とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第九○話、投稿します。


第九〇話:〈情報整理〉と至上の幸福

上里翔流に復讐するべく、エレメントで学園都市を蹂躙する木原唯一。

その木原唯一から上里翔流を守りたい上里勢力の一人、府蘭。

真守は府蘭へ、上里を守るために木原唯一へと近付くために情報を整理する。

 

「現在、大熱波によってあらゆるインフラ設備は崩壊した。裏で暗躍していた人間が頑張って張った情報網もぜーんぶ吹っ飛んだ。その状況で木原唯一は上里翔流に復讐するために情報を収集しなければならない。どうすれば良いモノか」

 

「……手元の技術で情報網を構築するのですね?」

 

真守は府蘭の問いかけのような答えに頷く。

インフラ設備が壊滅している現在、誰も彼もが既存の手法での情報収集は不可能となった。

だがなんとしても木原唯一は上里翔流に復讐するために、情報を集めなければならない。

復讐。そのために彼女は手元の技術──還元生命で情報収集を行っているのだ。

 

「木原唯一は還元生命と呼ばれる技術でエレメントのガワを生み出して、魂に相当するコアに魔術の四大元素を埋め込んで動かしている。アイツの手の中には万能とはかけ離れながらも、柔軟な技術がある。それを情報収集に使わない手はありえない」

 

エレメントを形作っている還元生命と呼ばれる技術。

それは分化の可能性を秘めている万能細胞とは真逆の技術だ。

 

あらゆる動植物の死骸は、長い時間を掛けて石油となる。

だがもし石油から動植物へと分化できたらどうなるか? というアプローチで生み出されたのが還元生命であり、エレメントなのだ。

 

だが還元生命だけでは生命や魂を再現できなかった。

そのため木原唯一は魔術である四大属性を頼った。結果、『火』『水』『土』『風』と言った四属性の力を持つエレメントが辺りを闊歩することとなったのだ。

 

「つまりあの女はどこかで絶対に、還元生命で造った()()を使っているということです? 情報収集のために無線だけですべてをこなすことは事実上不可能です」

 

真守は府蘭の推察を聞いて微笑を浮かべる。

 

「話が早い。流石UFO少女を自称しているだけあるな」

 

木原唯一の操るエレメントはその体長の大きさでクラス一からクラス六まで存在している。

だが実は、クラス一よりも小さなクラスゼロと呼ぶべき米粒サイズのエレメントが、密かに存在しているのだ。

 

木原唯一はそのクラスゼロに該当するエレメントを使って、情報収集をしている。

まず、木原唯一は米粒サイズのクラスゼロに情報を収集させ、その情報を超音波に変換させる。

だが超音波である関係上、ごく限られた距離でしか届かせることができない。

 

そのため木原唯一は学園都市のあちこちに還元生命によって、中継地点であるアンテナのような透明の小さな結晶の柱を立てている。

中継基地である結晶の柱の根元には、エレメントの神経網を利用した有線情報網が張り巡らされている。クラスゼロによって超音波に変換された情報は結晶の柱に集められ、地下に埋め込まれた有線を伝って木原唯一のもとに届けられるのだ。

 

有線を辿って行けば、必ず木原唯一の下に辿り着く。

その情報を手にした上里勢力の府蘭は小さく頷く。

 

「……成程。その方向で、私たちは木原唯一を調べてみるです」

 

「うん。お前たちが木原唯一の居場所を突き止める頃には、私の学園都市の掌握も安定しているころだからな。その時にまた話をしよう。それまで上里勢力が大暴れしないように取りまとめ頑張ってな」

 

「……そこまで計算しているのですか。やっぱりあなたは侮れないのです」

 

全てを掌握している朝槻真守。そんな真守をじっと見つめて、府蘭は眉を少しひそめる。

真守はちょっと警戒している府蘭に笑いかける。

 

「大丈夫だ。学園都市が変われば木原唯一のように上里にちょっかいを掛けるヤツもいなくなる。そしたら平和に暮らせる」

 

