とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一六一話、投稿します。
次は二月一二日月曜日です。


第一六一話:〈反転攻勢〉で動き出す

突如現れて『騎士派』の騎士たちを困惑させたのは、真守の先祖であるエルダー=マクレーンだ。

エディンバラ城内を、エルダー=マクレーンは闊歩する。

城を守る『騎士派』の騎士たちは、何も言えない。

 

何故なら赤ん坊を抱き上げて犬と男女二人を引き連れて歩くエルダーに、マクレーン家の面影がばっちりあるからだ。

 

貴族のように毅然として、堂々とした立ち振る舞い。

彼女のことを止められる『騎士派』の騎士は、いなかった。

エルダーはエディンバラ城を堂々と歩くと、ばーんっと会議室の扉を開け放つ。

 

「ふっふふー、真打ち登場とはこのような事を言うのだなっ!」

 

ペルシャ猫を彷彿とさせる、西洋喪服を模したドレスを身に纏う淑女。

自信たっぷりな表情。あどけない顔つき。華やぐ淑女。

ぴょこんっと震える猫耳と尻尾。それを見た英国女王は目を剥いた。

 

「……待て、待て待て待て待て」

 

英国女王はカーテナ=セカンドを持ったまま、突然現れたエルダー=マクレーンに困惑する。

 

「どっかで聞いた事ある声だ。しかも皺を綺麗に蓄えていたのを覚えておるが、どっかで見た事ある顔だぞ……!?」

 

英国女王はエルダー=マクレーンを見て、思わずたじろぐ。

エルダーは視線を感じて目を見開くと、表情を輝かせた。

 

「おおっ、エリザードか!」

 

エルダーはぴょこんっと猫耳を跳ねさせて、嬉しそうに尻尾を揺らす。

 

「いやはや。あんなにちっこかったのに今はちゃんと女王陛下やってるとか、まったく。時が経つのは早いと実感させられるぞ?」

 

ぺかーっと楽しそうに表情を明るくするエルダー。

ルンルンご機嫌な様子を隠し通せていないのは、久しぶりに英国へと帰ってきて顔なじみに会ったからである。

そんなエルダーに英国女王はカーテナ=セカンドの切っ先を向けて叫ぶ。

 

「エルダー=マクレーンッ……!?」

 

「うむっ。それでも今のワタシは魔導書の『原典』であるがな。だが偽物だと断じてくれるなよ? ワタシは一度確かに断絶されたが、自らを地続きであると定めた。受け入れよ」

 

あんぐりと口を開けるエリザード。

真守はその様子を見て首を傾げていたが、納得した声を上げた。

 

「そういえば英国女王が子供の頃、エルダーさまはまだ生きていたんだよな。エルダーさま、久しぶりに故郷に帰って来られてすごく嬉しそう」

 

真守が納得した声を上げると、真守に寄り添っていたアシュリンが笑う。

 

「しかもマクレーンの現当主とエリザードさまは幼馴染であられますから、エルダーさまと会った事もあったのよ。真守ちゃん」

 

ほーっと感嘆する真守とアシュリンを見て、リメエアは目を細める。

 

「マクレーン。説明して頂戴、あの方は誰?」

 

「エルダー=マクレーン様。わたくしと真守ちゃんのご先祖さまですわ。わたくしにとっては曾祖母、真守ちゃんにとっては高祖母にあたりますの」

 

アシュリンが説明すると、英国女王が驚愕の声を上げた。

 

「なっなんで若作りしておるのだ!? ピッチピチじゃないかっ!! しかも猫耳と尻尾って!! どんなキャラを狙っておるのだ!?」

 

「それは我が友のおかげであり我が友が元凶であるからして、気になるだろうが気にしてはならぬことである。キャラ的に言えば猫耳貴婦人だがなっ」

 

「わがとも?」

 

女王エリザードはご機嫌に楽しそうに笑うエルダーの言葉に目を瞬かせる。

エルダーは笑うと、座っているアレイスターへと目を向けた。

 

「そこの銀の少女、アレイスターはワタシの友だぞ。ワタシは元々問答型思考補助式人工知能(リーディングトート78)としてアレイスターに必要とされていた。だからワタシは学園都市が今のカタチをした時から、『窓のないビル』の中でアレイスターとずぅっと一緒だったのだぞ」

 

英国女王は驚愕で絶句する。

確かにエルダー=マクレーンが生きていた時代と、アレイスター=クロウリーが活躍していた時代は重なっている。

だがそんな繋がりがあるとは英国女王も思わなかった。というか当時子供だったので、エルダーの交友関係なんて知るはずもないのだ。

 

「ダメだ、くらくらしてきた……」

 

「しっかりしてください、お母さま」

 

第一王女リメエアはよろよろしているエリザードを受け止める。

真守は突然現れたエルダー=マクレーンとリリスを見て笑う。

 

「大丈夫。きっと明日は変わらずにやってくるよ」

 

