とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一〇九話、投稿します。
次は七月一〇日月曜日です。


第一〇九話:〈永遠少女〉の危機で行動を

垣根帝督は自分の腕の中でぐったりとしている真守に動揺する。

朝槻真守の体は、触っただけでも分かるほど異常に熱を持っていた。

先程まで何も問題はなかったのに、本当に突然のことだ。突然、真守は熱を出したのだ。

 

「どうした、真守ッ。なんで熱が突然出てきたんだ?!」

 

体の不調で、くたっとなっている真守。

垣根は真守のことを優しく抱きしめたまま、真守の額に手を沿える。

とんでもなく熱い。先程まで何事もなかったのに、尋常じゃない。

 

「だ、だいじょうぶ……」

 

真守は心配する垣根に、か細いながらもきちんと声を掛ける。

 

「……かきね、いまなんとか……っ」

 

真守はふぅふぅと浅い息をしながら、目を細める。

朝槻真守は元々流動源力(ギアホイール)という、エネルギーを操る能力者だ。

エネルギーならなんでも操れる。体内のエネルギーを操る事なんて、造作もないのだ。

 

真守は自前の能力で、自身の体調を整えることができる。

能力が能力であるため、真守はこれまで一度たりとも風邪を引いたことがない。

自分の不調は、自分の能力でどうにかできるのだ。

 

「んー……っ」

 

真守は低く唸って、体調を整えようとする。

だが、くらりと視界が揺れて、真っ暗になる。そしてぐったりと、垣根に寄り掛かった。

 

「真守!!」

 

垣根は浅く息をしている真守を見て、あからさまに動揺する。

上条や一方通行(アクセラレータ)、周りにいる者たちも真守に突然何が起こったのか騒然とする。

アレイスターは静かに真守に近づくと、真守の手に優しく触れた。

 

「霊格や霊体が安定してないようだな」

 

「どういう事だ、テメエ何言ってやがるッ?」

 

垣根は腰を下ろして、真守が自分によりかかれるように体勢を調整しながらアレイスターを睨む。

アレイスターは垣根と真守と一緒に腰を下ろしながら、真守の手を優しく撫でる。

 

「朝槻真守を絶対能力者(レベル6)に加工したのは私だ。その加工は『計画(プラン)』に影響が出ないように、朝槻真守を超常存在に至らせないように留めておくという意味もあった。だが先程、垣根帝督が枷を取り払ったため彼女は『流行』の名を冠する存在へと至った」

 

アレイスター=クロウリーは垣根の腕の中で浅く息をしている真守を見て目を細める。

垣根はアレイスターが何を言っているかすぐには理解できなかった。

そんな垣根を見て、アレイスターは説明する。

 

「朝槻真守は流れに身を任せる事でこの世界と共に進化し続ける。その真価は留まるところを知らない。そのため彼女は超常存在であるエイワスやコロンゾンの到達しているステージまで自らの本質を変異させる事なく到達する事ができるのだ」

 

蒼ざめたプラチナの翼。アレはエイワスと同等の輝きを放っていた。

絶対能力者(レベル6)にとどめられる楔から解き放たれた真守は、自分が進むべきところ──エイワスやコロンゾンと同じステージへと至ったのだ。

 

朝槻真守は自身の本質を変容させることなく、どこまでも進み続けることができる。

超常存在の先に位置する、未踏領域にでさえ朝槻真守は自身を変容させる事無く到達できる可能性があるのだ。

 

真守は垣根帝督や源白深城の事を大切に想う心を忘れる事無く、どこまでも進み続けられる。

いつまでも自分の事を愛してくれる。

その確定事項が垣根にとっては嬉しいが、今はそれに安堵している場合ではない。

 

「それで真守はどうなってる状態なんだ。コロンゾンの攻撃でこうなってるのか?」

 

「コロンゾンが打ち込んだ『拡散』も元凶は元凶だが、そうではない」

 

「じゃあ一体なんなんだよ。もったいぶらずに吐きやがれ」

 

垣根がピリピリとした殺気を発していると、アレイスターは垣根を落ち着かせるように穏やかな声を出す。

 

「蝶が羽化して成虫になったとしても、その直後は翅が濡れていて酷く不安定だろう? それと同じで、朝槻真守は進化したことで元々不安定な状態だった。だからこそコロンゾンの『拡散』が響いている。霊媒に異常が出ているのはそのためだ」