「……個人的には学園都市がどうなろうと知りません。ですが上里ちゃんが幸せに生きられるのであれば力を貸しますです」

 

府蘭は自分の願いを口にすると、一つ頷く。

 

「では上里ちゃんには私からうまく話をしておくです。……それと、去鳴がお礼を伝えてくれと言っていましたです」

 

真守は府蘭の口から去鳴の名前が出て、小さく頷く。

 

「良かった。こっちに帰って来てないし、僧正やネフテュスはまだ上里と一緒にいるんだよな」

 

理想送り(ワールドリジェクター)は魔神たちの願いが集積してできた力だ。

そんな理想送りを与えられた上里翔流は、魔神を憎悪していた。

理想送りのせいで、少女たちが歪んでしまったと考えていたからだ。

 

女の子たちを惹き付ける理想送り(ワールドリジェクター)が右手に宿っているからこそ、何のとりえもない、平凡な上里翔流に少女たちは惹かれる。

それは間違いだと、真守と上条は何度も上里に伝えていた。だが一度思い込んで、魔神たちへの復讐に走った上里翔流は止まれなかった。

 

そして紆余曲折あって、上里翔流は理想送り(ワールドリジェクター)を木原唯一に奪われた。

上里翔流の理論で行けば、理想送りを手にしている木原唯一に女の子たちが惹かれるはずだった。

だがそうはならなかった。

 

上里翔流は理想送り(ワールドリジェクター)を失ったことで、女の子たちが理想送りによって自身に惹かれているわけではないのだと気が付いたのだ。

 

真守や上条当麻の言う通り、理想送り(ワールドリジェクター)とはただのきっかけに過ぎない。

女の子たちはありのままの上里翔流が好きだから、上里の周りに集っているのだ。

 

理想送り(ワールドリジェクター)を失ったことで冷静になれた上里翔流。彼は初めて魔神たちと冷静に話ができるようになった。だから魔神である僧正とネフテュスは上里翔流に会いに行ったのだ。

 

「あの魔神共は上里ちゃんが気に入ったようです。魔神はお人形みたいなので害がありませんし、私も上里ちゃんが良い方向に変わってくれて良かったと思っていますです」

 

かつて。魔神オティヌスによって世界が終わり、心が折れた上条当麻。

彼を立ち上がらせることができたのは、すぐに救いの手を伸ばす朝槻真守ではなく、ミサカネットワークの『総体』だった。

それと同じことを、魔神も上里翔流にしたのだ。

 

「うん、とても良いと思うぞ。魔神たちがきっかけで上里が前に進めるのならば、私もそれが一番だと思う」

 

去鳴が真守にお礼を言ってくれと府蘭に言ったのは、真守が上里の目を覚まさせるために、魔神たちを送り出した張本人だからだ。

魔神たちのおかげで、上里翔流は前を向くことができた。

未だに大切なお兄ちゃんを中心としたハーレムができているのは、去鳴の望むところではない。

それでも上里翔流が腑抜けから脱して前を向いて歩き出したことが、去鳴にとってとても良いことなのだ。

 

「では伝えるべきことは伝えましたのです。それでは」

 

府蘭は荷物を持つと、そのまま部屋を出て行く。

垣根は最後にぺこっとお辞儀をした府蘭を見つめながら辟易する。

 

「ったく。クソバカハーレム野郎が取りまき連中と暴走するせいで、ここ数日はずっととばっちりくらってたからな。これで大人しくすりゃいいけど」

 

「ふふ。確かにちょっと大変だったケド、収穫もあったぞ。学園都市を変えるために、大切な一歩を踏み出すことができたのだから」

 

この学園都市の王であるアレイスター=クロウリーは、あらゆるアクシデントを利用して『計画(プラン)』を進めている。

この街の王がアクシデントを利用して突き進むなら、学園都市で生まれた真守たちがアクシデントを利用して学園都市を良い方向へ変えても悪いことではないのだ。

 