真守の言葉に、一同は真守を見た。

 

「ここには全部があるんだからな。大丈夫だよ、誰も犠牲にしないで世界を救う。私たちにはその力がある」

 

真守は柔らかく微笑んで、上条を見た。

上条は頷く。

 

「今の俺には幻想殺し(イマジンブレイカー)がない。けど、俺は自分のやりたいことを曲げるつもりはねえよ」

 

上条当麻はそう告げる。

だって朝槻真守が信じてくれたのだ。

 

記憶がなくても、幻想殺しが無くても。上条当麻の在り方は変わらないと。

だから自分は自分のできる事をやればいい。これまでだってそうしてきた。

届く範囲の人々を救う。幻想殺し(イマジンブレイカー)がなくたって、その想いを捻じ曲げる必要はない。

 

「ここにゃイギリスの内部事情を知ってる『王室派』も、一〇万三〇〇一冊以上の魔導書を丸ごと抱えこんだインデックスもいる。俺たちだっている」

 

上条はニッと笑うと、アレイスターを見つめた。

 

「だからアレイスター。全部を使って、エイワスだのコロンゾンだの盤面なんて全部ぶっ壊そうぜ。家族を守って最後に笑うのはお前でいい。そうだろう?」

 

アレイスターは上条当麻の問いかけに頷く。

 

「……全部寄越せ。貴様たちが持っている情報と技術を全部!!」

 

アレイスターの声が響く中、一同は頷く。

敵対するはコロンゾン。生命の樹の『深淵』に佇む悪魔。

 

「人間の本気ってヤツを見せてやる」

 

真守がそう告げて、柔らかく微笑んで。そして獰猛に笑った。

方針は決まった。科学と魔術も関係ない。過去の因縁や暴挙も気にしない。

一同は一つにまとまった。そんな状況で、垣根帝督は鋭く目を細めた。

 

「来るぜ」

 

真守が見つけた解決策。それをコロンゾンに知られないために、垣根帝督はカブトムシに未元物質(ダークマター)を散布させて空間を満たし、認識阻害をしていた。

 

真守たちがいる作戦会議室は、コロンゾンにとってどんな場所になっているか分からない。

だがコロンゾンは自らの天敵であるリリスを追って、真守たちのいる場所へ攻撃を仕掛けてきた。

 

どんッ!! という、真下からの突き上げ。

それはエルダー=マクレーンが抱えているリリスを間違いなく狙っていた。

 

エルダー=マクレーンはリリスを揺らさないように跳躍して真横に飛び、柱の凸凹部分にシュタッと張り付く。

 

「アエティール・アバター。一三なるZIMか!!」

 

アレイスターはリリスの無事を確認しながら、コロンゾンの攻撃方法を看破する。

 

『……お互いチェックメイトへの作業にかかりきりか。だだこちらは離れた場所から自由に盤を掻き回せる立場だぞ』

 

コロンゾンは作戦会議をしていた場へと躍り出て、アレイスターを睨む。

するとアレイスターは不敵に笑った。

 

「安心しろ、リリスは使わせない。世界の誰にもだ。そして──朝槻真守もだ」

 

『「流行」を冠した俗物と潰し合うのは不毛だが、それ以外でこの私を撃破する可能性がわずかでもあるその赤子はここで摘み取る。これは既に確定した選択だ』

 

コロンゾンが宣言する中、分厚い石の壁を砕く轟音が響く。

それは作戦会議室の壁に巨大な金属のコンテナが突き刺さった音だった。

 

そのコンテナのすぐ近くにはエルダー=マクレーンと共に来たカエル顔の医者とゴールデンレトリバー。そしてスーツ姿の木原唯一が立っていた。

 

コンテナは壁に突き刺さると、ぱたぱたぱたっと自らの側面を立方体の展開図のように広げる。

 

すると。必然として中にあった凶悪で大仰な武装の数々が垣間見えた。

それは次々と大型犬へと接続され、それを見て御坂美琴はあっと声を上げた。

 

その武装はまぎれもなくA.A.Aだ。

A.A.Aを駆使する御坂美琴の先輩に当たる木原脳幹は低いダンディな声で告げた。

 

『使え、アレイスター』

 

木原脳幹が携えているのは御坂美琴の携えるA.A.Aと明確に異なるものだ。

数トンにも及ぶ重量を背中側の支持脚で逃がす美琴と違い、木原脳幹はA.A.Aを浮遊させている。

 

ソロモンの魔導書曰く。

大きな儀式を行う時は三人の弟子か、それらが揃わなければ忠実な愛犬を伴うべきらしい。

 

『こういう回り道は避けたいものだが』

 

木原脳幹は自らの姿を見て、完全復活に感激している木原唯一をよそに告げる。

 

『世の邁進を否定するためには、まずその現象の詳細を調べねばならぬ。良いだろう、全てを開陳しろよアレイスター。敵対知識として吸収してくれる。全てを拒絶するためにな』

