とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

301 / 330
第一三七話、投稿します。
次は一〇月一九日木曜日です。


第一三七話:〈人造生命〉から救済方法を聞く

コロンゾンが対アレイスター用に用意した霊装、神威混淆(ディバインミクスチャ)

修道女であるオルソラ=アクィナスは、霊装と一緒にコロンゾンが用意したクリファパズル545の影響によって、神威混淆を手にしてしまった。

 

彼女を救うために、ロンドンで起こっている事象を解決するために。一方通行(アクセラレータ)はたった今自分のモノにしたクリファパズル545を見た。

 

「クリファパズル545」

 

『は、はいご主人様っ!』

 

悪魔は主人と定めた一方通行に名前を呼ばれて、居住まいを正す。

神威混淆を身に纏ったオルソラは、今も極彩色の植物でロンドンの街を破壊し続けている。

真守たちがいる場所はまだ無事だが、時間の問題だ。

そのため一方通行は素早く、冷静に問いかける。

 

「神威混淆はどォやって解除する? それが一番最初にオマエに聞きたいことだ」

 

『はいですぅ。……神威混淆を身にまとっている人間は、外部の人間と話が通じ合っているようで通じ合っていないんですぅ』

 

クリファパズル545は新しい主人に尽くすために、即座に神威混淆について口にする。

真守はクリファパズル545の説明を聞いて、ふむっと頷いた。

 

「それはつまり神威混淆を身に纏ってる修道女に直接対面して説得しても、話が噛み合わずに説得が不可能というワケか。……話を聞いてくれる修道女が、話を聞いてくれなくなるのだな」

 

真守は修道女として敬虔な信徒だろうオルソラの事を想って、寂しそうにする。

垣根は、クリファパズル545の説明と真守の呟きで推測が頭に思い浮かんだ。

 

「あの霊装を身に纏ってるヤツは周りの人間と強制的にすれ違う。神威混淆ってのは無理解・不寛容を攻撃に転じてるって霊装だよな。そりゃつまり、霊装を身に纏ってるだけで無限に攻撃に転用するためのエネルギーを生み出せるって事か」

 

「むう。まったく良くできた仕組みの霊装だな」

 

クリファパズル545は、納得する真守たちに説明を続ける。

 

『人間は往々にして平穏や愛情、安心そして未来や繁栄を理由にして戦争をしますですぅ。同じ方向を向いているようで、その実不和が生じている。それを極限まで高める事で、強大な力を発揮しているのですぅ』

 

一方通行(アクセラレータ)は人間の習性を口にする悪魔を前に、目を細める。

 

「あの神威混淆を通すと自然に不和が生じる。それが力になる。だったら神威混淆って言うのは変圧器みてェなモンで、アレを通す事によって言葉を違う意味に変換してるって事か?」

 

『ご主人様の解釈で間違っていないですぅ。その点がアレイスター=クロウリーに対してのキラーとなるのです』

 

クリファパズル545の言い分を聞いて、垣根は吐き捨てるように告げる。

 

「はん。つまりさっき統括理事長サマがちょろっと口にしてたが、好き勝手書いてた英字新聞と同じってことだな?」

 

垣根が問いかけると、クリファパズル545は頷く。

 

『アレイスター=クロウリーは好き放題悪評を書き殴る新聞記者たちに対して、期待された通りの悪人の顔をしてそれを楽しんでいましたでしょう? 周囲の理解や寛容など、ハナからまるで期待していませんですぅ』

 

真守は顎に手を当てて、むーっと口を尖らせる。

 

「齟齬が大きくなればなるほど、神威混淆は莫大な力を発揮する。アレイスターに対して威力がバカ高いのはそういう理由か」

 

真守が頷く隣で、垣根と一方通行(アクセラレータ)が同時に口を開く。

 

「「だったら理解すればいいって事か」」

 

真守は大切な人たちの重なった声を聴いて、きょとっと目を見開く。

そして柔らかく微笑んで、真守は忌々しそうにしている垣根と一方通行を見た。

 

