とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一六二話、投稿します。
次は二月一五日木曜日です。


第一六二話:〈親愛存在〉からの送り出しと合流

次につなげるために、世界を終わらせようとしている大悪魔コロンゾン。

そのコロンゾンを止めるために、朝槻真守たちは動き出した。

 

エディンバラ城の中庭。

そこで真守は、伯母であるアシュリン=マクレーンと出発前の挨拶をしていた。。

 

「真守ちゃん、危ないことはしないでね」

 

「大丈夫だぞ、伯母さま。ちゃんと垣根の言うこと聞くから」

 

真守は心配する伯母に、穏やかな笑みを浮かべる。

アシュリンは真守が首に巻いている白と黒のマフラーに触れる。

そして丁寧に巻き直してあげながら、問いかけた。

 

「行き先はダンフリース方面よね?」

 

「うん、その近くの小さな港町で一方通行(アクセラレータ)と待ち合わせしてるんだ。コロンゾンを倒すために力を合わせなくちゃいけないから」

 

真守はアシュリンにマフラーを正してもらって、うれしそうに微笑む。

 

「もう怪我しちゃだめよ」

 

「はい、伯母さま」

 

真守はこくんっと頷いて、アシュリンを見つめる。

真守も流石にアシュリンのお説教で懲りた。

絶対に自分のことをないがしろにしない。そう決めた。

 

真守がアシュリンと話をしていると、アシュリンの両脇からにゅっと二人の少女が出た。

 

アシュリンと真守とよく似た顔つき。双子だとすぐに分かる顔立ち。

彼女たちはアシュリンの娘たちだ。

 

マクレーン家は一度本国を離れて、一族総出で学園都市に避難して来ていた。

その時に真守は、自分の親戚たちと顔を合わせている。

 

マクレーン家は真守の事を全面的に受け入れている。それはアシュリンの娘たちも一緒だ。

 

「ねえ母さま。どうして真守ちゃんはカキネと一緒に前線へ向かっていいのに、なんで私たちは後方支援なの?」

 

「私たちもお祖父(じい)さま──ご当主さまたちと一緒に戦いたい」

 

アシュリンは自分に抱き着いて甘えてきた娘たちを見て、むっと顔をしかめる。

 

「わがまま言わないの。真守ちゃんは例外です」

 

「「ぶーぶー」」

 

真守は従姉妹が現れて、少し緊張してしまう。

マクレーン家の人たちは優しくて、そんな彼らを真守は大切にしたい。

だから真守はマクレーン家の人たちを前にすると、すごく慎重になってしまうのだ。

 

アシュリンの双子の娘はそんな真守に気が付くと、同時に真守に抱き着いた。

 

「わっ」

 

真守は双子の従姉妹に抱きしめられて、声を上げる。

双子の片方は真守の頭を撫でて、もう片方は真守の黒髪を撫でる。

 

「真守ちゃん、カキネに嫌なコトされたら拒んで良いんだよ?」

 

「そうそう。男はいつだって女の尻を狙ってるんだから」

 

アシュリンの娘たちは、真守と付き合っている垣根を大層敵視している。

理由は垣根が自分たちの大切な女の子にまとわりつく悪い虫かもしれないと警戒しているからだ。

 

垣根は最初から言いたい放題の真守の従姉妹を前にして、怒気を見せる。

真守は双子に抱き着かれたまま、緊張した様子で声を上げる。

 

「か、垣根は私の嫌がることは絶対にしないっ」

 

「「えー真守ちゃん、いつもそー言う」」

 

流ちょうな日本語で喋る双子の娘たち。彼女たちはじろっと垣根を見上げる。

 

「あのイケメン顔、どこからどう見ても女の敵だろ」

 

「夜は真守ちゃんのことイジメ倒してる。絶対、ぜぇーったい」

 

やいのやいの声を上げる双子たち。垣根は無表情で双子を見下ろす。

 

「オイ。真守と同じ顔してるからって良い気になるなよ」

 

「「きゃーこわーいっ」」

 

双子の娘はわいわいはしゃぐと、真守にむぎゅっと抱き着く。

 

「真守ちゃん、カキネが脅してきてる」

 

「悪い男だねーでも私たちと真守ちゃんの顔が似てるから大きく出られないねー」

 

言いたい放題の双子たちに、垣根はブチッと音を立てて何かが複数切れそうになる。

真守はむぎゅむぎゅ双子の抱き着かれたまま、緊張した様子で困惑する。

どうすればいいか分からない真守の代わりに、双子の母であるアシュリンが声を上げた。

 

「こら。わたくしの娘がはしたないこと言うんじゃありません」

 

「「えーだってだって」」

 

「だってじゃないでしょう、まったくもう」

 

母に諫められて、双子の娘は真守から離れる。

だが二人は真守から離れる前に、真守の両頬にキスをした。

 

「わわっ」

 