 

木原脳幹の声が響く中、御坂美琴のA.A.Aに変化が起こる。

 

「わっ」

 

御坂美琴は突然自分の意思とは反して動き出したA.A.Aに困惑する。

 

「ちょ、待って、ひとりでにっ、動く!?」

 

御坂美琴が困惑する中、木原脳幹と御坂美琴のA.A.Aから赤い閃光が繰り出された。

鮮血よりも禍々しい二本の輝きは、人知れず十字に交わる。

それを見て、コロンゾンは一人呟く。

 

『血の供儀か。だがオシリスの時代の魔術では、私を害することは叶わぬぞ、人間。支配者の法則は既によそへと逸れている!』

 

「誰が男性神格の血液などとのたまった、コロンゾン?」

 

『ならばベイバロンか? 半端に女性原理をかじったところで何がどうなる。それではせっかく貴様が会得した聖書の力、十字の力に導かれた男性原理の奇蹟を手放すだけだ』

 

コロンゾンは魔術知識を礎にアレイスターと渡り歩き、鼻で笑う。

 

『まっさらな状態から積み上げるのは苦労せん。だが究極的なまでに功を積み上げれば、人間はそれ以外に適応できない特化型となる。身動きが取れなくなるに決まっておろう!』

 

ローマ正教の神の右席は、天使の術式に特化した故に例外を除いて普通の魔術が使えなくなった。

昇り詰めれば昇り詰めるほど、応用が利かなくなる。

そう主張するコロンゾンを見て、アレイスターは笑った。

 

「愚かしいなコロンゾン、全ては積み重ねだ」

 

科学を一から構築し、頂まで昇りつめた統括理事長は語る。

 

「時代とは異なる様式を否定する概念ではない。イシスとの結合があるからオシリスがあり、オシリスの殺害があるからホルスは輝く。十字教を憎まなければ、私は魔術を学ばなかった。どれだけ忌み嫌っても、私の土台には常に磔刑に処された『神の子』がある。それが事実だ」

 

『貴様……』

 

「故に我は魔術の輪を結ぶ。イシスよりオシリス、オシリスよりホルスへと辿る道を! これより因と果を連結せしは我が身と大悪魔。よってベイバロンの赤は速やかに敵を撃ち抜き、その飛沫を余さず私へ返せ!」

 

中心に銀の少女を携えて、二種のA.A.Aは大悪魔へと牙を剥く。

 

『だからどうした』

 

金の髪でできた、竜にも天使にも見える神々しくも禍々しい影は笑う。

 

『忘れたのか。我が名はコロンゾン、ダアトのある「深淵」に潜み、上下の橋渡しを管理する大悪魔なり。生命の樹、上位三種のセフィラへと到達できなかった貴様が、樹の全てを自由に行き来する私に敵うとでも思ったか!!』

 

普通ならば、アレイスターの一撃はコロンゾンには通じない。

だがこの場には、コロンゾンと同じ領域へと達した朝槻真守がいる。

 

「お前の『拡散』は『流行』に至った私の存在の根底まで届いた。だから当然、お前の『拡散』のパラメータは取得している」

 

真守はA.A.Aと干渉する。

そしてコロンゾンという完璧な存在を穿つためのパラメータを入力した。

それは少し皮肉が込められていた。

自然分解を司るコロンゾンという存在を『拡散』させるパラメータだ。

 

『な……ッ』

 

コロンゾンはまさかの攻撃に、声を上げる。

そんなコロンゾンを前にして、アレイスターは獰猛に笑った。

 

「そういえば一九〇九年の召喚実験の時もそうだったな。貴様は召喚したる私を圧倒する事には成功したが、私を支えるニューバーグにまで気が回らなかったなあ!」

 

アレイスターの怒号と共に、銀の少女の両脇に侍るA.A.Aの閃光が重なる。

共振のように、その威力は増し。

莫大な量の金髪を束ねた異形の怪物は内側からバラバラになった。

 

ボンッ!! という、まるで風船が割れたような音。

そして力を失って散り散りになった金髪がはらはらと舞う。

 

だがこの場にいるコロンゾンに『拡散』を穿っても意味がない。

つまり退却させただけだ。やはり本質を叩かない事には始まらない。

 

「さて、攻勢に出るぞ」

 

アレイスターはそう告げて、進み出す。

 

かつて。アレイスター=クロウリーは、たった一人の友にいつまでも進み続けよと言われた。

そしてアレイスターは彼女に、自分たちの大切な位相を破壊するお前を許さないと言われた。

だがそれでも彼女──エルダー=マクレーンは自分のそばにいてくれて、見守ってくれた。

 

彼女たちマクレーン家が真に欲した姫御子──朝槻真守も、彼女の番も共にいてくれる。

だから大丈夫。

アレイスター=クロウリーはそう考えると、コロンゾン打破に動き出した。

 


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