とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一〇四話、投稿します。
次は六月一九日月曜日です。


第一〇四話:〈最愛至高〉の裏切りを

幻想殺し(イマジンブレイカー)とは異能が満ちる世界でのみ輝く力だ。

その性質上、幻想殺しは異能のない世界では認識されない。異能を打ち消せる能力とは異能がない世界では役に立たない。

だから幻想殺しを輝かせるためには、異能で満ちた場所を構築する必要があった。

 

それこそが今の学園都市の姿だ。悲劇で満ちているのは、上条当麻が最高に輝ける舞台が悲劇で満ちた舞台だからだ。

 

幻想殺し(イマジンブレイカー)を宿して、生まれた上条当麻。

上条当麻が自由な(テレマ)を持っていたからこそ、自分はこの学園都市が悲劇で満ちた場所に構築したのだとアレイスターは豪語した。

 

「学園都市が悲劇で溢れてるのは上条当麻のせいだと? 何を勝手に上条に責任転嫁してんだよ。学園都市を悲劇で演出したのはテメエだろ」

 

垣根帝督は、とんでもない言いがかりをしているアレイスターを睨む。

上条当麻はただあるべき姿で生まれてきただけだ。

そしてアレイスターは上条当麻を利用するために、学園都市を悲劇で埋め尽くした。

 

確かにアレイスターが学園都市で悲劇を演出したのは上条当麻が要因なのだろう。

だがその要因のために悲劇を演出したのは、紛れもないアレイスター=クロウリーである。

 

「いつか必ず生まれる幻想殺し(イマジンブレイカー)をお前は待ってた。その力が輝けるように学園都市を構築した。舞台を悲劇で整えたのはお前だろ。それなのに、なんで幻想殺しを宿した人間が悪いんだよ。ありえねえ」

 

悲劇を量産したのは、いまの学園都市のカタチがアレイスターの悲願──運命を殲滅する願いを叶えるのに適していたから。それ以外に、理由はない。

 

垣根帝督が上条当麻のせいではなく、アレイスターのせいであると断言すること。

この場では、それにとても意味があった。

上条当麻は息を呑み、真守は垣根のことをまっすぐと見守っていた。

一方通行(アクセラレータ)は静かに垣根帝督に同意していた。

 

「テメエは自分の願いを叶えるためになら、悲劇が生まれるのはしょうがねえと思ってる。その悲劇を糧にして、世界の全ての人間を救う。相対的に見りゃそれは確かに好手だ。だが結局テメエは悲劇を許せなかったのに、結果的に悲劇を求めた」

 

垣根帝督は自分の手を握っている真守のことを優しく抱き寄せる。

本当に大切にしたい、愛おしい存在である真守。

多くの人の幸せを心から願う少女の体温を、垣根は感じる。

 

「所詮、お前はどこまで行ったって中途半端なんだよ」

 

かつての垣根帝督も、アレイスターと一緒だった。

垣根帝督は学園都市の星の数ほどある悲劇の一つによって、大切なひとを失った。

そして垣根帝督自身も悲劇に影響を受けて、どこかいびつになってしまった。

 

価値観が歪んでしまった垣根帝督は、自分のためにすべてを利用しようと決めた。

力を求めて、地位を求めて。強い支配の力を手に入れようとした。

 

だが垣根帝督は結局、悪になり切れなかった。

もちろん、垣根帝督は自分のことを根っからの悪だと思っていた。

だが本当の悪は、目の前で一人ぼっちの少女が泣いていても気にも留めないのだ。

垣根帝督は悪になり切れなかった。だからこそ、垣根はあの廃ビルで真守に手を差し伸べた。

 

一人ぼっちで戦う少女を、一人にしたくなくて。自分には守れる力なんてないはずなのに、垣根帝督は反射的に朝槻真守へ手を差し伸べてしまった。

 

垣根帝督はある意味、これまでアレイスター=クロウリーと同じ道を歩んできた。

反吐が出るほど、その在り方に共感できる人間。そんな人間を睨んで、垣根は言葉を紡ぐ。

 

「この世に利用されるだけしか価値のねえヤツなんていない。利用できるか利用できないか、テメエがその物差しで人を測ってるだけだ」

 