真守が驚きの声を上げる中、垣根は無言で拳を上げる。

双子の娘はイタズラっぽく笑うと、真守と垣根から離れた。

 

「真守ちゃん気を付けてねー」

 

「色々なことに! 気をつけるんだよー」

 

垣根はくすくす笑って去っていく双子を前にして、静かに怒りを燃やす。

 

「あの双子……っ!」

 

「ごめんね、帝督くん。あの()たち、真守ちゃんのことをすごく気に入っちゃって」

 

アシュリンは苦笑すると、真守の頭を優しく撫でる。

 

「遺伝子的に言えば関係が異父姉妹に当たるようなものだから。二人共真守ちゃんのことが心配になるのね」

 

真守の母とアシュリンは一卵性双生児である。

そのため真守とアシュリンは遺伝子的に言えば母娘に相当する。つまりアシュリンの娘である双子と真守の違いといえば、父親の違いとなるのだ。

 

「わたくしたちはあなたの事をとても大事に思ってるわ。だからちゃんと帰って来てね」

 

アシュリンは、真守の頭を優しく撫でる。

真守はアシュリンに頭を撫でられて幸せそうに目を細めると、にぱっと笑った。

 

「伯母さま、行ってくるねっ」

 

真守はアシュリンに挨拶をしながら、垣根の手を握る。

 

「垣根とちゃんと元気に帰って来るね」

 

垣根は真守の手を優しく握ると、アシュリンを見る。

アシュリンはたおやかに微笑むと、真守の頬に触れる。

 

「帰って来たらゆっくりしましょうね、色々な話をしたいわ」

 

「うん、私も伯母さまと話がしたい」

 

真守は垣根と繋いでいる手に、きゅうっと力を込めながら笑う。

 

「行ってくるね、伯母さま。頑張ってくる」

 

「ええ。気を付けて」

 

アシュリンは柔らかく微笑んで、真守と垣根を見つめる。

真守は小さく手をふりふりと振ると、垣根に向き直った。

 

「行こう、垣根。世界を救いに」

 

「……まったく、いつの間にか大きい話になっちまったな」

 

垣根はふにゃっと笑う真守を見て、肩をすくめる。

 

垣根帝督は、学園都市という実験場の暗部組織に所属していた。

学園都市こそ、世界の全てだと思っていた。

 

だが現実は違った。学園都市は科学サイドと呼ばれる一角に過ぎず、相対する存在として魔術サイドというものが存在していた。

 

統括理事長が世界を分断したため、垣根帝督は世界の片側しか知らなかった。

朝槻真守に出会った事で、全てが変わったのだ。

 

その変化が、垣根帝督には喜ばしい変化だった。

垣根は穏やかに笑うと、真守の手を握る。

 

「行くか、世界を救いに」

 

「うんっ」

 

真守はふにゃっと笑うと、そっと目を伏せた。

すると。真守の背中から、三対六枚の蒼ざめたプラチナの翼が生えた。

垣根帝督も三対六枚の未元物質(ダークマター)の純白の翼を広げた。

 

「飛ぶだけなら垣根と同じ枚数で良いかなって」

 

真守は少し恥ずかしそうに、微笑む。

垣根は真守が愛おしくて、そっと目を細める。

 

自分のことを良い方向へと変えてくれた、愛おしい少女。

ずっと、泥のようにまとわりつく闇の中にいた。

深く深くに潜って行って、闇の根源を掌握して世界を掌握しようとした。

 

だがこの少女が一筋の光となってくれたのだ。

垣根は笑うと、真守の手を優しく引く。

そして二人で並んで、空へと飛び立った。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

スコットランド、ダンフリース近郊。

小さな、有名ではない港町。その沿岸にて、一方通行(アクセラレータ)は立ち尽くしていた。

隣には人工悪魔のクリファパズル545がぷかぷか浮かんでいる。

 

科学の怪物は魔術の悪魔を侍らせて、一人感慨にふける。

いつの間にか、遠いところまでやってきたと。

 

かつて、一方通行(アクセラレータ)はとある実験に参加していた。

まだ見ぬ頂に昇り詰めるがために、多くの命を犠牲にしていた。

 

そんなある日、深夜のコンビニでとある少女に出会った。

 

朝槻真守。あの時、真守はすごく焦っていた。

後から聞けば、自分と会った時に初めてコンビニへ一人で入ったらしい。

科学の街でありえないだろ、と思った一方通行(アクセラレータ)。だが真守はずっと病院暮らしでわざわざコンビニに行く必要がなかったと主張していた。

 

まあ詳しく言えば真守のアレはただの良い訳で、食事に興味がなかったためコンビニに入る必要性を感じなかっただけなのだが、それはさておき。

 

あの時の真守の生活範囲は、病院と学校・時々ショッピングセンター位だった。

自分のテリトリーから出るのは本当に大変な事だ。悪の世界に浸かっていて、表の世界で生活する事に難儀している今の一方通行(アクセラレータ)には理解できる。

 

