を見開く。

アシュリンの視線の先には、キッチンで紅茶を淹れている垣根がいる。

その手つきはとても軽やかで、そして迷いがない。

つまり、キッチンのどこに何があるか完璧に理解しているのだ。

 

「一緒に住んでなければ、キッチンのどこに何があるか分からないものね」

 

真守はアシュリンに微笑まれて、さーっと血の気が引いていく気がした。

 

「そ、その……伯母さま、し、知ってる感じだけど……っか、垣根とは一緒に、その……っ」

 

真守は思わず上ずった声を上げて、しどろもどろになってしまう。

だいすきな男の子と普段から一緒に暮らして、なんなら同じベッドで毎日寝ている。

その事実を、真守は簡単に口にできない。

高校生で男の子と同棲なんて、どこからどう見てもふしだらな関係なのだ。

というか、ずぶずぶである。普通の高校生ならばありえない。

 

「真守ちゃん? どうしたの?」

 

アシュリンは少し意地悪そうな顔つきで、にまにまと笑う。

確実にアシュリンは真守をイジッて遊んでいる。

垣根は黙って紅茶の準備をしていたが、そう確信していた。

 

「言葉にしなければ分からないわ。ねえ、真守ちゃん?」

 

柔らかくにっこり微笑むアシュリン。

真守はそんなアシュリンの意地悪な微笑みで、いっぱいいっぱいになってしまう。

 

「お、伯母さま……っ失望しないで……っ」

 

真守はぷるぷると震えて、アシュリンの手をぎゅっと握り締める。

第三者になら呆れられてもいい。でも伯母にだけは失望されたくない。

絶対能力者(レベル6)だろうが完璧な人間であろうが、大切にしたい人に呆れられるのは本当に嫌だ。

真守が小さく震えていると、アシュリンは柔らかく微笑む。

 

「ふふ。わたくしが真守ちゃんに呆れることなんてないわよ?」

 

アシュリンは本気で追い詰められて泣きそうになっている真守を見て、くすくすと笑う。

 

「あなたに失望する事なんてないわ。たとえ男の子と一緒に生活して一緒のベッドで寝てて四六時中一緒にいてもね」

 

「うぅー……すっごい言い方が意地悪だ……っ」

 

アシュリンは呻いている真守がかわいくて、真守の頭を優しく撫でる。

真守はアシュリンに優しく頭を撫でられて、すんっと鼻を鳴らす。

 

「あのな、伯母さま」

 

「うん、なあに?」

 

「……か、垣根とは……一緒に生活してるんだ。もちろん二人じゃないってことは伯母さまも知ってると思うけど……ゆるしてくれる……?」

 

真守はおずおずと、微笑むアシュリンを見上げる。

 

「わたくしが許さなかったら真守ちゃんは困るのでしょう?」

 

「う。……す、すごい困る……とてもかなしい……」

 

アシュリンは自分の気持ちを正直に告げる真守が愛おしくて、優しく抱きしめる。

 

「あなたが幸せでいられるならわたくしは別に何でもいいのよ、真守ちゃん。よしよし」

 

真守はアシュリンに背中を優しく撫でられて、きゅーんっとしおらしくなる。

すりっと真守がすり寄ると、アシュリンは柔らかく微笑む。

真守とアシュリンは髪の色以外、本当によく似ている。

遺伝子的には母と娘の関係なのだ。似ているに決まっている。

垣根は紅茶セットをお盆に載せたまま、親子にも等しい二人に近づく。

 

「一応イギリスから源白が取り寄せたモンだ。好みじゃなかったら無理して飲まなくていい」

 

「あら。ありがとう、帝督くん」

 

アシュリンは真守の頭を撫でながら、にっこりと微笑む。

垣根は手慣れた仕草で紅茶をテーブルの上で用意する。

真守はあまり見ない垣根の様子がかっこよくて、ちょっと見惚れてしまう。

 

「帝督くんは執事も似合いそうねえ」

 

アシュリンが何の気なく告げた言葉に、真守は思わずぐふっと噴き出した。

 

「? どうしたの、真守ちゃん」

 

「いや、……その……な、なんでもないっ垣根はなんでも似合ってしまうから、執事も難なくこなすと思うっ」

 

ついこの間。

真守は何故か、垣根帝督が暗部の仕事で執事喫茶に潜入するという夢を見てしまった。

そのことについて思い出して、動揺する真守。そんな真守の前で垣根は小さく笑いながら、アシュリンに紅茶を差し出す。

 

「どうぞ」

 

「ありがとう」

 

アシュリンは軽やかにお礼を告げると、紅茶を飲む。

 

「おいしいわ。流石ね」

 

