とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一〇二話、投稿します。
次は六月一二日月曜日です。


第一〇二話:〈最凶最悪〉にして最愛の敵

統括理事長、アレイスター=クロウリー。

彼に立ち向かうために、上条当麻たちはただひたすらに『窓のないビル』を昇っていた。

その最中。上条当麻は、彼は何度も何度もアレイスター=クロウリーの過去の世界へ落ちていた。

 

『あの人間は自らで完璧に再現したトラウマを乗り越える気がない。トラウマと失敗すらも糧にして、アレイスターは進み続ける。永遠の友であるワタシがそのように促した。だからこそワタシという存在は、アレのトラウマと安寧を一手に引き受けることができる』

 

アレイスターは自分の箱庭である『窓のないビル』を制御できていない。

そのせいで、上条当麻は現実と幻想を行き来していた。

朝槻真守のように。上条当麻は、別口でアレイスターの過去を追体験していた。

 

「だからさ、朝槻のご先祖様がそこら辺にいるんだって」

 

上条当麻は、前を歩く垣根たちへと声を掛ける。

だが現実と幻を行き来している上条当麻は、いま自分が現実にいるのか定かではない。

そのため、上条はこの言葉が本当に垣根たちに届いているのか分からない。

 

「エルダー=マクレーンって人。なんか女教師がツインテールしてるみたいな、良い年のお姉さんが猫耳と尻尾付けてそこら辺にぷかぷか浮いてるんだって!!」

 

『ふふ。オマエのその声は果たして現実か幻か。どうだろうな?』

 

上条当麻の周りに浮いているエルダー=マクレーンはくすくすと笑う。

絹を染めたような輝く銀髪。あどけない顔つきに、エメラルドグリーンの大きな瞳。

西洋喪服を模した銀のドレス。その雰囲気に良く似合う、気まぐれに揺れる猫耳と尻尾。

 

本当に真守にそっくりな女性だ。

正確に言えば、とある一点を除いて。エルダー=マクレーンは真守にそっくりだった。

ちなみにそれは、髪の色ではない。

 

『おいキサマ。今ワタシの胸を見てため息をつかなかったか?』

 

エルダー=マクレーンは、西洋喪服を模した銀のドレスに身を包んでいる。

そのため、身体のラインが丸見えなのだ。

だから分かる。エルダー=マクレーンの胸がつつましいことが。

 

いわゆる小さいお胸。ちっぱいである。

 

朝槻真守はアイドル体型に相応しい、ふくよかな胸を持っている。

今の上条当麻は忘れてしまったが、真守の胸は鷲掴みにしてもあまりある丁度良い大きさだ。

エルダー=マクレーンと朝槻真守。その二人の胸の大きさは、雲泥の差があった。

 

「いや~やっぱり子孫の方が優秀になるんだぐべっ!!」

 

上条当麻はエルダーが持っていた扇子で、パーンッと頬を殴られて悲鳴を上げる。

 

『真守は遺伝的に大きくならないのに体内エネルギーをイジッて成長させたんだ! あっちが言わばニセ!! ニセなんだからなっ!!』

 

実はマクレーン家、遺伝的に胸が大きくなる方ではない。

エルダーもアシュリンも、亡くなった真守の母も、ちっぱいなのだ。

エルダーは遺伝的にあまり大きくならないという純然たるその事実に憤り、八つ当たりと言わんばかりに上条の頭をバシバシと叩く。

上条はそれ相応の衝撃を頭に叩きつけられて、必死に自分の頭を守りながら人差し指を立てる。

 

「学園都市って科学が発達してるだろ? 結構そういうトコあるから、シリコンとか入れてない限り偽物とか本物とかないんだよなあ」

 

『ええいっ何故そこら辺については思春期なのに寛容なんだ、このバカタレっ!!』

 

女性として子孫に負けたくない部分で負けているエルダー=マクレーンはそっぽを向いてふんっと鼻を鳴らす。

かわいい。流石真守のご先祖様である。

 

「朝槻は伯母さんにもよく似てるけど、ご先祖様にもよく似てるんだなあ」

 