そんな朝槻真守と、一方通行は多くの話をした。

真守は本当に神さまのようで。実際に神さまになるべく、真守は『永遠』を司る素質を持って生まれてきたという。

 

そんな少女と、一方通行(アクセラレータ)は一つ約束をしていた。

いつか一方通行が許せるようになったら、名前で呼ばせてほしい。

その約束を、一方通行は覚えている。

 

(まァ今更名前で呼んでくれていい、なンてこっぱずかしくて言えるはずがねェがなァ)

 

一方通行(アクセラレータ)はふと顔を上げる。

すると上空から朝槻真守が降りてきた。

 

「一方通行」

 

柔らかく微笑む少女は、背中に蒼ざめたプラチナの翼を携えている。

白と黒の翼も彼女らしいと思っていたが、あの翼も中々に真守に似合っている。

三対六枚広げた少女はゆっくりと上空から迫り、一方通行(アクセラレータ)へと抱き着いた。

 

「くっつくンじゃねェ。こちとら怪我してるンだ」

 

「ふふん。そんなこと当然として知ってるぞ」

 

真守は得意気に微笑んで、一方通行(アクセラレータ)の傷を締め上げないように抱きしめる。

 

エディンバラ城でコロンゾンと対決した後。一方通行はクリファパズル545と連絡用のカブトムシと共に、コロンゾンと浜面仕上を追っていた。

 

そして一度、列車という閉鎖的な場所でコロンゾンに付き従う浜面に追いついていたのだ。

だが、そこで魔神ネフテュスが横やりを入れてきた。

そのせいで負傷し、一方通行は浜面仕上を逃してしまったのだ。

 

「待ってな、今治してやるから」

 

真守は一方通行(アクセラレータ)のことを抱きしめたまま、一方通行の体に干渉して治癒を始める。

 

「至れり尽くせりどォもありがとォ」

 

一方通行はケッと吐き捨てながらも、真守に礼を言う。

そして目を逸らした一方通行の視界に、新たな影が舞い降りた。

 

「オイ真守。治療っつったって別に抱き着かなくてもいいだろうが」

 

純白の未元物質(ダークマター)製の翼を三対六枚広げた少年、垣根帝督。

 

(コイツは相変わらず独占力が強ェな……)

 

一方通行(アクセラレータ)の思考が理解できる垣根は、一方通行を睨む。

 

「なんだよテメエ。文句あるのか?」

 

真守は苛立ちを見せている垣根を見上げて、一方通行が文句を言う前に口を開く。

 

「垣根、一方通行(アクセラレータ)がキライだからって一々突っかからないで」

 

「嫌いだからつっかかるに決まってんだろうが。つか早く一方通行から離れろオラ」

 

「どう思う、悪魔ちゃん。垣根って器小さいだろ?」

 

真守は一方通行(アクセラレータ)に変わらず抱き着いたまま、一方通行の隣に侍ている額に穴が開いた人工悪魔に声をかける。

 

『ひひひ。それを答えると人工悪魔的な人生が終わりを告げそうですけどぉ……?』

 

真守は笑顔で柔らかく微笑む。

 

「終わらないぞ。お前の生を終わらせるのは一方通行だからな、大丈夫だ」

 

『ではぶっちゃけますと器が小さいかと』

 

「なんだとコラ悪魔風情が」

 

『うぎゃーっ尻尾掴まないでくださいっ!』

 

クリファパズル545は魔王に尻尾をむぎゅっと掴まれて、叫び声を上げる。

 

しかも垣根は浮遊しているクリファパズル545の尻尾を握ったまま引っ張り、逆さにして尻尾を伸ばしてヨーヨーみたいにクリファパズル545をびょんびょん揺らす。

 

それにクリファパズル545は逆らえない。何故ならクリファパズル545は真守の先導で垣根によって逆らえないように様々な安全装置が組み込まれている。

 

しかもそれに加えて、垣根が未元物質(のうりょく)を使っているのだ。

 

『ふげーっなんか変な法則が働いて……ッ!? 人工悪魔をイジるために能力まで使うとか大人気ないですよぅ!?』

 

「安心しろ悪魔、俺はまだ未成年。つまり子供だ」

 

『そういう事言ってるんじゃないんですよぅっ! うわああんご主人様ァ!!』

 

「お前たちナニ仲良しこよしやってンだ……?」

 

一方通行(アクセラレータ)は真守に抱きしめられたまま、思わず遠い目をして呟く。

世界が終わりそうなのに、この少女たちはクリファパズル545を加えて随分と楽しそうだ。

 

(こォいう空気にはどォも慣れねェ……)

 

一方通行は小さくため息を吐く。

そんな一方通行を見て、真守はふふっと幸せそうに笑った。

 

垣根帝督はクリファパズル545を弄り倒すと、一方通行から真守を引きはがそうとする。

それでも離れない真守。

一方通行は真守を引っ張る垣根の被害を受けて、今度こそ大きくため息を吐いた。


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