とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第三三話、投稿します。
次は九月一一日土曜日です。


第三三話:〈相対立場〉の会話とささやかな願い

真守は現在、とある研究所に侵入していた。

 

その研究所は二階建ての小さな研究所と巨大な三つの培養施設で構成されており、敷地面積は大きいものの研究所は極めて小さい設備の方を重要視した研究所だった。

 

御坂美琴は絶対能力者進化(レベル6シフト)計画に気づき、実験を止めようとありとあらゆる研究所を襲撃し続けた。

実験が中止に追い込まれるのは困る。

そのため実験の主導部は、外部の様々な研究所に実験を委託する事によって対抗した。

 

施設を一つ破壊されようが、他の施設がその役割を担えばいい。

利益を分散させるというデメリットが発生しても、実験を止めるよりもメリットがあると判断したのだろう。

それに美琴が研究所を潰せば潰すほど、利益が主導部に返ってくるから問題ないとも思ったのか。

 

そんな事は真守にとってどうでも良かった。

 

外部に委託するとどうしても主導部と外部の間に()ができる。

真守の所属していた『特異能力解析研究所』は研究の解析を外部から委託されており、外部と繋がっているという事実の隠ぺいに力を注いでいた。

その『解析研』の叡智(えいち)を全て吸収した真守は、その隠ぺいの仕方でさえ学んでいたのだ。

 

そのため絶対能力者進化(レベル6シフト)計画を主導している研究所を探すために外部の研究所から辿(たど)るのは別に難しいことではなかった。

 

御坂美琴は見抜けなかったが、そういう知識もあって真守は絶対能力者進化(レベル6シフト)計画の主導している研究所がここであると突き止めた。

 

 

────……。

 

 

窓のない部屋の中には無数のモニターが並んでおり、大量のデータがそこら辺に束ねられ、まき散らされている。

 

冷却ファンの音が重く響く中、真守はコンソールを操作しており、真守の周りには二〇数名の研究者たちが昏倒(こんとう)していた。

 

「やっぱりあの子の動機はどこにもないな」

 

真守は自分が所有しているデータサーバーへとデータを送信する手筈を整えながら呟く。

 

「なあ。お前は何か知ってるか、研究者」

 

真守は振り返ってその研究者を睥睨(へいげい)した。

 

研究者らしい、化粧っ気もないし適当な服をしている二〇代だと思われるのその女は『芳川桔梗』と書かれたネームプレートを胸から下げていた。

 

「教えてもいいけどその前に挨拶させてちょうだい。まさかここで本物に会えるとは思わなかったわ。朝槻真守さん?」

 

芳川は軽い調子で真守に話しかけた。

芳川は拘束されておらず、ただ椅子に座って足を組んで真守の様子を眺めているだけだった。

真守が芳川を拘束していないのはただ単に芳川に抵抗する気がないと感じているからで、実際に芳川自身も真守に刃向かうのは無駄だと考えていた。

 

朝槻真守は地球が滅亡したとしても死なない能力者だからだ。

 

一方通行(アクセラレータ)は核でも死なないというキャッチコピーだが、人間として最低限必要な補給を絶たれれば死ぬ。

 

だが朝槻真守は核で死なないのはもちろんの事、人間として必要最低限の補給を絶たれても自分の能力で必要なエネルギーを(まかな)う事ができるため、死なないのだ。

 

だからこそ真守は学園都市が制御できない能力者であり、上層部は放置しているしかないのだ。

 

脅されている立場の芳川が随分(ずいぶん)と軽い調子で真守に話しかけてくるので、真守は思わず顔をしかめる。

 

「随分と余裕だな、お前」

 

「余裕とはまたちょっと違うわね。あなたの機嫌を(そこ)ねないように慎重に行動しているのよ」

 

芳川は真守の呟きに肩をすくめてから応えた。

 

「私は研究者が嫌いだ。だからおまえと世間話をするつもりなんてないし、そんな暇もない」

 