『ふふん、愛らしくて良いだろう』

 

平たい胸を張るエルダー。

そんなエルダーに癒されながら、上条当麻は『窓のないビル』をどんどんと進む。

キャットウォーク。梯子。人工重力によるお星さまやお月さま。

それらを越えながら、上条当麻はアレイスター=クロウリーの半生を見た。

 

『ブライスロードの戦いを制し、その最期にヤツは自分自身にすら牙を向けた。そこまでやってさえ、アイツは結局リリスを襲った偶発的な死、ありふれた病名を覆す事はできなかった』

 

アレイスター=クロウリーは魔術を恨み、憎んだ。

そして稀代の魔術師と呼ばれた彼は、魔術史上最大の敵となった。

魔術の総本山であるイギリスに混乱を及ぼし、その結果日本へとたどり着いた。

そして学園都市という枠組みを作った。

『科学が立証したことが本当に正しい』という科学崇拝を生み出した。

 

アレイスター=クロウリーの憎悪は、世界を二つに分けたのだ。

魔術サイド、科学サイドという言葉を生み出した。

それでも『黄金』にかけた呪いによって、アレイスターはやることなすこと『失敗』する。

裏の裏を読んでも裏目に出る。それでも進む以外、アレイスターは選ばなかった。

 

世界の全てに足を引っ張られても、絶対にその歩みを止めない。

魔術を殲滅する。自分の愛するものをことごとく不幸にする、憎き存在を野放しにしておけない。

それは、永遠の友と約束を交わしたからでもある。

妨害されるのが前提、失敗するのが当然。

アクシデントでも失敗をしてもただただそれを糧にして、アレイスターは進んできた。

 

『アイツは全ての位相を破壊するつもりだ。オマエや真守を使ってな』

 

ケルトの民がこんなことを言うのも嘲笑モノだがな、とエルダー=マクレーンは呟く。

 

『全ての男女は星である。個々の人があるべき振る舞いを行う場合に限り、世界に不要なものなどない。──それはつまり、歯車が一つでも欠けてしまえばすべてがおかしくなってしまうということだ』

 

エルダー=マクレーンはそう前提として、柔らかく問いかけた。

 

『それならば運命という歯車が一つ損なってしまえば、世界は一体どうなるのだろうな?』

 

世界の根幹に繋がっている、運命。アレイスター=クロウリーが滅ぼそうとしているもの。

それを滅ぼした時、果たして世界は一体どうなるのか。

運命を殲滅した時、本当の意味で何が起こるのか。

それはやってみなければ、分からない。

 

「──やっぱり、そう来たか」

 

その言葉は、現実で響いたものだった。

ハッと上条が顔を上げると、そこには垣根帝督が立っていた。

上条当麻たちは、螺旋階段を上っていた。

肩にオティヌスを乗せた上条の後ろにはインデックスがいる。その後ろには一方通行(アクセラレータ)がいて、殿(しんがり)を務めていた。

上条の前には垣根帝督がいた。そして垣根帝督の前には、朝槻真守がいる。

 

「真守がクソ人間の手の内にいるのは分かってるんだ。だから当然、警戒してた」

 

垣根が睨んでいるのはもちろん幻想の住人であるエルダー=マクレーンではない。

朝槻真守。垣根帝督にとって、この世で最も愛しい少女。

真守を見て、垣根は厳しい顔をしていた。

 

朝槻真守は『窓のないビル』の最上階に繋がる透明な螺旋階段の一番前を登っていた。

危険があったとしても、真守ならば全員を守れる。

だからこそ真守はずっと、先頭に立っていた。

 

螺旋階段の上を見ている真守の顔は、誰からも見えない。

そんな真守はゆっくりと振り返って。

無機質なエメラルドグリーンの瞳を真っ赤に燃え上がらせた。

 

途端に爆発して砕け散る、螺旋階段。

破壊が繰り出される中。

この世で最も凶悪な敵が降臨した。

 

 

 

──────…………。

 

 