「学園都市を変える。その一歩が上里勢力の引き起こした大熱波で踏み出せたというのは、本当に喜ばしいことだ。それに木原唯一を排除すれば、上条を目の敵にしなくなった上里たちも安心して過ごせるだろ。万事オッケーだ」

 

「……そうだな。お前が良いって言うなら俺もそれでいい」

 

垣根は笑うと、真守の頭を優しく撫でる。

真守はふにゃっと笑うと、幸せそうに目を細めた。

 

「垣根に頭撫でてもらうの好き」

 

「そうか。これからもたくさん撫でてやる」

 

垣根が笑っていると、コンコンコンッと会議室の自動扉が叩かれる。

 

「どうぞ」

 

真守が声を掛けると、誉望が入ってきた。

 

「垣根さん、仲介人がこの『施設(サナトリウム)』に来てます」

 

「あ? カブトムシ(端末)捕まえようとしてコンタクト取るなら来いっつったが、本当に来たのかよ」

 

垣根は真守のことをむぎゅっと抱きしめながら、悪態を吐く。

エレメント襲来に伴う、大熱波。

その事態に大人達は対処できていない。学生たちの中には、真守に学園都市の統治を任せた方が良いと考えるものが出てくるほどだ。それほどに大人達は、現状に手をこまねいている。

そのため垣根帝督は、自分の保身のために真守に近づく大人達の相手をしているのだ。

 

「ッチ。面倒くせえが真守のためだ。軽く嘲笑って送り返してやる」

 

垣根は悪態を吐きながらも立ち上がる。

そんな垣根とすれ違うように誉望は真守へと近付き、タブレット端末を差し出した。

 

心理定規(メジャーハート)さんからの報告書とレポートを持って来ました。大人や学校に所属していない人々専用の補給所でトラブルがあったようですが、『(しるべ)』の担当官が解決したそうです」

 

「そうか、ありがとう。心理定規(メジャーハート)にはとても助かってる。大変だけど重要なことを担ってもらってるからな」

 

「朝槻さんと垣根さんのおかげで新たな制御領域の拡大(クリアランス)の取得ができましたからね。意外と楽しそうに大衆心理を制御しています」

 

垣根帝督率いる『スクール』の一員、心理定規(メジャーハート)

心理定規は人と人の心の距離を操ることができる能力者だ。そして彼女の能力は視覚に依存している。そのため対面した人の心の距離を変えて、尋問するなど役立てていた。

 

心理定規(メジャーハート)が能力を使うために依存している視覚。

それを真守が補強し、垣根が真守の指示で補強できる装置を未元物質(ダークマター)で造ることによって、彼女は大衆心理まで操ることができるようになったのだ。

 

現在、学園都市では『学会』や『能力』、『芸能』など、様々な主義主張を持つ集団が生まれて行動している。

その集団ごとの大衆心理の距離を測り、各集団がそれぞれで衝突しないように心理定規(メジャーハート)は促しているのだ。

 

真守たちが大衆心理を操っている。それが公になったら面倒になるが、大衆心理自体には手を加えていない。つまり学生たちの思想は守られているという事であり、この状態を維持すれば学生たちが思想の距離を衝突しないように調整されていると気づくことはいない。

 

「誉望も色々と細かい事やってくれてありがとな」

 

「いえ。『スクール』でやっていた事の延長線みたいなものなので、特に難しくありません」

 

誉望は真守にお礼を告げられて、垣根の反応が気になってどきどきしながらも応える。

垣根は面白くなさそうに眉を動かしたが、特に何か言いたくなったわけではないので真守を見る。

 

「真守、俺が離れるからってあんまり無理するなよ」

 

「大丈夫だぞ、絶対能力者(レベル6)を甘く見ないでほしい」

 

真守は笑うと、サンドイッチを食べていた手を拭く。

そしてタブレット端末を誉望から受け取って、カブトムシとトンボを呼ぶ。

 

「垣根には面倒な相手もしてもらって、とても助かってる。ありがとう」

 

「薄汚いヤツらの相手をお前にさせるわけにいかねえだろ。任せとけ」

 