「第一〇〇三二次実験が始まるから? ここを襲撃したって事はやっぱり実験を止めるつもりなのね? 自分以外の人間が絶対能力者(レベル6)進化(シフト)するのがそんなに気に入らない?」

 

「その減らず口を今すぐ閉じないと、死なない程度にお前の尊厳を踏みにじるぞ」

 

真守はコンソールを(いじ)ってこの研究所にあるデータを自分のデータサーバーに複製する作業を開始しながら芳川を脅す。

 

「彼の動機、だったかしら?」

 

芳川は真守ならばその脅しを楽々とこなす事ができると判断して真守の質問に答えようとした。

 

「そうだ」

 

真守が芳川の言葉に頷くと、芳川は自分が知り得ている一方通行(アクセラレータ)の動機について話し始める。

 

「自分を取り巻く環境を(くつがえ)すための絶対的な力を手に入れることだそうよ」

 

「……環境」

 

「ええ。彼なりに思うところがあるんじゃないのかしら。私の考えでは人間関係ね。あなたと違って彼は一人で生きていけないから」

 

真守は芳川の主張に反論しなかった。

実際、真守は宇宙空間であろうが一人で生きていけるからだ。

 

芳川の推察(すいさつ)の通り、一方通行(アクセラレータ)は今の孤独な環境を変えたくて絶対的な力を求めたのだろうと真守も察する事ができた。

 

一方通行(アクセラレータ)は真守の好意に触れて随分と戸惑っており、人の好意に触れていないからこそ人とどう接していいか分からずに、真守にも手探りで接していた。

 

きっと強大な力を持っているから誰も彼もが自分から離れていって、一方通行(アクセラレータ)自身も彼らを自分の強大な力で傷つけないように心を閉ざしてしまったのだろう。

 

(あの子は私とは違う)

 

一方通行(アクセラレータ)は真守から見れば、人を想いやる事ができる()()()()()()()()()()でしかなかった。

 

朝槻真守は能力の特性上、流れを見極める事ができる。

真守には人の想いも、ただの事象も。それらがどこへと行きつくのか全て分かっていた。

 

全ての物事の流れを理解できるという事は全てを網羅(もうら)しているという意味だ。

手を伸ばせばなんだって届く。

 

 

何もかもが叶えられる世界にいる真守には()()()()()が必要だった。

 

 

その基準が『自分の利益になることをして、自分の不利益になることをすべて拒絶する』という極めてシンプルな損得勘定だった。

 

その基準に違反すれば、真守は即座に違反したものを拒絶してきた。

 

その内に研究者が自分の事を懐柔(かいじゅう)しようとしてきたが、そんな事で真守の基準は揺るがず、研究者が自分を利用しようとしていると察すると即座にその研究者を()()した。

 

自分の損得勘定の基準を(おか)さなければ、真守は人を傷つけなかった。

 

そんな真守の『基準』は普通の人間から見たらどこまでもエゴ的で『異常な基準』だった。

だからこそ倫理観が欠如していると判断されて、絶対能力者(レベル6)になる特別な時間割り(カリキュラム)(ほどこ)される前に情操教育なんてものが挟み込まれたのだ。

 

真守は深城が情操教育のために自分の前に現れた少女だと知っていた。

 

他の情操教育相手はいつだって真守に気に入られようとしていた。

気に入らなくて壊せばまた新しい相手がやってくるから、無視していた。

 

だから深城の事も無視しようとしたら、鬱陶(うっとう)しいくらいに距離を詰めてきた。

だがそこに悪意が一切ないのだ。

深城は無償(むしょう)の愛を自分に与えたいと感じ、その感性に(のっと)ってただ実行しているだけなのだと、真守は自分の能力の特性からなんとなく察する事ができた。

 

深城は真守の知らなかった『人間として大切にしなくてはならない事』をたくさん教えてくれた。

真守が知らなかった基準を教えてくれた。

 

「……自分以外の絶対能力者(レベル6)が現れるのが嫌じゃないなら、あなたはどうしてこの実験を止めるの? 良ければあなたの考えを聞かせてくれるかしら?」

 