上条当麻たちは、朝槻真守を先頭にして螺旋階段を上っていたはずだった。

だがいつの間にか、辺りが様変わりしていた。

どこまでも果てが無いように見えて、限りなく狭い空間だ。

その空間の主であるかのように。絶対能力者(レベル6)、朝槻真守は顕現していた。

 

純白と漆黒が互い違いとなった、六対一二枚の翼。

宇宙を閉じ込めたかのような輝きを持つ肢体。

その身に纏っているのは滑らかな結晶の折り重なりで造り上げた豪奢な純白のドレスだ。

 

蒼みがかった、身長よりも長いプラチナブロンドの髪。

その頭には蒼閃光(そうせんこう)でできた、六芒星を基盤にした幾何学模様の転輪が浮かんでいる。

そしてエメラルドグリーンの大きな瞳は、赤く染まりあがっていた。

ルビーのように燃える輝きを秘めたその瞳は、どこからどう見られても操られている。

 

「朝槻?!」

 

九月三〇日。前方のヴェントが学園都市を襲撃した時。

あの時に見た、絶対能力者(レベル6)朝槻真守の荘厳なる御姿(みすかた)

真守のその姿を見て上条が驚くと、垣根が口を開いた。

 

「……元々、真守は神サマってヤツになる素質を兼ねそろえて生まれてきた」

 

垣根帝督は直接的な戦闘力がないインデックスを守るために、三対六枚の翼を広げていた。

そして立ちはだかる最凶を前に、一人呟く。

 

「真守の素質を統括理事長が絶対能力者(レベル6)に加工したんだ。すべてを兼ねそろえてた真守は危険な存在だった。だからアレイスターは何が何でも、真守のことを利用できる存在に仕立て上げなくちゃならなかった」

 

朝槻真守には元々素質があった。

その素質のルーツを、垣根帝督は知らない。真守がケルトの民に望まれた存在であることは、先程真守も初めて知った真実だった。

だが垣根帝督は実情を知らなくとも、真守にはあまりある才能が秘められていると知っていた。

 

扱いによっては、全てを滅ぼす可能性さえ孕んだ朝槻真守。

救済の神になることも、終末をもたらす神になることもありえた。

アレイスター=クロウリーは真守が自らの『計画(プラン)』の敵にならないように加工した。

 

「あのクソ野郎はあらゆる手段で真守を操れるように手を加えた。何重にも枷を嵌めた。真守があの人間にとって、それだけ危険な存在だからだ」

 

朝槻真守の大切な少女。源白深城でさえ、真守の枷なのだ。

深城はAIM拡散力場を自身の体として認識している。そんな深城と、真守は繋がっている。

AIM拡散力場は能力者の祈りや悪意によって形作られている。その方向性を弄れば、朝槻真守のことを間接的に操ることができる。

 

「真守はアレイスターに囚われてやがるんだ。だから簡単に操られちまう。それに真守は自分の枷がどんなものか知らない。だからアレイスターに抗うことがそもそもできねえ」

 

かつて。朝槻真守は垣根帝督にこう伝えていた。

統括理事長による、何重もの枷。それを自分は認識できないのだと。

認識できなければ、抗うことができない。真守が抗うことをアレイスターは予期していたからこそ、そもそも認識できないようにしたのだと。

 

『私は怖くない。垣根が一緒にいてくれるからな』

 

真守は未だに縛られている自分の身を案じる垣根帝督に笑いかけた。

 

『その時が来たら、垣根は私のことを救える。その力が垣根にはある。だってこれまで何度も、垣根は私のことを救ってくれた。……垣根には全てを創造する力がある。だから、できないコトなんてないんだぞ』

 

垣根帝督が朝槻真守の言葉を思い出していると。

 

世界の色が、失われた。

 

灰色一色に染まった世界。

その世界で、朝槻真守を中心として破壊がまき散らされた。

その破壊をまとめて受けるために、一人の真っ白な怪物が前に出た。

 

一方通行(アクセラレータ)!!」

 

上条当麻の叫び声が、響き渡る。

蒼閃光(そうせんこう)が迸る。ガッギギギギギ! という、凶悪に歯車が強引に噛み合う音が響く。

一方通行(アクセラレータ)は純白の翼を一対広げて、その衝撃波を制御下に置いた。

 