アシュリンは垣根の紅茶の淹れ方がお気に召して、にこにこ微笑む。

 

「真守。砂糖とミルク入れといたぜ」

 

「あ、ありがとう……垣根」

 

真守はぽぽっと頬を赤くしたまま、垣根から紅茶を受け取る。

 

「保存状態が良い茶葉を使ったのね。帝督くん、もしかして新しい缶を開けてくれたの?」

 

アシュリンが問いかけると、垣根は真守の隣に座りながら説明する。

 

「源白が使う分だけ小分けにして保存袋で保存してんだ。それでいつでも新鮮な紅茶が飲める」

 

「そうなの。……そういえば深城ちゃんはどうしたの? 今日はどこかにお出かけ?」

 

アシュリンは小さい口でくぴっと紅茶を飲んだ真守に問いかける。

真守は小さく喉を鳴らして飲むと、大切な少女のことを考える。

 

「深城はいまスーパーに行ってる。……実は今日、バーベキューしてたんだけど。色々あって私と垣根は先に帰ってきたんだ」

 

そう。本来の予定ならば、楽しくバーベキューができたはずだったのだ。

だがバーベキューの最中、上里翔流の理想送り(ワールドリジェクター)が奪われてしまった。

そして真守はこの世界が単一の法則で成り立っていることを知った。しかもマクレーン家と統括理事長が知り合いだったことも。色々知った。

真守はそのことについて考えながら、アシュリンを見た。

 

「伯母さま。色々聞きたいことがあるんだけど……その前に。伯母さまたちは何がきっかけで学園都市に来て、ついでに私の誕生日を祝おうと思ったんだ?」

 

「あら。ついでではないわよ。どうせ本国を出なければならないのなら、真守ちゃんの誕生日を祝おうって話になったの。一族総出で。五三名。全員でね」

 

「い、一族総出……?!」

 

真守は思わず素っ頓狂な声を上げる。

てっきり真守はアシュリンがマクレーン家の当主である祖父と、二人で学園都市に来ているのだと思っていた。

というかそれしかありえないと思っていた。だからまさか一族総出で学園都市に来ているなんて思わなかったのだ。

 

「ど、どうして一族総出で英国を出なくちゃならなくなったんだ……?! 本国で何かあったのか?!」

 

「別にはっきり何かあったわけではないのよ。……ちょっと最大主教(アークビショップ)の動きが良くなくてね」

 

最大主教(アークビショップ)?」

 

真守はきょとっと目を見開いて、首を傾げる。

垣根は紅茶を一口飲んでから、アシュリンを見た。

 

最大主教(アークビショップ)ってのはイギリス清教のトップ、ローラ=スチュアートの事か?」

 

「ええ。ローラの動きが不穏だったのよ。わたくしたちを利用しようとする動きを見せていたの。それと共に国内の不安定さと不穏さを感じたから、ケルトの異界がある森に籠るふりをしたの。そして秘密裏に学園都市に来たのよ」

 

「伯母さまたちを利用……?!」

 

真守はイギリス清教のトップが、自分の身内を傷つけようとしている事に驚く。

アシュリンは驚く真守を見て、そして肩を小さくすくめた。

 

「魔術サイドにおいて、わたくしたちは一番科学サイドに近い存在だわ。もちろん、学園都市の中枢に据えられた守ちゃんが身内にいるから」

 

アシュリンは真守の黒髪に触れて一筋掬いながら、目を細める。

 

「ローラのバカは統括理事長と学園都市にご執心なの。だからわたくしたちのことをこそこそ嗅ぎまわっていた。わたくしたちを利用して真守ちゃんを、ひいては学園都市に圧を掛けようとしていたのよ。だから母国を離れたのよ。一族総出でね」

 

垣根はアシュリンの含みのある言い方に目を細め、口を開いた。

 

「科学サイドである学園都市に最大主教(アークビショップ)がご執心なのは分かる。()()()()()()()()()を手に入れたいって思う気持ちもな。でも統括理事長にもご執心だって言えるのは何か理由があるんだよな?」

 

アシュリンは鋭い垣根の様子ににっこり微笑む。

 

「学園都市統括理事長、アレイスター=クロウリー。真守ちゃんたちも知っていると思うけど、彼はイギリスが誇る稀代の魔術師、アレイスター=クロウリーその人だから。ローラは今でもイギリス清教内部に生死不明の彼専門の部署を構えているし。執着しているのは明らかよ」

 

「……伯母さまは統括理事長のアレイスターが魔術師だって気づいてたんだな」

 