深城との出会いを思い出していると、芳川の問いかけによって真守は現実に引き戻された。

 

研究者が実験材料の気持ちを聞くなんて真守が知っている研究者ならば考えられない事で、真守は思わず驚愕(きょうがく)して唖然と芳川を見つめた。

 

何か真守の機嫌を損ねるような事を言ったのか。

それにしては筋が通らない反応だと芳川が内心で小首を傾げていると、真守が口を開いた。

 

「お前、なんで研究者なんてやってるんだ?」

 

「え?」

 

研究者としてはちぐはぐすぎる芳川に真守が思わず問いかけると、当然の反応として芳川は首を傾げた。

 

自分の気持ちを聞きたいと歩み寄ってきた人間を真守は無視する事なんてないし、できない。

だからこそ真守は芳川の問いかけに躊躇(ためら)いがちにも答えた。

 

「……あの子が、違う存在になってしまうのが嫌だから。遠くに行ってほしくないから」

 

一方通行(アクセラレータ)と、まさか友達だとでもいうの?」

 

一方通行(アクセラレータ)に友人と言えるべき存在がいる。

それならば彼は人の輪に戻ることができていて、絶対的な力を手にしようとしなくても良かったはずだ。

芳川が驚きの声を上げる中、真守は首を横に振ってから答えた。

 

「友達じゃない。ただ、あの子の気持ちを受け止めただけ。……でも、きっと。これから友達になれる。行かなくていいところには行かなくていい。あんなモノのためにあの子にミサカたちを殺させたくない。あんなモノのためにミサカたちが死ぬのが当然だなんて考え、あの子に持ってほしくない」

 

絶対能力者(レベル6)がどんなものか知っていて、あなたはそれになりたくないのね?」

 

「……お前は、どう思う」

 

真守は芳川の問いかけに答えずに逆に質問した。

 

「え?」

 

「おまえは『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』で私にどんな時間割り(カリキュラム)が組まれたか知ってるだろう。お前はアレをどう思う?」

 

真守はサーバーの中に保存されている真守に(ほどこ)される予定だった『七年間の特別な時間割り(カリキュラム)』についての意見を芳川に求めた。

 

芳川は、困惑しながらも主観に基づいた気持ちを零した。

 

「……あなたを巨大な延命装置に繋いで、効果が期待されるも体の特定の部位を溶かす副作用がある未認可の薬を数種類使う。その新薬の効果が出たら欠損した器官たちをあなたの体組織から培養してイチから造り上げてその器官を移植して元通りにする。これは一例に過ぎないけれど、あなたの尊厳を考えていないことは明らかね」

 

「お前はそれをするべきだと思う?」

 

「研究者としてそれを求められるのであれば、やるべきだわ」

 

真守は芳川の言葉にそっと目を伏せた。

 

(できればやりたくないけれど打算的に考えてやるべきだと。お前はそう思うんだな)

 

真守はデータサーバーに全てのデータが送信された(むね)を伝える表示を見つめてから、真守はデータサーバーに残っていた真守に関するデータだけを完全に抹消した。

 

妹達(シスターズ)一方通行(アクセラレータ)のデータを消さなかったのは一方通行ならまだしも、計画がとん挫した後に妹達の情報が消されていると色々と困った事が起こるという理由からだった。

 

自分のデータを消去しても上層部が全てのデータを保有しているから意味がないと真守も思うが、自分のデータをここに残しておきたくなかった。

 

「お前、研究者に向いてないよ」

 

「え」

 

真守はデータが消去された事を確認しながら振り返った。

自分の表情はきっと芳川には寂しそうに見えただろう。

実際そうだった。

 

芳川桔梗が打算的な生き方でなければ生きられないのが、朝槻真守はとても悲しかった。

 

真守の表情を見て固まる芳川に向けて、真守は言葉を零すようにぽそぽそと喋る。

 

「私は実験体になった教え子のために学園都市に刃向かって、教え子を救った研究者を知っている。お前は、なんか……研究者だったその人と似てる。きっと誰か大切な人ができたらお前はなんでもできてしまう人間だよ。私はそう感じる」