その言葉は、かつての垣根帝督が信じていた価値観の否定だった。

 

この学園都市には利用できるだけの価値はある。

そして自分にはそれを利用する権利がある。

何故なら自分は今までこの街に散々利用されてきたのだ。

だから自分が他者の全部を利用したっていいはずだ。垣根帝督はそう考えていた。

 

「本当に命を大事にしてるってヤツはそうじゃない。どんな悲劇も許さねえで、全てを救おうとするヤツはそうじゃない。テメエが本当に真守みてえに全部を救う覚悟で動いてんなら、一つの悲劇も生み出さねえようにしたら良かったんだ」

 

垣根帝督は朝槻真守の抱きよせた肩に力を込める。

真守が命を尊く思っていることを、垣根帝督は理解している。

だからいつだって、真守は命が不用意に奪われないように努力してきた。

目の前で死にそうになっている命ならば、全力を持って救ってきた。

 

真守の知らないところで悲劇が起こって命が失われてしまったら、万能である真守だってどうしようもできない。だから悲劇によって人々の命が喪われないために、朝槻真守は動き出したのだ。

 

この学園都市で過ごしている子供たち全員が、悲劇に遭う事なく幸せになれるように。

いつまでも笑っていられるように。そのために真守は学園都市の表を丸ごと統治して、布陣を敷いてアレイスター=クロウリーに挑みに来た。

 

「本当にこの世から悲劇を無くしたいって思うなら、お前は全部を失敗してでも救う覚悟でやりゃあ良かったんだ」

 

朝槻真守のそばにいれば、真守がどんな考えを持っているか分かる。

真守はこの世界の人々は平等に尊いと分かっている。

一人一人が星のように輝くことができるのだと知っている。

 

学園都市を作り上げた、『人間』が組み上げたシステム。

それに感化されてしまった、垣根帝督。

そしてねじ曲がってしまった考えを、朝槻真守は正してくれた。

垣根帝督は、自分を癒してくれた真守に感謝していた。

 

「中途半端なヤツが、ヒーローってモンを地で行く上条当麻を責める権利なんてねえ。俺たちをテメエが良いように扱っていい理由なんてどこにもねえ」

 

少し前まで、垣根帝督はアレイスター=クロウリーと同じような道を歩いていた。

だがもう道は分かたれた。

一人の少女との出会いによって、自分のやり方が間違っていると分かったのだ。

 

「俺が上条当麻を許してやるって言ってんだ。誰にも文句は言わせねえ」

 

真守は垣根帝督の不遜な態度に小さく笑う。

そんな真守のことを見て、垣根は機嫌良さそうに鼻で笑った。

 

過去は覆らない。

今できるのは過去を悲観して泣き叫ぶことではなく、これからどう生きるかという事だけだ。それをこの世で最も『運命』に翻弄された少女が、狂おしいほどに愛おしい少女が体現しているのだから。自分だって前を向くしかない。

 

垣根帝督は、心の底からそう考えていた。

そして一方通行(アクセラレータ)も同じ気持ちだ。その気持ちをわざわざ口にする必要は、どこにもなかった。

 

「なるほど。やはりこうなるのか」

 

アレイスターはぽそっと呟いた後、小さく笑う。

 

「だが失敗など、敗北など、喪失など、挫折など。幾らでも繰り返してみせる」

 

そう宣言したアレイスターを見て、上条当麻はどうしようもない悲しみを感じた。

 

「……踏みにじるように卑怯な言い方をしてもいいか?」

 

「例えば?」

 

アレイスター=クロウリーが問いかけると、上条当麻は重苦しそうに口を開いた。

 

「言葉を覚える暇もなく息を引き取っていったリリスは、きっとアンタのそうじゃない顔を愛していたんだと思うよ」

 

その言葉にアレイスター=クロウリーは答えない。ただ右手を前に突き出して緩く握り、13、5、32と呼ばれる小さな数字を火花のように散らしただけだ。

 

霊的蹴たぐり。その応用。

アレイスター=クロウリーの想像を相手に攻撃として叩きこむ術。

 