垣根はタブレット端末を手にした真守の頭をぽんぽんっと撫でる。

そして真守の頬にキスをしてから離れた。

 

「ふふっ」

 

真守は垣根がキスしてくれたのが嬉しくて、ふにゃっと笑う。

垣根はそんな真守を見て笑うと、誉望と共に部屋から出て行く。

 

「よし。私も頑張るぞっ」

 

真守は気合を入れると、膝に乗ったカブトムシとトンボに手を伸ばす。

上条当麻に言ったように、朝槻真守は一人で学園都市の学生たちを守っているのではない。

垣根帝督に帝兵さんと帝察さん。そして『スクール』の面々。

真守のことを神として掲げる『(しるべ)』の子たち。

様々な人に支えられているからこそ、真守は頑張れるのだ。

多くの人が助けてくれる。これほどうれしいことはない。

 

「みんながいるから頑張れるんだ。みんながいるから頑張りたいと思うんだ」

 

真守はカブトムシとトンボのの頭を交互に撫でて微笑みながら、本日の業務に取り掛かった。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

深夜。もうすぐ一二時を迎える時。

朝槻真守は全ての業務を終えて、寝所にやってきていた。

キングサイズの天蓋付きのベッド。その上に寝転ぶ真守はスクール水着ではなく、薄着のパジャマを着ている。

もう寝る時間。そのためいつも猫耳ヘアにセットしている真守の髪は下ろしてあり、風呂に入ったため髪はしっとりと濡れている。

 

「あ、垣根。やっと来た」

 

真守は寝所の扉が開いて、ごろりと寝転がったままベッドの上から垣根を見上げた。

 

「こんな時間までどこ行ってたんだ?」

 

真守はいそいそとベッドの上で動くとむくりと起き上がって、同じく寝間着姿の垣根を見上げる。

垣根は真守のことを見つめて、柔らかく微笑む。

 

「ちょっとな。色々やることがあった」

 

「ふふ。遅くまでお疲れさまだ」

 

真守は笑うと、タオルケットを掴んでぽんぽんっとベッドを叩く。

 

「早くこっちに来て、垣根」

 

垣根は笑うと、真守に近づいて手を伸ばす。

 

「ん」

 

真守は一つ唸ると、すりすりと垣根の手にすり寄った。

 

「どうした、垣根」

 

真守はにこっと微笑む。垣根はベッドに座ると、真守のことを抱きしめる。

 

「俺はお前のことが大事だ。お前が幸せなら何でもいい」

 

「そうだな。いつも垣根はそう言ってる。垣根の幸せは私が幸せでいるコトだって」

 

真守は垣根に優しく抱きしめられたまま、にこにことする。

 

「私も垣根の幸せが大事だ。垣根が幸せだと私も嬉しい」

 

ここに来るまで、互いに色々あった。

垣根帝督は学園都市に星の数ほどある悲劇に遭って、大切な人を失くした。

神様としての素質を兼ねそろえて生まれた朝槻真守も、自分に大切なことを教えてくれた源白深城を完全には助けられなかった。

色々と傷を背負って、それでも自らの望みを叶えるために進み続けてきた。

その結果、朝槻真守と垣根帝督は出会ったのだ。

運命的に。そして、必然的に。二人は邂逅した。

 

「真守。お前がいたから俺は幸せになれるんだ。……ありがとな、真守」

 

垣根は真守の体を離す。そして柔らかく笑った。

 

 

「誕生日、おめでとう」

 

 

時刻は深夜一二時。つまり日にちを跨ぐ時間。

日付が変わった今日は一二月八日になった。それはつまり、朝槻真守の誕生日なのだ。

朝槻真守が初めてきちんとした形で迎える誕生日。

 

「ありがとう、かきねっ」

 

真守は泣きそうになりながら、柔らかく微笑んだ。

垣根はそんな真守のことを抱きしめる。

 

「……真守。生まれてきてくれて、ありがとう」

 

