とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一一四話、渡航します。
次は七月二七日、木曜日です。


第一一四話:〈各々組合〉で行動を

ビルとビルの隙間。

そこからこそっと、銀髪美少女アレイスたんが顔を出した。

美少女化したアレイスターは紙幣大の紙切れを指でつまんでひらひら空気の中を泳がせる。

すると、ボッ! っと炎を吐いて、その紙切れが燃え尽きた。

 

アレイスターが手にしているのはリトマス紙──コロンゾンの力に反応して焼き切れる護符だ。

アレイスターは手元のスマートフォンを操作して記録すると、次のポイントへと向かう。

そんなアレイスターの後ろをついていくインデックス。そして肩にオティヌスを乗せた上条当麻は、がっくりとうなだれながらとぼとぼ歩いていた。

 

「まさか元おっさんと夜をネカフェで迎えるなんて……」

 

「私としては手を出してほしかったのだがな」

 

「こんなセクハラ親父から俺は体を守りながら、よく一緒に一夜を明かせたよ……ッ!」

 

上条当麻はおいおいと小さく泣きだす。

ちなみにインデックスとオティヌスもネットカフェに泊まったのだが、彼女たちはアレイスターの策略(笑)によって隣の部屋となったのだ。

 

インデックスは不満そうだったが、一度カプセルホテルから追い出されていたので我慢した。

ちなみに一度カプセルホテルから追い出されたのは元おっさんが発情したためなのだが、そんなことすれば追い出されるのは当然である。

 

がっくりとうなだれる上条当麻。

その隣で、アレイスターは再びリトマス紙を取り出す。

すると再びボボッ! と、リトマス紙が燃えた。

アレイスターは再びスマートフォンに記録しながら頷く。

 

「ふむ。大体分かってきたぞ」

 

「……何が?」

 

上条当麻は眠りが浅いし怪我をしているので体が重い様子でアレイスターを見る。

アレイスターはスマートフォンの画面を上条に見せて、ふりふりと横に振った。

 

「やはりコロンゾンはこの学園都市に混乱を巻き起こしているようだ」

 

アレイスターが情報を整理していると、周りを見ていたインデックスが口を開いた。

 

「不和、だね」

 

「ふわ?」

 

上条当麻が首を傾げる中、オティヌスは上条の肩で足を組みなおす。

 

「日本語も不自由になったか、人間。つまり仲違いやすれ違いによる暴動や事件が、学園都市で発生してしているのだ」

 

「……それって大熱波が終了したから不満が爆発して、暴動が起こってるんじゃないのか?」

 

不条理を強いられていた者たちがすぐに日常生活に戻れるわけがない。

しかも学園都市は上条当麻が輝けるように、悲劇をわざと積み上げるように造り上げられている。

現在の学園都市は暴動や事件が起こってもおかしくない状態だと、上条当麻はつたないながらも認識していた。

 

「神人はバカじゃない。人々の不満が爆発しないように上手くコントロールしていたし、大衆心理を能力か何かで操って大きな抗争が起きないようにしていた」

 

用意周到で、あらゆる手段で学園都市の人間を守ろうとする真守。

真守に信頼を寄せているオティヌスがそう推測すると、インデックスが頷いた。

 

「水の天使が生まれた時から水と深く結びついているように、コロンゾンは誕生の瞬間から三三三、拡散……つまり『自然分解』に特化した性質と思考を持っているんだよ」

 

インデックスの説明を、スマートフォンで情報整理をしていたアレイスターが引き継ぐ。

 

「つまりあの大悪魔は集団Aと集団Bを対立し合わせ、共倒れさせようとするのだ。朝槻真守が完璧にコントロールしていた学園都市で最低限以上の暴動が起きている。それはコロンゾンによる小細工が働いているのだ」

 

アレイスターは情報整理したスマートフォンを見つめると、一つの地図アプリを呼び出した。

 

「リトマス紙を見るに、この先の公園に何かがあると見ていいだろう。どうせヤツの霊媒に繋がる何か──例えば毛髪などを毛束にして、陣を形成しているに違いない」

 

「じゃあ俺が幻想殺し(イマジンブレイカー)でサクッと打ち消せば、学園都市の混乱は治まるって事か?」

 

上条は自分の右手を見つめる。

そんな上条を見て、アレイスターはチッチッチッと人差し指を振る。

 

「おいおい相手はあのコロンゾンだぞ? 幻想殺し(イマジンブレイカー)で打ち消した途端にトラップが発動するに決まってる。破壊を前提にトラップを組み込むことは容易だ。例えば幻想殺しで打ち消した途端、その魔術の破片が体をずたずたに引き裂くとかな」