フェンシングの切っ先を想わせるような想像が、上条当麻を襲う。

そんな上条の前で、朝槻真守はアレイスターを睨みつけた。

 

「それは効かない」

 

ばづん、っと。空間が張り裂けるような音がする。

 

想像を相手に攻撃として叩きこむ術は、あくまで受け身であるものの想像によって成り立つ。

朝槻真守は絶対能力者(レベル6)だった。そして今は自由にて不変なる『永遠』を司る存在だ。

それ故に、この場にいる者たち全員の相手から与えられる想像をはねのけることができる。

 

そして、続けてもう一度。

真守によって、目に見えない何かがばづんっと弾かれた。

 

「位相同士が衝突する事によって生まれる火花。運命と呼ばれるモノ。お前はそれを操る術を見つけたんだな。美琴を攻撃した時のように、お前はこの世界に薄く広く連なる運命の方向性を捻じ曲げて、敵に叩きこむことができる」

 

アレイスター=クロウリーは娘のリリスを助けるために、一〇〇年以上真理の探究をしていた。

そして、アレイスターはついに運気を操る術を身に着けたのだ。

だがその技術は当然として、リリスを救うことは叶わなかった。

後一〇〇年早く完成していれば、リリスを助けることができた忌まわしい術式。

それを前にして、真守は淡々と言葉を紡ぐ。

 

「お前の枷から放たれた私は、もう自由な存在だ」

 

真守は自分のことを縛っていた人間を見つめて、鋭く目を細める。

 

「だから私はこの世界の全てに触れることができる。その意味が分かるか?」

 

「……分かっているとも。だからこそ私はあなたを縛ったんだ」

 

朝槻真守はケルトが求めた完璧な肉体に完璧な精神を持った、『永遠』を司る人間である。

すべてを司ることができる存在だ。

それ故に、どんな存在にも触れることができる。どんなものでも自身の望むように操れる。

だからこそアレイスターはその危険性を最大限に考慮して、朝槻真守に枷をいくつも嵌めていた。

 

「かの一族が求めたあなたに、私が勝てないことは分かっている。だがいまのあなたと()()()()()はどうかな」

 

アレイスターは軽やかに微笑むと、杖を持つ仕草をした。

 

衝撃の杖(ブラスティングロッド)

 

ねじれた、銀の杖。

魔術の威力を標的が思う一〇倍に増幅する技術。

それはアレイスターが師と仰いだ、アラン=ベネットの十八番だ。

銀のねじれた杖を構えて、アレイスターは謳うように告げる。

 

「第三の樹たる亜空の山を昇らせたのは。私の過去を追わせた理由は。霊的蹴たぐりや衝撃の杖(ブラスティングロッド)を披露したのには、理由がある。全ての物事には理由がある。それが真実だ」

 

アレイスターは謳うように言葉を紡ぎながら、この場を見回す。

 

「全ては一つの儀式だった」

 

アレイスターはそう言葉を零すと、幻視の杖を掲げた。

 

「出ろ、エイワス。思考を縛る鎖を逆手にとってガイドと()し、我が目的を完遂せよ」

 

アレイスターの声掛けと共に、学園都市全体がどくんっと力強く脈打った。

その異変を大きく感じたのは、この場にいる超能力者(レベル5)三人だった。

 

アレイスター=クロウリーが能力者をここまで無尽蔵に育てた理由は、能力者全てを利用して糧にするためだ。

 

学園都市の隅々にまで張り巡らせた人工の神経と血管を励起させるだけで、全ての能力者は有無を言わさずに接続される。

そしてエイワスを召喚するためだけに、その力を吸い取る事ができる。

 

大熱波により学園都市の仕組みが摩耗していようと、その程度ではエイワスを召喚する土壌は揺るがない。

真守は力を吸われている感覚を覚える垣根と一方通行(アクセラレータ)に目を向ける。

 

「大丈夫だぞ。だって私は自由だからな」

 

真守は垣根の隣で、一人立ち上がる。

その立ち上がり方は決して頼りないものではなかった。

何故なら、真守はすでに学園都市から解き放たれている。

アレイスターの束縛から解放されている。

そのため力を吸い取る苗床に使われることはない。

 