「っありがとう、本当にありがとね垣根」

 

真守は垣根の腕の中で、にこにこと微笑む。

すると。真守の寝所に繋がる自動扉が開け放たれた。

 

「真守ちゃんっ!!」

 

声を上げたのは源白深城だ。そして彼女のそばにはアシュリンや林檎、白い少年と黒髪の少年や緋鷹がいる。

 

「おたんじょーびおめでとぉ!!」

 

深城はその声と共に、手に持っていたクラッカーを鳴らした。

ぱーんっというクラッカーの音と共に、ひらひらとテープが舞い踊る。

真守はその様子に、大きく目を見開く。

 

「真守ちゃーんっ!!」

 

深城は真守に突進する。

そして垣根に少し避けてもらうと、真守のことを思いきり抱き締めた。

 

「むぐっ」

 

真守は小さく呻く。そんな真守に、深城はすりすりと頬を寄せる。

 

「おたんじょーびおめでとぉ、真守ちゃんっ」

 

「ありがと……っ」

 

真守は息が詰まりそうになりながらも、深城にお礼を告げる。

そんな真守と深城に、アシュリンが近付いてきた。

アシュリンも学園都市の学生たちと変わらずに水着を着ているが、今は薄着のパジャマだ。

アシュリンは柔らかく微笑むと、真守から離れた深城と交代して真守の事を抱きしめた。

 

「真守ちゃん。お誕生日おめでとう。マクレーンを代表してわたくしが来たわ」

 

「……ありがとう、伯母さまっ」

 

真守はアシュリンに抱きしめられたまま、林檎と白い少年、黒髪の少年から花束を貰う。

 

「まだ日付が変わったばっかりなのに、こんなに幸せで良いのかな……っ」

 

真守は大切な人たちに囲まれて誕生日を祝われてしまい、思わず困惑してしまう。

そんな真守に近づいたのは、『(しるべ)』の代表である車椅子の八乙女緋鷹だった。

 

「幸せでもいいのよ、真守さん」

 

「緋鷹……ありがとうっ」

 

真守は花束を抱きしめたまま、ふにゃっと笑う。

やいのやいのと盛り上がる深城たち。

だが既に深夜なのだ。そのため深城は真守のことを最後にギュッと抱きしめる。

 

「明日はパーティーだよ、パーティー。たっくさん人呼んで、たっくさんお祝いしてあげるからねっ真守ちゃん!」

 

「ふふ。エレメントが襲来して大熱波が起こってるのに。パーティーとはな」

 

真守は異常事態なのにパーティーを開くのはどうかと思って、くすくすと笑う。

そんな真守を見て、深城は気合を入れて決意を込めた瞳で真守を見た。

 

「どんな状態でも真守ちゃんの誕生日パーティーは大事なの!! 絶対にお祝いするんだから!」

 

「ありがとう、楽しみにしてる」

 

真守は自分のことを抱きしめてくる、最愛の少女に微笑む。

深城たちが去った後。垣根は真守の頬に手を沿える。

そしてそっとキスをした。

 

「……ふふ。一六歳になって初めてのちゅーだ」

 

真守は垣根とキスができて、とろんっとした笑みを見せる。

 

「一足先に結婚できる年齢になっちまったな、真守」

 

垣根は真守のことを優しく抱きしめる。

この世で一番安心できる男の子の腕の中。

真守は垣根の胸板にすり寄りながら、にまにまと笑う。

 

「垣根のお嫁さんにしてもらうからな。待ってる」

 

「当たり前だ。世界を救っちまうお前を受け止められるのは俺しかいねえだろ」

 

垣根は笑って、真守の頬に手を沿える。

一六年前、神様としての素質を兼ねそろえて生まれてきた、朝槻真守。

垣根帝督にとって、誰よりも貴い命。

世界を救うどころか、この少女には世界を創り出す能力すらある。

そんな少女のことを、垣根は優しく抱きしめる。

誰よりも愛おしい少女。垣根は真守の命の温かさを感じながら、幸福を感じていた。

 

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