 

「じゃあどうするんだよ」

 

「物事には下調べが必要だ。とりあえずコロンゾンが作った陣を全て把握して、トラップがないか調べる」

 

アレイスターは宣言すると、新たなリトマス紙を取り出してふりふりと振り始める。

そんなアレイスターを見て、上条は不思議そうな顔をする。

 

「純粋な疑問だけどさ、コロンゾンはどうして暴動なんて起こしてるんだ? もっと派手な事とかしそうなのに」

 

「ヤツの事だ、決まってる。ただ単に人間が潰し合っているのを見るのが好きなのだろう。それに混乱が多発していれば事件が隠れ蓑となり、『書庫(バンク)』争奪戦も有象無象にまぎれてしまうからな」

 

「……『書庫(バンク)』の方は大丈夫かなあ」

 

一応、上条たちにもカブトムシからの情報は回ってきている。

エルダーと一方通行(アクセラレータ)なら『書庫(バンク)』を守れるであろうが、それでも心配になるというものだ。

 

「私たちがするべきことは『書庫(バンク)』の守護ではなく、コロンゾンの魔の手を排除することだ。このまま残しておくわけにはいかないしな」

 

アレイスターが移動をしながら方針を口にすると、インデックスは口を尖らせて上条を見上げる。

 

「とうま。とうまはなんでもかんでも背負いたがるけど、力になってくれるひとはまもり以外にもいるから、大丈夫なんだよ」

 

「そうだ。人間はもう少し周りの手を借りる事を覚えねばな」

 

オティヌスの同意すらも聞いて、上条は頭をぽりぽりと掻く。

 

「……俺、結構朝槻にべったりしてるけどなあ」

 

「まもりだけじゃなくて私たちの手も借りて! じゃないと噛むよ!!」

 

「わあああ歯をガチガチ言わせないでインデックスさん!!」

 

上条は高速ミシンのように歯をガチガチ言わせるインデックスを見て叫ぶ。

アレイスターはそんな上条の声を聞きながら口の端を緩めた。

 

(いつでもどこでもラブコメができる辺りが、空気を和やかにしているとは思うまい)

 

アレイスターはくつくつと一人で笑って、リトマス紙がボッと燃えるのを見つめる。

上条はそんなアレイスターに気が付いて首を傾げた。

 

「? どうしたんだ、何か気になる事があるのか?」

 

「いや。早くコロンゾンの件を終わらせて、ぐちゃぐちゃにされたいと思っていたところだ」

 

「最悪だこのエロ親父!!」

 

上条当麻の叫びが木霊する中、一同はアレイスターが見つけた思考汚染の元になっている陣がある公園へと向かった。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「む。どこかでエロ親父が思春期少年を翻弄している気がする」

 

エルダー=マクレーンはすらっとした銀の尻尾を、ゆらゆら揺らしながら呟く。

現在、エルダーとある公園のオープンカフェにいた。

すぐそばでは警備員(アンチスキル)が巡回しており、事件があったことがうかがえる。

エルダーはもぐもぐとホットドッグを口にしていたが、ふむっと頷く。

 

「まあ別にアレイスターが思春期少年に悪事を働いていても気にしなくて良いか。ヤツが他者を翻弄したところで、ワタシに害があるわけでもないし。三つ子の魂百までと言うが、アイツは生まれ変わってもセクハラ親父のままよ」

 

ハハハハ、と力なく笑うエルダー=マクレーン。

人工知能だと言ってもエルダーは元々人間だ。しかも女だから、勘がとても良い。

その鋭敏な勘の通り、アレイスターは上条当麻を翻弄してブイブイ言わせていた。

エルダーは猫耳をぴょこぴょこ震わせながらもぐもぐとホットドッグを口にする。

そんなエルダーに、カブトムシが現状報告をした。

 

『エルダー。プロセッサスーツを装着した覆面男は現在一〇三体にまで増えています』

 

『次代』の『書庫(バンク)』として機能するプロセッサスーツ。

それを奪ったであろう烏丸府蘭は自分が着ているプロセッサスーツのダミーを造り上げて、エルダーたちを翻弄していた。

しかもそのダミーの数が尋常ではない。そしてダミーは人々にも牙を剥いていた。現在、カブトムシが早急に対処しているが、後手に回っているのは事実だ。

 

「三ケタまでに囮が増えると相手をするのも時間の無駄だな。帝兵、そのプロセッサスーツを着込んだダミーの詳細は分かったか?」

 