「私はエイワスに対抗することができる。()()()()()()()

 

真守は軽く笑うと、傍らにいる垣根に微笑みかけた。

 

「垣根のおかげで、至るコトができたんだ」

 

真守は自分で確認するように言葉紡いで、翼を大きく広げる。

六対一二枚の翼。その翼は、蒼ざめたプラチナに輝いていた。

虹色のまばゆい光が(ほとばし)る中、真守は視線を鋭くした。

 

「この学園都市は、()()()()神殿だった」

 

学園都市はアレイスター=クロウリーが造り上げた神殿だ。

思春期の少年少女を集めて化学薬品により叡智への到達を目論む、テレマの再来。

アレイスターが悲願である魔術の殲滅を叶えるための実験場。

そして上条当麻の右手に宿った力を精錬する場所。

 

「お前の枷から解き放たれた私は神殿の主として出戻ることはできない。でも、勝手知ったる神殿だ。だから乗っ取るコトができる」

 

その宣言と共に、真守は蒼ざめたプラチナの翼を広げて空間を侵食した。

エイワスを形作るための神殿。真守は現代風に言えば──その神殿を外からハッキングしようとしているのだ。

神殿という誰にも侵されてはならない聖域を侵す、自由な存在。それが今の朝槻真守なのだ。

 

「その速度では脅威にならないぞ、朝槻真守」

 

真守が神殿を乗っ取りにかかろうとすると、アレイスターは柔らかく笑った。

何故なら既に、エイワスは光臨している。

黄金の長髪に輝く肌。朝槻真守と同じく、青ざめたプラチナの輝きを放つ肢体。

エイワスは真守を前にして、愉快そうに言葉を紡いだ。

 

『私を乗っ取りにかかるまで成長するとは。「流行」も大したものだな』

 

「しゃべ……っ」

 

上条当麻が息を呑むと、エイワスは愉快そうに告げる。

 

『なるほどなるほど。此度は私の肉声もブレずに届くか。それだけ世界が真実を思い出しているということか。朝槻真守の成長は著しく、留まることを知らないな』

 

真守は笑っているエイワスを無言で睨む。

その表情は固い。

 

何故なら真守は現在、エイワスを自身の制御下に置こうとしているからだ。

そのために力を割いている真守は、まったくの無防備だった。

 

そんな真守の事を守るように、垣根帝督が前に出た。

一方通行(アクセラレータ)もまさかの聖守護天使光臨に驚愕しているインデックスを、守るように手を出す。

 

『──ふむ。ここらが反旗の翻し時だな。わが永遠の友よ』

 

一触即発の中、凛とした女性の声が響いた。

その言葉にアレイスター=クロウリーは表情を固くする。

 

「な、に……?」

 

アレイスターは驚愕せざるを得ない。

何故なら『彼女』が前に出るはずがない。『彼女』はいつだって静観していた。

いつだって、自分を許さずに。前に進み続けることを望んでいた。

それなのに。まさか。

 

エルダー=マクレーンが自分を止めるために立ちはだかるなんて、アレイスター=クロウリーは思わなかった。

 

絹を銀色に染めたような、滑らかな質感の長髪。エメラルドグリーンの瞳。

銀のヴェールに、凹凸のないスレンダーな肢体を包む、西洋喪服を模した銀のドレス。

手元に持った、高貴なものが身に着ける銀の扇子。

猫耳と尻尾。その尻尾を彩る銀の星とレースの飾り。

 

『それほど予想が外れた結果ではないだろう、わが友よ。オマエは心のどこかでこの失敗を望んでいた。望まざるを得なかったのだ』

 

こつこつとピンヒールの音を立てながら歩く女性はまさに、貴族の令嬢に相応しい出で立ちだ。

 

『ワタシに止めてもらうことを、オマエは心のどこかで望んでいた。だからその望みに応えてやろう。アレイスター、わが永遠の友よ』

 

女性は虚を突かれたアレイスターを、ビッと扇子で差しながら笑う。

 

『このエルダー=マクレーンが、オマエの望みを(つい)えさせてやる』

 