一方通行(アクセラレータ)の能力はベクトル操作だ。この世界におけるすべての力を制御下に置き、自身の望むがままに操ることができる。

朝槻真守の破壊。それを受け止めてパラメータを即座に取得した一方通行は、真守の破壊を制御下に置こうとした。

 

だが即座に真守が、その破壊の定義を組み替える。

その瞬間、一方通行(アクセラレータ)は吹き飛ばされた。

そして、垣根帝督が前に出た。

 

「真守ッ!!」

 

空間を侵すように、純白の三対六枚の翼が広げられる。

朝槻真守の破壊を、垣根帝督は未元物質(ダークマター)を生成して受け止める。

純白の神々しい光と蒼閃光(そうせんこう)の光が、禍々しいほどに辺り一面を焼き尽くす。

音が消えるような感覚。それと共に光に包まれる空間。

 

破壊と、創造の力の攻防。

その攻防に、上条当麻は手が出せなかった。

全ての異能を打ち消すことができる幻想殺し。究極の追儺霊装。

 

幻想殺し(イマジンブレイカー)には明確に、許容量がある。

許容量を超えた力は、上条当麻もその力を逸らすことしかできない。

朝槻真守の力は純粋な破壊だ。逸らしたところで破壊がまき散らされるだけだ。

だから、上条当麻は何もできなかった。それは一方通行も一緒だった。

吹き飛ばされた一方通行は、インデックスの前で体を起こす。

垣根帝督は真守の力に対抗しながら、一方通行(アクセラレータ)に大声を向ける。

 

「後出しじゃんけんで必ず負けるお前じゃ無理だ!」

 

音の濁流と光、破壊に満たされている空間でも、何故か声が届く。

一方通行(アクセラレータ)は奇妙な感覚に包まれながら、垣根帝督の純然たる事実に舌打ちをする。

 

かつて。一方通行(アクセラレータ)にとって、忌まわしき象徴となった『絶対能力者進化(レベル6シフト)計画』。その実験に乱入してきた朝槻真守は、たったの一手で一方通行を完封した。

 

朝槻真守の本質は、新たな定義を創り出すことにある。

既存の定義を自由に操ることができる一方通行(アクセラレータ)は、朝槻真守が世界を造り替える度にその世界を理解しなければならない。

 

一方通行(アクセラレータ)が真守の破壊を理解して制御すれば、真守は新たな定義を作る。

その繰り返しであるが故に、一方通行は決して朝槻真守に勝てないのだ。

つまり真守は永遠に、一方通行に対して後出しでじゃんけんで勝つことができる。

 

「ッチ!! そォいうオマエはやれンだろォな?!」

 

「当たり前だろ!!」

 

超能力者(レベル5)二人の怒号を飛び交う中、朝槻真守の瞳が輝きを帯びた。

あからさまに操られていると理解できる、真っ赤に染まった瞳。

その瞳が光り輝き、真守は操られたように右手を前に出した。

 

すると星の光のように神々しい輝きが、何度も瞬いた。

そして、真守から放たれる破壊の源力が強くなった。

 

垣根帝督の純白の光が、押され始める。

上条はそれを見て、大いに焦った。

 

「垣根!!」

 

「うるせえ! 話しかけんな、気が散る!!」

 

垣根は上条当麻に焦った声で叫ばれて、即座に応える。

 

「上条当麻、テメエはシスターと一緒に一方通行の後ろにいろ! その右手で演算が狂わされる!!」

 

真守の破壊に、少しずつ押される垣根帝督。

真守が定義を組み替えて破壊を繰り出す速度に、防御に使われている未元物質(ダークマター)の生成が追い付いていないのだ。

 

「──問題ねえよ」

 

垣根帝督は圧倒的な不利の中、獰猛に笑った。

 

「俺には『無限の創造性』がある。俺の未元物質(ダークマター)で世界を満たせば、新たな定義を生み出すことができる」

 

垣根帝督は朝槻真守を見据える。

その向こうにいる、アレイスターを見据えて、垣根は叫ぶ。

 