『捨て身でパラメータを取得したところ、どうやら魔術由来の異能のようです』

 

「ふむ。パラメータをこちらにも寄越せ」

 

エルダーが指示すると、カブトムシはエルダーに情報を寄越す。

 

「む? なんというか、大分不安定な数値だな。魔術とは大概ありえない数字だが、これは輪に掛けておかしい。まるでわざと実験を失敗させて生み出した不安定さだな……」

 

エルダーが一人呟いて推測する中、カブトムシは補足説明をする。

 

『プロセッサスーツのダミーは細胞質の群れでできています。学習能力が高い細胞質の群れで、プロセッサスーツを着込んだ人物の動きを完全にトレースしています』

 

「ほう。細胞質の群れだと?」

 

『はい。細胞質の群れはすぐに形を変えることができます。そのため倒してもキリがありません。ですので、私たちが接触した細胞質の群れは全て氷漬けにしました』

 

エルダーはふんふんと頷きながら、カブトムシの説明を聞く。

そして情報を整理して、ぴこんっと猫耳を震わせた。

 

「細胞質ならば増殖も容易いだろうな。だからこそ囮が一〇三体にまで増殖しているのだろう。しかもプロセッサスーツに擬態しているだけではない。そこかしこに細胞質の群れでできた敵がいる可能性もある」

 

『ええ、その通りです。精査した結果、質量は接触した一〇体全部が三二キロと制約があります。ですが色や形が多彩に変化し、その力は最大で並の恐竜を超えるほどのようです』

 

エルダーはカブトムシの説明と記録を確認して、思い出したことがあった。

 

「ふむ。『なんにでも形を変えられる』か。そして恐竜のような膂力と来た」

 

『何か気になることが?』

 

「うむ。アレイスターの記憶に、ミメティックプレデターなるものがあったと思い出した」

 

『それはなんですか?』

 

カブトムシが問いかけると、エルダーはカフェラテへと手を伸ばす。

 

「ネス湖の実験でアレイスターはいつも通り失敗した。あの時、精霊のなりそこないのようなものが大量に生み出されたのだ。その後の顛末は知らぬが、あの『怪物』は膂力と咀嚼力が大変強く、恐竜の生き残りではないかと騒がれておった」

 

エルダーはカフェラテを飲んで、一息つく。

そんなエルダーを見て、カブトムシはヘーゼルグリーンの瞳を収縮させた。

 

『UMAとして有名なアレですか?』

 

「なんだ。科学に彩られたオマエも知っているのか?」

 

エルダーが意外そうに告げると、カブトムシはヘーゼルグリーンの瞳を煌めかせる。

 

垣根帝督(オリジナル)の指示で、オカルトに関連する情報を収集していますので』

 

「ふふ。垣根帝督は真守を守るためなら全力で頑張るからな」

 

エルダーはカブトムシの背中を優しく撫でる。

すると、そんなエルダーの頭上から一方通行(アクセラレータ)が降りてきた。

 

「『今代』の『書庫(バンク)』である総合取引証券所を攻撃したA・O・フランキスカなる、プロセッサスーツを着込んだ人間。そいつには逃げられたのだろう?」

 

「途中でオマエの言うミメティックプレデターってヤツが邪魔しやがった。つーか、その口ぶりだとオマエは俺が絶対に捕まえられねェって思ってたのかよ」

 

書庫(バンク)』として運営されている『今代』の高速サーバーは総合取引証券所のものだった。

その総合取引証券所を強襲したプロセッサスーツを着込んだ烏丸府蘭は、自らのことをA・O・フランキスカだと宣言していた。

 

その宣言に何の意味があるか不明だが、烏丸府蘭は『書庫(バンク)』の代替わりを済ませている。

つまり何が何でもプロセッサスーツを奪取するか破壊して、『書庫』を取り戻す必要がある。

 

「魔術に反射は効かない。それはオマエがミメティックプレデターのパラメータを取得していないからだ。だが安心しろ、帝兵が別口でパラメータを取得した。その情報があればオマエの反射もミメティックプレデターに効くであろう」

 

エルダーは笑うと、一方通行(アクセラレータ)へとホットコーヒーを手渡す。

一方通行はチッと舌打ちしながらも、エルダーからコーヒーを貰う。

 

「焦る必要はない。確かにプロセッサスーツは『書庫(バンク)』を丸ごと収めるストレージに加えて外部と情報を送受信できる高性能スペック仕様だ。だが『書庫』の情報は膨大で高性能過ぎるが故に、外での技術では簡単に扱えぬ。学園都市からスーツを持ち逃げでもせぬ限り、対処の仕様はある」