「ふふ。垣根と一方通行って、やっぱり思考回路が似てるよな」

 

一方通行と垣根帝督は、よく似ている。

それは恐らく彼らが強大な力を持っているからこそ、思考回路が似通っているのだ。

そして実は、真守も一方通行は自分のもう一つの可能性だと思っていた。

つまり三人は似ているという事で、それが真守は嬉しいのだ。

 

真守がにまにま笑うと、垣根と一方通行(アクセラレータ)は同時にチッと舌打ちをした。

その同時の舌打ちすらも、真守は喜ばせるだけである。

 

「ぷっ、くくく。他人なんて利用するしか価値がないとか真顔で言ってた垣根と、絶対的な力を持ってしか他人と交流できないって思ってた一方通行から『理解すればいい』なんて言葉が出るなんて、いやあ人は変わるものだなあ」

 

真守がくすくす笑っていると、嫌な過去を暴露された垣根と一方通行は同時に叫ぶ。

 

「「うるせェ!」」

 

「あいたっむぐぅ!!」

 

真守は一方通行(アクセラレータ)にチョップをされて垣根に頬をつままれてむーむー叫ぶ。

 

()ほんらほと(こんなこと)ひへるはあい(してる場合)ひゃない(じゃない)っ!! おるそらたふけ(たすけ)いふぁないほ(いかないと)っ!!」

 

「「オマエが余計な事言うからだろォ!!」」

 

垣根と一方通行は同時に怒鳴る。

一方通行は苛立ちを見せて、自分の頭に手を持って行って髪の毛を触る。

そして垣根はぎりぎりと真守の頬をつまむ。

一方通行はカブトムシに充電してもらった電極のスイッチを切り換えた。

 

「ッチ。行くぞ、クリファパズル545。ついてこい」

 

『は、はいですぅっ』

 

クリファパズル545はふわっと浮かび上がると、一方通行の隣に浮遊する。

 

「……はあ。行くぞ、真守」

 

垣根は真守の頬から手を離すと、真守のことをひょいっとお姫様抱っこする。

 

「むー……ほっぺ伸びちゃう……」

 

真守は垣根に引っ張られた頬を、優しく撫でる。

そんな真守を見て、垣根は自業自得だとケッと吐き捨てた。

 

「……お前、まだあの修道女直視したらヤバいんだろ。俺もお前に極力能力使ってほしくねえから連れてってやる」

 

「ふふ。ありがとう、垣根」

 

真守は頬を気にしながらくすっと笑うと、背中にくっついて髪に隠れていた帝兵へと向ける。

 

「オルソラを救う手段は見つかった。それを上条に伝えてくれ。私たちも合流するって」

 

『了解しました』

 

カブトムシが声を上げるのと同時に、垣根は未元物質(ダークマター)の翼を広げた。

一方通行も純白の翼を広げると、その場から飛んだ。

目的はもちろん神威混淆と接続されたオルソラ=アクィナスを解放する事。

そのため学園都市の頂点たちは、上条当麻のもとへと急行した。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

オルソラ=アクィナス。彼女を取り込み本来の用途で使われていた神威混淆(ディバインミクスチャ)は、ロンドンの地下鉄内で暴利を貪っていた。

 

地下鉄に戦いの場が移ったのは上条当麻が地下鉄内に逃げ込んだからだ。

神威混淆を身にまとったオルソラ=アクィナスは浮遊していた。

高さが限られている地下では、それなりにその力が制限される。

 

それを狙って地下に逃げた上条だったが、神威混淆はロンドンの地下を複雑に網羅する地下鉄全てに自身の蔓を伸ばした。

 

ロンドンの地下鉄の構造は伸ばせば地球を二周半もするほどに広大だが、神威混淆は対アレイスター用にコロンゾンが用意した強力な霊装だ。

そのため隅から隅まで自身の蔓をくまなく伸ばすことができる。

しかもその蔓で、神威混淆とオルソラは周囲の情報を蒐集することができた。

 