 

真守は枝先絆理たちを救った木山春生を思い出しながら告げる。

 

「この実験が中止されて行き場がなくなってもお前は生きていけそうだな。でも困ったら相談に乗ってやる。お前ならそうしてもいいかなって私は思うから」

 

「……どうやって実験を中止させるの?」

 

真守は呆然と自分に問いかけてきた芳川桔梗の隣を通って研究室から出る扉に向かいながら告げる。

 

「あの子に勝てる無能力者(レベル0)を知っている。そして私があの子の心を折ってしまえばいいんだ」

 

「折る?」

 

「命を使い潰してまで絶対的な力を手に入れなくていいと、分からせてしまえばいい」

 

真守は研究室の扉を開きながら振り返って告げる。

 

「この施設はミサカたちに何かあった時の培養施設だからな。壊さないでおいてやる」

 

真守は柔らかく微笑みながら告げると、研究所内を闊歩(かっぽ)して第一〇〇三二次実験の実験場である第一七学区の操車場に向かった。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

真守がビルとビルの間を飛んでいると携帯電話に着信があった。

『御坂美琴』と表示されていて、真守は即座に出た。

 

「もしもし」

 

〈朝槻さん……〉

 

「うん、私だ。どうした、ゆっくり話してみろ」

 

美琴の声が酷く憔悴(しょうすい)していたので、真守は優しくそう(さと)した。

 

〈…………私、朝槻さんや垣根さんが見ていた世界を初めて知って……それがとても深い闇に(おお)われた世界で、私が綺麗事ばかり吐いていた事に気が付いたわ〉

 

「お前が知らないで幸せに生きられるならそれでよかった。私はそれで良いと本気でそう思っていた」

 

自分のこれまでの態度を反省して美琴が真守に謝罪しようとしてきたので、真守はそれを(さえぎ)って告げた。

 

真守の優しさに触れて美琴はグッと声を押し殺した後、自分の気持ちを吐露(とろ)した。

 

〈どうにかしようって思ったけど一人じゃどうしようもできなくて……。でももう後がないから私の命を使って実験を止めようとしたらあのバカが来て……朝槻さんが色々調べてくれたって。私が騙されてたって、本当か? ……って聞いてきて。どうして私が騙されたって分かったの? あのバカは朝槻さんが経験からそう理解したって言ってたけど……どういう事?〉

 

真守はその問いに答えるためにビルの屋上に一度降りる。

そして夜の学園都市の風を感じながら寂しそうな声で告げた。

 

「お前が綺麗だったから。『闇』に染まっていないって分かるほどに清らかだったから」

 

〈朝槻さんは綺麗じゃないって言うの?〉

 

真守は美琴のその問いかけに顔をしかめており、歪ながらも微笑んだ。

 

「私はお前が想像もつかないことをたくさんしたよ。ずっとそうやって生きてきた。お前たちのように清らかに生きられたらよかったって思うよ。表の世界で何も知らないで生きられたらどれほど良かったかって、心の(すみ)でいつも考えてる」

 

〈……何も知らないで楽しく過ごしてた私たちが憎くないの?〉

 

「さっきも言っただろ。知らなくて幸せに暮らしていけるなら知らない方がいい。幸せに暮らしていることに罪なんてない。……誰もが幸せに生きられたら本当に良いと思う。だからお前には笑っていてほしい。闇を知っても、陽の光の下で暮らしていけると──私に、示してくれ」

 

〈示す?〉

 

美琴のオウム返しに真守は一つ頷いてから答える。

 

「お前の生き様が私たちを照らしてくれるんだ。その光が眩しすぎて『闇』に生きる人間は受け入れられないかもしれないけれど、私はその光が存在している事自体が嬉しい。だから私に示してくれ。できるか?」

 

〈うん……分かった。頑張る〉

 

真守の心からの願いに、美琴は即座に応えた。

 