 

「じゃあ俺はどうすればいい? 真守はどうしたら良くなる?」

 

垣根が焦った表情で声を上げると、アレイスター=クロウリーは必死な垣根帝督を宥める。

 

「安心しろ。朝槻真守はヤワじゃない。存在に穿たれた穴は朝槻真守の『流行』によってなんとかなっているし、安静にしていれば大丈夫だ」

 

アレイスターの言葉を聞いて、垣根は見た事もないほどに弱っている真守の頬に手を添える。

浅い息をしているし、とても辛そうだ。垣根は真守を見て顔を歪める。

だが最悪の事態は免れられそうで、本当に良かった。

最悪の事態。それはもちろん、朝槻真守が垣根帝督の手の平から零れ落ちていくことだ。

アレイスターは絶対に失いたくない少女を前に動揺している垣根を見つめて、進言する。

 

「コロンゾンや『書庫(バンク)』については私たちがなんとかする。キミはどうせ朝槻真守のそばから離れられないだろう。バックアップに徹してくれ」

 

垣根はアレイスターの言葉に頷くと、真守の事を揺らさないようにお姫様抱っこする。

 

「後のことは頼んだ」

 

垣根は上条を見て、顔を歪めながらしっかりと頼む。

 

「こっちは任せろ。お前も朝槻のことを頼む」

 

カブトムシ(端末)にはお前たちの手伝いをするように命令した。上手く使いやがれ」

 

垣根は足早に告げると、喫茶店から出る。

向かった先は第二学区にある『施設(サナトリウム)』だ。

あそこが現状真守にとって一番安全な場所だし、深城や真守の伯母やマクレーン家の親族たちもそこにいる。

真守は垣根の腕の中で、そっと顔を上げる。

 

「真守」

 

垣根は未元物質(ダークマター)の翼を広げた瞬間、真守が動いたので動きを止めた。

真守は本当に焦っている垣根を見上げて、浅い息をしながらふにゃっと笑う。

 

「かきね。だいじょうぶだから……心配しないで。すぐに良くなるから……」

 

垣根は力ない真守の言葉に首を横に振る。

 

「無理に喋らなくていい。俺ができる限りのことはするから。だからお前はゆっくり体を休ませて元気になって、早く俺を安心させてくれ。な?」

 

「………………うん」

 

真守は浅い息を繰り返しながらも頷く。

垣根は未元物質(ダークマター)の翼で浮遊すると、真守を揺らさないように気を付ける。

そして第二学区にある『施設(サナトリウム)』に向けて、真っ先に向かった。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

すでに陽が傾き、夜がやってきている学園都市。

一方通行(アクセラレータ)は現代的な形をしている松葉杖を突きながら、学園都市の街中を歩いていた。

 

木原唯一を討伐するために、一方通行(アクセラレータ)は真守たちと共に『窓のないビル』の直下に侵入した。そして木原唯一を討伐すると、そのままアレイスターを討ちに行った。

アレイスターの居城に潜り込んだのは午前中のことだ。

だが『窓のないビル』を長い時間昇らされたため、時間が多いに過ぎてしまったのだ。

 

一方通行(アクセラレータ)が歩道を歩いていると、道路を不穏すぎるほどに武骨な装甲車が走っていく。

統括理事会直轄の部隊の車だ。

大熱波が収束した事で、学園都市を正常に戻そうと動いているのだ。

 

八乙女率いる『(しるべ)』は真守の功績として、エレメントを大量発生させていた木原唯一を打倒したと発表した。そして日常に戻れるように手配すると宣言したのだ。

『標』の先導のもと、風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)が学生たちを誘導して大熱波から普通の生活へと戻ろうとしている。

 

そこに便乗して、今まで沈黙していた統括理事会は動き出した。

そして『営巣部隊(ユースフルスパイダー)』と呼ばれる、学園都市の治安を取り戻す部隊を派遣したのだ。

学園都市を平時に戻す。

それを『営巣部隊』は狙っているのだが、その根幹には別の意味合いがある。

 

現在、学園都市のインフラはエネルギーを無限に想像できる朝槻真守に依存している。

真守にインフラ設備という生命線を握られていることが、統括理事会のメンバーは不安で仕方ないのだ。

 

統括理事会は、確実に焦っている。

すでに夜に差し掛かっているのに、あちこちで統括理事会の装甲車が物々しく走っているのが証拠だ。

一方通行(アクセラレータ)はくだらないと鼻で笑いつつ、声を発した。

 