「俺の未元物質(ダークマター)に常識は通じない。だからアレイスターのクソ野郎が作り出した常識なんて、俺には通じねえ!!」

 

垣根帝督の宣誓。それと共に、垣根はカブトムシのネットワークに接続した。

 

垣根帝督が生み出した、人造生命体。愛しい少女が名前を付けた、真っ白いカブトムシ。

カブトムシは、垣根帝督の端末だ。

すでに数が把握できないほどに存在するカブトムシたちは、学園都市中に蔓延している。

 

カブトムシたちはネットワークを形成しているため、膨大な演算能力を保有している。

その演算力は絶対能力者(レベル6)、朝槻真守に匹敵するほどだ。

 

横に広がりを見せる、絶対能力者(レベル6)という完全な個とは明確に違う強み。

 

真守とは別のベクトルで、価値ある力。それを垣根帝督は保持している。

三対六枚の純白の翼が、もっと大きく広がりを見せる。

未元物質(ダークマター)が純白の輝きを帯びて、灰色の世界を染め上げていく。

 

「アレイスターの作ったクソッタレな定義を破壊してやる。真守が自由になれる世界を造り出してやる!!」

 

この世界には垣根帝督には見えない、物理法則以外のルールがある。

だから垣根帝督はずっと、この世界の見えないルール──魔術に分類されるものをカブトムシによって探らせていた。

 

御坂美琴を攻撃していた呪詛。アブラ・クアタブラ。

あれは周囲に存在する呪いの方向性を束ねることによって美琴を呪っていたが、垣根帝督はあの呪詛について既に精査を終えていた。

そのため垣根帝督は、あの呪詛をジャミングする未元物質(ダークマター)を既に生み出すことができる。

 

真守が美琴を助けるべく源流エネルギーのシールドで美琴を覆ったが、それと同じようなことを垣根帝督は未元物質(ダークマター)でできる位置にまで既に達している。

 

今なら分かる。

アレイスター=クロウリーが幾重にもAIM拡散力場に施した、真守の数々の制約が。

それから解き放つことこそ、朝槻真守をこの学園都市から解き放つことになる。

 

以前。垣根帝督はロシアの地で、初めて学園都市のしがらみから解放された。

だが真守は未だに、学園都市に囚われたままだ。

光を掲げる者(ルシフェル)』として、超能力者(レベル5)第一位として絶対能力者(レベル6)として。

その能力の万能性を縛られたままだ。

 

真守に掛けられたすべての制約を破壊する未元物質(ダークマター)。真守のことを縛るAIM拡散力場を乱して世界をあるべき姿へと戻す未元物質を、垣根帝督は生成した。

 

「これだけじゃ……まだ足りねえ!!」

 

垣根帝督個人が、未元物質(ダークマター)でこの場を満たしても意味がない。

真守の枷はこの学園都市全体によって形作られている。対策を講じなければ、真守はここから一歩出れば再びアレイスターに囚われてしまう。

 

だから垣根は自らの能力で造り上げた人造生命体であるカブトムシ──通称『帝兵さん』からも、その未元物質(ダークマター)を精製させた。

学園都市が、朝槻真守を束縛から解き放つ未元物質で包まれる。

 

バギン、という。何かが砕ける音が響いた。

 

その音は連鎖的に崩壊するように鳴り響く。

 

やがてその音が朝槻真守を縛る鎖が砕け散る音だと、一同は理解した。

 

見えない鎖。それによって囚われている真守。

そのしがらみから。

朝槻真守は垣根帝督によって、完全に解き放たれた。

 

朝槻真守には、自らを縛る枷が認識できていなかった。

いつでもアレイスターによって、操られる可能性があると分かっていた。

だが怖くなかった。

 

いつかその枷によって自分が操られて。大切な人に牙を剥くと分かっていても、真守は怖くなかった。何故なら自分のそばには、垣根帝督がいるからだ。

 

未元物質(ダークマター)という、無限の創造性を秘めた物質。

それで、垣根帝督が自分を解き放ってくれると。

朝槻真守には、分かっていた。

 

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