なんとかして奮闘する上条当麻だったが、地下鉄内は神威混淆の力によって地獄と化した。

 

アレイスターが神威混淆の攻撃を喰らって打ちのめされる中、上条当麻はオルソラ=アクィナスと相対した。

 

地下鉄内の、サッカーグラウンドほどの広さがある空間。

だが石柱や天井によって圧迫感を覚える開けた場所。

そこに到達した時、上条当麻は現れた人造生命体によって救いの手を差し伸べられた。

 

『神威混淆は変圧器のようなものです。その神威混淆からオルソラ=アクィナスを解放する方法とは、使用者とそれを止める人間が対話をし続け、心を通じ合わせること。それができれば変圧器として使い物にならなくなるのです』

 

神威混淆とは相互不和を攻撃力に変える霊装だ。その機能が損なえば、力を失う。

 

『オルソラ=アクィナスの人となりを知った上で、分かり合うために対話をする。そのためには彼女と深い関係を持つ者ではないといけません』

 

暴力ではなく、ただただ一心に心を通わせることで、オルソラを解放することができる。

そうカブトムシに教えられた上条当麻は頷き、オルソラと対話した。

 

オルソラを解放するのは朝槻真守にはできないことだ。

彼女を解放する条件に当てはまるのは『法の書』絡みで彼女を助けた上条当麻と、敵対していたとしても後に助けてもらい、心を通じ合わせたアニェーゼ=サンクティスだけだった。

 

オルソラのことをよく知っていた上条当麻だからこそ、上条当麻は彼女を解放することができた。

そしてオルソラの拒絶により引きはがされた神威混淆は次の宿主を求めた。

 

そんな神威混淆に、上条は自分に取り付けと宣言した。

だがその誘惑を跳ねのけて、神威混淆は力弱く横たわっているアレイスターを次の宿主に選んだ。

それでも神威混淆は使用者が受け入れなければ力を振るうことができない。

 

アレイスターに拒絶された神威混淆はオルソラがとどめを刺すことで完全に破壊された。

 

「うわ。清貧を是とする修道女がとんでもない姿にっ」

 

カブトムシに上条へ救済方法を伝えるようにお願いをして、神威混淆が生み出した食虫植物たちを撃退しながら進んできた真守たち。

真守は素っ裸になっており、上条が慌てて学ランを貸そうとしているオルソラを見て声を上げる。

 

「垣根! 早く修道服造ってあげて、おねがいっ! ……ああ、でも十字教って宗派によって修道服って違うのか。オルソラは武闘派シスターと同じ宗派だから、ローマ正教式?」

 

慌てる真守の前で、垣根は眉をひそめる。

 

「流石の俺も十字教の人間が身に纏う修道服の違いは分からねえよ。どっかの統括理事長サマが毛嫌いするせいで、宗教から縁遠い生活してたしな」

 

「ちょっと待って、いま帝兵さんで情報収集するからっ」

 

真守はカブトムシに服装の図面を即座に起こしてもらい、垣根にお願いする。

垣根は上条の学ラン一枚で大変グラマラスな体を隠しているオルソラから配慮で目を背けながら、カブトムシが測った寸法通りにきちんと修道服を仕立て上げる。

そんな真守と垣根の隣から離れた一方通行(アクセラレータ)は、地下鉄の壁に寄り掛かっているアレイスターに近づいた。

 

「よォ。随分とまァぼろ雑巾になったな。統括理事長サマよォ」

 

「ふ。そうは言ってもキミたちが頑張らなければもっと不味くなってただろうな」

 

一方通行(アクセラレータ)は笑うアレイスターの前でチッと舌打ちする。

そして本当に嫌そうにしながらも、一方通行はアレイスターに手を貸して立ち上がらせた。

するとカブトムシがわらわらとアレイスターのもとにやってきて、治療を開始する。

 