「どォだ。リストアップできたか」

 

一方通行(アクセラレータ)は学園都市の様子を注意深く観察しながら、自身の右肩にくっついているカブトムシに声を掛けた。

 

大悪魔コロンゾンは、学園都市の叡智の結晶である『書庫(バンク)』を狙うだろう。

『書庫』を獲得できれば、学園都市の叡智を掴んだと言っても過言ではないからだ。

そうでなくとも学園都市が不安定に陥っている今、『書庫』を狙う人間は後を絶たない。

近いうちに、『書庫』争奪戦が起きる。

だからこそ、早急に『書庫』の安全を確保することが急務なのだ。

 

書庫(バンク)』争奪戦に参加しようとする一方通行(アクセラレータ)

そんな一方通行を、垣根帝督が造り上げた人造生命体であるカブトムシは補助しようとしてくれているのだ。

具合が悪くなってしまった真守が心配だが、やるべきことをやるのだ。

そんな一方通行に、カブトムシは翅を震わせて声を掛ける。

 

『今しがた、マイクロ波を退けられる場所をリストアップできました。やはり、研究所や病院などが多いですね』

 

大熱波は上里勢力がマイクロ波を放出する事で成り立っていた。

書庫(バンク)』はマイクロ波で壊されるような場所にはおいていない。学園都市の機能が回復する中、『書庫』が機能しないという話を聞かないからだ。

だからこそ、『書庫』はマイクロ波に強い場所に隠されていると推察できる。

 

「リストの中からなるべく公共機関を優先して見せろ。……つっても、薬味久子の件があるからな。あからさまな研究所や病院って選択肢も確実には捨てきれねェ」

 

薬味久子は第一三学区の対テロトラップ施設に隠れていた。

対テロトラップ施設とは、『闇』に精通する人間なら絶対に襲わない場所だ。

誰にも襲われることがない。だから薬味久子は逆手を取って、あの病院に隠れていた。

そのためあからさまなトラップ施設も注視しないといけないのだ。

 

「オマエたちは常時学園都市を監視してンだろ? だったらやたらと動きが少ねェ場所や不穏な動きを見せてるところも優先的にリアルタイムで上げてくれ」

 

一方通行(アクセラレータ)はカブトムシに指示しながら、首元にある電極のスイッチへと手を伸ばした。

一方通行の演算補助デバイスには追加で真っ白なキューブが取り付けられていた。

 

カブトムシのネットワークから一方通行(アクセラレータ)が直接、情報を取り込めるようにした中継装置である。

垣根帝督の能力に依存しているものだが、素直なカブトムシたちが調整してくれた装置に一方通行は一応の信頼を寄せている。

 

『一つ確認しておきたいのですが』

 

「何だ?」

 

『あなたの処理能力は垣根帝督(オリジナル)と同等と考えてよろしいんですね?』

 

「あァ。壊れかけのポンコツだろォが俺も学園都市最高峰の頭脳を持ってるからな。そォじゃねェと今だって、超能力者って名乗れやしねェ」

 

『分かりました。マイクロ波に強い施設と並行して、電力消費の激しい施設もピックアップします。「書庫(バンク)」を守る防御機構の維持には、やはり多くの電力を消費しますので』

 

カブトムシは一方通行(アクセラレータ)の指令に加えて、独自の思考で『書庫(バンク)』捜索に取り掛かる。

人工知能であり、人造生命体群としてネットワークを形成しているカブトムシは非常に優秀な演算能力を持っている。

 

能力者らしく自己中心的な垣根とは、似ても似つかぬほどにカブトムシは素直で従順だ。

そんな知性群体をよく一から一人でこしらえたものだ。

一方通行(アクセラレータ)は半ば呆れたように垣根を称賛する。

すると、視界の端に気になるモノが映った。

 

「あァ?」

 

西洋喪服を模したドレス。ガーターストッキングにピンヒール。そして頭にはヴェール。

銀色の艶やかな髪。エメラルドグリーンの瞳。

そして猫耳と尻尾。

 

どこからどう見ても朝槻真守のご先祖様であるエルダー=マクレーンが、そこにいた。

 