アレイスター=クロウリーは驚愕の表情で固まったまま動けない。

当然だ。

絶対に敵に回らないと確信していた存在が、敵に回ったのだ。

 

『ワタシは問答型思考補助式人工知能(リーディングトート78)。機械であり、その思考中枢にはエルダー=マクレーンの思考パターンと七八枚で構成されたトートタロットが組み込まれている』

 

エルダー=マクレーンは挑発的に尻尾をゆらゆらと揺らして、笑う。

 

『何故、キサマはワタシをガワに選んだ?』

 

その問いかけの答えをエルダー=マクレーンは即座に口にする。

 

『それは安寧とトラウマをいっぺんに得るためだ。トラウマを与えることができるガワとして最適な人間は他にもいたが、ワタシという存在を選べばキサマは安寧も共に得られる。そしていつまでも約束を忘れる事なく邁進できる』

 

今、この場で喋っているのはエルダー=マクレーンの思考パターンを網羅した、アレイスター=クロウリーが用意した問答型思考補助式人工知能だ。

それは『計画(プラン)』の軌道修正が正しいか否かを証明するために必要とされた並列演算機器であり、アレイスターの制御下から離れることはない。

しかもエルダーの思考パターンを完璧に再現しているのだから、彼女そのものであるエルダーが離反することなどありえない。

 

生前、エルダー=マクレーンは位相を砕き、運命を打破するまで進み続けろとアレイスター=クロウリーに告げた。アレイスターを、エルダーは一生許さないと告げた。

そして全てが終わった後。アレイスターの悲願が叶った後。

また話をして笑い合おうと言ったのだ。

 

だから再現された人格でも、エルダー=マクレーンが自分の意志に反することはないハズなのだ。

そんなアレイスター=クロウリーの疑問にエルダーは答えた。

 

『全てのモノは移り変わる。決して同じモノであるという事はありえない。それこそ「永遠」を手にしたって、世界が移り変わることに適応しなければならない』

 

朝槻真守は全てを持って生まれた。

だが肝心なことが分からず、人間という生き物を源白深城に教えてもらった。

そしていつか自分が変わってしまうことに恐怖していた。だが変化しても変わらないものもあると気が付いて、前を向く事ができた。

 

歪ながらも永遠を獲得することが運命づけられていた真守も、これまでの道のりでその在り方と考え方を変化させている。

 

それと同じで源白深城は朝槻真守と出会った事で、死を経験した。

そして遂には能力を基にして、源白深城は動き出した。

悲劇に遭った事で歪んでしまった垣根帝督は、朝槻真守に出会った事でその歪みから脱することができた。

 

上条当麻は記憶を失くした。それでも上条当麻として生き続けている。

一方通行(アクセラレータ)は人のぬくもりを知らなかった。

それでも真守や打ち止め(ラストオーダー)と出会った事で、少しずつ変わり続けている。

 

すべては環境によって変わり続ける。永遠だって、環境に適応するために少しずつ変容する。

 

『万物は流転する。同じであることなどありえない。()()()()()()()()。ワタシはこの学園都市で多くの少年少女を見守ることで、少しずつ変わっていった。ワタシの血族や無垢なる少年に触れることで、ワタシは生前のワタシから違ったモノへと進化した』

 

エルダー=マクレーンの言っていることが理解できたアレイスター=クロウリーは、息を呑む。

そんな永遠の友を見て、エルダー=マクレーンは笑った。

 

『即ち、オマエの事を止めるワタシである』

 

あの日、約束を交わしたエルダーは一番近くで『計画(プラン)』を進めるアレイスターを見つめるうちに、友を止めなければという思いが強くなっていった。

少年少女たちが苦しむさまを見て、これは間違っていると感じた。

大切な永遠の友が苦しみながらも進むさまを見て、寂しいと感じた。

 

朝槻真守という自分の子孫に心境を当てられたエルダーは、永遠の友を止めるために動き出す。

それは最悪の裏切りだ。アレイスターの心を支え続けてきたエルダーによる、アレイスターの心を折りにかかる最低な裏切り。

だがその裏切りは深い愛を伴った、最愛の至高の裏切りでもあった。

 

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