垣根はカブトムシが集めた情報のもと、シスター服を完璧に造り上げた。

白と黒で構成された、ローマ正教式のシスター服だ。

 

「ほらよ。未元物質(ダークマター)は何もしなけりゃ真っ白なままだが、サービスだ。色黒くしてやったぜ」

 

オルソラはカブトムシが用意した着替え用の丸いカーテンの中で着替えて、外に出る。

 

そしてローマ正教式のスカートや、袖が取り外せるジッパーでさえ再現されている自分が身に纏う修道服を、じっくりと見つめる。

 

「学園都市の生徒さんはお洋服まで仕立て上げる事ができるのでございますね。それに着心地がとても良いです。あなたは服飾を営んでも大成しそうなのでございますよ」

 

「俺の未元物質(ダークマター)は服を作るためにあるんじゃねえよ。もっと高尚な使い方がある」

 

垣根はのほほんとしたオルソラの言葉をばっさり切り捨てる。

だが、オルソラはそれを気にも留めずに顔を輝かせる。

 

「そうだ。英国にはメイド服を専門に扱っているお店がありますから、そこで働くのはいかがでございましょう。イギリス清教の女子寮でも贔屓にしている店なのですよ。私も女神様ゴスメイドに袖を通したことがあるのでございます」

 

垣根はばっさり切り捨てたはずの話題を続けるオルソラに怪訝な表情をする。

そんな垣根に目もくれず、オルソラはまあ、と手を口に当てて頭を下げた。

 

「そういえばまだお礼を伝えていませんでした。助けてくださってありがとうございます。……分かっているのでございますよ。あなた方が上条さんに私の助け方を教えてくださったのを、私は覚えているのでございます」

 

オルソラは頭を下げてから、不思議そうに首を傾げる。

 

「そういえばあのカブトムシさんもあなたのものなのですか? かわいらしい学園都市製のロボットでございますね。私のために頑張ってくれたあなた様はきっと、多くの方から好かれる素晴らしい方でございましょう」

 

垣根は一人でぽんぽんと喋るオルソラを前に、眉をひそめる。

 

「このシスター、今も話が行ったり来たりするのは俺の気のせいじゃねえよな。しかもそのメイド服って土御門御用達っぽいんだが。それにカブトムシはロボットじゃねえし、俺は良い奴じゃねえ。何もかもズレてやがる……」

 

垣根が細かくツッコミを入れて辟易する中、真守は眉をひそめる。

 

「神威混淆の影響を受けてるのか? いいや、そんなハズはないんだが……」

 

神威混淆は人の不寛容と無理解を引き起こす霊装だ。

だがその霊装は破壊されている。そのため、影響を受けるはずがないのだ。

未だに話が通じない気がするオルソラを前にして、真守と垣根は訝しむ。

すると、上条は無表情で首を横に振った。

 

「オルソラは元々そうだから。そのおっとりお姉さんは普段から話が行ったり来たりするんだよ」

 

真守はこれがいつも通りだという上条から目を逸らして、オルソラを見る。

 

「オルソラ=アクィナスって確か世界各地で布教活動をやってきて自分の名前が付いた教会まで日本に造られようとしたハズだが。……これで一体どうやって教えを広めたんだろか」

 

真守が不思議に思っていると、垣根は真守の隣で遠い目をする。

 

(こんな話が通じねえ修道女が功績を讃えられて教会作ってもらえんのか。世の中広いモンだな。……魔術サイドなんて知らねえで、学園都市牛耳ったら世界手に入るってちょっと前まで信じてたのが馬鹿馬鹿しいくらいだ)

 

垣根が遠い目をしているのを見て、真守はくすっと笑う。

猛威を振るった神威混淆は、真守たちや上条の右手によって全て破壊された。

コロンゾンがロンドンの人々の思考を汚染していたクリファパズル545もどうにかできた。

 

後はアレイスターが目的地としているウェストミンスター寺院へと行くだけだ。

そのために、一同はオルソラを大英博物館へと送り届けて移動し始めた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。