エルダーは一方通行(アクセラレータ)に小さいお尻を向けて、何かに夢中なご様子でレースと十字型の星の飾りがついた猫の尻尾をゆらゆら揺らしている。

夢中になっているのはコンビニの前に設置された、垣根印だと一目で分かる純白で造られたバッテリーだった。

 

「むぐむぐ。無限にエネルギーを生成できるというのはとても便利な事だな。さすが我が末裔。むぐむぐ」

 

エルダーは真守のことを称賛しながら、バッテリーから伸びる太いケーブルの先についているソケットを口に含んでいる。

 

『エルダー=マクレーン。その……エネルギーが必要ならばコソ泥しなくても供給することができますが……』

 

声を掛けたのは、エルダーの頭に乗っているカブトムシだ。

どうやらあのカブトムシが、エルダー=マクレーンのお付きのカブトムシらしい。

 

「むお。……そうは言っても、真守が生み出したモノはワタシのモノだ。どこから拝借しても問題ないだろう」

 

『土曜日夕方にやってるアニメの横暴キャラじみたことを言わないでください』

 

「むぐむぐ。……むぅ。ソケットを口にしてもお腹は減ったままだ。……そうか、この体は半ば生体じみてるから普通の食事ができるのか……だからお腹が満たされないのか……これではアイツのところに行く前に飢え死にしてしまう……」

 

口にソケットを咥えたまま、エルダーはしょんぼりと尻尾を垂らす。

どうやらエルダーはお腹が空いてしまい、腹を満たすものを求めているらしい。

彼女は元々機械だった。だが地上を闊歩できるようになった時にその性質が変わったらしく、電力ではなく食物でエネルギーを摂る必要性が出てきたのだろう。

 

一方通行(アクセラレータ)は呆れると、エルダーに近づく。

そしてゆらゆらと揺れている尻尾をぎゅっと掴んだ。

 

「何やってンだオマエ」

 

「みぎゃっ!!」

 

強盗に勤しむエルダーを一方通行(アクセラレータ)は咎める。

すると、エルダーは尻尾を強く握られて猫らしい悲鳴を上げた。

どうやら痛覚があるらしい。

一方通行が意外な発見をしていると、敏感な場所を掴まれたエルダーはふーふー息をあげながら振り返った。

 

「淑女の尻尾を掴むとは何事か!! この破廉恥めッ!!」

 

フシャーッと威嚇をするエルダー。

だが自分の尻尾を掴んだのが一方通行(アクセラレータ)だと知ると、目を大きく開く。

 

「おお! 一方通行(アクセラレータ)!」

 

一方通行(アクセラレータ)は、目を輝かせる姿が真守に激似のエルダーに呆れる。

 

「淑女にどォして尻尾が生えてンだよ」

 

「ふふんっかわいいであろう」

 

エルダーはむんっと得意気に笑うと、ぴこぴこっと猫耳を揺らす。

さすが真守のご先祖様。大きさは違うが、得意気に胸を張るところがそっくりである。

エルダーは胸を張っていたが、すぐに尻尾をしおらせる。

 

「……お腹空いた……飢え死にしてしまう……っ一方通行(アクセラレータ)ぁ……っ」

 

エルダーはすんっと鼻を鳴らすと、一方通行(アクセラレータ)を見上げる。

エルダーに縋るような目を向けられて、一方通行はうぐっと、反射的に呻く。

一方通行は往々にして、真守のお願いを断ることはできない。

そんな真守に激似の淑女であるエルダーにおねだりされれば、一方通行は拒否できない。

 

「……何食いてェンだよ……」

 

一方通行(アクセラレータ)が唸りながら問いかけると、エルダーは顔を輝かせた。

 

「コメも良いが、サーモンとシチュー、それとラム肉が食べたいっ!」

 

「随分と食い意地張ってンな、アイツのご先祖サマ。しかもラム肉かよ」

 

一方通行(アクセラレータ)はケルト的な食事を所望するエルダーを見つめて辟易する。

エルダーはふふんっと鼻を鳴らすと、ゆらゆらと尻尾を揺らす。

 

「ワタシはこれでもれっきとした貴族なのだぞ。生体を手に入れたからには食事を楽しみたい。そうだ、日本食にも興味がある。オニオンサーモンの寿司はとてもおいしいと聞く!」

 

「……そンなに食うのかよ……」

 

一方通行(アクセラレータ)がちょっと引いていると、エルダーはぐーっとお腹が鳴って声を上げる。

 