統括理事長アレイスター=クロウリー。彼は稀代の魔術師アレイスター=クロウリーの名前にあやかっているのだと考えられていた。

何故ならこの世界に残っている彼の残滓は、どう頑張っても統括理事長アレイスターに通じないようになっているからだ。

統括理事長と稀代の魔術師が共通人物である証拠がない。

だがアシュリンは分かっていたのだ。そしてマクレーン家も、おそらく統括理事長がアレイスター=クロウリーその人なのだと理解している。

 

「わたくしは彼に直接会った時から、統括理事長が稀代の魔術師だと分かっていたわ」

 

「アレイスターに直接会ったのかよ?!」

 

垣根は驚きの声を上げる。

『窓のないビル』。あの居城にいるアレイスターに会うのはそう簡単な事ではない。

案内人と呼ばれる空間移動系能力者。彼らがいなければアレイスターには会えないし、そもそも魔術サイドの人間を簡単に入れるとは考えられない。

 

「……エルダー=マクレーン」

 

真守は夢で見た女性のことを思い出しながら、その名を口にする。

 

「私のご先祖さまはアレイスターと親しかったんだな。だからアレイスターはマクレーン家のことをそれなりに信用していたんだ。学園都市の中枢にがっつり食い込んでいる私の話をするために、伯母さまを直接『窓のないビル』に呼んだ」

 

「ええ、そうね。そしておそらく、わたくしたちの在り方がエルダー様の時から変わっていないか確認するためにも、わたくしを呼んだのではないのかしら」

 

マクレーン家の在り方が変わっていなければ、マクレーン家は自分の敵にならない。

アレイスターはそう考えて、アシュリンと直接会うことにしたのだろう。

アシュリンはため息を吐くと、紅茶を一口飲んでから視線を鋭くする。

そして忌々しそうに、舌打ちでもしそうな勢いを見せる。

 

「真守ちゃんのことをわたくしたちにひた隠しにしてたから、統括理事長様のことを一発殴ってやろうかと思ったけど。培養槽に逆さになってぷかぷか浮かんでたからできなかったわ。残念ね」

 

「あ、あぐれっしぶ過ぎるよ伯母さま……っ」

 

真守は冗談なのか本気なのか分からないアシュリンの言葉を聞いて、思わずたじろぐ。

アシュリンは本気で動揺している真守が愛らしくて、くすっと笑う。

 

「稀代の魔術師、アレイスター=クロウリー。真守ちゃんが知った通り、彼はわたくしたちのご先祖さまと繋がりがあったのよ」

 

「……エルダー=マクレーンさま。その方はアレイスターの友達だったのか?」

 

エルダー=マクレーン。

高貴な猫のような出で立ち。エメラルドグリーンの蠱惑的な瞳。

どこからどう見ても真守の血縁者だと分かるほどに、顔つきが似ている女性。

 

「エルダー=マクレーン様は真守ちゃんのひいひいお祖母さまよ。現当主のお祖母さまに当たるわ」

 

アレイスターと知り合った時はまだ令嬢だった彼女は、結婚してマクレーン家の現当主であるランドン=マクレーンの母を産んだ。

つまり、真守とアシュリンはエルダー=マクレーンの直系なのだ。

 

「統括理事長さま──あの人間の事は、本当に一発殴ってやりたかったわ」

 

アシュリンは真守の頬に手を添えて、悲しそうに目を細めた。

 

「だって真守ちゃんを見ればエルダー様の直系だってすぐに分かるもの。……わたくしたちは学園都市に捨てられた真守ちゃんを必死に探した。本当に必死に探したのよ。……それなのに、あの人間は真守ちゃんの存在をわたくしたちからひた隠しにした」

 

アシュリンの寂しそうな声を聴いて、真守は悲しくなってしまう。

アシュリンは双子の妹が遺した真守をずっと探していた。

きっと置き去り(チャイルドエラー)の施設を片っ端から虱潰しにして、本当に探していたのだろう。

だが真守は見つからなかった。当然だ。

朝槻真守は学園都市の中枢に食い込むほどに素質があった。

そんな少女を、アレイスターがみすみす手放すことなんてできない。

 

「本気で統括理事長様を呪い殺してやろうかと思ったわ。でも真守ちゃんの幸せが一番大事だから、仕方なくわたくしたちはすべてを水に流したのよ。──でも。一回死ねばいいと思うわ、あの人間」

 

「お、伯母さま、目が据わってる……」

 

真守は殺意を密かに溜めているアシュリンを見て、怖気づいてしまう。

アシュリンは柔らかく微笑んで、真守を見つめた。

 

「でもあの人間の気持ちも分かってしまうの。許せないけど」

 