「大丈夫、一人で頑張らせない。私もお前の力になる。妹達(シスターズ)のことは私も放っておけない。使い潰されて良い命なんてない。……あの子たちは生まれて何も分からない時に、研究者たちにモルモットだって教えられた。人がそうやって教え込んでしまえば、あの子たちは自分たちの価値をそうだと思い込んでしまう」

 

〈……そうね、きっとそうなんだわ。あの子たちは真っ白で生まれてきたから、モルモットって教え込まれれば自分たちの存在をモルモットだと思うに決まってる〉

 

「ああ。でも妹達(シスターズ)を人間として見ている私たちが彼女たちに、お前たちは人間だと教えればいい。……でもクローンは一般人には受け入れ(がた)い。あの子たちはこれからも苦難の道を歩むだろう。でも人間として生きられるならその方がいいはずだ。だからあの子たちが人間として生きていけるように一緒に頑張ろう、美琴」

 

〈手伝ってくれるの?〉

 

「首突っ込んだんだから最後まで私も協力する。途中で投げ出すのは性に合わない。分かったか?」

 

真守の問いかけに美琴は鼻をグスッと鳴らしてから小さな声で告げた。

 

〈ありがとう……〉

 

「私も今向かっているから。お前はゆっくり来い。良い結果を見せてやる」

 

〈うん。ありがとう、朝槻さん〉

 

「うん。じゃあな」

 

真守はピッと携帯電話の通話を切って夜空を見上げた。

 

(学園都市の『闇』は深い。私は近い将来、必ず絶対能力者(レベル6)進化(シフト)する。時間を稼ぐことはできても、行き着く先は変えられないから)

 

真守は唇を噛みながら顔を歪ませて、夜空に浮かぶ三日月へと手を伸ばした。

 

(絶対能力者(レベル6)になったらどうなるか分からない。進化(シフト)するってそういうことだから。でもそれまで(つむ)いだ絆はなくならない)

 

真守は三日月へと手を伸ばすのをやめてそっと自分の胸に手を当てた。

 

(私の魂は変わらない。私の本質は変わらない。だからきっと私は私のままだけど、でもやっぱりどうなるか怖い)

 

真守は自分の恐怖を今一度理解するために心の中で呟く。

 

(私が変わってしまっても。もうみんなと一緒にいられなくても。みんなが幸せならそれでいい。本当にそう思うから)

 

「なあ、深城」

 

真守は自分の隣に浮いている深城へと声を掛けた。

 

『なぁに、真守ちゃん』

 

「いつまでも一緒にいてくれるよな。私が、……どんなになっても…………」

 

真守が切なそうに顔を歪めると、深城は真守に触れられないと知っていても真守の頬に手を伸ばした。

 

『何言ってるの? 当然だよぉそんなこと。今更聞くなんてひどいねえ、真守ちゃん」

 

「……ごめん」

 

『大丈夫だよぉ。ずぅっと一緒。真守ちゃんが約束してくれたんでしょ?」

 

「……うん、そうだね」

 

わざと意地の悪い言い方をして微笑んでいる深城を見つめながら、真守は小さく頷く。

 

(……でも)

 

真守は深城を見つめながら全く違う事を考えていた。

 

 

(進化(シフト)してしまったら垣根とはもう一緒にいられない気がする…………)

 

 

変わり果ててしまった自分の(そば)から垣根が離れていってしまうのか、変わり果てた自分が垣根と一緒にいる事に意味を見出せないのかは分からない。

でもそんな未来が待っている事を真守はなんとなく察していた。

 

(垣根は私が変わってしまったらどう思うだろうか……。分からないけれど、私が私じゃなくなるその最後の瞬間まで、ずっと一緒にいられたらいいな)

 

「よし」

 

真守はささやかな願いを心の中で呟いてから、ビルの屋上から飛び立って学園都市の夜の街を再び駆け始めた。

 




芳川さん、一方通行をきちんと子供として見てくれているので、少し違ったら本当に木山春生のようになっていたな、と思います。

とある魔術師と気が合いそうな真守ちゃん。それにもしかしたら垣根くんの原作の未来の姿と同じになっていたという……。

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