「飯を寄越せ! さもないとオマエを食べてしまうぞっ、がおーっ!」

 

「…………オマエも確か、統括理事長サマと同じでいい歳してンだよな……」

 

いい歳した女でも、かわいらしければ万事オッケーである。

そう言えるほどに、エルダーはどこからどう見ても愛らしい。

造形が整っているとなんでもやりたい放題にできるのが世の中理不尽なところである。

一方通行(アクセラレータ)はため息を吐きながら、エルダーを呼ぶ。

 

「しょうがねェから連れてってやる。でも勝手に食べてろ、俺はやることがある」

 

「何をするのだ? というか、オマエはどうして単独行動を? アレイスターとコロンゾンの対策をしているのではないのか?」

 

エルダーは立ち上がると、むぎゅっとカブトムシを抱きしめる。

その姿は、ご先祖様らしく真守に激似である。

 

「俺は存在が危ぶまれている『書庫(バンク)』の確保に取り掛かってる。大悪魔が狙うだけじゃねェ。この状況に乗じて『書庫』を手に入れようとする輩もいるだろ。アレは学生や研究の成果が詰まってる。奪われるワケにはいかねェ」

 

エルダーは一方通行(アクセラレータ)の話を聞いて、真剣な表情でカブトムシを抱きしめたまま顎に手を当てる。

 

「……ふむ。『書庫(バンク)』の居場所はワタシも分からぬな。アレは地下核シェルターだったり高層ビルだったり人工衛星だったり、はたまた電子情報管制機などだったりするからな。見つけるのは難しかろう」

 

エルダーは一方通行(アクセラレータ)に寄り添いながら、にやっと笑う。

 

「視点を変えてみてはどうか?」

 

「あァ?」

 

エルダーの問いかけに、怪訝な声を上げる一方通行(アクセラレータ)

そんな一方通行に、エルダーは問題提起をするように情報を与える。

 

「姿かたちを一定で変える。するといつだって代替わり先を幾つも用意しておかなければならない。その代替わり先は開発される場所が当然としてある。そしてそれを統括理事長は知らない。……つまり、『滞空回線(アンダーライン)』の流入を防ぐ場所にある」

 

一方通行(アクセラレータ)は目を見開く。

そんな一方通行を見つめて、エルダーはふふんっと笑う。

そして追加で情報を提示した。

 

「木原唯一という元凶を叩いたことで、大熱波は収束した。オマエが帝兵と共に当たりを付けているように、『書庫(バンク)』はその大熱波から被害を免れていると知られている。つまりこのままにしていれば、『書庫』の居場所がバレてしまう」

 

「……『書庫(バンク)』を運営するヤツらもバカじゃねェ。大熱波が収束したことで『書庫』が狙われるのが分かってるはずだ。つまりヤツらはこの機に乗じて、『書庫』の『代替わり』を狙ってるってことか」

 

自分が与えた情報で推測を始める一方通行(アクセラレータ)を見て、エルダーは得意気に微笑む。

 

「『書庫(バンク)』を探すのも大事だが、代替わり先も気にしてみてはどうだ? 当然として代替わり先は複数用意されてるが、カブトムシがいれば網羅できる。そうやってあらゆる面から『書庫』の安全を考えてみてはどうだ?」

 

「……オイ、カブトムシ」

 

『はい。以前に調査済みの「滞空回線(アンダーライン)」から逃れられるスポット(空白)をリストアップします』

 

「『書庫(バンク)』は大事だし、オマエと一緒に動けば最終的にはアレイスターのもとに行ける。ワタシは元々、アレイスターの『計画(プラン)』の修正を適宜行う役目を担っていた問答型思考補助式人工知能(リーディングトート78)だ。本来の役目らしく、ワタシがオマエの思考補助をしてやろう」

 

エルダーはニヤッと笑う。そしてぺしぺしと一方通行(アクセラレータ)の体を尻尾で叩いた。

 

「ご飯を食べられる場所に連れていけ。その代わりにオマエを手伝ってやる」

 

一方通行(アクセラレータ)はため息を吐くと、カブトムシに追加で指令を出す。

 

「……ここの近くで色んな料理してる場所を探せ」

 

『了解しました』

 

カブトムシが頷いて居場所を指し示す中、エルダーは機嫌よく尻尾を揺らす。

そして一方通行(アクセラレータ)と共に、夜の学園都市へと消えていった。

 

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