ずっと会いたかった、ずっと大切にしたかった存在である、自身の双子の妹の娘。朝槻真守。

アシュリンは真守の頭を撫でて、独り言ちるように呟く。

 

「学園都市の利益になるならば、奪われるわけにはいかない。一度捨てて偶然拾ったものを横からかすめ取るなんて真似、許せない。そう考えるのが妥当よ」

 

アシュリンは人間、アレイスター=クロウリーのことを思って目を細める。

 

「『価値あるモノは価値が分かる者へ。真価を発揮できる場所に我々が導く』……その信条を掲げたのは、他でもないエルダー=マクレーン様なのだから。分かってしまうわ」

 

エルダー=マクレーン。アレイスター=クロウリーの友人的存在。

彼女は価値を大事にしていたのだ。

そしてその価値がきちんと発揮できる場所や資金を提供していた。

マクレーン家が古物商を営んでいるのも、エルダー=マクレーンが始めた事業だからだ。

彼女は経営の才があった。先見の明があった。

そして彼女の思想は受け継ぐべきものだとして、今日のマクレーン家へと繋がっている。

 

「……最近、少しおかしいと思っていたんだ」

 

真守は人間、アレイスター=クロウリーのことを考える。

 

「私が利用できると言っても、アレイスターは私のことを考慮しすぎだって。……扱うのに注意が必要な私を、どうにかして扱おうとしている。そんな気がしていた」

 

朝槻真守は利用できる。

だが真守は安全に利用するならばとても注意が必要な存在だった。

一歩間違えれば、朝槻真守は人間に敵対する神さまとなってしまう可能性があった。

 

だから最近、真守は少し疑問に思っていた。

自分は確かに不当な扱いを受けていた。

だがいつだって、朝槻真守はその存在が敵にならないようにアレイスターに配慮されていた。

 

「私がエルダーさまの血族だから……アレイスターはそれなりに私に温情を懸けているんだと思う」

 

「現当主がエルダーさまから直接聞いた話があるの」

 

アシュリンは真守の存在が明るみになった時、ランドンが口にしていたことを言及する。

 

「『黄金』のとある方。その方から、エルダーさまは予言を受けたらしいのよ」

 

「予言?」

 

真守と垣根は大きく目を見開く。

予言。そんな話は、夢でアレイスターの独白のようなもので知っている。

 

「いずれマクレーンには完全なる精神に完全なる肉体を持った、『永遠』を司る真なる人が産まれるだろう」

 

その予言は、一発で朝槻真守だと分かるものだ。

垣根と真守は黙って聞く。そんな中、アシュリンは続ける。

 

「真なる人。それはカバラ的に言うと、神と同等でもあるのよ。すると一神教である十字教は真なる人を許すことができない。真守ちゃんが産まれてその力を振るいだしたら、その時点で十字教は真守ちゃんを抹殺しようと動くでしょうね」

 

ある意味、真守は科学サイドである学園都市にいることで守られていたことになる。

科学サイドは魔術サイドに手が出せないし、そもそも『計画(プラン)』に使えるほど有用性がある存在ならば、守らない手はない。

 

「あなたのひいひいお祖母さまは先進的な方だったわ。そして自由な方だった。だから魔術結社やイギリス清教にも色々と出入りしていたのよ。アレイスター=クロウリーが所属していた『黄金』にもね」

 

アシュリンは感慨深いように呟く。

そんな中、真守が口を開いた。

 

「魔術の予言というものは……結構確かなんだな」

 

「そうね。彼はタロット占いが得意だったそうだから。確かな腕だったそうよ」

 

真守はアシュリンの伝え聞いた話を聞いて首を傾げる。

 

「彼? 予言したのは男のひとなのか?」

 

「アラン=ベネット。『黄金』に所属していた魔術師よ。現当主が言うには、エルダーさまは結構彼を気に掛けていたそうよ。エルダーさまは魔術師だけじゃなくて、医療や政治、芸術方面、あらゆる分野を見ていてね。あの方が目を掛けた人々は全員が大成したそうよ」

 

真守はアシュリンの説明を聞いて、思わず無言になる。

数奇な運命だ。

それ以外に表現できない程に、自分はあらゆる者に望まれた。

そして守られてここまで生きてきて、自らの義務を果たしている。

 

「本当のところ、どうなんだろう」

 

本当のところ、アレイスター=クロウリーは何を考えているのだろう。

魔術を憎み、魔術の殲滅を望んでいるのは理解できる。

だがそれ以上のことは分からない。

やはり、向き合わなければならない。

真守はそう決意して、目を細める。

そんな真守を見てアシュリンは柔らかく微笑んでいた。

それを、垣根帝督は真守の力になるために状況を冷静に分析していた。

 

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