 

一方通行(アクセラレータ)はエルダーに窘められて、とりあえずバッテリーを充電するためにエルダーと同じテーブルの席に座る。

すると、カブトムシがヘーゼルグリーンの瞳を瞬かせた。

 

『エルダー、一方通行(アクセラレータ)。気になる個体がいます』

 

「帝兵、気になる個体とは?」

 

エルダーが問いかけると、カブトムシはヘーゼルグリーンの瞳で空間に映像を投影する。

 

「……なンだこの気持ち悪い動きしてやがる覆面男は」

 

スクリーンに映し出されたのは、警備員(アンチスキル)が追いかけているプロセッサスーツだ。

はっきり言ってとても間抜けな動きだ。

 

ミメティックプレデターは学習能力が高く、通常であればミメティックプレデターはA・O・フランキスカなる人物の動きをトレースして行動している。

 

そのためカブトムシが注視しているプロセッサスーツは、ミメティックプレデターである確率が非常に低い。

 

「ほう。──一方通行(アクセラレータ)、このプロセッサスーツの中には人間が入っておるのだろう。その性能からしておそらくスペアだ」

 

「それがどォした。プロセッサスーツはスペアとセットで作られてたンだ。誰かが着させられていてもおかしくねェ」

 

「そうだな。プロセッサスーツはスペアとセットで作られている。それが重要だ」

 

「あァ? 何が言いてェ」

 

一方通行(アクセラレータ)は怪訝な顔をしてエルダーを見る。

エルダーはテーブルに載っているポテトへと手を伸ばしながら、微笑む。

 

「プロセッサスーツはスペアとセットで作られている。それは型式を同じくしているということだ。そうでなければスペアの意味がないからな。そしてこれはどこからどう見ても起動している」

 

人工知能らしくエルダーが情報を整理すると、一方通行(アクセラレータ)は怪訝な表情をする。

 

「基幹プログラムと設定プロファイルが同一だから本体とスペアは同期しちまってるって事か。だったらスペアのプロセッサスーツも回収するかぶっ壊す必要が──……待て。それはつまり、」

 

一方通行(アクセラレータ)は顔をしかめて、すぐさまその事実の意味するところを理解して目を見開く。

エルダーは学園都市の最高峰の頭脳らしく頭の回転が速い一方通行を見て微笑む。

 

「本体とスペアは基幹プログラムや設定プロファイルが同一。そして二つとも起動している。つまり重複する個人情報と識別番号によって、二つのプロセッサスーツが競合を起こしておるのだ。そのせいで、正しいネットワーク認証ができない状態となっておる」

 

エルダーは情報を整理して、ご機嫌に尻尾を揺らめかせる。

 

「つまり現在、『書庫(バンク)』は『書庫』としてうまく機能していない状態だ。そんな状態ではA・O・フランキスカも囮のプロセッサスーツの演算コアを破壊するか、手動で全権を差し出させてスペアをスレーブ化させなければ『書庫』の全てを手に入れられない」

 

エルダー=マクレーンは自信たっぷりで告げる。

 

「これでもっと時間の猶予が生まれたな。A・O・フランキスカもスペアが邪魔だと気づいておろう。なればこそ絶対に囮のプロセッサスーツを壊しにかかる。囮のプロセッサスーツをマークしていれば、A・O・フランキスカも一網打尽にできるというワケだ」

 

方針は決まった。この状況を打開できる策も見い出せた。

必ずスペアのプロセッサスーツを破壊するために、A・O・フランキスカは動き出す。

スペアの動きに注視していれば、カモがねぎを背負ってくるように、逃げ回っているA・O・フランキスカが姿を現すのだ。

一方通行(アクセラレータ)は方針が決まった中、少し辟易する。

 

「つか、なンで『『書庫(バンク)』の居場所がバレねェよォにって、持ち運びできるよォにしたんだよ。そのまま盗まれるかもしれねェって考えなかったのか、連中は?」

 

「ふふ。意外性を求めた結果、面白い事になってしまったな」

 

「面白くねェよ」

 

一方通行(アクセラレータ)が毒吐くと、エルダー=マクレーンはにししっと笑った。

そのいたずらっぽい表情は真守そっくりだ。

 

エルダー=マクレーンは本当に真守のご先祖様なのだ。

だからきっとこの女性と接するのは居心地が良いのだろう。

 

一方通行(アクセラレータ)はそう思いながら、エルダーが頼んでいたホットドッグを貰う。

そして朝食を手早く済ませて、プロセッサスーツを着込まされている一般人のもとへと向かった。

 

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